16 / 16
御曹司の初恋ーーお願いシンデレラ、かぼちゃの馬車に乗らないで2
4
しおりを挟む
私が抱き締めやすいように斗真さんは膝を折る。彼が芝居がかったやりとりをするのは私を素直にさせる為で、斗真さんが好きな事やお金がない事もありのまま伝えられる。
「斗真さん、好きです」
「うん、俺も姫香が好きだ。この薔薇を受け取ってくれる? 花好きの君なら一本の赤い薔薇の花言葉、知ってるよな?」
「……はい、私にも斗真さんしかいません」
薔薇を受け取ると、斗真さんから強く抱き寄せられた。
私、本当に幸せよ。そう心より感じられた時、室内に母の気配があった気がする。たぶん母は私達を祝福して微笑んでくれたのだと思う。そして父の回復を祈っていると。
ーーこうして、私の初恋は実ったのでした。
■
後日、私は鏡の前でくるり、ターンをしている。
「ねぇお父様、どこかおかしくないかしら?」
今日は斗真さんと私の婚約パーティーが催され、日本からは父が出席してくれた。当初は親しい人だけを呼ぶ計画であったが、斗真さんの秘書がパーティーを仕切った事で仕事関係者も招く運びとなり、随分大掛かりな会となる。
「おかしくなどないよ。姫香は何を着ても愛らしい」
「もうお父様ったら、私に甘いんだから!」
父はあれから容態が安定し、車椅子を使用しつつも日常生活へ戻れた。最近では現場復帰も視野に入れ、病に伏せていた期間を感じさせない程の活力で満ちている。
「姫香の花嫁衣装を見るまではと踏ん張っていたが、それだけじゃ物足りなくなってきたよ」
「当たり前です! お父様にはいつまでも元気でいて貰わなくては。この先、授かればですが家族も増えます」
伯父様や浅田さんの話は体調が完璧になったら全貌を話そうと決めている。しかしながら父も薄々は気付いているはずだ。
「新しい家族、か。それは魅力的な提案だ」
控室に斗真さんが入ってくる。ドアを開いてからコンコン、ノックをして。
今日はいつにも増して端正な顔付きと服装で、そんな含み笑いを仕掛けられるとドキドキする。
「斗真さん! お父様の前でよしてよ!」
「何だ? 言い出したのは姫香だろう?」
「私はその、お父様が寂しくないようにと」
私はイタリアに在住し、屋敷で一人暮らしをする父。皆、変わらず支えてくれてはいるものの、あの広さは持て余し寂しいはずだ。
「姫香、斗真君、二人の気遣いは本当に有り難く思っている。特に斗真さんには金銭面でかなり負担をかけて申し訳ない」
「頭を上げて下さい、お義父さん。法的には未だですが俺はあなたの息子です。家族とは支え合うものでしょう?」
車椅子の脇に片膝をつき、目線を合わせる斗真さん。
斗真さんは立場に驕ることなく、相手に寄り添うことが出来る人。私は彼を尊敬する。
「娘を宜しく頼むよ。私の大事な娘を幸せにしてやってくれ」
「はい、必ず幸せにします」
父と斗真さんが固く握手を交わすのをみ、目頭が熱くなった。
「父と握手しているのを見たら感度しちゃった。ありがとう、父に優しい言葉を掛けてくれて」
控室を出て、斗真さんと会場へ向かう。
「私以外の肉親である伯父様があんな風だから、父は孤独を感じていると思ったの。私も日本へ頻繁に帰れないし」
再会した頃より私の口調は砕け、きちんと意見も言えるようになった。
「お義父さんの研究の手伝いが出来るのは峯岸グループとしてもメリットはあるんだ。頭を下げなくたっていい。それに君も今や研究員の一人じゃないか? 妻の夢を応援してもいいよな?」
悪いはずがない。私は父の仕事を正式にサポートする研究員として迎えられた。
「だから、そういう所が好きなんです! こんな格好いい斗真さんと結婚出来るなんて、私は幸せだなぁ」
自分から手を繋ぎ、微笑む。すると珍しく斗真さんは複雑な顔を浮かべた。
「どうしたの?」
「いや、前に秘書に言われた事が過ぎってさ」
「何を言われたの?」
「『女性の言葉を額面通り受け取ってはいけません』と。この頃の姫香は素直に気持ちを伝えてくれるようになって、それはそれで嬉しいんだが、素直じゃない君も恋しいというか。あれはあれで可愛かったなと」
それはそれで、あれはあれと乾いた笑い声を出す斗真さん。
「……斗真さん、私に素直になる魔法を掛けたんじゃなかった? ふーん、そっか、素直じゃない私の方が好きなんだ?」
「あ、おい! 姫香!」
私は頬を膨らめ、手を離す。慌ててフォローしようとする斗真さんを擦り抜け、駆け出す。
幸いこのパンプスは私専用、走ってもジャンプしようと脱げないのだ。
パーティーの参列者の面々に緊張していたのが嘘みたいに心が軽くなる。
数十秒後、私の王子様が追い付いたら、ガラスの靴の履き心地を伝えてみよう。
最高に幸せですーーと。
おわり
「斗真さん、好きです」
「うん、俺も姫香が好きだ。この薔薇を受け取ってくれる? 花好きの君なら一本の赤い薔薇の花言葉、知ってるよな?」
「……はい、私にも斗真さんしかいません」
薔薇を受け取ると、斗真さんから強く抱き寄せられた。
私、本当に幸せよ。そう心より感じられた時、室内に母の気配があった気がする。たぶん母は私達を祝福して微笑んでくれたのだと思う。そして父の回復を祈っていると。
ーーこうして、私の初恋は実ったのでした。
■
後日、私は鏡の前でくるり、ターンをしている。
「ねぇお父様、どこかおかしくないかしら?」
今日は斗真さんと私の婚約パーティーが催され、日本からは父が出席してくれた。当初は親しい人だけを呼ぶ計画であったが、斗真さんの秘書がパーティーを仕切った事で仕事関係者も招く運びとなり、随分大掛かりな会となる。
「おかしくなどないよ。姫香は何を着ても愛らしい」
「もうお父様ったら、私に甘いんだから!」
父はあれから容態が安定し、車椅子を使用しつつも日常生活へ戻れた。最近では現場復帰も視野に入れ、病に伏せていた期間を感じさせない程の活力で満ちている。
「姫香の花嫁衣装を見るまではと踏ん張っていたが、それだけじゃ物足りなくなってきたよ」
「当たり前です! お父様にはいつまでも元気でいて貰わなくては。この先、授かればですが家族も増えます」
伯父様や浅田さんの話は体調が完璧になったら全貌を話そうと決めている。しかしながら父も薄々は気付いているはずだ。
「新しい家族、か。それは魅力的な提案だ」
控室に斗真さんが入ってくる。ドアを開いてからコンコン、ノックをして。
今日はいつにも増して端正な顔付きと服装で、そんな含み笑いを仕掛けられるとドキドキする。
「斗真さん! お父様の前でよしてよ!」
「何だ? 言い出したのは姫香だろう?」
「私はその、お父様が寂しくないようにと」
私はイタリアに在住し、屋敷で一人暮らしをする父。皆、変わらず支えてくれてはいるものの、あの広さは持て余し寂しいはずだ。
「姫香、斗真君、二人の気遣いは本当に有り難く思っている。特に斗真さんには金銭面でかなり負担をかけて申し訳ない」
「頭を上げて下さい、お義父さん。法的には未だですが俺はあなたの息子です。家族とは支え合うものでしょう?」
車椅子の脇に片膝をつき、目線を合わせる斗真さん。
斗真さんは立場に驕ることなく、相手に寄り添うことが出来る人。私は彼を尊敬する。
「娘を宜しく頼むよ。私の大事な娘を幸せにしてやってくれ」
「はい、必ず幸せにします」
父と斗真さんが固く握手を交わすのをみ、目頭が熱くなった。
「父と握手しているのを見たら感度しちゃった。ありがとう、父に優しい言葉を掛けてくれて」
控室を出て、斗真さんと会場へ向かう。
「私以外の肉親である伯父様があんな風だから、父は孤独を感じていると思ったの。私も日本へ頻繁に帰れないし」
再会した頃より私の口調は砕け、きちんと意見も言えるようになった。
「お義父さんの研究の手伝いが出来るのは峯岸グループとしてもメリットはあるんだ。頭を下げなくたっていい。それに君も今や研究員の一人じゃないか? 妻の夢を応援してもいいよな?」
悪いはずがない。私は父の仕事を正式にサポートする研究員として迎えられた。
「だから、そういう所が好きなんです! こんな格好いい斗真さんと結婚出来るなんて、私は幸せだなぁ」
自分から手を繋ぎ、微笑む。すると珍しく斗真さんは複雑な顔を浮かべた。
「どうしたの?」
「いや、前に秘書に言われた事が過ぎってさ」
「何を言われたの?」
「『女性の言葉を額面通り受け取ってはいけません』と。この頃の姫香は素直に気持ちを伝えてくれるようになって、それはそれで嬉しいんだが、素直じゃない君も恋しいというか。あれはあれで可愛かったなと」
それはそれで、あれはあれと乾いた笑い声を出す斗真さん。
「……斗真さん、私に素直になる魔法を掛けたんじゃなかった? ふーん、そっか、素直じゃない私の方が好きなんだ?」
「あ、おい! 姫香!」
私は頬を膨らめ、手を離す。慌ててフォローしようとする斗真さんを擦り抜け、駆け出す。
幸いこのパンプスは私専用、走ってもジャンプしようと脱げないのだ。
パーティーの参列者の面々に緊張していたのが嘘みたいに心が軽くなる。
数十秒後、私の王子様が追い付いたら、ガラスの靴の履き心地を伝えてみよう。
最高に幸せですーーと。
おわり
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
氷の公爵の婚姻試験
潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
慈悲深い天使のテーゼ~侯爵令嬢は我が道を征くつもりだ
あとさん♪
恋愛
王太子の婚約者候補に名を連ねながら、政権争いに敗れ、正式任命されなかった侯爵令嬢パトリシア。
彼女には辺境伯家との縁組が命じられた。辺境伯は毛むくじゃらの天をつくような大男で、粗野で野蛮人だと王都では噂されている。さらに独立して敵国に寝返るかもしれないと噂される辺境伯家に嫁いだら、いったいどうなるの?
いいえ、今まで被り慣れた巨大な猫を、この際、盛大に開放させましょう。
わたくしは過去の自分を捨て、本来のわたくしに戻り、思うまま生きてやります!
設定はゆるんゆるん。なんちゃって異世界。
令嬢視点と辺境伯視点の2話構成。
『小話』は、2人のその後。主に新婚さんの甘々な日常。
小説家になろうにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる