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町おこしイベント

バードダンジョン②

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 キャディがようやく本来の姿を取り戻し、私たちも調査を再開する。


「二重さん、何か見つかった?」

「まだモンスターらしい影はないよ。爺さんの方は何か見つけたかい?」

「いや、何も。ただねぇ、下ばかり見ていても見つからない場合は上を見てみることも大切だ。キャディ」

「くぇ(なーにー?)」

「上の方の天井を掘ってきてくれ。そうだね、ちょうどこの真上から、向こう側まで」

「くわー(わかったー)」


 キャディが根を張るで壁を登りつつ、結構な高さの天井に張り付くと、先程グレードを上げたくちばしでガツガツ天井を掘り始める。
 するとメキメキと重さに耐えきれずに真上から違うマップが降りてきた。


「キャディ!」

「くぇ!(大丈夫だよ)」


 降りてきた場所とは別の場所に根を張っていたから助かったと言わんばかりだ。壁をつたってゆっくりと降りてくる。


「これは……上に何かあるって気づいてたのか?」

「いや、下を探して何もないなら、ギミックがあると思ったんだ。ほら、ゲームでも何かのレバーを引くと開かない扉が開いたりするもんだろう?」

「ここのダンジョンはギミック解放型ってことか。じゃあさっきのモンスターを全部討伐したのは?」

「モンスタールームだね。閉じ込められて、倒さないと出れないパターン。入ってすぐだから入り口に逃げれば戻れたんだと思う」

「つまりここはある意味でゲーム的なダンジョンって事か?」

「まだ何にもわかんないけど、今回はそうだった。次からは天井にもレバーの類があるかもね」


 そんな話をしてると、二重さん以外の調査員が何か箱のようなものを見つけたと声がけしてくる。
 その箱の中にはレバーがあり、弾いてみるとうんともすんとも言わない。
 どうも先程キャディが突いた場所がレバーの先に繋がってたようだ。


「爺さん……」

「ま、パターンが分かっただけ儲け物じゃない。逆にいえばテイムモンスター次第でギミックを無視して進めることがわかった。これは得難い情報だよ?」

「あんたと一緒にいるだけですごい疲れるということはわかった」


 酷い言われようだ。
 でもまぁ、ここでの戦い方がわかって良かったじゃない。
 私も嬉しいし、キャディもお肉が食べられて大満足だ。
 何せ3段階目の成長値は150必要だ。
 お肉を食べても+4。
 40個は与えなきゃいけないので結構大変なんだ。

 回転氏はモンスター討伐で足を生やしたらしいけど、今までの戦闘であんまり増えてないんだよねー成長値。
 餌で+1って聞いた時の回転氏の顔を思い出す。

 つまり+1に上げるのにそれなりにレベルが上がったということか。
 なら出現モンスターが多いバードダンジョンはうってつけか。
 ウルフダンジョンも数が多かったから通いたいけど、出禁食らっちゃったしねぇ。私に非協力的なんだから。

 その癖ネタは私で拾えって言うんだから本末転倒だよね?
 それともあの場所で特ダネを拾ったからこれ以上介入されたくないとかかな?
 長井君と神保さんも絡んでるっぽいんだよなぁ。

 ガチ検証班と鍛治の親方。その上企画が欽治さんだ。
 絶対よからぬこと考えてるよ。
 まぁ後で自慢しにくるから、それ以上のネタで対応しましょうかね。

 新しく広がったフロアは、モンスターは存在せず、採掘場が広がっていた。
 壁から突き出てる水晶群。
 うーん、大当たり部屋じゃない? ここ。
 この規模の水晶群はそうそう見ない。
 一回層でこれは、この先が楽しみだ。


「二重氏、本部にいいお土産ができたんじゃない?」

「ああ、だがあたしたちの取り分はないね。報告と納品が義務だ。武器のグレードアップは自費で行わにゃいけないんだ」

「世知辛いねぇ。いっそ報告しないで懐に潜ませちゃう?」

「ジジイ……そんなことしたら一発で懲戒免職だ」

「冗談だよ。じゃあ、それ以上の大発見をして水晶なんて見向きもしない成果をあげちゃおう」

「またありもしないことを……」


 二重さんが調査前から諦めてる雰囲気。
 でもね、これだけ水晶が集まってて、変異体がないのも珍しいんだ。


「キャディ、あのでっかい水晶は掘り起こせる?」


 天井から突き出した水晶の塊。
 基本的に水晶は武器のグレード+1以上で周囲の壁を掘り起こすことで採掘が可能だ。
 しかし水晶の効果はグレード+3。
 くちばしグレード+3のキャディで傷つけられるかの検証開始だ。


「くぇー(全然、削れないよー)」

「ならばこれをこうして」

「おいジジイ、それはうちの管轄の!」

「責任は私が持つ。私はあの水晶群がただの背景には見えないんだ」


 掘った水晶でくちばしのグレードをⅥに上げる。
 そして再度水晶採掘を開始する。
 キャディの振り上げたくちばしが水晶にヒビを入れ、それが水晶全体に行き渡ると……

 バキン! ガラスが砕けたような破砕音が周辺に響き渡り、水晶のあった場所に大きな空洞が口を開けた。
 先程までは透明度の高い水晶が、違う彩度を纏い始めた。


「これは!?」

「どうやら新素材のようだ。黄水晶、紫水晶。このタイプは初めて見る」

「本当に新素材だって言うのか?」

「うん……でもそれどころじゃないみたいだ」


 さっきから口を開けた大穴から存在感強めに圧が吹きつけてくる。


「キャディ、壁に。二重さんは前方に警戒!」

「ボスか?」

「わからない。ただ尋常じゃないプレッシャーを感じる」


 そうして大穴から出てきたのは……鳥の頭、鳥の足。
 ただし後ろ足は獣の様相を表していた。


「クケェエエエエエエ!!」


<テイマーの試練・獣/鳥がスタートしました>

<守護獣キマイラを討伐するとキマイラソウルを入手できます>


 何それ!?
 これはテイマー関連?
 どうりで二重さんは何も感じないわけだ。


「ごめん、これは私関連のイベントのようだ。少し時間をもらうよ」

「あ、ああ。頑張ってな」


 そう言って彼女達は色の変わった水晶を採掘し始めた。
 私が簡単に採掘してるから自分達も簡単に掘れると思ったようだ。
 けどノーマルツルハシじゃどうにもならず、納品用の水晶を消費してようやく採掘可能になる。

 と、そんなこと考えてる場合じゃない。
 スタートしました、と言ってるようにこっちに選択権などないようだ。
 姿を現したキマイラは敵を見定め、こちらに向かって突進してきた。


「チェインクリティカル……からのフルスイング!」


 ナイスショット、とはならず、鋭い嘴に弾かれる。
 が。それで良い。跳弾も含めて私の攻撃だ。


「キャディ!」

「くえー(うん!)」


 相手の弾いたボールを弾き返してチェインアタック。
 壁を伝って私の元に。
 第二打はコアショットを併用して下から真上に突き上げる。
 相手にこれと言って弱点となるコアはない。しかしこのモーションが都合がいい。
 縦軌道のボールは天井に当たり、弾かれてキマイラの頭に落ちた。
 シュルシュルと回転しながらその場にとどまる。
 頭を揺らされてキマイラはクラクラした。

 キャディがキマイラに飛びつく。
 体に根を張って採掘アタックだ。
 私も負けじとツルハシを振りかぶって強靭そうな前足に振り下ろした。

 私とキャディの阿吽の呼吸。
 チェインクリティカルを使用しての攻撃だからカスダメージも積もれば大ダメージとなる。
 そもそも攻撃がまるで通じてない可能性もあるが、私たちは何時間でも付き合えるよ?
 何せチェインクリティカルはパッシブスキルだからね。
 一度使えば再度使う必要がないんだ。
 そーれ、もう一回繰り返すよー。

 大体15回繰り返すと、キマイラは倒れ伏した。
 私の攻撃に堪えた、と言うよりは回復力を上回る速度で傷口を広げ続けるキャディを脅威に思ったんだろう。
 羽の付け根に向けてくちばしアタックを仕掛けてたからね。
 真上に飛んでは背中を打ち付けるようにしてた。
 もちろん即座に天井に逃げてた。
 誰に似たのか要領がいい。

 そうして繰り返して粘り強く倒しきれた。
 レベルも上がって19だ。
 そして、さっきの試練をクリアしてキマイラソウルをいただいた。

 キマイラソウルは装備アイテムのようだ。
 使用すると生まれる種族がキマイラで固定されるものらしい。
 今は保留かな?
 だってこの子に翼は必要ないもの。


「終わったのか?」

「うん、なんとか」

「テイマー用の試練とかそう言うのか?」

「多分ね。きっとジョブごとにダンジョンに何か仕掛けがあるのかもしれない」

「ダンジョンって一体なんだろうな?」

「それは私にもわからないよ。あ、これ記念にどうぞ」

「これは?」

「卵に使うと確定でキマイラになる装飾品」

「貴重品じゃないか! そんなものをポンと渡すな!」

「私のところのキャディには必要ないよ。この子の可能性はそんなもので縛られるべきじゃないからだ。それに、水晶を譲ってもらった恩もある」

「貰いすぎだ。これは返す」

「あいにくと、返品は受け付けてないんだ」


 私は両手を上げ、新しくできた通路に向けて走り出す。


「待て、ジジイ!」

「それよりも先に進もう。ボスが待ってるよ!」


 私は逃げるようにその場にダッシュした。


「まったく、しょうがないジジイだ。おい、お前らは一旦それ持って引き返せ。再度集合して出発だ」

「あの、あちらは先に行かせていいんですか?」

「見てたろ? あの幻影との戦いっぷり。見た目で判断しないほうがいいぞ」

「二重さんも認めるほどですか?」

「弟がすごい爺さんがいるって噂してたが、あれが噂の爺さんか」

「桜町に配属されてたんでしたっけ?」

「ああ。ただの噂だと思っていたが……」

「噂以上だと?」

「どうだかな。ただ、妙に憎めない愛嬌があることだけは確かだ。上への報告書になんて書くものか」

「今度は違う意味で頭痛の種が増えましたね」

「全くだ」
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