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第1章 雪解けと嵐

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 城が近くなった頃、急に揺れが激しくなった。馬車の小さな窓からじゃよく見えないが、きっと革命の跡で道はボロボロなのだろう。
 外に向けていた顔を室内に戻し、目の前の男を見る。騎士は相変わらず静かで、じっと目をつむっていた。



 ほぼ一定の速度で走っていた馬車が減速し始めた。
 このまま走り続け、城になんて着かなければいいのに……そんな詮無いことを考えてしまっていたが、その願いが叶うはずもなく、大幅な時間のずれもなく到着してしまうようだ。
 馬車が速度を緩めたことに気が付いたのだろう。騎士は顔をあげ、外を見つめ始めた。



 間もなく、馬車は静かに止まった。辻馬車だと、止まるときに体が前のめりになるが、あまりにも静かに止まったため、体が振り回されることはなかった。貴族の乗る馬車というのは馬車だけでなく、御者の腕も辻馬車とは別格らしい。

「ここでしばらくお待ちを」

 そう言うと、騎士は外に出て行ってしまった。



 しばらくすると、騎士は帰ってきた。差し出されえた手に導かれ外へと出る。
 すぐ目の前に王城がそびえ立っている。外観を眺めるが、特に目立った損傷はない。以前はここに住んでいたのだから、当然前にも眺めたことがある。しかし、何故か今のほうが城は大きく、そして自分が小さくなったような感じがした。


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