よきひと

てんてん

文字の大きさ
1 / 1

よきひと

しおりを挟む
「何で、こんな味になるのかねぇ、不思議でしようがないわ。」

「……すみません。」

そう言いながらも箸は止めず、普通に食べてる…いつもの事だ

夫は我関せずと、TVを見ながら私をかばう気配もない、まぁ、下手に口を出されたらもっと面倒くさい事になる。

そう思う事で 諦めが着いたのは、何年前だろう

日々の生活の中で、少しの気晴らしを見つけ、淡々と過ごす、そんな生活

「お義母さん、他に何かおあがりになりますか?デザートに苺がありますよ。」

「あら?良いわね苺。」

「良かった 、じゃあ今お出ししますね。お義母さん、今日も顔色が悪いから、少しでも栄養とって下さいね。」

「栄養とれないのは、あんたがマシな料理一つ出来ないせいでしょ!」

「そうですね…すみません…。」


結婚してから、ずっとこんな感じ
仲良くなれれば良かったが、私と姑の相性はかなり悪い、最近では

「あんたを嫁だと思うと、腹がたって仕方がないけど、住み込みの家政婦だと思えば腹もたたないわ。

と、笑いながら言われた

自分に正直というか、まぁ 、何が何でも私認めたくないのだろう、その気持ちはわかる。

そう思いながら  、今日も姑の部屋を掃除する
季節に合わせてカーテンを替え、家具も少し移動して、花を生ける。


天気が良いので、布団を干して
ああ、今日もお日様のおかげでふかふかだ、良い気持ちで眠れるだろう。

思わず、笑がこぼれた



夜ご飯の時、旦那と姑に、家の立て直しを提案してみた、姑は最近足腰が弱ってる、生活しやすい様に改築しないかと

私も、階段は、今も怖い


「嫌よ、新しい家何て!ここはお父さんが立てた思い出のある家なの!絶対嫌。」

「でもさ、母さん階段も最近キツいって言ってたじゃん、将来の事も考えて今のうちに改築しようよ。」
「子供の事も考えて、いっそ新築しちゃおうか。」

旦那はかなり乗り気で、ニコニコと笑顔で提案した、その時

「子供何て出来る訳ないでしょ!1回流れてからもう何年たってんのよ!」

その言葉に、シン……と一瞬空気が冷えた


「……うん 、やっぱり新築しちゃおう!うん!それが良い!いいよね?母さん!」


旦那の笑顔に、お義母さんはもう何も言わなかった。本当に、顔色が悪くなっていた

「お義母さん、お疲れですか?顔色が悪いです 、お布団しきますから今日はもうお休みになった方が…。」

そう、声をかけると義母はノロノロと頷いた

家の事に対しても、子供の事に関しても
まだまだ言いたい事があるみたいだが、今は不味いと解っているのだろう。

不機嫌だという空気をまとわせて、お義母さんは床についた

「あんたのせいだからね、全部あんたが悪いんだから。」

「……そうですね…すみません。」


強く、目を閉じる




その夜の出来事で決心がついたのか、旦那は家の新築をどんどん進めて行った

久しぶりに二人で出掛け、夜はどういう家にしようかと二人で話し合い 
「…いつも、ありがとう…ごめんな。」

と、しみじみと言われてしまった、今更何言ってるのと、笑ってしまった。




そして無事家の工事は終わり、新しい家での生活が始まった一年後




お義母さんは、亡くなった




死因は肺炎

体力がおちていたのか 、あっという間だった。







……まさか、本当に死ぬとは






私と義母は、こう言ってはなんだが 、本当に相性が悪かった
何でも思った事を口に出す、自分のしたい事しかしたくない、義母

人付き合いを考えて、必要ならば口を噤むけれど、自分のしたい事はしたい私
同性の友人ならば、もしかしたら仲の良い友人になれたかもしれないが

私達は、間に夫を挟んだ、嫁と姑だった



別居して距離を保てば良かったのだが、強硬に同居を希望された。


旦那も、同居して親孝行をしつつ、新居の費用を貯めたいと、提案してきて最後は頷くしかなかった。

最初はそれでも上手く同居できればと、私も努力はしたのだ…まぁ、「努力」という時点で、ダメだったんだろう。
掛け違えた関係で生活する日々の中、それでも変化は起きて 。

私の妊娠で、何かが変わると思った

そして変わった、変わってしまった

あの日、洗濯物を抱えて階段を降りようとした時  「 トン 」と軽く背中を押された


街中で、学校で、友達にする様に、軽く


凄い音がして、最初にわかったのは板張りの廊下の感触
体はもう、何処がどう痛いのかわからない
それでも、ノロノロと顔をあげた階段の上

私の背を押した格好のまま、無表情で私を見下ろす義母がいた。

その日からさらに、私達の関係は歪んだ

義母は、罪悪感を誤魔化す為だろう、自分のせいじゃない、しっかり歩いてないあんたが悪い

「あんたの不注意で、孫が死んだ!あんたの所為だ!」



そう言われた時に、私の気持ちは決まった





…ところであまり人に「顔色が悪いですよ」とか、「具合悪い?」とか、言わない方が良いらしい。
言われすぎると、人によっては本当に具合が悪くなってしまうそうだ。

自己暗示にしても、ストレスにしても、続けば確かに、どこかしら悪くしてしまう可能性が高い。

だから、私は毎日お義母さんに声をかけた
「大丈夫ですか?」「顔色が悪いですよ」
「お疲れですか?」

そして、高齢の方がにしてはいけない事の一つに「望まない環境の変化」がある

部屋の模様替え、家具の位置替えなど頻繁にやると、これもストレスになるらしい
あと、干した布団は温かいせいか、汗をかきやすいのでお年寄りは、脱水症状に気をつけた方が良いそうだ。

だから、毎日してあげた

そして最もしてはいけない「環境の変化」は、「家の建て替え、または引越し」
本人が望んでいれば、その限りではないが
嫌がっている時は、止めた方が良いそうだ

だから、してやった

本気で信じた訳じゃないが「そうなったら良いな。」と毎日思っていた。
それを楽しみに、日々を淡々と過ごした


だって、それが殺意からくる行為でも、傍から見れば、只の姑孝行だもの
姑の身体を気遣って、部屋を毎日快適にして、家も過ごしやすい様に建て替えて

実際、近所の奥さんにも褒めて頂いた

「よくもまぁ、あんな姑さんに尽くせるね、人が良すぎるよ。」って


当たり前だ、あんな奴に憎悪を向けて、同じ土俵に乗って何かやるものか

罪悪感だって持ちたくない、だから私は


お義母さんを気遣っただけ



姑孝行したけど、無駄になった



只、それだけ












しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

(完)そんなに妹が大事なの?と彼に言おうとしたら・・・

青空一夏
恋愛
デートのたびに、病弱な妹を優先する彼に文句を言おうとしたけれど・・・

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...