二人の魔法使い ~死が二人を分かつまで~

渡邊まさふみ

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一章

襲撃

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「なに!無詠唱だと!」

 いや、今はそこじゃ無いから!

 さすが訓練された者達だ、突然の事態にも関わらず崩れない。
 精神的にもタフなのが分かる。

 いや、そんな事はどうでも良いのだが

 現場の変化に臆する事無く、風を切る音と共に放たれた矢が死角無く放たれる。
 正面を向く僕らが振り向く事なく

 ……到達する前に消し炭となる。

 指揮官が不在となった場合の指揮系統の引き継ぎも、しっかりと取り決めが行われている。
 右の剣士がすぐに声を張り上げる。
 やはり練度が高い。
 軍かもしれない。

「右に回り込め!絶対逃すなよ!」

 だから、そんな事は良いから説明を!

 物陰から二射目が放たれる。
 六人が一糸乱れず死角無く放たれる。
 しかも、先ほどよりも威力と精度が高い。
 相当の練度だ。
 恐らく軍で斥候などの訓練を受けた者だろうか。
 放たれた矢には魔力も込められている様で、威力も速度も底上げされている。
 魔力で加速された矢は倍以上のスピードで

 燃えた……

「やれやれ……相手の力量も分からず襲いかかるなど笑し!」

 師匠の杖に付いた真紅の宝玉が光を帯びる。

 いや、襲いかかったのはあなたでは……

 十五の火柱が同時に上がる。

 ……全滅です。

「何でいきなり打つんですか!
 なんか喋ろうとしてましたよね?
 黒幕吐かせるって言ったのは師匠でしょ!」

「ギャンギャン煩いなぁ」

「いやいや、いくらなんでも……
 敵じゃ無かったらどうするんですか?」

「え?敵じゃ無いの?」

 無垢な瞳で真っ直ぐ見て来る。
 これ、絶対ワザとだ。
 分かってやってる。

「殺意あったから敵ですけど……」

「ダメなの???」

「いや、ダメじゃ無いですけ……ど」

 ヤバイ言い負かされる!
 論点がおかしい。
 おかしいのだから、ちゃんと主導権を取り戻すため、言うべき事は言わないといけない。

「一瞬で全員瞬殺しましたよね!
 初撃なんて、何か喋ろうとした直後ですよ?
 目的ぐらいは聞き出すとか、やりようがありましたよね?」

「だって」

「だってじゃ無くて!」

「黒のローブが許せなくて、つい」

はい、終了!

ようやく振り絞って出した声が

「……次から気をつけて下さい」

完敗しました。

「もう一人いたよね?無力化してくれた子」

「師匠に敵意向けたので今頃、あの世で反省してると思います!」

「それが初撃じゃ無いのかな」

 あの師匠にして、この弟子

 さらに風向きが悪くなって来たので、師匠の背中を押して、この場を離れる。

 そもそも黒幕が魔術協会のマスターなのは分かっているのだから、当然このまま協会に乗り込んで、今度こそ捕獲しないといけない。

 次の襲撃に備え、少し遠回りになるが裏道をひた走る。
 人通りの多い道で襲撃され、一般人を巻き込む訳にはいかない。

「表からは俺が飛び込んで一階を制圧します。師匠は裏に逃げ道が無いか調べてから乗り込んで下さい。マスター室前で落ち合えば逃げ場はありません。良いですか?」

 いつからか戦闘モードになると俺口調になる。普段は僕なのだが、メリハリが出来るし、口調が力強くなるのも戦いでは必要だからだ。

 少し考える間を取り師匠が答える。

「基本的にはそれで構わない。危ないところを任せるが、他に抜け道が無い事は昨日調べて分かっている。魔法で裏口にロックをかけるので、私も正面に追随しよう。これなら合流まで2分とかからない」

 相手は協会のマスターだ。
 しかも魔術士が数多く出入りする魔術協会自体に乗り込むのだ。
 不測の事態に備えて、師匠が後詰めをしてくれるのは頼もしい。

 真っ直ぐで力強い眼差しで師匠がこちらを見る

「協会に悟られる前に、先に寄るところがある。
 今なら奴らを全滅させて間もない。
 少しは時間が稼げる。
 昨日、協会を調べている時に目を付けていたんだが、後の事を考えるとこちらを先に片付ける。
 付いて来い!」

 そこから一区画先に目的地はあった。

 それから数分後



 僕たちはおしゃれなカフェで紅茶とパンケーキを食べていた。
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