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1章 お爺ちゃんとVR
021.お爺ちゃん、木に登る
「それでは行ってくるよ」
「行ってらっしゃい」
「じゃあ私もボチボチ散策しようかね」
「お土産期待してるね」
「毎回都合よく拾って帰っては来れないよ?」
「それは分かってる。お父さんがどこに行って何をして来たってお話だけでいいの。どんな風にゲームを堪能してるか個人的に知りたいだけだし」
「そういう事なら任せておいてくれ」
娘と二人で秋人君を会社に送り、私の方もゲームへと入り込む。
今や家族共通の趣味になりつつあるアトランティスワールドオンライン。初日や翌日のように誰かに会いにいく予定がなくても気兼ねなく入れるようになっていた。
特に誰ともアポイントメントを取ってもいないが、やってみたい事はいくつかある。
要は検証の類だ。
最初こそそれしかないからと補正を頼りに動き回った。その結果が派生スキルとして生えた。ならば当然、違う動きをすればそれに準じたスキルが生える可能性もある。
スキルを取った当初、私は山登りをしたくて選択していた。
しかしやったことと言えば街や水路の清掃ばかり。だから私は登れる範囲のところを片っ端から登って見ることにした。
「ふむ、この高さでは特に何も変わらないなぁ」
まずは目についた街路樹の上に登る。
昔とった杵柄ではないが、木の上に登って枝に引っ掛けた風船を拾うなんてことをよくやっていたのが役に立った。
とは言え木登りの補正があるので上りきるのにはそれほど苦労はしなかった。
今度は少し背の高い木の上に登る。
すると、頭の中で何かがカチリと合わさる音がした。何かを伝えてくる電子音にしては聞いたことのないタイプ。
そしてスキルの欄を開いてみると、そこには新たなスキルが生えていた。
【パッシヴ:5】
◎持久力UP
┗持久力UP中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[1/10]new!
◎水泳補正
┗潜水[3/4]
◎低酸素内活動
┗水中呼吸[1/4]
◎命中率UP
┗必中[3/5]
このパターンは初めてみる。今見た景色に対しスクリーンショットを行っておく。それによって検証できるかもしれないから。
それとやはり大通りの木に登ったのは不味かったかもしれない。
先程から道ゆく人々の視線が痛いなんてものじゃないからね。
以後気をつけるとしよう。
気にかかるのは木登りの上位スキルのような伸び方。
他のスキルに比べて分母も些か大きいように思う。
これが生えたきっかけは実際に木に登ったことが大きいのかな。
でもどうして一回目の街路樹はダメだったんだろう。
登った木に何かヒントでもあるのだろうか?
それとも登るにしろ高さが必要ということなのだろうか。
わからないことばかりだけど、今日の行動目標は定まった。
取り敢えずある程度の高さのある木を見つけて登る。それだけだ。
いくつか木登りして判明した事は、やはり木の種類によって上りきった後に実績として分子が加算する事だった。
1/10だったかけらは4/10まで集め切ることに成功しました。
残念ながらこれらはスクリーンショットによる映像で得られるパターンではないようでブログを漁ってお手軽ゲットという方向性は消えてしまいました。
「なるほど、それで木の上に登ってたんですね。一瞬あの上に何か大事なものでも引っ掛けてしまったのかと思いましたが、特に何もないのでどうしたのかと思いましたよ」
「いやいや、お恥ずかしい所を見られてしまいました」
木登りの最中、道ゆくジキンさんと偶然目があってしまった私は何事もなかったかのように合流し、喫茶店へと流れ込んだ。
彼はあの後息子さんと一緒に行動し、戦闘に参加するもやはり一緒に行動するのが辛くて後方に戻って来たのだと語る。
ちょっと、あれだけかっこいい感じで見送ったのに戻ってくるの早すぎやしませんか?
まだ一日しか経ってませんよ。
私としては嬉しいですけど、どうやって受け入れればいいんでしょうかこの気持ち。
「やはり若者と一緒に混ざっての行動はダメですね。色々と文句を言いたくなる。特に息子だからという感覚が抜けなくて……戦闘ではお荷物もいいところの僕が言動ばかり大きくて、はは」
どうもこの人、仮にもクランの幹部である息子さんをメンバーの前で扱き下ろしたから後方に追いやられたようですよ。何してんですか、全く。
「それはご愁傷様でした。どうです、私と一緒にブログのネタ探しでも」
「良いですね。僕も掲示板に目を通してみたんですが、頭の中がパニックになってしまってどうにもなりませんでした。あれはサイバーテロか何かですか? 僕たちの時代の掲示板が懐かしく思えますよ」
実際には見たことないんですが、相当凄いようですよ。なんだか今から見るのが怖くなって来ます。
「ならばこれを機にブログデビューでもしてみませんか?」
「とはいえ僕はあまり趣味らしい趣味を持たなくて、何を書いていいかも分かりません」
「実は私も以前までは仕事人間でしてね。無趣味だったんですよ」
「それは初耳です」
「それで妻に勧められて、始めた趣味が写真だったわけです」
「だからこっちでもそれでやっていこうと思ったんですか?」
「ええ。今更冒険て歳でもないですから」
「わかります。年寄りは年寄りらしく行きますか」
「そうですよ。だからと言ってゲートボールに勤しむほどガタは来てません」
「ハハ、確かにそうですね」
ジキンさんとは喫茶店の外で別れることになった。
彼も彼でやることがあるらしく、これからログアウトするようだったので私もソロ活動を再開させる。
スズキさんはまだログインしてない様子ですし、もうしばらく木登りの検証でもしてみますか。
「行ってらっしゃい」
「じゃあ私もボチボチ散策しようかね」
「お土産期待してるね」
「毎回都合よく拾って帰っては来れないよ?」
「それは分かってる。お父さんがどこに行って何をして来たってお話だけでいいの。どんな風にゲームを堪能してるか個人的に知りたいだけだし」
「そういう事なら任せておいてくれ」
娘と二人で秋人君を会社に送り、私の方もゲームへと入り込む。
今や家族共通の趣味になりつつあるアトランティスワールドオンライン。初日や翌日のように誰かに会いにいく予定がなくても気兼ねなく入れるようになっていた。
特に誰ともアポイントメントを取ってもいないが、やってみたい事はいくつかある。
要は検証の類だ。
最初こそそれしかないからと補正を頼りに動き回った。その結果が派生スキルとして生えた。ならば当然、違う動きをすればそれに準じたスキルが生える可能性もある。
スキルを取った当初、私は山登りをしたくて選択していた。
しかしやったことと言えば街や水路の清掃ばかり。だから私は登れる範囲のところを片っ端から登って見ることにした。
「ふむ、この高さでは特に何も変わらないなぁ」
まずは目についた街路樹の上に登る。
昔とった杵柄ではないが、木の上に登って枝に引っ掛けた風船を拾うなんてことをよくやっていたのが役に立った。
とは言え木登りの補正があるので上りきるのにはそれほど苦労はしなかった。
今度は少し背の高い木の上に登る。
すると、頭の中で何かがカチリと合わさる音がした。何かを伝えてくる電子音にしては聞いたことのないタイプ。
そしてスキルの欄を開いてみると、そこには新たなスキルが生えていた。
【パッシヴ:5】
◎持久力UP
┗持久力UP中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[1/10]new!
◎水泳補正
┗潜水[3/4]
◎低酸素内活動
┗水中呼吸[1/4]
◎命中率UP
┗必中[3/5]
このパターンは初めてみる。今見た景色に対しスクリーンショットを行っておく。それによって検証できるかもしれないから。
それとやはり大通りの木に登ったのは不味かったかもしれない。
先程から道ゆく人々の視線が痛いなんてものじゃないからね。
以後気をつけるとしよう。
気にかかるのは木登りの上位スキルのような伸び方。
他のスキルに比べて分母も些か大きいように思う。
これが生えたきっかけは実際に木に登ったことが大きいのかな。
でもどうして一回目の街路樹はダメだったんだろう。
登った木に何かヒントでもあるのだろうか?
それとも登るにしろ高さが必要ということなのだろうか。
わからないことばかりだけど、今日の行動目標は定まった。
取り敢えずある程度の高さのある木を見つけて登る。それだけだ。
いくつか木登りして判明した事は、やはり木の種類によって上りきった後に実績として分子が加算する事だった。
1/10だったかけらは4/10まで集め切ることに成功しました。
残念ながらこれらはスクリーンショットによる映像で得られるパターンではないようでブログを漁ってお手軽ゲットという方向性は消えてしまいました。
「なるほど、それで木の上に登ってたんですね。一瞬あの上に何か大事なものでも引っ掛けてしまったのかと思いましたが、特に何もないのでどうしたのかと思いましたよ」
「いやいや、お恥ずかしい所を見られてしまいました」
木登りの最中、道ゆくジキンさんと偶然目があってしまった私は何事もなかったかのように合流し、喫茶店へと流れ込んだ。
彼はあの後息子さんと一緒に行動し、戦闘に参加するもやはり一緒に行動するのが辛くて後方に戻って来たのだと語る。
ちょっと、あれだけかっこいい感じで見送ったのに戻ってくるの早すぎやしませんか?
まだ一日しか経ってませんよ。
私としては嬉しいですけど、どうやって受け入れればいいんでしょうかこの気持ち。
「やはり若者と一緒に混ざっての行動はダメですね。色々と文句を言いたくなる。特に息子だからという感覚が抜けなくて……戦闘ではお荷物もいいところの僕が言動ばかり大きくて、はは」
どうもこの人、仮にもクランの幹部である息子さんをメンバーの前で扱き下ろしたから後方に追いやられたようですよ。何してんですか、全く。
「それはご愁傷様でした。どうです、私と一緒にブログのネタ探しでも」
「良いですね。僕も掲示板に目を通してみたんですが、頭の中がパニックになってしまってどうにもなりませんでした。あれはサイバーテロか何かですか? 僕たちの時代の掲示板が懐かしく思えますよ」
実際には見たことないんですが、相当凄いようですよ。なんだか今から見るのが怖くなって来ます。
「ならばこれを機にブログデビューでもしてみませんか?」
「とはいえ僕はあまり趣味らしい趣味を持たなくて、何を書いていいかも分かりません」
「実は私も以前までは仕事人間でしてね。無趣味だったんですよ」
「それは初耳です」
「それで妻に勧められて、始めた趣味が写真だったわけです」
「だからこっちでもそれでやっていこうと思ったんですか?」
「ええ。今更冒険て歳でもないですから」
「わかります。年寄りは年寄りらしく行きますか」
「そうですよ。だからと言ってゲートボールに勤しむほどガタは来てません」
「ハハ、確かにそうですね」
ジキンさんとは喫茶店の外で別れることになった。
彼も彼でやることがあるらしく、これからログアウトするようだったので私もソロ活動を再開させる。
スズキさんはまだログインしてない様子ですし、もうしばらく木登りの検証でもしてみますか。
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