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1章
Catastrophe
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To.吉野希くん
私に会えなくても、君は一人で生きていけるよ。
実際にほら、君の手紙にも、私の元に来る方法じゃなくてこの世界で生きていく方法を聞いてる。
もう君は、前を向けてるんだよ。
いつまでこうして私と手紙を交換しあえるかわからない。
私とまだ繋がっていられる間に、私以外の光を見つけて。
和泉華音にも、そう伝えて。
それでもこれでも、こうして出し合える間は、私のいない世界の君と、話そうと思う。
私がいなくなったら、君がどうなるか気になるし、不安だから。
私は今もずっと君が好きで、愛しています。
どうか私が、君の光に、なりませんように
from.瑠一瑠花
「おはよ、希くん」
今日もいい天気!とか言いそうな顔。
「なんで名前呼び?」
「え、親密になった証拠?」
なんか嫌な言い方。
意味が変わりそうだし。
「あの話、まだ乗ったわけじゃないよ」
「わかってるよ。でもでも、名前呼びくらい別に良くない?」
「別にいいけど」
パーッと顔が明るくなった。
元々明るいのに。
光が差したみたいに。
「なら、私のことも名前で呼んでくれない?」
「嫌だよ。実際、君と話してるだけで周りから見られるし」
白井がキョロキョロすると、多くの、主に男子と、目があったらしい。
「希くん、人気者じゃん」
「どこがだよ」
「見られてるよ」
「見られてたら人気者なんだったら、大炎上したYoutuberも世紀の大犯罪者も人気者だよ」
「希くんは悲観的すぎるんだよ」
「現実には期待しないんだよ」
僕を見てヒソヒソ話されている現状がその証拠。
嫉妬して、挙げ句攻撃する。
つまらない。
だから、何にも期待しない。
期待しても、現実は、どうせ僕から全てを奪う。
「希くんって、キスしたことある?」
普通の顔して聞いてきた。
なんなんだよ、本当に。
「あるけど」
「彼女?」
「そうだけど」
「キスしたかった?」
「彼女だし、そりゃね」
なんだか、直接的に「キスしたかった」というのは恥ずかしかった。
「キスしたいって現実に期待して、出来てるなら、現実に期待できるんじゃないの?」
「でも、結局奪われたんだよ」
あ~~、とちょっと申し訳なさそうな顔をされた。
「なんか、ごめん。終わりは、来るよね」
「それが恋愛感情の話をしてるなら、違うよ」
「違うの?」
「死んだんだよ」
自分で否定して、余計なことを話した。
すると白井は、何かを察したかのような顔をした。
「ねぇ、最近、やっぱり何かあったでしょ」
「なにもないよ」
「おかしいよ?希くん」
「僕は普通だよ。健康調査されても、何も出てこないぐらいには普通」
そういうと、白井は「は~~っ」と溜め息を付きながら頬杖をついて、何やら首を横に振りながら前を向いた。
詮索をやめてくれるなら、何でも良かった。
「手紙、見せてって言ったよね?」
珍しく学校で和泉に話しかけられた。
「あ~~、僕は僕で忙しくて忘れてた」
素直に話す。
「私だってみたいの」
「そうな」
「ていうか、なんで君の手紙だけ届いて、私のは届いてないの?」
「僕に聞くなよ!」
そもそも、なんで手紙が届くのかもわからないし。
「最近、病んでる?」
「またそれ?」
と言うと、和泉が首を傾げた。
「私、これ言ったの初めてだけど」
珍しく色んな人と話してるから、誰と何してるか最早わからない。
「病んでないよ」
「今日、一緒に帰れる?」
断る理由もないし、了承することにした。
「手紙書くの、辛いならやめてもいいよ」
帰り道、第一声がソレだった。
「なんでそんなこと言うのさ」
「心配なんだよ、私だって」
前も聞いた気がした。
何度も言うぐらい、気にされてるなら、僕もいよいよなのかもしれない。
「心配しなくても、僕は普通だよ」
普通ってなんだろう、と少し思った。
二人してあの時みたいに黙って歩く。
それだけなのに、なんだか、和泉の考えてることが少しだけわかった気がした。
ホントに僕を、心配してるのかもしれない。
公園の中に和泉が入っていくからついていくと、ブランコの柵に座った。
周りは風の音だけ。
僕と和泉だけこの世界にいて、他は何も存在しないみたいに。
そんな中、和泉がポツポツと、細々と、話し始めた。
「希くんは、義務的になってる。彼女が生きてたら、喜ぶべきだ。連絡を取れるなら、取るべきだ。きっとそうなってる。私は瑠花ほど、君のことを知らない。でも、見てたらわかるの。それは、瑠花への愛じゃない。ただの自己愛。瑠花が死んでから……ずっとそう」
和泉が、僕の前に、勢いつけて立ち上がった。
唇が重なりそうな、そんな距離まで、一瞬、近づく。
そして、和泉の語気がだんだん強くなっていく。
「現実が愛せないから、期待出来ないから、何も誰も自分を愛しないから、自分で自分を愛しようとしてる。自分を愛して、自分が傷つくことから守ってる。だから、義務的に、マニュアルみたいに動いてる。普通の人みたいに生きようとして、勝手に普通を決めてる」
僕に聞こえるぐらい、和泉が大きく息を吸った。
和泉の感情が高まってくのを感じる。
「これ以上は見てられない。もう、瑠花に縛られないで。君を愛してくれる人は、きっと、必ず、いる。瑠花の変わりには絶対になれないけど、瑠花がもう戻ってこれないのは事実なの。私が君を、瑠花に変わって守るから。もう、自分を傷つけないで」
シン、と静まって、なんとも言えない、いや、何も言えない空気が立ちこめた。
まだ、世界には僕達二人しかいなかったけど、早く抜け出したかった。
圧倒されて、息苦しくて、言い返せなかった。
でもその息苦しいが、和泉の圧なのかなんなのか、わからなかった。
僕が瑠花を、愛していないわけがない。
だから、僕が瑠一に対して手紙を返すのは普通のこと。
もう、嫌だ。
フラフラと、和泉をほって帰った。
和泉は追いかけてこなかった。
ずっと、僕の背中を見ていた。
To.瑠一瑠花
from,吉野希
手紙が、書けない。
文字が、文が、言葉が、何も、出てこない。
やっと、気づいた。
いや、気づかされたのかもしれない。
和泉の言ってたこと、瑠一が僕に今日、手紙で言ったこと。
僕は、瑠一を愛しているんじゃない。
ただ、自分を愛していただけ。
ホントは自分でも、脳裏にはよぎっていた。
それでも、それから目を背けてた。
だから、手紙が届いたとき、現実でないことを少し願った。
もしかしたら、それと、向き合わないといけないかもしれないから。
そして僕は、ずっと、瑠一を愛している気になっていた。
僕は、優しく笑ってくれる、安心させてくれる、明るい瑠一が側にいることで、僕自身が幸せになってただけだ。
再確認。
僕は、瑠一を、愛しているんじゃない。
ア、イ、シ、テ、ナ、ン、テ、イ、ナ、イ。
それでも何故か、どうしても、瑠一に、会いたかった。
彼女に、無性に、どうしても、会いたかった……。
死んだ恋人から、手紙が届いた。
しかし、皮肉にも、その手紙で僕は、彼女のことを愛していないと、気づいた。
~love less letter~
私に会えなくても、君は一人で生きていけるよ。
実際にほら、君の手紙にも、私の元に来る方法じゃなくてこの世界で生きていく方法を聞いてる。
もう君は、前を向けてるんだよ。
いつまでこうして私と手紙を交換しあえるかわからない。
私とまだ繋がっていられる間に、私以外の光を見つけて。
和泉華音にも、そう伝えて。
それでもこれでも、こうして出し合える間は、私のいない世界の君と、話そうと思う。
私がいなくなったら、君がどうなるか気になるし、不安だから。
私は今もずっと君が好きで、愛しています。
どうか私が、君の光に、なりませんように
from.瑠一瑠花
「おはよ、希くん」
今日もいい天気!とか言いそうな顔。
「なんで名前呼び?」
「え、親密になった証拠?」
なんか嫌な言い方。
意味が変わりそうだし。
「あの話、まだ乗ったわけじゃないよ」
「わかってるよ。でもでも、名前呼びくらい別に良くない?」
「別にいいけど」
パーッと顔が明るくなった。
元々明るいのに。
光が差したみたいに。
「なら、私のことも名前で呼んでくれない?」
「嫌だよ。実際、君と話してるだけで周りから見られるし」
白井がキョロキョロすると、多くの、主に男子と、目があったらしい。
「希くん、人気者じゃん」
「どこがだよ」
「見られてるよ」
「見られてたら人気者なんだったら、大炎上したYoutuberも世紀の大犯罪者も人気者だよ」
「希くんは悲観的すぎるんだよ」
「現実には期待しないんだよ」
僕を見てヒソヒソ話されている現状がその証拠。
嫉妬して、挙げ句攻撃する。
つまらない。
だから、何にも期待しない。
期待しても、現実は、どうせ僕から全てを奪う。
「希くんって、キスしたことある?」
普通の顔して聞いてきた。
なんなんだよ、本当に。
「あるけど」
「彼女?」
「そうだけど」
「キスしたかった?」
「彼女だし、そりゃね」
なんだか、直接的に「キスしたかった」というのは恥ずかしかった。
「キスしたいって現実に期待して、出来てるなら、現実に期待できるんじゃないの?」
「でも、結局奪われたんだよ」
あ~~、とちょっと申し訳なさそうな顔をされた。
「なんか、ごめん。終わりは、来るよね」
「それが恋愛感情の話をしてるなら、違うよ」
「違うの?」
「死んだんだよ」
自分で否定して、余計なことを話した。
すると白井は、何かを察したかのような顔をした。
「ねぇ、最近、やっぱり何かあったでしょ」
「なにもないよ」
「おかしいよ?希くん」
「僕は普通だよ。健康調査されても、何も出てこないぐらいには普通」
そういうと、白井は「は~~っ」と溜め息を付きながら頬杖をついて、何やら首を横に振りながら前を向いた。
詮索をやめてくれるなら、何でも良かった。
「手紙、見せてって言ったよね?」
珍しく学校で和泉に話しかけられた。
「あ~~、僕は僕で忙しくて忘れてた」
素直に話す。
「私だってみたいの」
「そうな」
「ていうか、なんで君の手紙だけ届いて、私のは届いてないの?」
「僕に聞くなよ!」
そもそも、なんで手紙が届くのかもわからないし。
「最近、病んでる?」
「またそれ?」
と言うと、和泉が首を傾げた。
「私、これ言ったの初めてだけど」
珍しく色んな人と話してるから、誰と何してるか最早わからない。
「病んでないよ」
「今日、一緒に帰れる?」
断る理由もないし、了承することにした。
「手紙書くの、辛いならやめてもいいよ」
帰り道、第一声がソレだった。
「なんでそんなこと言うのさ」
「心配なんだよ、私だって」
前も聞いた気がした。
何度も言うぐらい、気にされてるなら、僕もいよいよなのかもしれない。
「心配しなくても、僕は普通だよ」
普通ってなんだろう、と少し思った。
二人してあの時みたいに黙って歩く。
それだけなのに、なんだか、和泉の考えてることが少しだけわかった気がした。
ホントに僕を、心配してるのかもしれない。
公園の中に和泉が入っていくからついていくと、ブランコの柵に座った。
周りは風の音だけ。
僕と和泉だけこの世界にいて、他は何も存在しないみたいに。
そんな中、和泉がポツポツと、細々と、話し始めた。
「希くんは、義務的になってる。彼女が生きてたら、喜ぶべきだ。連絡を取れるなら、取るべきだ。きっとそうなってる。私は瑠花ほど、君のことを知らない。でも、見てたらわかるの。それは、瑠花への愛じゃない。ただの自己愛。瑠花が死んでから……ずっとそう」
和泉が、僕の前に、勢いつけて立ち上がった。
唇が重なりそうな、そんな距離まで、一瞬、近づく。
そして、和泉の語気がだんだん強くなっていく。
「現実が愛せないから、期待出来ないから、何も誰も自分を愛しないから、自分で自分を愛しようとしてる。自分を愛して、自分が傷つくことから守ってる。だから、義務的に、マニュアルみたいに動いてる。普通の人みたいに生きようとして、勝手に普通を決めてる」
僕に聞こえるぐらい、和泉が大きく息を吸った。
和泉の感情が高まってくのを感じる。
「これ以上は見てられない。もう、瑠花に縛られないで。君を愛してくれる人は、きっと、必ず、いる。瑠花の変わりには絶対になれないけど、瑠花がもう戻ってこれないのは事実なの。私が君を、瑠花に変わって守るから。もう、自分を傷つけないで」
シン、と静まって、なんとも言えない、いや、何も言えない空気が立ちこめた。
まだ、世界には僕達二人しかいなかったけど、早く抜け出したかった。
圧倒されて、息苦しくて、言い返せなかった。
でもその息苦しいが、和泉の圧なのかなんなのか、わからなかった。
僕が瑠花を、愛していないわけがない。
だから、僕が瑠一に対して手紙を返すのは普通のこと。
もう、嫌だ。
フラフラと、和泉をほって帰った。
和泉は追いかけてこなかった。
ずっと、僕の背中を見ていた。
To.瑠一瑠花
from,吉野希
手紙が、書けない。
文字が、文が、言葉が、何も、出てこない。
やっと、気づいた。
いや、気づかされたのかもしれない。
和泉の言ってたこと、瑠一が僕に今日、手紙で言ったこと。
僕は、瑠一を愛しているんじゃない。
ただ、自分を愛していただけ。
ホントは自分でも、脳裏にはよぎっていた。
それでも、それから目を背けてた。
だから、手紙が届いたとき、現実でないことを少し願った。
もしかしたら、それと、向き合わないといけないかもしれないから。
そして僕は、ずっと、瑠一を愛している気になっていた。
僕は、優しく笑ってくれる、安心させてくれる、明るい瑠一が側にいることで、僕自身が幸せになってただけだ。
再確認。
僕は、瑠一を、愛しているんじゃない。
ア、イ、シ、テ、ナ、ン、テ、イ、ナ、イ。
それでも何故か、どうしても、瑠一に、会いたかった。
彼女に、無性に、どうしても、会いたかった……。
死んだ恋人から、手紙が届いた。
しかし、皮肉にも、その手紙で僕は、彼女のことを愛していないと、気づいた。
~love less letter~
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