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告白

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「お前、来るの遅いぞ。もう試合終わったんだけど? ちゃんと俺のプレー観てたか?」

 場の雰囲気などお構いなしに、ユニホーム姿の涼くんがわたしの隣に並ぶ。
 掻いた汗をそのままにしているので紙袋を漁ると、中にタオルとレモンのはちみつ漬けが入っているのを覗き込まれる。

「ん、ほら」

 涼くんが屈む。

「え?」

「汗拭いて、はちみつ漬け食わせて」

「えぇ!」

「彼氏の活躍を見逃したペナルティーだ」

「だって出掛けにはちみつ漬け食べたいって言うから作ってたんだよ! 漬かりきってないけど」

 ひとまずタオルを差し出すが、涼くんは拭われるのを待つ。仕方なく額に当てると擦り寄ってきた。
 彼の体重を支えきれず姿勢が崩れかけると、腰へ手を回される。

「ちょ、ちょっと涼くんってば!」

「汗を掻いたままにしておくのは良くないだろうが。次ははちみつ漬け食いたい」

 あーん、と効果音付きで口を開け、目を閉じた。

「だ、だから漬かりきってなくて、立ったままだし、人も見てる!」

「人? あぁ、鬼の間違いじゃね? 怖いお兄様とカウンセラーが睨んでる」

 涼くんは悪戯に片目を開け、四鬼さんと先生をからかう。

「夏目君、僕の妹にセクハラは止めてくれないかな? 学園の風紀も乱れる。そもそも僕は君と桜子ちゃんの交際を認めてはいないからね!」

「別に四鬼千秋に認められなくてもいいんだけど? それにこれはセクハラじゃねぇし。鬼はスキンシップが大事なんだろ? なぁ、柊先生?」

 涼くんはわたしと歩む為に鬼を知ろうとしてくれ、吸血行動以外で活力を得る方法を先生に教えて貰った。

 オカルトやファンタジー要素を信じてこなかった涼くんだが、鬼の活力についてはすんなり受け入れて熱心だ。

「はぁ、夏目君は若いだけで技巧も無さそうですね。あなたは満足してますか? 宜しければ私がお相手しますよ。年寄りなので数はこなせませんが、その分、1回がしつこく濃厚です」

「おい見ろ、セクハラというのはこういうのを言うんだ! 桜子ちゃん耳が腐ってしまうよ、柊の言葉なんか聞いちゃ駄目だ」

 先生にすかさず突っ込みをいれる四鬼さん。まるで兄弟みたい。

 わたしは当主を拒むも、当主の立場は依然として揺るがない。四鬼さん達がわたしに寄り添う位置取りをしたが為、対立軸と見なされている。
 2人には与えられてばかり。返せるものがあればいいのに。

 ふいに先生の方と目が合った。

「あなたは人と鬼との恋、私の夢の続きを見せてくれます。それだけで充分です」

 わたしと涼くんを見守る瞳は穏やかで、少しだけ寂しそうで。

「僕も父親から解き放たれて身軽になれた。心が縛られない、軽いんだ。桜子ちゃんのお陰だと感謝しているよ」

 四鬼さんが視線を合わせ、ウィンクしてくる。軽くなった胸元を叩く仕草に指輪ははめられておらず、どうやら消えてしまったらしい。

「わたしこそ、ありがとうございます」
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