ガチホモ悪役令嬢に転生する

てんてん

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第三部 そして動き始める

白い子の世界にあるもの

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「では、寝るとしますか。」

フロルちゃんから貰ったギターを、横に寝かせる 、もしかしたら夢に持って行けるかもしれない。

あの夢が、只の夢じゃ無いと知ってから、初めての就寝だ、ちょっと緊張するが

でも、目下の目的はあの世界でも、彼女が健やかにあれる状態を作る事だろう。

あの、灰色の世界が彼女の夢ならば
あの風景は、彼女の精神状態と言う事だ

灰色のカラーイメージは、ネガティブな方なら「不安」「不信」「憂鬱」「寂しさ」

などだが、ポジティブな方は
「調和」「鎮静」「幻想」「柔らかさ」

というものがある、悪い意味ばかりじゃないが、だけど他の色も欲しいじゃないか

そんな事を想っているうちに、気がつけば眠りに落ちていた。


目を開けると、相変わらずの灰色の空、手にはギターを握っていた。やったぜ

彼女は?と、いつものテーブルを見ると

…いた…けど…。

なんでこっちに背中向けて座ってるの?!
「どしたの?!」と、思っていたら
かなり不機嫌な声で

「…産まれっぱなしって、なに?」
と聞かれた、あちゃー(汗

これは、真面目にお話しなければ

「ええと、ちゃんと説明するから、こっち向いて?」

話かけてみるが、こちらを向く気配は無い

「"ウィルミナ"」

そう呼ぶと、弾かれた様にこちらを向いた
俺を映すのは、紫から青へと色を変える
夜明けの瞳

そして青みがかった淡い光を弾き
今は地に着くほどに伸びた銀色の髪

だが身に纏う空気は、あどけないはずの幼い姿に反比例して、煌々と凍てつく様なものだった。

毎日鏡で見てるはずなのに、とぼけた顔の俺とは全然違う

威風堂々とした、ハイエルフの姫がそこにいた。

改めて挨拶しようか

「こんばんは初めましてウィルミナ。」

俺が挨拶すると、怒っていたはずの彼女の瞳が、狼狽の色に染まり大きく見開かれる

「……え?なんで、私?」

…どうやら、彼女も俺の顔が見えなかったみたいだった。

傍により、彼女と向かい合う

すげぇ、今なら鏡コントが出来そう!
まぁ、それは置いといて

「君も、俺の顔が見れなかったの?」

そう尋ねると

「…ええ、今まで貴女は、白い影法師みたいに見えてたわ。」

「俺も今まで 、君と同じ様に見えてた、びっくりだよね。」

「そうね、怒っていたのが吹き飛んだわ」

2人目をそらさずに、話をする

「貴女、何者なの?」

「それは俺も聞きたいけど…最初にここに来た時は、君の事シャドウだと思ってた。」

彼女はぴくりと、眉を釣り上げて"それは何?"と、少し物騒な声で聞いてきた

「シャドウって言うのは、夢の中で見る人物の事だね、自分の側面の1つだったり、自分のアドバイザーだったりするヤツ。」

夢って本来は、自分の深層心理が出るものだからさ、夢診断なんてのがある位だよ

「そんなものがあるの?」

俺の話に、あっという間に彼女の関心はそちらに移る。自分でやっといて何だが、この子大丈夫じゃろか…。

「うん、時々"え?これがそんな意味なの?!"ってやつがあるよ。」

「例えば、夢に出てくる猫は身近にいる敵の象徴とか、森、大樹、泉、海、熊はグレートマザー、母親の象徴とかね。」

俺の言葉に、ウィルミナは周りを見回す

「そうだと言うなら、私の中って何にも無いのね。」

「え?何言ってんの、あるじゃん。」

そう言って、テーブルと椅子を指さす、そこには相変わらず、お茶も乗っていた

「…アレにも、意味があるの?」

「あるよ、テーブルは家族や親しい人との関係、椅子はその人の存在価値やポジション、お茶は心が安定して穏やかな事の暗示…君にとってこの世界は、居心地がいい場所なのかな?」

夢に出るテーブルは、立派である程、家族関係の良好さを表している。

そして椅子も座り心地が良ければ、今の自分に満足してるという事らしい。

だからつい、聞いてしまったのだが

俺の言葉に彼女は、言いづらそうに言った

「…正直、貴女が脳の話をするまでは、不自由と思って無かったわ。」

…だろうなぁ

「どうする?緑化計画やめた方が良い?」

本人の意に反するのは、良くないし、無理せんでいいんやで?
だが彼女は、ふるふると首を振り

「ううん、お花も木もまた見たい。」

妙に稚い声でそう言った

「貴女が今日歌っていた歌を聞いていたら、領地の森を思い出したの。」

ああ…スカボローフェアかな?

それを聞いて、ギターを爪弾く見ると、ウィルミナも目を閉じて聴き始めた。

パセリ、セージ、ローズマリー、タイム

古い古いバラッド、歌い続けているウチに目に見えて、変化が起きてくる。

周りの地面に緑見え始めた、緩やかに灰色の世界が緑に変わってゆく

そして周りは、俺にとっても懐かしい
領地の景色に変わっていた。

子供の頃にお母様と暮らした、別邸の周りだ、きっと俺の後ろにはあの大樹が生えた、お母様の屋敷があるのだろう。

緩やかに風が吹く

曲が終わると、ウィルミナは目を開けて
ゆっくり周りを見回して、ぽつりと呟いた

「…懐かしいわ、お母様の家は確かにこんな感じの奇妙な家だったわね。」

本当に懐かしそうに目を細める

「思い出すわ、お母様と二人で暮らしていたあの頃が、一番心安らかだった。」

見た事の無い、大人びた顔で彼女は微笑む

「だから私は"此処"にいたのね。」

自分の心が怒りに支配される事も、他人を蔑み憎む事も無かった子供の頃

自分が"何処"にいるのか、彼女が認識した瞬間だった。
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