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1章 お爺ちゃんとVR
020.お爺ちゃん、スキルの仕組みを知る
「朝から二人でなんの取り引きをしてるんだい?」
そこへいい笑顔を浮かべた秋人君が現れる。
娘は先ほどまでの勝ち誇っていた笑みを青白くさせながらその場で縮こまった。
言わんこっちゃない。由香里は三姉妹の末っ子として育った。
父親として平等に接していたつもりだったが、由香里は私を独り占めしようとよくおねだりをして来た。独占欲が強いんだろうね。
目に入れても痛くないと思っていた私はそれはもう相手をしてやったもんだよ。
それは上二人がお洒落に目覚めて私から距離を取るようになって。
由香里だけは変わらず私にすり寄ってきてくれたんだ。
男親としてはそれが嬉しくてね。ついつい甘やかして育ててしまった。それが原因で彼女は私の前では猫をかぶるのをやめるんだ。
夫の前では気の利く妻として。娘の前では気配りのできる母親を演じている。私はそのガス抜きを手伝っているに過ぎない。
未だに頼ってくれるのはもう娘だけになってしまったというのもあるけどね。
「おはよう秋人君。なに、こんなものは親子の軽いスキンシップだよ。彼女は私に対して自然体で接してくれる数少ない一人だからね。度が過ぎてしまうのは私がそれを許容してしまうからだ。だから彼女がこうなってしまった原因は私にもある」
「そうでしたか。何やら陰謀めいた話が聞こえたもので。これはちょっと僕が割って入った方がいいかなと」
残念だったね由香里。どうやらバッチリ聞かれてたみたいだぞ?
「すいません、僕の知らないところでお義父さんにご迷惑をかけていたようで。夫として謝罪します」
「うん。まあ頭を下げられるようなことはしてないよ。たまにはこうやってガス抜きをさせてあげないと彼女は私に似て溜め込んでしまいがちだからね」
「それこそ僕の役目ですよ。由香里、僕はそんなに頼りない男かい?」
「あなた。ごめんなさい、私が間違ってたわ」
そう言いながら娘は秋人君の胸へと飛びついた。
朝から見せつけてくれるね。
「おかーさん、朝ごはんはー?」
そこでタイミング悪く孫の美咲が現れる。
今日は朝練のない日だとかでゆっくり眠っていたようだ。まだ寝起きのようで目蓋を擦りながら現れる。相変わらず寝癖がひどいので私は立ち上がり、二人を視界に入れさせないようにしながら美咲を洗面所へと連れていく。
背後から二人の感謝する声が聞こえた。
朝の一波乱を終えて、孫が学校に旅立つのを見送る。
いつもならここで秋人君も一緒に出かけるのだが、今日はどうも様子が違うようだ。娘と一緒に二人並んで真剣な顔をしていた。
「お義父さん、改めて謝罪させていただきます」
礼をしながら娘もそれに倣っている。
「だからお礼はいらないと」
「今回のイベントの件ですよ」
ふむ? それこそこちらが引き起こしてしまった不始末だ。
改めても何もこちらが迷惑をかけてしまった以上、こちらも責任を感じているので情報の提供は吝かではない。ただでさえ戦えない身だからね。
「妻はお義父さんに責任があるように言いますが、実際は自分たちの前にこのイベントが転がり込んできてくれて喜んでいるのが実情です」
「つまり?」
「このゲームに限って言えば、情報が全てと言ってもいいでしょう。しかし僕たちはスタートダッシュが遅れてしまった。先行開始組のβテスターとの差は開く一方。クランの人数は増やせど、情報という一点で大手クランと圧倒的な差をつけられています」
「なるほどね。今回の防衛戦は君たちのクランにとっては旨味しかないわけだ。それは気合が入るわけだね。これでクランとしても大きく立ち回れるわけだからね」
「はい。なのに妻ときたら更にお義父さんから搾り取ろうとしているようなので呆れてしまったんです。これ以上何を望むつもりだってね」
「分かった。そういう事なら謝罪を受け入れよう」
「ありがとうございます。それと、貰ってばかりじゃ悪いのでお義父さんにもこちらからいくつか情報を渡そうと思います。どんなものがいいですか?」
「お父さんは冒険しないって言ってたけど、ゴミ掃除の時の機敏な動きは必要だと思ったの。だから私達はスキルシステムの仕組みを教えようって、そう話し合ったわ」
「なるほどね。しかし私のスキルはパッシヴだ。常時発動型のスキルは成長しないものだと思っていたが違うのかい?」
「まずその考え方からこのゲームでは通用しません」
「ふむ。詳しく聞こう」
秋人君曰く、このゲームはあらゆる部分で特殊だそうだ。
普通ならスキル取得は種族LVをアップさせて得られるスキルポイントなるもので自由に獲得できるゲームが多い中、このゲームはそこから先が全て手探りになっていた。
スキルによる熟練度も特に設定されておらず、条件を満たさない限り派生も成長もしない。
その理由の一つが、初めに設定したスキルによるものだ。
このゲームでは、後から違う系統のスキルを新たに獲得することができない。最初に選んだスキルの派生スキルの選択しか許されないのだ。
故に全く同じ種族、スキルビルドでもプレイスタイルによっては異なる方向性のスキルが生えてくる。
私の場合だとこうだ。
【パッシヴ:5】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]new!
◎木登り補正
┗壁上り補正[1/4]new!
◎水泳補正
┣潜水[3/4]new!
┗古代泳法[1/4]new!
◎低酸素内活動』
┗水中呼吸[1/4]new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]new!
少し見ないうちに随分と成長していたな。
どのフレーバーアイテムが由来で生まれたスキルなのかは全くわからないが、生えてきたスキルは確かにここ数日で体験した記憶のあるものばかりだった。
ゴミ拾いの時、大物の手応えのあったアレは必中に大きく関わっているだろう。持久力UPが成長したのもゴミ拾い。壁上りは多分、娘を誘う前に無駄に壁に登ったりを繰り返したからだろうか?
潜水は言わずもがなスズキさんについて行った時。水中呼吸も同様に。古代泳法についてはさっぱり記憶にないが、もしかしてスズキさんの泳ぎを真似しようとしたときのあの行動が関わっていたのか?
と、こんな風にスキルの派生はプレイスタイルによる。
だからスキルを埋めるフレーバーアイテムの特定が難しいのだとされていた。
そこで役に立つのがブログ。
特に自分のスキルに関係ありそうな記事を見つけて読むとスキルの分子が埋まることもあり、一定数の人気があると分かった。
ちなみに私のブログの固定ファンは、娘夫婦のクランメンバー60人全員だそうだ。一度でもスキルが開花したものは固定ファンになる確率が大きいらしい。
さっぱり実感が湧かないが、ただイベントを掘り当てた以外にそんな仕組みがあると知り、余計に興味が湧いて来た。
それでも私の趣旨は変わる事はない。
自分の写真で感動を与えてやりたい。ただそれだけなんだ。
だいたいにしろ私にそんな大それた事をしてるって自覚がないからね。私は私のやりたいようにやらせてもらうさ。
そこへいい笑顔を浮かべた秋人君が現れる。
娘は先ほどまでの勝ち誇っていた笑みを青白くさせながらその場で縮こまった。
言わんこっちゃない。由香里は三姉妹の末っ子として育った。
父親として平等に接していたつもりだったが、由香里は私を独り占めしようとよくおねだりをして来た。独占欲が強いんだろうね。
目に入れても痛くないと思っていた私はそれはもう相手をしてやったもんだよ。
それは上二人がお洒落に目覚めて私から距離を取るようになって。
由香里だけは変わらず私にすり寄ってきてくれたんだ。
男親としてはそれが嬉しくてね。ついつい甘やかして育ててしまった。それが原因で彼女は私の前では猫をかぶるのをやめるんだ。
夫の前では気の利く妻として。娘の前では気配りのできる母親を演じている。私はそのガス抜きを手伝っているに過ぎない。
未だに頼ってくれるのはもう娘だけになってしまったというのもあるけどね。
「おはよう秋人君。なに、こんなものは親子の軽いスキンシップだよ。彼女は私に対して自然体で接してくれる数少ない一人だからね。度が過ぎてしまうのは私がそれを許容してしまうからだ。だから彼女がこうなってしまった原因は私にもある」
「そうでしたか。何やら陰謀めいた話が聞こえたもので。これはちょっと僕が割って入った方がいいかなと」
残念だったね由香里。どうやらバッチリ聞かれてたみたいだぞ?
「すいません、僕の知らないところでお義父さんにご迷惑をかけていたようで。夫として謝罪します」
「うん。まあ頭を下げられるようなことはしてないよ。たまにはこうやってガス抜きをさせてあげないと彼女は私に似て溜め込んでしまいがちだからね」
「それこそ僕の役目ですよ。由香里、僕はそんなに頼りない男かい?」
「あなた。ごめんなさい、私が間違ってたわ」
そう言いながら娘は秋人君の胸へと飛びついた。
朝から見せつけてくれるね。
「おかーさん、朝ごはんはー?」
そこでタイミング悪く孫の美咲が現れる。
今日は朝練のない日だとかでゆっくり眠っていたようだ。まだ寝起きのようで目蓋を擦りながら現れる。相変わらず寝癖がひどいので私は立ち上がり、二人を視界に入れさせないようにしながら美咲を洗面所へと連れていく。
背後から二人の感謝する声が聞こえた。
朝の一波乱を終えて、孫が学校に旅立つのを見送る。
いつもならここで秋人君も一緒に出かけるのだが、今日はどうも様子が違うようだ。娘と一緒に二人並んで真剣な顔をしていた。
「お義父さん、改めて謝罪させていただきます」
礼をしながら娘もそれに倣っている。
「だからお礼はいらないと」
「今回のイベントの件ですよ」
ふむ? それこそこちらが引き起こしてしまった不始末だ。
改めても何もこちらが迷惑をかけてしまった以上、こちらも責任を感じているので情報の提供は吝かではない。ただでさえ戦えない身だからね。
「妻はお義父さんに責任があるように言いますが、実際は自分たちの前にこのイベントが転がり込んできてくれて喜んでいるのが実情です」
「つまり?」
「このゲームに限って言えば、情報が全てと言ってもいいでしょう。しかし僕たちはスタートダッシュが遅れてしまった。先行開始組のβテスターとの差は開く一方。クランの人数は増やせど、情報という一点で大手クランと圧倒的な差をつけられています」
「なるほどね。今回の防衛戦は君たちのクランにとっては旨味しかないわけだ。それは気合が入るわけだね。これでクランとしても大きく立ち回れるわけだからね」
「はい。なのに妻ときたら更にお義父さんから搾り取ろうとしているようなので呆れてしまったんです。これ以上何を望むつもりだってね」
「分かった。そういう事なら謝罪を受け入れよう」
「ありがとうございます。それと、貰ってばかりじゃ悪いのでお義父さんにもこちらからいくつか情報を渡そうと思います。どんなものがいいですか?」
「お父さんは冒険しないって言ってたけど、ゴミ掃除の時の機敏な動きは必要だと思ったの。だから私達はスキルシステムの仕組みを教えようって、そう話し合ったわ」
「なるほどね。しかし私のスキルはパッシヴだ。常時発動型のスキルは成長しないものだと思っていたが違うのかい?」
「まずその考え方からこのゲームでは通用しません」
「ふむ。詳しく聞こう」
秋人君曰く、このゲームはあらゆる部分で特殊だそうだ。
普通ならスキル取得は種族LVをアップさせて得られるスキルポイントなるもので自由に獲得できるゲームが多い中、このゲームはそこから先が全て手探りになっていた。
スキルによる熟練度も特に設定されておらず、条件を満たさない限り派生も成長もしない。
その理由の一つが、初めに設定したスキルによるものだ。
このゲームでは、後から違う系統のスキルを新たに獲得することができない。最初に選んだスキルの派生スキルの選択しか許されないのだ。
故に全く同じ種族、スキルビルドでもプレイスタイルによっては異なる方向性のスキルが生えてくる。
私の場合だとこうだ。
【パッシヴ:5】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]new!
◎木登り補正
┗壁上り補正[1/4]new!
◎水泳補正
┣潜水[3/4]new!
┗古代泳法[1/4]new!
◎低酸素内活動』
┗水中呼吸[1/4]new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]new!
少し見ないうちに随分と成長していたな。
どのフレーバーアイテムが由来で生まれたスキルなのかは全くわからないが、生えてきたスキルは確かにここ数日で体験した記憶のあるものばかりだった。
ゴミ拾いの時、大物の手応えのあったアレは必中に大きく関わっているだろう。持久力UPが成長したのもゴミ拾い。壁上りは多分、娘を誘う前に無駄に壁に登ったりを繰り返したからだろうか?
潜水は言わずもがなスズキさんについて行った時。水中呼吸も同様に。古代泳法についてはさっぱり記憶にないが、もしかしてスズキさんの泳ぎを真似しようとしたときのあの行動が関わっていたのか?
と、こんな風にスキルの派生はプレイスタイルによる。
だからスキルを埋めるフレーバーアイテムの特定が難しいのだとされていた。
そこで役に立つのがブログ。
特に自分のスキルに関係ありそうな記事を見つけて読むとスキルの分子が埋まることもあり、一定数の人気があると分かった。
ちなみに私のブログの固定ファンは、娘夫婦のクランメンバー60人全員だそうだ。一度でもスキルが開花したものは固定ファンになる確率が大きいらしい。
さっぱり実感が湧かないが、ただイベントを掘り当てた以外にそんな仕組みがあると知り、余計に興味が湧いて来た。
それでも私の趣旨は変わる事はない。
自分の写真で感動を与えてやりたい。ただそれだけなんだ。
だいたいにしろ私にそんな大それた事をしてるって自覚がないからね。私は私のやりたいようにやらせてもらうさ。
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