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159話 ダンジョン生活生配信 5
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俺がミィちゃんをあまり心配してないことの理由をいくつかまとめて流したところで、柏崎ダンジョンをお暇する。
すっかり酔っ払ったクララちゃんをなんとか宥めてユウジくんの元へ。
「うわ、何したらこうなるんスか! 倉持、平気か?」
「う、うーん。むにゃむにゃ……ふへへ」
ペチペチと頬を軽く打つユージ君に、クララちゃんは軽い寝返りを打つことで返事をする。
これは完全に寝てるなぁ。
一応起きてる時に仕事をこなしたのでよしとしようか。
俺たちは知らないが、ずっと働き詰めだったんだろうし。
ユウジ君は俺と同じで、楽しいと思ってる仕事で疲れないタイプだ。
それに付き合ってるうちに不満を口にできなくなってるとかありそうだ。
「一応、今回からAランクダンジョンの鮮魚を取り扱いできることになったから、今は寝かせてあげて。なれないお酒を飲んで疲れ切っちゃったみたいで。これ、お裾分け」
余ったシャリとネタで手毬寿司を作った。布巾で包んで一口サイズにまとめた寿司だ。手土産に持たせるのに見栄えも良い。
「あ、アザース」
クララちゃんをユウジ君に預けて、俺たちは拠点へと戻る。
今回は色々と料理に挑戦できて、俺も満足だ。
けど、同時に浮かび上がる不安要素も上がってきた。
それがダンジョン封鎖による世界情勢の変動。
日本政府が加工スキル持ちの待遇を改めたことにより、カースト社会に変化が起きた。
ステータス以外の要因で上位に上がるもの達がいる。
それをよく思わない人たちの不満が、少しづつ表に出てき始めている。
ダンジョンに閉じ込められてる人を憐れむ一方で、新たな上位カースト要因を歓迎できない。
ステータスが高いだけなら良い。
しかしダンジョンに出入りできるだけの相手を、どうして敬わなければならないのだ。
そんな感情が、コメントのあちこちで散見された。
ダンチューバーそのものが低ステータス者の拠り所と言うのもあり、高ステータス者から下に見られてる傾向もある。
生まれゆえの驕り。それしか縋るものがないとも言えるが、良くも悪くもこの社会がそう言う可哀想な人を産んだのは間違いない。
難しい問題だ。
だから深く考えずに、レスバトルもしない。
言い合ったところでお互いの言い分は平行線だし、誰も何も救われないから。
「しかしミィちゃんはどこいっても有名人だね」
「そりゃそうだろ。日本の誇り、だぜ?」
「若干二十代の少女に背負わせるには随分と重い誇りだと思わないか?」
「もう三十路だよ。大人だ」
「そうなんだけどさ。誰でも彼でも、彼女を頼りすぎな社会だと思ってさ」
「そりゃ、有名人の宿命だ」
「その解釈でいくと、俺たちも一応曲がりなりにも有名人だし、同じくらいの荷物を背負う必要があるんだが? しかもいい大人だ」
「ヨシ、今の話は無かったことにしようぜ」
ヨッちゃんは自分のことを棚に上げて今後のことを話そうぜ、と切り替えた。
今後のことねぇ。
ダンジョンセンターの現状を鑑みるに、それぞれの地域での中継展として活動しているように見える。
けど、活動拠点とするにはいささかおかしな場所にいる人達もいる。
武蔵野支部のダンジョンセンター職員がそれに該当する。
倒せないモンスター、奥に行くことも、戻ることもできないダンジョン流刑地。
迷い込んだらアウト。
これは偶然か、はたまた必然か。
あの人の考えがまるでわからない。
明日、クララちゃんに連絡をして、一度赴く必要があるな。
ジュリがいない今、オリンのワープポータルだけじゃジャンプするのに不安定だ。
そうと決めて、今日はゆっくり休んだ。
え、まだ昼前もいいところじゃないかって?
ダンジョンの中って本当に昼も夜もないんだ。
表にでたら、きっと昼夜逆転してそうで怖い。
まぁ、早々なアクシデントでもない限り出ないとは思うけど。
翌日、クララちゃんとの待ち合わせ場所で、俺は再び表の世界に出る。
ヨッちゃんはオリンの分体と共にダンジョンに残し、表の世界からダンジョンに直接ジャンプ、その後ヨッちゃんを回収する算段だ。
「すっかり荒れ果ててるねぇ、こっちは」
昔は眩しいくらいに輝いていた魔道具電灯が、今や見窄らしく街のあちこちに散見されていた。
まるでイトつの時代の終わりを目の当たりにしているようだ。
「ダンジョン産エネルギーが枯渇してる状況ですし、早々に打ち切って、今は違う電球に切り替えて、ここにあるのはその名残ですね」
「へぇ」
クララちゃんのセラヴィも未だ帰ってきていないそうだが、渡された認識阻害の能力は生きてるらしく、その中に俺も入れてもらい、街の中を移動する。
以前に比べて活気は無くなった街の中を、バス、電車で移動。
懐かしき武蔵野支部跡地にやってきて、自衛隊の前で顔パスで通る。
「これ、皆さんで食べてください」
「うわっ、なんだあんた! どこから現れた」
そのまま素通りするのも悪いと思って手土産を差し出せば、自衛隊の門番さんがすごく驚いた顔を差し向ける。
「洋一さん、大人しくしててください」
「いや、流石に素通りはまずいと思って」
「洋一、もしかしてあんた、本宝治洋一か? 北海道の英雄の!」
「まぁ、はい。そう呼ばれてはいますね。顔馴染みがこのダンジョンの奥に隔離されてると聞いて、援助しにきました。俺の加工スキルについては皆さんご存知ですよね? 通してもらってよろしいですか?」
自衛隊員はどこかに連絡をして、そして特例として一度だけの許可をもらった。よかった。
「見逃すのは一度だけだ。そして、出てきた時に何個か確認する事があるけどいいか?」
「はい、なんでも聞いちゃってください」
どうせもうダンジョンの外には出ないからね。一度開通すれば問題はないのだ。
どうにかこうにか門をくぐり、そして例のダンジョンへと再び足を運ぶ。
「ん? 直接こっちに足を運ぶなんて珍しいな……ポンちゃん?」
「お久しぶりです、卯保津さん」
「ポンちゃんじゃねぇか! 久しぶりだなぁ、おい! 藤本のやつはどうした?」
「どうもオリンの権限だけじゃ、こっちには直接来れないみたいでして。それで一旦置いてきてから、こっちにポータルを繋げようと思いまして。一応こっちと各地のダンジョンへのポータルも繋げてますし、ずっとここへ縛られる理由もなくなりましたね」
「そりゃあ助かるが、俺たちはここから動けないんだよ」
「理由を聞かせてもらっても?」
「迷い込んできたやつを匿う目的がある。だからクララにおもてんみ出て、情報を集めてもらってるんだ。それとポンちゃん、こっちの話は聞いてるか?」
「聞いてみるまではわかりませんね。海外でも同じようなダンジョン封鎖が起こってるとかですか?」
「流石にそれは知ってたか。でもな、それだけじゃねぇ。世界中のダンジョンがつながっちまってんのさ。移民はダンジョン内で起こってる。拠点の奪い合いが起きかねない」
「そりゃあ、厄介ごとですねぇ」
会話さえ通じれば、なんとかなるが生活圏で訛りやスラングも出てくる多国籍の探索者たち。それを全て翻訳するにはDフォンは必須だ。ヘッドセットマイクも欲しいところ、しかし、南明の遭難者がいるかもわからない現状である。
「そうなんだよ、その上でここは敵が強すぎる。運良くこっちに飛ばされたら、目も当てられない」
「じゃあ、こう言う方策はどうです?」
俺はヨッちゃんを呼び寄せて、全員を入り口付近に集めた上で入り口から森に広がる通路を封鎖。『この先行き止まり、引き返せ』と言う看板を掲げ、左側に人が一人通れるほどの穴を掘って、そこにワープポータルを置いた。
「これなら、無理して奥に行かず、魔法陣で他のダンジョンに向かえるはずです」
「日本人ならな」
「あぁ、いろんな国の探索者が迷い込む可能性があるのか。でも、正直ここにくるほどの探索者なら、Dフォン持ってません?」
モンスターの討伐難度から見ても、ここはSSSSSランク。
一般スキルは通じず、加工スキルのみが通る地獄。
設置型モンスターによる一方的な搾取のみが罷り通る、生きた心地のしないダンジョンだ。
一時期拠点にしていた俺たちが言うことじゃないけど。
「そうであることを祈るしかないわな。俺は他のセンター職員に連絡してから移動する。他の連中はポンちゃんと一緒に移動しててくれ。俺は後で行く」
「いや、俺は別んぽ場所を案内するだけで、ここには住みますよ?」
「ん?」
「えっ」
お互いに話が噛み合わないまま、数分の時が流れる。
「じゃあ、なんで入り口塞いだんだ?」
「迷子防止のためですよ。俺たちは別に迷子でもなんでもないですし。そもそも、こっちの攻略すら終わってませんからね」
その続きをこれからしようとするのだ。
何もおかしなところはないはず。
「ああ、俺の話を聞いての誘導がそれか」
「はい、それでも突破してくる人もいるかもしれませんので、拠点は作っておきたいです。なんなら、お店開いてもいいですし」
「ポンちゃんたちならヘッドセットもあるし、言語も通じる?」
「そう言うことになるな。あとはうちらに任せとけって、オッサン」
ヨッちゃんが卯保津さんの肩を叩く。
「お前は、見た目を変えても中身が全く変わらんなぁ」
「それがオレだぜ?」
何をそんなに威張ることがあるのか、ヨッちゃんは薄い胸を叩いてみせた。
「はい、と言うわけで。今日はSSSSSランクダンジョンにやってきています。見てください、この風景を。生存競争のトップたちが君臨するこの世の地獄です! 今日はですね、ここをキャンプ地とする心得をね、考えていこうと思ってます」
<コメント>
:だから飛びすぎだって、ランク
:F、Eから一気にA。そして次はSSSSSか、壊れるなぁ
:《美作左近》もういいよ
:ほらー、企画主拗ねちゃった
:初めから無理な要求だったろ?
:ただの料理番組に求めすぎなんだよなぁ
:ただの料理番組がSSSSSランクダンジョンにくるわけないだろ! いい加減にしろ!
「まぁ、元ホームですよね」
<コメント>
:元ホームは草
:そういや、ここの出土品が世間を賑わせてたんだなぁ
:懐かしいなぁ
:そんな前の話でもないけどな
:ダンジョンが封鎖される前はそれで人が殺到してましたよね
:この世の地獄定期
「とりあえずあれだ、トイレと風呂は作った。水は、魔法でなんとかしてもろて」
「お疲れー」
「めっちゃ疲れた」
<コメント>
:嘘だぞ、朝飯前みたいな顔してるぞ
:この前Aランクでやった大掛かりな工事より楽そうで草
:工具もなしでそれをやってのけるのは専門分野ゴロシなんよ
:大工関係は廃業に追い込まれるよな
「なんで? オレは誰でも彼でも仕事受けないよ? それに自分が使うからこだわるのは普通だろうが」
<コメント>
:そりゃそうよ
:自分が使うのはこだわる、それはそう
:まぁ自分用ならな
:それで商売するとなったら手も抜くか
:よかった、ヨッちゃんが表で商売する気0で本当に良かった
ヨッちゃんてば、俺と同じような事情で商売敵から警戒されてやんの。
まぁ、表に出ていけばそう言うやっ紙はどこでも生まれるからね。
仕方ないっちゃ仕方ないことか。
すっかり酔っ払ったクララちゃんをなんとか宥めてユウジくんの元へ。
「うわ、何したらこうなるんスか! 倉持、平気か?」
「う、うーん。むにゃむにゃ……ふへへ」
ペチペチと頬を軽く打つユージ君に、クララちゃんは軽い寝返りを打つことで返事をする。
これは完全に寝てるなぁ。
一応起きてる時に仕事をこなしたのでよしとしようか。
俺たちは知らないが、ずっと働き詰めだったんだろうし。
ユウジ君は俺と同じで、楽しいと思ってる仕事で疲れないタイプだ。
それに付き合ってるうちに不満を口にできなくなってるとかありそうだ。
「一応、今回からAランクダンジョンの鮮魚を取り扱いできることになったから、今は寝かせてあげて。なれないお酒を飲んで疲れ切っちゃったみたいで。これ、お裾分け」
余ったシャリとネタで手毬寿司を作った。布巾で包んで一口サイズにまとめた寿司だ。手土産に持たせるのに見栄えも良い。
「あ、アザース」
クララちゃんをユウジ君に預けて、俺たちは拠点へと戻る。
今回は色々と料理に挑戦できて、俺も満足だ。
けど、同時に浮かび上がる不安要素も上がってきた。
それがダンジョン封鎖による世界情勢の変動。
日本政府が加工スキル持ちの待遇を改めたことにより、カースト社会に変化が起きた。
ステータス以外の要因で上位に上がるもの達がいる。
それをよく思わない人たちの不満が、少しづつ表に出てき始めている。
ダンジョンに閉じ込められてる人を憐れむ一方で、新たな上位カースト要因を歓迎できない。
ステータスが高いだけなら良い。
しかしダンジョンに出入りできるだけの相手を、どうして敬わなければならないのだ。
そんな感情が、コメントのあちこちで散見された。
ダンチューバーそのものが低ステータス者の拠り所と言うのもあり、高ステータス者から下に見られてる傾向もある。
生まれゆえの驕り。それしか縋るものがないとも言えるが、良くも悪くもこの社会がそう言う可哀想な人を産んだのは間違いない。
難しい問題だ。
だから深く考えずに、レスバトルもしない。
言い合ったところでお互いの言い分は平行線だし、誰も何も救われないから。
「しかしミィちゃんはどこいっても有名人だね」
「そりゃそうだろ。日本の誇り、だぜ?」
「若干二十代の少女に背負わせるには随分と重い誇りだと思わないか?」
「もう三十路だよ。大人だ」
「そうなんだけどさ。誰でも彼でも、彼女を頼りすぎな社会だと思ってさ」
「そりゃ、有名人の宿命だ」
「その解釈でいくと、俺たちも一応曲がりなりにも有名人だし、同じくらいの荷物を背負う必要があるんだが? しかもいい大人だ」
「ヨシ、今の話は無かったことにしようぜ」
ヨッちゃんは自分のことを棚に上げて今後のことを話そうぜ、と切り替えた。
今後のことねぇ。
ダンジョンセンターの現状を鑑みるに、それぞれの地域での中継展として活動しているように見える。
けど、活動拠点とするにはいささかおかしな場所にいる人達もいる。
武蔵野支部のダンジョンセンター職員がそれに該当する。
倒せないモンスター、奥に行くことも、戻ることもできないダンジョン流刑地。
迷い込んだらアウト。
これは偶然か、はたまた必然か。
あの人の考えがまるでわからない。
明日、クララちゃんに連絡をして、一度赴く必要があるな。
ジュリがいない今、オリンのワープポータルだけじゃジャンプするのに不安定だ。
そうと決めて、今日はゆっくり休んだ。
え、まだ昼前もいいところじゃないかって?
ダンジョンの中って本当に昼も夜もないんだ。
表にでたら、きっと昼夜逆転してそうで怖い。
まぁ、早々なアクシデントでもない限り出ないとは思うけど。
翌日、クララちゃんとの待ち合わせ場所で、俺は再び表の世界に出る。
ヨッちゃんはオリンの分体と共にダンジョンに残し、表の世界からダンジョンに直接ジャンプ、その後ヨッちゃんを回収する算段だ。
「すっかり荒れ果ててるねぇ、こっちは」
昔は眩しいくらいに輝いていた魔道具電灯が、今や見窄らしく街のあちこちに散見されていた。
まるでイトつの時代の終わりを目の当たりにしているようだ。
「ダンジョン産エネルギーが枯渇してる状況ですし、早々に打ち切って、今は違う電球に切り替えて、ここにあるのはその名残ですね」
「へぇ」
クララちゃんのセラヴィも未だ帰ってきていないそうだが、渡された認識阻害の能力は生きてるらしく、その中に俺も入れてもらい、街の中を移動する。
以前に比べて活気は無くなった街の中を、バス、電車で移動。
懐かしき武蔵野支部跡地にやってきて、自衛隊の前で顔パスで通る。
「これ、皆さんで食べてください」
「うわっ、なんだあんた! どこから現れた」
そのまま素通りするのも悪いと思って手土産を差し出せば、自衛隊の門番さんがすごく驚いた顔を差し向ける。
「洋一さん、大人しくしててください」
「いや、流石に素通りはまずいと思って」
「洋一、もしかしてあんた、本宝治洋一か? 北海道の英雄の!」
「まぁ、はい。そう呼ばれてはいますね。顔馴染みがこのダンジョンの奥に隔離されてると聞いて、援助しにきました。俺の加工スキルについては皆さんご存知ですよね? 通してもらってよろしいですか?」
自衛隊員はどこかに連絡をして、そして特例として一度だけの許可をもらった。よかった。
「見逃すのは一度だけだ。そして、出てきた時に何個か確認する事があるけどいいか?」
「はい、なんでも聞いちゃってください」
どうせもうダンジョンの外には出ないからね。一度開通すれば問題はないのだ。
どうにかこうにか門をくぐり、そして例のダンジョンへと再び足を運ぶ。
「ん? 直接こっちに足を運ぶなんて珍しいな……ポンちゃん?」
「お久しぶりです、卯保津さん」
「ポンちゃんじゃねぇか! 久しぶりだなぁ、おい! 藤本のやつはどうした?」
「どうもオリンの権限だけじゃ、こっちには直接来れないみたいでして。それで一旦置いてきてから、こっちにポータルを繋げようと思いまして。一応こっちと各地のダンジョンへのポータルも繋げてますし、ずっとここへ縛られる理由もなくなりましたね」
「そりゃあ助かるが、俺たちはここから動けないんだよ」
「理由を聞かせてもらっても?」
「迷い込んできたやつを匿う目的がある。だからクララにおもてんみ出て、情報を集めてもらってるんだ。それとポンちゃん、こっちの話は聞いてるか?」
「聞いてみるまではわかりませんね。海外でも同じようなダンジョン封鎖が起こってるとかですか?」
「流石にそれは知ってたか。でもな、それだけじゃねぇ。世界中のダンジョンがつながっちまってんのさ。移民はダンジョン内で起こってる。拠点の奪い合いが起きかねない」
「そりゃあ、厄介ごとですねぇ」
会話さえ通じれば、なんとかなるが生活圏で訛りやスラングも出てくる多国籍の探索者たち。それを全て翻訳するにはDフォンは必須だ。ヘッドセットマイクも欲しいところ、しかし、南明の遭難者がいるかもわからない現状である。
「そうなんだよ、その上でここは敵が強すぎる。運良くこっちに飛ばされたら、目も当てられない」
「じゃあ、こう言う方策はどうです?」
俺はヨッちゃんを呼び寄せて、全員を入り口付近に集めた上で入り口から森に広がる通路を封鎖。『この先行き止まり、引き返せ』と言う看板を掲げ、左側に人が一人通れるほどの穴を掘って、そこにワープポータルを置いた。
「これなら、無理して奥に行かず、魔法陣で他のダンジョンに向かえるはずです」
「日本人ならな」
「あぁ、いろんな国の探索者が迷い込む可能性があるのか。でも、正直ここにくるほどの探索者なら、Dフォン持ってません?」
モンスターの討伐難度から見ても、ここはSSSSSランク。
一般スキルは通じず、加工スキルのみが通る地獄。
設置型モンスターによる一方的な搾取のみが罷り通る、生きた心地のしないダンジョンだ。
一時期拠点にしていた俺たちが言うことじゃないけど。
「そうであることを祈るしかないわな。俺は他のセンター職員に連絡してから移動する。他の連中はポンちゃんと一緒に移動しててくれ。俺は後で行く」
「いや、俺は別んぽ場所を案内するだけで、ここには住みますよ?」
「ん?」
「えっ」
お互いに話が噛み合わないまま、数分の時が流れる。
「じゃあ、なんで入り口塞いだんだ?」
「迷子防止のためですよ。俺たちは別に迷子でもなんでもないですし。そもそも、こっちの攻略すら終わってませんからね」
その続きをこれからしようとするのだ。
何もおかしなところはないはず。
「ああ、俺の話を聞いての誘導がそれか」
「はい、それでも突破してくる人もいるかもしれませんので、拠点は作っておきたいです。なんなら、お店開いてもいいですし」
「ポンちゃんたちならヘッドセットもあるし、言語も通じる?」
「そう言うことになるな。あとはうちらに任せとけって、オッサン」
ヨッちゃんが卯保津さんの肩を叩く。
「お前は、見た目を変えても中身が全く変わらんなぁ」
「それがオレだぜ?」
何をそんなに威張ることがあるのか、ヨッちゃんは薄い胸を叩いてみせた。
「はい、と言うわけで。今日はSSSSSランクダンジョンにやってきています。見てください、この風景を。生存競争のトップたちが君臨するこの世の地獄です! 今日はですね、ここをキャンプ地とする心得をね、考えていこうと思ってます」
<コメント>
:だから飛びすぎだって、ランク
:F、Eから一気にA。そして次はSSSSSか、壊れるなぁ
:《美作左近》もういいよ
:ほらー、企画主拗ねちゃった
:初めから無理な要求だったろ?
:ただの料理番組に求めすぎなんだよなぁ
:ただの料理番組がSSSSSランクダンジョンにくるわけないだろ! いい加減にしろ!
「まぁ、元ホームですよね」
<コメント>
:元ホームは草
:そういや、ここの出土品が世間を賑わせてたんだなぁ
:懐かしいなぁ
:そんな前の話でもないけどな
:ダンジョンが封鎖される前はそれで人が殺到してましたよね
:この世の地獄定期
「とりあえずあれだ、トイレと風呂は作った。水は、魔法でなんとかしてもろて」
「お疲れー」
「めっちゃ疲れた」
<コメント>
:嘘だぞ、朝飯前みたいな顔してるぞ
:この前Aランクでやった大掛かりな工事より楽そうで草
:工具もなしでそれをやってのけるのは専門分野ゴロシなんよ
:大工関係は廃業に追い込まれるよな
「なんで? オレは誰でも彼でも仕事受けないよ? それに自分が使うからこだわるのは普通だろうが」
<コメント>
:そりゃそうよ
:自分が使うのはこだわる、それはそう
:まぁ自分用ならな
:それで商売するとなったら手も抜くか
:よかった、ヨッちゃんが表で商売する気0で本当に良かった
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仕方ないっちゃ仕方ないことか。
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