ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴

文字の大きさ
14 / 45
探索者入門

ダンジョン需要①強化アイテム

しおりを挟む
「いやぁ、終わった終わった」

「お疲れ様、お爺ちゃん!」

「美咲もお疲れ様。イエイ」

「イエイ」


 孫とハイタッチしてると、先ほど分かれ道でお別れした四人組がこっちにやってきた。


「やぁ、先ほどの。奇遇ですね」

「奇遇って。あんたらあれからどこいってたんだ?」

「どこ、とは?」


 四人組はこちらをまるで迷子の子供のように捜索していたような態度である。
 ただ別行動しただけなのに意味がわからない。


「あなた達ですか! 行方不明者とは」

「行方不明?」


 四人組の他に警察の制服を纏う女性が怒鳴り込んで孫が反応した。


「どういう事だろうね?」

「さぁ?」


 私は孫と顔を突き合わせて首を捻った。
 
 彼女、警察官の大判さんはY字路で別れた四人組と休憩所で遭遇し、そこで私たちが別の方向へ行ったと聞きつけて現場に駆けつけたという。
 なぜそんなことを行ったかといえば、事前調査では奥の通路であるボス部屋まで一本道で脇道など存在しないと言うことだった。
 だというのにボスが強すぎる事から、ここの階層はしばらく素材取りの場になるだろうと決めていたそうだ。

 それを私達がクリアしてしまった事から中にいた人が全員表に出されてしまったという。
 それを私達の所為にされてもね。
 自分たちの予定通りにならないからって責められる言われはない。


「それはご愁傷様でした。しかしね、こちらとしたって隠し通路がどうとか言われてもよくわからないよ。ねぇ?」

「うん。私達は普通に分かれ道で別れただけです。自分たちが見つけられなかったことを棚に上げて私達を責めるのは筋違いな気がします」

「くっ、正論だわ」

「いや、こっちとしては無事ならそれでいいんだ。途中でここは一本道だって言われたから俺達も焦っちゃってさ。それにしてもよくあんな化け物倒せたな。物理攻撃通用しなかったろ? 俺らも戦ったが、これは無理だって途中で撤退したんだ。なぁ?」


 こくこくと頷くほか三名。
 となると、事実確認を焦ってるのは警察の方か。


「そういえば、大判さん。同じ管轄の今川巡査をご存知ですか?」

「今川先輩ですか? ってまさか貴方は!」

「今川さんってさっきの人?」

「うん。パターゴルフ中に仲良くなってね。一緒にどうですって誘ってダンジョンに潜った。その程度の仲さ」

「では、貴方が先輩の言っていた先駆者の!」

「私だけではないけどね」


 四人組が先駆者? という顔で私を見た。
 何故か孫がドヤ顔をしている。
 あんまりそんなポーズ取ってるとスキルが生えるよ?
 私なんて身に覚えのないスキルがわんさか生えて困ってるんだから。

 私が先駆者である事、分かれ道で出会したモンスターについての情報の提供をする。四人組が食いついたのは武器グレードの上昇アイテム。
 情報では目にしたものの、実物を見たことがないようだったので査定に回すのを見せることにした。
 もちろんあげない。欲しければ自分で探しなさい。
 私はそこまでお人好しではないからね。


「すげ、武器グレードを上げたらあの硬いモンスターまでバターを切るようにいけるのかよ!」

「そうよ、発見したのはお爺ちゃんだから私は全然凄くないけどね」

「爺さん、ただモンじゃねーとは思ってたけど……」


 ハッハッハ。思ってもないことを口にしなくたっていいよ?
 君たちの視線は孫に釘付けだったじゃないの。


「さて、大判巡査にはこちらを。新規ドロップ品と新いモンスターの概要、そしてドロップ品同士の変わった使い方。そこから先は君たちの仕事だよ。情報は出すけど私の名前は出さないようにね?」

「こ、こんなにたくさんの情報を頂けたのにさらに匿名にするのですか?」

「私は君たちよりも先に死ぬ。これからの時代を担う君たちの活躍の機会を奪う真似はしたくないんだよ」

「笹井さん……わかりました。今はこの情報をありがたく頂戴します。いつかこれに負けないくらいの情報で埋めてみせますから!」

「期待してるよ、大判さん。あと、あまりを焦りすぎないように。一歩づつ、たまには立ち止まって足元を見てみなさい。案外そこに打開できる一手が転がってるモンだ。若い力を私に見せてください」

「はい!」


 見事な敬礼だ。さすが本職だね。付け焼き刃の長井くんのとは大きく異なる。


「さて、君たちはストリーマーだったね」

「俺たちを知ってるんですか?」

「いや、ついさっき知ったんだ。そしてこっちの道に入った理由はこれかな?」


 人差し指と親指で輪っかを作る。
 要は金か、と促したら案の定だった。
 ならば、とコネクションを総動員して宣伝に回る。
 要は彼らを広告塔に仕立て上げるつもりだ。

 若い発信力は力だ。
 それなりに数字を持っている。
 問題はまだダンジョンそのものに魅力がない点か。
 孫を広告塔に据えることも考えたが、孫はまだ高校生だ。
 彼ら四人組ほどの自由はない。
 ならば、という事でスポンサーをつけた。

 脳内チップでコールを鳴らす。
 受け取った相手は心底嫌そうな声で応じてくれた。


「いやぁ、お久しぶりです。寺井さん。そろそろ若い人材が欲しい頃じゃないですか?」

『若い力なら足りてますよ。なんですか、藪から棒に。あなたはいつも突然だ』

「実はですね、ダンジョンで将来有望そうな若者、要はストリーマーに出逢いまして。後押ししたいからスポンサーになってくれないかなって」

『武器を融通しろと? こっちの都合も考えずにいきなりですね。そもそもどんな相手かも分からず審査する前に金を出せとは随分と勝手だ。そう言うところですよ?』

「そうだね、彼らの価値を並べるならレベル10以内で光苔とそれの上位互換である水晶を採取可能だ」

『ほう……つまり優先的にその素材が我が社に入ると?』

「そりゃスポンサーになってくれたらの話です。あーあ、レベルを上げるのに夢中になってチュートリアルをさっさと終えた頭打ちの探索者ばかり抱えてそうな寺井さんに朗報だと思ったんだけどなー。どうしても嫌だと言うなら流石にこちらも無理にとは言いません、この話はなかったと言うことで……」

『分かった、わかりました! 流石にこの場では判断できませんので、後日面会ということで良いですか?』

「オッケーです。じゃ、そう言うことで」


 コールを切り、四人組に許可取れたよ、とジェスチャーを送る。


「本当にスポンサーになってくれるのか? 言っとくが俺たちまだ言うほど数字取れてねーぞ?」

「数字上はそうでしょうけど、私は君たちが思ってる以上に価値を見出している。さっき水晶を見せたよね?」

「え? ああ」


 コールを切ったら再びダンジョンへ。
 そして答え合わせにするようにとある場所に足を運ぶ。
 モンスターはスライムのみ。
 だがそこかしこに光苔やら水晶の採掘ポイントがそこかしこにある。

 これは私の見立てだが、チュートリアル状態の探索者は、自分から仕掛けない限りモンスターに攻撃されないと言う憶測。
 実際に孫は自分から仕掛けてたが、私が釣ったモンスターに攻撃されることは一度もなかった。

 そして見つけにくいと言われる光苔。
 この手の採掘系は一度発見したか、アイテムを手にしたことがある人が知覚することでようやく共有されるものだと思っている。


「ベイクさん、ここの壁にある採掘ポイントはわかりますか?」

「見える。なんだこりゃ、こんなにピカピカ存在感強めにあったなんて! さっきまでは全然見えなかったぞ?」

「ですが先に採掘するのは光苔の方からお願いします」

「なんか理由がありそうだな。って硬ってぇ! これ無理じゃね?」

「だから無理って言ったじゃないですか。光苔、それで武器グレードを上げないと採掘不可能です」

「爺さん、それを先に言えって」


 言ったんだけどなぁ、聞かなかったのは誰かな?
 こうして私は四人組のストリーマー『おやき』の商品価値を見出し、スポンサーをつけてダンジョン探索者の第一人者として売り出した。

 ダンジョン内って色々武器を持ち込めるけど、グレードアップしない限りほぼ粗悪品扱いになるからね。
 武器を売り捌こうってお店が一番欲するのはグレードアップ素材に他ならない。その場でグレードアップ出来るのは最初のうちだけ。

 自分でやってみて気づいたが、これグレードVから先は失敗がある。
 最初こそ喜び勇んでグレードをあげるが、途中でこれは沼だと気づく。
 失敗すると武器壊れるしね。もちろんそれまでの成功もパーだ。

 だが、定期的に素材を入手できるのであれば?
 彼らの存在は手放せなくなるはずだ。

 ダンジョン探索者で上を目指したい、と言うのであれば誘わなかったが彼らはお金が欲しいだけ。
 そして需要に対して供給を満たす存在価値を見出せばダンジョンももっと若者達で賑わうだろう。
 これぞまさにWin-Winの関係ってやつだね。

 警察だって探索者が増えない限り尊い犠牲が増えるばかりだ。
 それは見過ごせないもんね。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...