ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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64話 空ウツボのツミレ旨辛鍋

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 完成と同時に実食。
 冷却魔法も使わず、ハフハフしながらツミレ肉をくらうヨッちゃん。

 器用に空のコップに水を注いで一気に流し込み、冷却した口内に再度放り込む。
 そのサイクルをしながら鍋の攻略を進めて行く。

 興奮冷めやらぬ、と言う感じ。
 味の感想は未だもらえず。
 されど、その食いつき具合から確かめてみるまでもない。

 例えるなら、無言で食べ進めるカニのボイルのような魅力。
 今のヨッちゃんはそれに取り憑かせるような夢中さ。

 周りが見えなくなるほどで身体中全体で味わってる。
 まるでその暑さに耐えられない自分の無力さを嘆くかのような振る舞い。

 だったら体を冷やせば良いのに。

 今はそっとしておこう。
 見ればわかる。
 不満があれば、顔に出るから。

 今のヨッちゃんからそんな態度は微塵も見えないからね。

 <コメント>
 :スッゲーうまそうに食うじゃん
 :これは適合調理更新来たか?
 :この前更新したばっかじゃねぇの?
 :《ミサミサ》あーー、藤本さんばっかりずるいです! 私も食べたい食べたーーい!
 :ランクが違うよ、諦めなさい
 :ミサミサきた!
 :好物に吸い寄せられる嗅覚はすごいな
 :《ミサミサ》ふふーんだ、私ももう怒涛の追い上げでBになりましたもんねーー。あとは距離
 :すごい
 :おめでとう
 :他人のチャンネルでお祝いされる女
 :自分のチャンネルで祝ってもらいなさい
 :ほんそれ

「ミサちゃんいらっしゃい。ランク昇格おめでとう」

 <コメント>
 :《ミサミサ》ありがとうございまーす。本宝治さんに追いつきたくて頑張りました!
 :いいなー、認知勢は
 :だったら顔出し、名前出しされればよろしい
 :匿名性でそれをやるメリット
 :それ言ってるうちは認知されない件
 :自ら認知されにいかないのに認知されることを羨む矛盾

「そうなんだ。わざわざこっちに追いつかなくたって食べ物は届けるよ?」

 <コメント>
 :《ミサミサ》それはそれでありがたいですけど、またダンジョンでご一緒したくて
 :この女、集る気満々である
 :恥を知れ
 :いや、実はポンちゃん狙いとか?
 :え、そっち?
 :美玲様に新たなライバル登場か?
 :勝てるわけ……
 :ある意味距離は近いじゃん?
 :現地妻ポジ狙い?
 :それかー
 :《ミサミサ》違いますからね? 追い抜かれて悔しいとかじゃなく……
 :はいはい
 :ごちそうさま
 :《ミサミサ》だから違うって言ってるのにーー!!

 何やら色恋の話で盛り上がってるが、まさか……そんな。

 俺みたいなおじさんのファンでいてくれるだけでもありがたいのに。
 ミィちゃんだって恩義意外に思うところないでしょ。

 今回の誘いもそれ以外の何かはないと思うし。

「ごっそうさん。端的に言って神だった。酒味わってる暇もないくらいに」

「なら適合調理更新かな?」

「いや、そりゃ違うぜポンちゃん」

 違うとは?

「ステータスの伸び率は圧倒的に空ウツボ丼のほうがコスパがいい。今回のは味が酒に合うって意味での神だ」

 これが語彙力の無さの現れか。

 まぁお互いに一般常識に疎いところはあるが。
 俺より言葉巧みなヨッちゃんですら言葉を失うって意味ではこれでも褒めてくれてるのだろう。

「味はいいけどステータスの伸び率は良くなかった?」

「僅差で空ウツボ丼のほうが上回ってる。量食えるならあっち。でもオレは酒飲みだから、こっちをチョイスするなって話」

「理解した。ステータスの旨みより酒の肴って意味か」

「そうそう」

 <コメント>
 :酒飲みあるある
 :味を選んでいって総合ステ下がる現象か
 :身に覚えがありすぎる
 :やっぱそれで昇格チャンス逃すよなー

「これに合う酒でもう一杯行くか?」

「いいねぇ。今度は味わって食いたいな」

 さっきも十分味わっていたが?
 まぁ多くは言うまい。

「今回ご紹介するお酒の出所は例の新企業提供です。マンドラゴラ酒。俺は実物見たことないんですけど、皆さんはありますか?」

 <コメント>
 :マンドラゴラ!
 :引き抜いた時に叫び声聞くと死ぬニンジン
 :ニンジンカウントなんか、あれ?
 :見た目はニンジンだから
 :顔ついてるニンジン
 :霊薬の素材だぞ?
 :それを大胆に酒にしちゃったかー
 :結構な値打ち物では?

 マジで?
 富井さんの懐からポンポン出てくるから、もっと弱いモンスターかと思ってたら地味に強いやつだったのか?

 まぁ富井さん、ああ見えて元SSSランクらしいからな。
 ただの気のいいお爺さんってわけでもないだろう。

「タダでもらったから価値わかんなかったけど、これそんなにやべー物だったのか?」

 <コメント>
 :あなたたちの料理も大概ヤバい物ですよ?
 :自分で捕獲してるから、コストが見えないだけ
 :オーク肉は一頭500万~なので
 :オーク肉ってそんな高いっけ?
 :馬鹿でかい個体を一頭買いすればそうよ
 :そうじゃん、普通にでかいもんな、オーク
 :畜産革命が起きるレベルのサイズだもんよ
 :ミノタウロスはもっとでかい
 :ダンジョン牧場の家畜扱いされてるけど、普通に探索者以外取り扱えない危険生物だぞ♡

「知らなかった。タメになるなぁ」

 <コメント>
 :ポンちゃんは料理以外てんでダメダメよな
 :そのギャップさがいいんだろうがよ
 :ゴブリンを初めて食った男だぞ?

 え、ゴブリンって普通食べないの?

 金ない時はよく世話になったよなぁ。
 その引渡し人がヨッちゃんで、その頃から仲良くなったもんだ。

「まぁ下積み時代は目利き出来ても買えるものが限られてるからね。生まれの違いで限界ってあるものじゃん?」

 <コメント>
 :それは、まぁ
 :逆に言えば、俺らが低コストでポンちゃんたちの飯食えてる事をありがたく思うべきでは?
 :そうだよ
 :そうだったわ

「そこまで気にしなくたっていいよ? 拾い物で作った有り合わせだから」

「じゃあ価格上げるか?」

 <コメント>
 :すいません、ナマ言いました
 :今の値段が非常にリーズナブルすぎて怖くなったんです
 :ダンセン支部での卸し辞めないでください!
 :いつも美味しい料理ありがとう!

 先ほどまでの勢いはどこへやら。一転して手のひらを返してくるリスナーさん達。

 自分たちの扱う食材、仕入れた食材、それに調味料もろもろは必要経費という考えでやってきたが、そろそろ考えを改める頃だろうか?

「ああ、うん。別に値上げは考えてないけど。俺たちの飯って芸術性に欠けるじゃん? そういう意味では価値が上がらないと思ってるんだけど、酒の肴レベルでもお金取る人っているのかなって。素朴な疑問」

「それ、気になってた。オレたちのスタイルはご存知の通り食品衛生法とか知ったこっちゃないその場での調理。そういう意味では口に入れてもいいって人は少ないのかなってさ」

 <コメント>
 :残念ながら、味やステアップは全てを覆すもので
 :ステアップするなら制作過程は度外視ですよ
 :今の時代にそんなこと考える人おる?
 :生まれがSの人にたまに居るくらい
 :まぁゴブリンは食わんけど
 :でもポンちゃんが率先してゴブリン食ったからそれで起死回生した人も居るんやぞ?
 :それなー

 卯保津さん以外にも居たのか。
 まぁ誰かの役に立ってるんなら、無駄じゃないって知れてよかった。

 その日は深夜まで飲み明かし、昼の二時から収録配信に切り替え。Aランクに向けてダンジョン攻略を再開した。

 久しぶりの飲み会配信のアーカイブは、各分野へ拡散され、なぜか非常に盛り上がった。

 俺たちの料理が盛り上がったのか、富井さんの会社が盛り上がったのか、定かではないが。
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