ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴

文字の大きさ
10 / 45
探索者入門

孫とダンジョン①

しおりを挟む
 あれから一週間。
 警察側が法整備を整え、出入りするための講習会を設けた。
 興味本位で出入りする人々を限定するための免許制だ。

 ダンジョンの出入り口には専用の施設を設け、ダンジョン内で入手したアイテムを換金することを最初に条件として設けた。

 日本政府も使えないゴミであろうと最初は身銭を切るつもりでの出資。
 なるべくなら棒に振りたくないという思いが優ったのか、なるべくなら持ち帰る優先度をつけようと免許にランクをつける事にしたようだ。
 今はまだ、上限を決めていないが。
 今後入手したアイテム次第では上限を決めるような口ぶりでルールを決めていた。

 講習を終えた私たちが手渡された免許にはスライムの絵が描かれている。
 スライム級、ということだろう。
 最初は青色、ランクが上がるごとに入りが挙げっていくのだと思う。
 最上級はゴールドか?
 面白い試みだと思った。


「それにしても……」


 講習会場内をざっと見回す。
 

「どうしたの? お爺ちゃん」

「思ったよりも混み合わなかったなって」

「時間の都合もあったんじゃないの? 色んな憶測も飛び交ってたし」


 孫娘の美咲は、掲示板で仕入れた情報を精査して語ってくれた。
 とあるゲームではすっかり上位プレイヤーの一人として有名人である孫は、現実のダンジョンにも果敢に挑戦すると宣言して、それなりに賛同を得られていた。
 たまたま参加日が合わなかったと言ってしまえばそれまでだ。


「そうだね、順番もそこまで待たなくて良さそうだ。松明は持ったかい?」

「今日はお父さんとお母さんにたくさん土産話を持って帰ろうな?」

「うん!」


 本日の講習会も、ダンジョンアタックの方も娘夫婦は都合が合わずに急遽孫と二人で来ることになってしまった。
 思った以上に人が集まらなかった原因が何かあるのだろう。
 情報社会で育った若者達が多く占めるのもあり、泥臭い手探りの作業を嫌っているのわ分かるのだが、今まで培ってきた技術が使えない以上それに頼るしかないというのにね。


「これはこれは笹井さん。本日もアタックですか?」

「や、今川さん。実は孫と一緒にアタックしようと約束してまして。本当は娘夫婦も予定してたんですが都合がつかなくなって」

「そうだったんですね。笹井さんなら大丈夫だと思いますが、既に数組入っています。途中休憩場をいくつか設けましたので、休み休みお進みください」

「ダンジョンで商売する以上、手はかけるか」

「そんなつもりは毛頭ございませんよ。ただ、モンスター以上に厄介なのが同じ人間ですから。こちらはタイ人のプロフェッショナルです。休憩所には我々レベルを上げた警察官が張り込んでおりますので、下手なことはさせませんとだけ」


 微に入り細に入りという奴だ。
 私達は今川さんと別れて、ダンジョンの奥に進んだ。


<始まりのダンジョン・五階層/難易度☆☆☆☆>


「あ、ゲームっぽい」

「ね」


 当時縦穴だったダンジョンの入り口は、工事が進んでなだらかなスロープになっていた。
 おかげでパターゴルフのコースは丸々潰されてしまったが、新しき建物を建てた時点でゆくゆくはゴルフ場そのものが潰されるのも時間の問題だ。
 憩いの場が消えるのに一抹の寂しさを感じながら、私は孫をサポートした。

 ダンジョンの入り口で手渡されたのは胸につけたブローチに手袋、ブーツ。
 武器はナイフかショートソード、棍棒と扱いやすいものが揃えられている。
 重さよりも取り回しの良さが多いのは、武器の強化次第で威力が決まるから、そこに殺傷能力をつけないことに終始したのだろう工夫が見られた。

 ブローチはほんのりと淡い光を湛えている。
 それでその人の胸から上が映し出される仕掛けだ。
 レベルが上がるまではそれで位置確認してもらおうという配慮だろう。
 手袋やブーツにも同様の仕掛けが施されていた。
 それで手元、足元を照らすのだ。
 手をついた位置、足元の安全性を周囲に知らしめるのに一役買った。

 ただ、もちろんの事これはダンジョン内のモンスターにも丸見えなので奇襲はできない。あくまでチュートリアル期間の配慮という形だった。


「ボール! とは違うね、ショゴスかな?」


 美咲がスライムを見つけて私と同じ解釈をした。


「あれはスライムだよ。ほら、免許にもついてる」

「あれがスライムなんだねー。じゃあ攻撃してみるね!」


 言うが早く早速行動。
 美咲はゲームと同様にナイフをクルクルと回しながらスライムを片足で蹴り上げ、いい高さに合わせて両手のナイフで数回切りつけた。
 上手い!
 そう言うスキルがある訳でもないのに、抜群の戦闘センスで圧倒する。

 周囲で見ていた人達から拍手を貰った。
 ければ良いのか、と得心がいったように皆が孫の真似をするようになった。
 あれはあれで結構テクニックがいるけど大丈夫なのかなと心配しつつレベルアップの確認をする。


「レベル上がった! 風斬【風・斬】3回攻撃がスキルに入ったよ。あとは蹴り上げ【打】だって」

「凄いね、いっぺんに二つも」

「次、お爺ちゃんの番ね?」

「うまくできるかな?」

「大丈夫だよ、お爺ちゃんなら!」


 これも信頼の賜物だね。
 多少信頼されすぎな気もするけど、周囲からの乾いた期待の目を向けられる中、私は愛用のパタークラブを軽めに当てた。


「上手!」

「まだ当てただけさ」


 キンッと甲高い音を出してスライムはコロコロ地面を転がった。
 スキルクリティカルが上手い具合にヒットしたのだろう。
 一打、二打。最後に大振りで討伐する。
 その姿を見ていた人達からまばらに拍手を貰った。

 まさかパタークラブで討伐するとは思わなかったのだろう。
 実際に扱いやすさで言えば、小さい的を打つのに理にかなってるんだよね?
 野球が得意ならバットでも良いと思うけど、地面にあるものを打つならゴルフクラブに勝るものはないと思うよ?
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流
ファンタジー
俺、臥龍臼汰(27歳・独身)はある日自宅の裏山に突如できた洞窟を見つける。 語り掛けてきたアドバイザーとやらが言うにはそこは何とダンジョン!? で、探索の報酬としてどんな望みも叶えてくれるらしい。 ならば俺の願いは決まっている。 よくある強力無比なスキルや魔法? 使い切れぬ莫大な財産? 否! 俺が望んだのは「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」という願望。 万全なサポートを受けながらダンジョン探索にのめり込む日々だったのだが…何故か元居た会社の後輩や上司が訪ねて来て… チート風味の現代ダンジョン探索記。

部屋で寝てたら知らない内に転生ここどこだよぉぉぉ

ケンティ
ファンタジー
うぁー よく寝た さー会社行くかー あ? ここどこだよーぉぉ

処理中です...