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探索者入門
孫とダンジョン①
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あれから一週間。
警察側が法整備を整え、出入りするための講習会を設けた。
興味本位で出入りする人々を限定するための免許制だ。
ダンジョンの出入り口には専用の施設を設け、ダンジョン内で入手したアイテムを換金することを最初に条件として設けた。
日本政府も使えないゴミであろうと最初は身銭を切るつもりでの出資。
なるべくなら棒に振りたくないという思いが優ったのか、なるべくなら持ち帰る優先度をつけようと免許にランクをつける事にしたようだ。
今はまだ、上限を決めていないが。
今後入手したアイテム次第では上限を決めるような口ぶりでルールを決めていた。
講習を終えた私たちが手渡された免許にはスライムの絵が描かれている。
スライム級、ということだろう。
最初は青色、ランクが上がるごとに入りが挙げっていくのだと思う。
最上級はゴールドか?
面白い試みだと思った。
「それにしても……」
講習会場内をざっと見回す。
「どうしたの? お爺ちゃん」
「思ったよりも混み合わなかったなって」
「時間の都合もあったんじゃないの? 色んな憶測も飛び交ってたし」
孫娘の美咲は、掲示板で仕入れた情報を精査して語ってくれた。
とあるゲームではすっかり上位プレイヤーの一人として有名人である孫は、現実のダンジョンにも果敢に挑戦すると宣言して、それなりに賛同を得られていた。
たまたま参加日が合わなかったと言ってしまえばそれまでだ。
「そうだね、順番もそこまで待たなくて良さそうだ。松明は持ったかい?」
「今日はお父さんとお母さんにたくさん土産話を持って帰ろうな?」
「うん!」
本日の講習会も、ダンジョンアタックの方も娘夫婦は都合が合わずに急遽孫と二人で来ることになってしまった。
思った以上に人が集まらなかった原因が何かあるのだろう。
情報社会で育った若者達が多く占めるのもあり、泥臭い手探りの作業を嫌っているのわ分かるのだが、今まで培ってきた技術が使えない以上それに頼るしかないというのにね。
「これはこれは笹井さん。本日もアタックですか?」
「や、今川さん。実は孫と一緒にアタックしようと約束してまして。本当は娘夫婦も予定してたんですが都合がつかなくなって」
「そうだったんですね。笹井さんなら大丈夫だと思いますが、既に数組入っています。途中休憩場をいくつか設けましたので、休み休みお進みください」
「ダンジョンで商売する以上、手はかけるか」
「そんなつもりは毛頭ございませんよ。ただ、モンスター以上に厄介なのが同じ人間ですから。こちらはタイ人のプロフェッショナルです。休憩所には我々レベルを上げた警察官が張り込んでおりますので、下手なことはさせませんとだけ」
微に入り細に入りという奴だ。
私達は今川さんと別れて、ダンジョンの奥に進んだ。
<始まりのダンジョン・五階層/難易度☆☆☆☆>
「あ、ゲームっぽい」
「ね」
当時縦穴だったダンジョンの入り口は、工事が進んでなだらかなスロープになっていた。
おかげでパターゴルフのコースは丸々潰されてしまったが、新しき建物を建てた時点でゆくゆくはゴルフ場そのものが潰されるのも時間の問題だ。
憩いの場が消えるのに一抹の寂しさを感じながら、私は孫をサポートした。
ダンジョンの入り口で手渡されたのは胸につけたブローチに手袋、ブーツ。
武器はナイフかショートソード、棍棒と扱いやすいものが揃えられている。
重さよりも取り回しの良さが多いのは、武器の強化次第で威力が決まるから、そこに殺傷能力をつけないことに終始したのだろう工夫が見られた。
ブローチはほんのりと淡い光を湛えている。
それでその人の胸から上が映し出される仕掛けだ。
レベルが上がるまではそれで位置確認してもらおうという配慮だろう。
手袋やブーツにも同様の仕掛けが施されていた。
それで手元、足元を照らすのだ。
手をついた位置、足元の安全性を周囲に知らしめるのに一役買った。
ただ、もちろんの事これはダンジョン内のモンスターにも丸見えなので奇襲はできない。あくまでチュートリアル期間の配慮という形だった。
「ボール! とは違うね、ショゴスかな?」
美咲がスライムを見つけて私と同じ解釈をした。
「あれはスライムだよ。ほら、免許にもついてる」
「あれがスライムなんだねー。じゃあ攻撃してみるね!」
言うが早く早速行動。
美咲はゲームと同様にナイフをクルクルと回しながらスライムを片足で蹴り上げ、いい高さに合わせて両手のナイフで数回切りつけた。
上手い!
そう言うスキルがある訳でもないのに、抜群の戦闘センスで圧倒する。
周囲で見ていた人達から拍手を貰った。
ければ良いのか、と得心がいったように皆が孫の真似をするようになった。
あれはあれで結構テクニックがいるけど大丈夫なのかなと心配しつつレベルアップの確認をする。
「レベル上がった! 風斬【風・斬】3回攻撃がスキルに入ったよ。あとは蹴り上げ【打】だって」
「凄いね、いっぺんに二つも」
「次、お爺ちゃんの番ね?」
「うまくできるかな?」
「大丈夫だよ、お爺ちゃんなら!」
これも信頼の賜物だね。
多少信頼されすぎな気もするけど、周囲からの乾いた期待の目を向けられる中、私は愛用のパタークラブを軽めに当てた。
「上手!」
「まだ当てただけさ」
キンッと甲高い音を出してスライムはコロコロ地面を転がった。
スキルクリティカルが上手い具合にヒットしたのだろう。
一打、二打。最後に大振りで討伐する。
その姿を見ていた人達からまばらに拍手を貰った。
まさかパタークラブで討伐するとは思わなかったのだろう。
実際に扱いやすさで言えば、小さい的を打つのに理にかなってるんだよね?
野球が得意ならバットでも良いと思うけど、地面にあるものを打つならゴルフクラブに勝るものはないと思うよ?
警察側が法整備を整え、出入りするための講習会を設けた。
興味本位で出入りする人々を限定するための免許制だ。
ダンジョンの出入り口には専用の施設を設け、ダンジョン内で入手したアイテムを換金することを最初に条件として設けた。
日本政府も使えないゴミであろうと最初は身銭を切るつもりでの出資。
なるべくなら棒に振りたくないという思いが優ったのか、なるべくなら持ち帰る優先度をつけようと免許にランクをつける事にしたようだ。
今はまだ、上限を決めていないが。
今後入手したアイテム次第では上限を決めるような口ぶりでルールを決めていた。
講習を終えた私たちが手渡された免許にはスライムの絵が描かれている。
スライム級、ということだろう。
最初は青色、ランクが上がるごとに入りが挙げっていくのだと思う。
最上級はゴールドか?
面白い試みだと思った。
「それにしても……」
講習会場内をざっと見回す。
「どうしたの? お爺ちゃん」
「思ったよりも混み合わなかったなって」
「時間の都合もあったんじゃないの? 色んな憶測も飛び交ってたし」
孫娘の美咲は、掲示板で仕入れた情報を精査して語ってくれた。
とあるゲームではすっかり上位プレイヤーの一人として有名人である孫は、現実のダンジョンにも果敢に挑戦すると宣言して、それなりに賛同を得られていた。
たまたま参加日が合わなかったと言ってしまえばそれまでだ。
「そうだね、順番もそこまで待たなくて良さそうだ。松明は持ったかい?」
「今日はお父さんとお母さんにたくさん土産話を持って帰ろうな?」
「うん!」
本日の講習会も、ダンジョンアタックの方も娘夫婦は都合が合わずに急遽孫と二人で来ることになってしまった。
思った以上に人が集まらなかった原因が何かあるのだろう。
情報社会で育った若者達が多く占めるのもあり、泥臭い手探りの作業を嫌っているのわ分かるのだが、今まで培ってきた技術が使えない以上それに頼るしかないというのにね。
「これはこれは笹井さん。本日もアタックですか?」
「や、今川さん。実は孫と一緒にアタックしようと約束してまして。本当は娘夫婦も予定してたんですが都合がつかなくなって」
「そうだったんですね。笹井さんなら大丈夫だと思いますが、既に数組入っています。途中休憩場をいくつか設けましたので、休み休みお進みください」
「ダンジョンで商売する以上、手はかけるか」
「そんなつもりは毛頭ございませんよ。ただ、モンスター以上に厄介なのが同じ人間ですから。こちらはタイ人のプロフェッショナルです。休憩所には我々レベルを上げた警察官が張り込んでおりますので、下手なことはさせませんとだけ」
微に入り細に入りという奴だ。
私達は今川さんと別れて、ダンジョンの奥に進んだ。
<始まりのダンジョン・五階層/難易度☆☆☆☆>
「あ、ゲームっぽい」
「ね」
当時縦穴だったダンジョンの入り口は、工事が進んでなだらかなスロープになっていた。
おかげでパターゴルフのコースは丸々潰されてしまったが、新しき建物を建てた時点でゆくゆくはゴルフ場そのものが潰されるのも時間の問題だ。
憩いの場が消えるのに一抹の寂しさを感じながら、私は孫をサポートした。
ダンジョンの入り口で手渡されたのは胸につけたブローチに手袋、ブーツ。
武器はナイフかショートソード、棍棒と扱いやすいものが揃えられている。
重さよりも取り回しの良さが多いのは、武器の強化次第で威力が決まるから、そこに殺傷能力をつけないことに終始したのだろう工夫が見られた。
ブローチはほんのりと淡い光を湛えている。
それでその人の胸から上が映し出される仕掛けだ。
レベルが上がるまではそれで位置確認してもらおうという配慮だろう。
手袋やブーツにも同様の仕掛けが施されていた。
それで手元、足元を照らすのだ。
手をついた位置、足元の安全性を周囲に知らしめるのに一役買った。
ただ、もちろんの事これはダンジョン内のモンスターにも丸見えなので奇襲はできない。あくまでチュートリアル期間の配慮という形だった。
「ボール! とは違うね、ショゴスかな?」
美咲がスライムを見つけて私と同じ解釈をした。
「あれはスライムだよ。ほら、免許にもついてる」
「あれがスライムなんだねー。じゃあ攻撃してみるね!」
言うが早く早速行動。
美咲はゲームと同様にナイフをクルクルと回しながらスライムを片足で蹴り上げ、いい高さに合わせて両手のナイフで数回切りつけた。
上手い!
そう言うスキルがある訳でもないのに、抜群の戦闘センスで圧倒する。
周囲で見ていた人達から拍手を貰った。
ければ良いのか、と得心がいったように皆が孫の真似をするようになった。
あれはあれで結構テクニックがいるけど大丈夫なのかなと心配しつつレベルアップの確認をする。
「レベル上がった! 風斬【風・斬】3回攻撃がスキルに入ったよ。あとは蹴り上げ【打】だって」
「凄いね、いっぺんに二つも」
「次、お爺ちゃんの番ね?」
「うまくできるかな?」
「大丈夫だよ、お爺ちゃんなら!」
これも信頼の賜物だね。
多少信頼されすぎな気もするけど、周囲からの乾いた期待の目を向けられる中、私は愛用のパタークラブを軽めに当てた。
「上手!」
「まだ当てただけさ」
キンッと甲高い音を出してスライムはコロコロ地面を転がった。
スキルクリティカルが上手い具合にヒットしたのだろう。
一打、二打。最後に大振りで討伐する。
その姿を見ていた人達からまばらに拍手を貰った。
まさかパタークラブで討伐するとは思わなかったのだろう。
実際に扱いやすさで言えば、小さい的を打つのに理にかなってるんだよね?
野球が得意ならバットでも良いと思うけど、地面にあるものを打つならゴルフクラブに勝るものはないと思うよ?
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