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モンスターブリーダー入門
エッグダンジョン④
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流動系卵は疲れたのか、繰り返して壁にぶつかる自傷行為を止めると、孫の元に転がってきて、穴からドロっと足に当たる部分を出した。
「頑張ったね、偉い偉い」
孫は卵を撫で撫でしながらあやす。
ポシェットからスライムコアをいくつか出すと、餌を与えるように一つづつ足元に置いた。
足の部分が触手のように伸びて吸収するのを見守ってからもう一個置くを繰り返す。
ただ与えるだけじゃなく、さっきまでの行いのいい点とダメな点を洗い出して次はどうするかの意見を述べていた。
中身が流動系で、殻が強いのであれば回転をつけての攻撃は有効。
しかしそれだけでは工夫がない。
かつて戦ったことのあるロックスライムは、足を地面に貼り付けて硬い部分を叩きつけるという真似をした。
孫はロックスライムの派生系なのではないかと指摘する。
言葉が通じたのか卵は再度壁にぶつかる行為を繰り返す。
さっきまでと同じではダメだと、孫の意見を取り入れて流動系の足を地面に縫い付けてからの行動に移った。
「いいよ、その調子! 回転も加えて!」
一回でダメならアレンジも加えて。
振りかぶった勢+回転はただ転がるより威力が高かった。
まだ口に当たる発声器官がないので声を発しないが、ぴょんぴょん跳ねて喜びを表現している。
見た目で判断しないうちの孫は、意外と良いテイマーになるかもしれないね。
失敗は何度もあるが、そのために方策を練る。
孫はダメな部分の洗い出しを徹底した。そしてうまく行った分は褒めて伸ばすようだ。さっきより上手く行ったらスライムコアを大負けで多く渡す。
ダメだったら減らすとわかりやすい成果でやる気を出させていた。
そしてついに2度目の孵化。
本来ならここに口の役割に当たる部位がつくのに、この卵はトゲトゲの鉄球の様な殻を持って生まれた。
先ほどのアドバイスが早速適用された形か。
しかし変化はもう一つあった。
「ピキ!」
スライムコアを与え続けたおかげか、何やらスライム的な愛らしいフォルムが形成されていた。
ヤドカリのようなごつい甲殻を背負うスライムだ。
今まで出会ってきたスライムのどれよりも可愛げがある。
「わ、この子喋ったよ!」
「くわ!(僕も喋れるもん!)」
「あはは、キャディが対抗意識燃やしてる」
「どうやらこの子をライバルと認めたみたいだ。この子はきっと強くなるぞ」
「名前をつけたほうがいいのかな?」
「ボスになるのにつけるの?」
「でも、ここまで一緒にやってきたもん。つけちゃダメ?」
「私は反対しないよ。戦って倒す時に躊躇しないのであれば、つけるといい」
「じゃあ、君は今日からピッキーね? おいで、ピッキー」
「ピキー」
ネームセンスに突っ込むことは私には出来ない。
ピキピキ鳴くからピッキー。いいじゃないかシンプルで。
それにダンジョンボスになるとわかっても名前をつけてあげたくなるほどの愛着を持つのは決して悪いことではない様な気がする。
私は当時つける事を躊躇った。もしあのとき横にいるのが回転氏ではなく孫だったら、つけていただろうか?
ピッキーは第二進化を終えて、そのトゲ付きの殻を強烈に打ち付ける特技を覚えた。私が世話した鳥型モンスターよりだいぶアグレッシブだ。
殻を一度も割ってないのに不思議だね。
マニュアル通りなら殻に籠る臆病なタイプが生まれてきてもおかしくないのに。
「お爺ちゃん、通路できた。行こう!」
第二進化を終えると同時に現れた通路を見つけた孫の声に思考を中断し、キャディを連れて奥の部屋へ。
するとそこには水溜りがあり、ピッキーはそこに向けて飛び込んだり浮かんだりを繰り返した。この奥に何かがあるのか?
水たまりの様に見えて、ピッキーがまるまる埋まるくらいにはそこが深い様だ。
「この中に何かあるみたい。でも暗くて何も見えないや」
「ピキ!」
「くわ(水が邪魔で奥に進めないみたいだね)」
キャディが翻訳してくれる。
「どうやらこの水が邪魔で奥にある何かを入手できない様だ。美咲、何かアイディアある?」
「お水がなくなればいいの?」
「そうなるね」
「じゃあ、そのポットをバケツの様に掬ってお水出しちゃうとか?」
「ピキ!」
その手があったか! みたいに美咲の意見を取り入れて、ピッキーは中身をその場から出すと、触腕で殻を掴んで水の中に沈めると取り出して部屋の中にザバっと流す。
「くわ!(お水はこっちに入れて)」
真っ平らな部屋なので、勢いをつけた水は壁から折り返してこちらに戻ってくる。
それを真っ先に気づいてキャディが別の地面に穴を開けて、水を抜いた穴に水が戻らない様に配慮した。
「ピキ!」
ガッテン、とばかりにその穴へ水を運ぶピッキー。
穴はそんなに深くないので余剰分は根を張るで吸い尽くすキャディ。
阿吽の呼吸がここに完成していた。
「キャディ、ピッキーを手伝ってくれてるんだね、いいこいいこ」
「くわー(これくらいなんでもないよ)」
孫に撫でられて満更でもない様子。なんか随分孫に懐いてない?
君は私のテイムモンスターなの忘れてない? ダメだよ浮気しちゃ。
そんな不安を抱えてる矢先、ついにピッキーは目的を達成していた。
「ピキー!」
鳴き声をあげて目的を達成したピッキー。
ゴウン遠くの方で音がした。どうやら新しい通路が先ほどの通路の途中に生えたらしい。
「ピキキ! ピキ!」
「お疲れ様、ピッキー。いいこいいこ」
褒めて褒めて、とスライムヘッドをニュッと孫に伸ばすピッキー。
それをさする孫の表情は母親の様だ。
ゴツゴツした硬い殻を押し付けてこないのは孫から嫌われない為めなのか。
親の顔色を窺う様な姿勢が見えた。
別に失敗したくらいで怒らないのにね。
第二の通路は一面の水晶が輝く場所だった。
「ツルハシくらい持ってくれば良かったね」
「くわ(僕に任せて!)」
そこで前に出るキャディ。そう言えばこの子の嘴はグレードⅤに至っているのだ。
「わ、キャディすごい! お爺ちゃん、キャディ凄いね!」
「美咲にカッコイイ姿を見せたくて頑張ってるみたいだ」
「え、私何かしたっけ?」
「私が撫でるより美咲に撫でられたいみたいだ」
「えー!」
孫はびっくりしながらキャディに振り返る。
キャディはくわ! と鳴きながらたくさん持ってきた水晶を地面に置いて頭を突き出した。
「キャディはお利口さんだねー。でも君のマスターはお爺ちゃんだよ?」
「くわー(それとこれは別なのー)」
「美咲と一緒に探索できるのが嬉しいみたいだ。普段は私以外の人が多いし、その多くはキャディを奇異の目で見るから。だからこうして可愛がってくれる人は稀なんだ」
「そうだったんだ。君はちゃんとお爺ちゃんに愛されてるからそんな心配しなくていいよー?」
「くわ!(うん)」
「なんだか大きい子供が二人もできちゃったみたい。お母さんって大変なんだね?」
「お母さんの大変さはまだまだこれからだよ?」
水晶を取り込むと、ピッキーが第三進化を起こした。
卵が縦に割れ、出てきたのは……
「ピャー!」
水晶の甲殻を纏うピッキーだった。青緑の体表は、どこか神秘的に輝いている。まるで光に当てた水晶みたいにその体表が反射する。
つるりとしていながら体表そのものに硬度があるみたいな不思議な触り心地。
トゲトゲとした水晶の殻は転がるだけで周囲に災害を巻き起こしそうだ。
というか、これでは抱っこも出来まい。
「ピッキー、随分強そうになったね!」
「ピャー!」
「でも、その体じゃ抱き上げるのも無理かな?」
「ピ!?」
するとどうだろう、トゲトゲしい水晶はすぐさま溶け出して球状となる。
どうやらあの水晶は体表を穴から出して綱化させていただけの様だ。
どれだけ抱っこして欲しいのやら。強そうな見た目になってもまだまだ甘えん坊なピッキーに、新人テイマーの孫はしょうがないなぁと抱き上げた。
「おも……」
水晶を取り込んだからか、見た目以上に重い様だがなんとか堪えて撫であげた。
「お母さんって本当に大変だ」
孫の呻きに、お疲れ様と背中を押す。
齢16にして母親の苦労を知る孫に、私ができることはなんだろうと考えるのは嬉しくもどこかもの悲しかった。
「頑張ったね、偉い偉い」
孫は卵を撫で撫でしながらあやす。
ポシェットからスライムコアをいくつか出すと、餌を与えるように一つづつ足元に置いた。
足の部分が触手のように伸びて吸収するのを見守ってからもう一個置くを繰り返す。
ただ与えるだけじゃなく、さっきまでの行いのいい点とダメな点を洗い出して次はどうするかの意見を述べていた。
中身が流動系で、殻が強いのであれば回転をつけての攻撃は有効。
しかしそれだけでは工夫がない。
かつて戦ったことのあるロックスライムは、足を地面に貼り付けて硬い部分を叩きつけるという真似をした。
孫はロックスライムの派生系なのではないかと指摘する。
言葉が通じたのか卵は再度壁にぶつかる行為を繰り返す。
さっきまでと同じではダメだと、孫の意見を取り入れて流動系の足を地面に縫い付けてからの行動に移った。
「いいよ、その調子! 回転も加えて!」
一回でダメならアレンジも加えて。
振りかぶった勢+回転はただ転がるより威力が高かった。
まだ口に当たる発声器官がないので声を発しないが、ぴょんぴょん跳ねて喜びを表現している。
見た目で判断しないうちの孫は、意外と良いテイマーになるかもしれないね。
失敗は何度もあるが、そのために方策を練る。
孫はダメな部分の洗い出しを徹底した。そしてうまく行った分は褒めて伸ばすようだ。さっきより上手く行ったらスライムコアを大負けで多く渡す。
ダメだったら減らすとわかりやすい成果でやる気を出させていた。
そしてついに2度目の孵化。
本来ならここに口の役割に当たる部位がつくのに、この卵はトゲトゲの鉄球の様な殻を持って生まれた。
先ほどのアドバイスが早速適用された形か。
しかし変化はもう一つあった。
「ピキ!」
スライムコアを与え続けたおかげか、何やらスライム的な愛らしいフォルムが形成されていた。
ヤドカリのようなごつい甲殻を背負うスライムだ。
今まで出会ってきたスライムのどれよりも可愛げがある。
「わ、この子喋ったよ!」
「くわ!(僕も喋れるもん!)」
「あはは、キャディが対抗意識燃やしてる」
「どうやらこの子をライバルと認めたみたいだ。この子はきっと強くなるぞ」
「名前をつけたほうがいいのかな?」
「ボスになるのにつけるの?」
「でも、ここまで一緒にやってきたもん。つけちゃダメ?」
「私は反対しないよ。戦って倒す時に躊躇しないのであれば、つけるといい」
「じゃあ、君は今日からピッキーね? おいで、ピッキー」
「ピキー」
ネームセンスに突っ込むことは私には出来ない。
ピキピキ鳴くからピッキー。いいじゃないかシンプルで。
それにダンジョンボスになるとわかっても名前をつけてあげたくなるほどの愛着を持つのは決して悪いことではない様な気がする。
私は当時つける事を躊躇った。もしあのとき横にいるのが回転氏ではなく孫だったら、つけていただろうか?
ピッキーは第二進化を終えて、そのトゲ付きの殻を強烈に打ち付ける特技を覚えた。私が世話した鳥型モンスターよりだいぶアグレッシブだ。
殻を一度も割ってないのに不思議だね。
マニュアル通りなら殻に籠る臆病なタイプが生まれてきてもおかしくないのに。
「お爺ちゃん、通路できた。行こう!」
第二進化を終えると同時に現れた通路を見つけた孫の声に思考を中断し、キャディを連れて奥の部屋へ。
するとそこには水溜りがあり、ピッキーはそこに向けて飛び込んだり浮かんだりを繰り返した。この奥に何かがあるのか?
水たまりの様に見えて、ピッキーがまるまる埋まるくらいにはそこが深い様だ。
「この中に何かあるみたい。でも暗くて何も見えないや」
「ピキ!」
「くわ(水が邪魔で奥に進めないみたいだね)」
キャディが翻訳してくれる。
「どうやらこの水が邪魔で奥にある何かを入手できない様だ。美咲、何かアイディアある?」
「お水がなくなればいいの?」
「そうなるね」
「じゃあ、そのポットをバケツの様に掬ってお水出しちゃうとか?」
「ピキ!」
その手があったか! みたいに美咲の意見を取り入れて、ピッキーは中身をその場から出すと、触腕で殻を掴んで水の中に沈めると取り出して部屋の中にザバっと流す。
「くわ!(お水はこっちに入れて)」
真っ平らな部屋なので、勢いをつけた水は壁から折り返してこちらに戻ってくる。
それを真っ先に気づいてキャディが別の地面に穴を開けて、水を抜いた穴に水が戻らない様に配慮した。
「ピキ!」
ガッテン、とばかりにその穴へ水を運ぶピッキー。
穴はそんなに深くないので余剰分は根を張るで吸い尽くすキャディ。
阿吽の呼吸がここに完成していた。
「キャディ、ピッキーを手伝ってくれてるんだね、いいこいいこ」
「くわー(これくらいなんでもないよ)」
孫に撫でられて満更でもない様子。なんか随分孫に懐いてない?
君は私のテイムモンスターなの忘れてない? ダメだよ浮気しちゃ。
そんな不安を抱えてる矢先、ついにピッキーは目的を達成していた。
「ピキー!」
鳴き声をあげて目的を達成したピッキー。
ゴウン遠くの方で音がした。どうやら新しい通路が先ほどの通路の途中に生えたらしい。
「ピキキ! ピキ!」
「お疲れ様、ピッキー。いいこいいこ」
褒めて褒めて、とスライムヘッドをニュッと孫に伸ばすピッキー。
それをさする孫の表情は母親の様だ。
ゴツゴツした硬い殻を押し付けてこないのは孫から嫌われない為めなのか。
親の顔色を窺う様な姿勢が見えた。
別に失敗したくらいで怒らないのにね。
第二の通路は一面の水晶が輝く場所だった。
「ツルハシくらい持ってくれば良かったね」
「くわ(僕に任せて!)」
そこで前に出るキャディ。そう言えばこの子の嘴はグレードⅤに至っているのだ。
「わ、キャディすごい! お爺ちゃん、キャディ凄いね!」
「美咲にカッコイイ姿を見せたくて頑張ってるみたいだ」
「え、私何かしたっけ?」
「私が撫でるより美咲に撫でられたいみたいだ」
「えー!」
孫はびっくりしながらキャディに振り返る。
キャディはくわ! と鳴きながらたくさん持ってきた水晶を地面に置いて頭を突き出した。
「キャディはお利口さんだねー。でも君のマスターはお爺ちゃんだよ?」
「くわー(それとこれは別なのー)」
「美咲と一緒に探索できるのが嬉しいみたいだ。普段は私以外の人が多いし、その多くはキャディを奇異の目で見るから。だからこうして可愛がってくれる人は稀なんだ」
「そうだったんだ。君はちゃんとお爺ちゃんに愛されてるからそんな心配しなくていいよー?」
「くわ!(うん)」
「なんだか大きい子供が二人もできちゃったみたい。お母さんって大変なんだね?」
「お母さんの大変さはまだまだこれからだよ?」
水晶を取り込むと、ピッキーが第三進化を起こした。
卵が縦に割れ、出てきたのは……
「ピャー!」
水晶の甲殻を纏うピッキーだった。青緑の体表は、どこか神秘的に輝いている。まるで光に当てた水晶みたいにその体表が反射する。
つるりとしていながら体表そのものに硬度があるみたいな不思議な触り心地。
トゲトゲとした水晶の殻は転がるだけで周囲に災害を巻き起こしそうだ。
というか、これでは抱っこも出来まい。
「ピッキー、随分強そうになったね!」
「ピャー!」
「でも、その体じゃ抱き上げるのも無理かな?」
「ピ!?」
するとどうだろう、トゲトゲしい水晶はすぐさま溶け出して球状となる。
どうやらあの水晶は体表を穴から出して綱化させていただけの様だ。
どれだけ抱っこして欲しいのやら。強そうな見た目になってもまだまだ甘えん坊なピッキーに、新人テイマーの孫はしょうがないなぁと抱き上げた。
「おも……」
水晶を取り込んだからか、見た目以上に重い様だがなんとか堪えて撫であげた。
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