ダンジョンブレイクお爺ちゃんズ★

双葉 鳴

文字の大きさ
38 / 45
モンスターブリーダー入門

エッグダンジョン④

しおりを挟む
 流動系卵は疲れたのか、繰り返して壁にぶつかる自傷行為を止めると、孫の元に転がってきて、穴からドロっと足に当たる部分を出した。


「頑張ったね、偉い偉い」


 孫は卵を撫で撫でしながらあやす。
 ポシェットからスライムコアをいくつか出すと、餌を与えるように一つづつ足元に置いた。
 足の部分が触手のように伸びて吸収するのを見守ってからもう一個置くを繰り返す。
 ただ与えるだけじゃなく、さっきまでの行いのいい点とダメな点を洗い出して次はどうするかの意見を述べていた。
 中身が流動系で、殻が強いのであれば回転をつけての攻撃は有効。
 しかしそれだけでは工夫がない。

 かつて戦ったことのあるロックスライムは、足を地面に貼り付けて硬い部分を叩きつけるという真似をした。
 孫はロックスライムの派生系なのではないかと指摘する。

 言葉が通じたのか卵は再度壁にぶつかる行為を繰り返す。
 さっきまでと同じではダメだと、孫の意見を取り入れて流動系の足を地面に縫い付けてからの行動に移った。


「いいよ、その調子! 回転も加えて!」


 一回でダメならアレンジも加えて。
 振りかぶった勢+回転はただ転がるより威力が高かった。
 まだ口に当たる発声器官がないので声を発しないが、ぴょんぴょん跳ねて喜びを表現している。
 見た目で判断しないうちの孫は、意外と良いテイマーになるかもしれないね。

 失敗は何度もあるが、そのために方策を練る。
 孫はダメな部分の洗い出しを徹底した。そしてうまく行った分は褒めて伸ばすようだ。さっきより上手く行ったらスライムコアを大負けで多く渡す。
 ダメだったら減らすとわかりやすい成果でやる気を出させていた。

 そしてついに2度目の孵化。
 本来ならここに口の役割に当たる部位がつくのに、この卵はトゲトゲの鉄球の様な殻を持って生まれた。
 先ほどのアドバイスが早速適用された形か。
 しかし変化はもう一つあった。


「ピキ!」


 スライムコアを与え続けたおかげか、何やらスライム的な愛らしいフォルムが形成されていた。
 ヤドカリのようなごつい甲殻を背負うスライムだ。
 今まで出会ってきたスライムのどれよりも可愛げがある。


「わ、この子喋ったよ!」

「くわ!(僕も喋れるもん!)」

「あはは、キャディが対抗意識燃やしてる」

「どうやらこの子をライバルと認めたみたいだ。この子はきっと強くなるぞ」

「名前をつけたほうがいいのかな?」

「ボスになるのにつけるの?」

「でも、ここまで一緒にやってきたもん。つけちゃダメ?」

「私は反対しないよ。戦って倒す時に躊躇しないのであれば、つけるといい」

「じゃあ、君は今日からピッキーね? おいで、ピッキー」

「ピキー」


 ネームセンスに突っ込むことは私には出来ない。
 ピキピキ鳴くからピッキー。いいじゃないかシンプルで。
 それにダンジョンボスになるとわかっても名前をつけてあげたくなるほどの愛着を持つのは決して悪いことではない様な気がする。
 私は当時つける事を躊躇った。もしあのとき横にいるのが回転氏ではなく孫だったら、つけていただろうか?

 ピッキーは第二進化を終えて、そのトゲ付きの殻を強烈に打ち付ける特技を覚えた。私が世話した鳥型モンスターよりだいぶアグレッシブだ。
 殻を一度も割ってないのに不思議だね。
 マニュアル通りなら殻に籠る臆病なタイプが生まれてきてもおかしくないのに。


「お爺ちゃん、通路できた。行こう!」


 第二進化を終えると同時に現れた通路を見つけた孫の声に思考を中断し、キャディを連れて奥の部屋へ。
 するとそこには水溜りがあり、ピッキーはそこに向けて飛び込んだり浮かんだりを繰り返した。この奥に何かがあるのか?
 水たまりの様に見えて、ピッキーがまるまる埋まるくらいにはそこが深い様だ。


「この中に何かあるみたい。でも暗くて何も見えないや」

「ピキ!」

「くわ(水が邪魔で奥に進めないみたいだね)」


 キャディが翻訳してくれる。


「どうやらこの水が邪魔で奥にある何かを入手できない様だ。美咲、何かアイディアある?」

「お水がなくなればいいの?」

「そうなるね」

「じゃあ、そのポットをバケツの様に掬ってお水出しちゃうとか?」

「ピキ!」


 その手があったか! みたいに美咲の意見を取り入れて、ピッキーは中身をその場から出すと、触腕で殻を掴んで水の中に沈めると取り出して部屋の中にザバっと流す。


「くわ!(お水はこっちに入れて)」


 真っ平らな部屋なので、勢いをつけた水は壁から折り返してこちらに戻ってくる。
 それを真っ先に気づいてキャディが別の地面に穴を開けて、水を抜いた穴に水が戻らない様に配慮した。


「ピキ!」


 ガッテン、とばかりにその穴へ水を運ぶピッキー。
 穴はそんなに深くないので余剰分は根を張るで吸い尽くすキャディ。
 阿吽の呼吸がここに完成していた。


「キャディ、ピッキーを手伝ってくれてるんだね、いいこいいこ」

「くわー(これくらいなんでもないよ)」


 孫に撫でられて満更でもない様子。なんか随分孫に懐いてない?
 君は私のテイムモンスターなの忘れてない? ダメだよ浮気しちゃ。
 そんな不安を抱えてる矢先、ついにピッキーは目的を達成していた。


「ピキー!」


 鳴き声をあげて目的を達成したピッキー。
 ゴウン遠くの方で音がした。どうやら新しい通路が先ほどの通路の途中に生えたらしい。


「ピキキ! ピキ!」

「お疲れ様、ピッキー。いいこいいこ」


 褒めて褒めて、とスライムヘッドをニュッと孫に伸ばすピッキー。
 それをさする孫の表情は母親の様だ。
 ゴツゴツした硬い殻を押し付けてこないのは孫から嫌われない為めなのか。
 親の顔色を窺う様な姿勢が見えた。
 別に失敗したくらいで怒らないのにね。

 第二の通路は一面の水晶が輝く場所だった。

 
「ツルハシくらい持ってくれば良かったね」

「くわ(僕に任せて!)」


 そこで前に出るキャディ。そう言えばこの子の嘴はグレードⅤに至っているのだ。


「わ、キャディすごい! お爺ちゃん、キャディ凄いね!」

「美咲にカッコイイ姿を見せたくて頑張ってるみたいだ」

「え、私何かしたっけ?」

「私が撫でるより美咲に撫でられたいみたいだ」

「えー!」


 孫はびっくりしながらキャディに振り返る。
 キャディはくわ! と鳴きながらたくさん持ってきた水晶を地面に置いて頭を突き出した。


「キャディはお利口さんだねー。でも君のマスターはお爺ちゃんだよ?」

「くわー(それとこれは別なのー)」

「美咲と一緒に探索できるのが嬉しいみたいだ。普段は私以外の人が多いし、その多くはキャディを奇異の目で見るから。だからこうして可愛がってくれる人は稀なんだ」

「そうだったんだ。君はちゃんとお爺ちゃんに愛されてるからそんな心配しなくていいよー?」

「くわ!(うん)」

「なんだか大きい子供が二人もできちゃったみたい。お母さんって大変なんだね?」

「お母さんの大変さはまだまだこれからだよ?」


 水晶を取り込むと、ピッキーが第三進化を起こした。
 卵が縦に割れ、出てきたのは……


「ピャー!」


 水晶の甲殻を纏うピッキーだった。青緑の体表は、どこか神秘的に輝いている。まるで光に当てた水晶みたいにその体表が反射する。
 つるりとしていながら体表そのものに硬度があるみたいな不思議な触り心地。
 トゲトゲとした水晶の殻は転がるだけで周囲に災害を巻き起こしそうだ。
 というか、これでは抱っこも出来まい。


「ピッキー、随分強そうになったね!」

「ピャー!」

「でも、その体じゃ抱き上げるのも無理かな?」

「ピ!?」


 するとどうだろう、トゲトゲしい水晶はすぐさま溶け出して球状となる。
 どうやらあの水晶は体表を穴から出して綱化させていただけの様だ。
 どれだけ抱っこして欲しいのやら。強そうな見た目になってもまだまだ甘えん坊なピッキーに、新人テイマーの孫はしょうがないなぁと抱き上げた。
 

「おも……」


 水晶を取り込んだからか、見た目以上に重い様だがなんとか堪えて撫であげた。


「お母さんって本当に大変だ」


 孫の呻きに、お疲れ様と背中を押す。
 齢16にして母親の苦労を知る孫に、私ができることはなんだろうと考えるのは嬉しくもどこかもの悲しかった。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...