26 / 497
1章 お爺ちゃんとVR
022.お爺ちゃん、スキルを獲得する
昼まで暇だとブログを漁っているところでフレンドコールが入る。
[スズキ:今お暇でしょうか?]
そんな短い本文に対し、ええとこれまた短い本文で返した。
やることがあるといっても優先順位はそれほど高くない。
フレンドが私に用があると言えばそちらを優先するくらいには心に余裕を持っているつもりだ。
彼の待つ用水路まで徒歩で歩き、フレンドコールを鳴らすとスズキさんが水面から顔を上げた。相変わらずの魚類フェイスだけどなんとなく愛嬌のある顔立ちをしている。
慣れてしまえばそれほど刺激的でもないよね。
「すいません、急に呼び出してしまって」
「いえいえ。こちらも暇してましたので」
「ホッ」
あまりアポイントメントをとったことのないような反応で、彼は良ければまたあの場所に向かいませんかと誘って来た。
やけに周囲を気にしているようだし落ち着かないのだろう。
私は彼と共に例の遺跡近くまで泳いで行った。
「申し訳ありません。やっぱりまだたくさんの人の前だとあがっちゃうので」
「私の前では平気なんですか?」
「不思議と」
「それは良かった」
友達冥利に尽きる。それに対してジキンさんと来たら人の姿を見て笑うんですよ? 笑われるような行動をしていた私も私ですけどね。
まさかあんなところで遭遇するなんて思ってもみませんでした。
登ろうとしたときはいなかったんですよ。登り始めたときに出て来たんです。全くあの人も間が悪い。
「それで、要件とは?」
「はい。ブログを拝見しまして」
「おお、どうでした?」
「正直に申し上げて」
「うん」
「感動しました」
「おおっ、どこら辺を気に入ってくれたんだろう。気になるなぁ」
見たこともない娘のクランメンバーに絶賛されてると言われるより、たった一人のフレンドに喜ばれる方が何倍も嬉しく思う。
本当、このために書き出したといっても過言じゃないよ。
だって、ねぇ?
私の文や写真じゃなく、スキルのかけらを得て感謝されてもよくわからないじゃない。
だったら本文と写真を好きといってくれた方が何倍もありがたい。まさしくファンと言える存在だと私は思う。
「どこ、と言われても困りますけど。ハヤテさんの人となりがよくわかる文体でこのゲームに参加したきっかけとか、そういうのがよくわかったというか。後はそうですね。不思議とこの人と一緒なら僕も楽しめそうだなって思いました」
「そうですか。それは良かった」
「あと僕の後ろ姿って普段自分では見れないので始めてみました。あんな風になってたんですねー。ちょっとおかしかったです」
「ふふ、そうですか」
「はい。魚人に限らず人間だって自分の後ろ側って見れないじゃないですか。だから貴重なものが見れたなって」
「それは私のファンになってくれたと思って良いですかね?」
「はい。お気に入りに登録しました。また投稿してくれるんですよね?」
「もちろんですよ。ああ、そういえばスズキさんはこの世界のスキルについて詳しいですか?」
「常識的には知ってますけど、具体的にはよくわかってません」
「では色々と私の検証に付き合ってくれませんか?」
「はい。僕なんかで良ければ」
彼からの許可を取り、古代遺跡を巡っていく。
途中途中で彼のお気に入りスポットを教えてもらい、そこを撮影していく。
「こんなところまで撮影しなくても」
「何言ってるんですか。せっかく教えてもらった場所ですよ。こうして写真に収めておけばいつでも見返せますし、今見てよく分からなくても、あとで良さに気づくことだってあるんです」
「なるほど。それで検証って具体的にはどんなことをするんです?」
「ええっとですね。私に泳ぎを教えてもらえませんか」
「はい? 僕のですか」
「はい」
私の質問に対しスズキさんは意味がわからないという顔をした。
そもそもの話、彼は泳ぐときに自分の動きを意識したことがないのだと言う。そこで私は彼の泳ぎを真似していたことを正直に話し、そこで生えて来たスキルについてを教える。
それとこの世界の理屈を添えて検証の仕方を教えた。
「なるほど。それがきっかけだったわけですか。ならば頑張ってみます。でも僕自分の泳ぎを意識した事もないですし、ましてやそれを誰かに教えたこともないのでうまくできるか分かりませんけど」
「こちらで勝手に真似しますので、真っ直ぐ泳いでみてください。方向転換するときに一度声をかけてもらえれば大丈夫ですよ」
「そういうことでしたらわかりました」
だいたい時間にして十数分。泳ぎ回った結果ついにスキルのロックが外れた。
[スキル:水中呼吸を獲得しました]
そっちか! と思わなくもないけど、これで息継ぎに回す必要が無くなったかな?
どちらにせよ必要なスキルであることは喜ばしいので喜んでおく。
「どうしました? 急に動かなくなったのでびっくりしました」
「ああ、さっきスキルを獲得しまして」
「おお! おめでとうございます」
「生憎と狙っていたスキルではなかったのですが、水中呼吸をモノにしました。これであとスズキさんの泳法まで手に入れば文句はないですね」
「ではそれを覚えるまでお付き合いしますよ。それがあれば次のクエストは最後までいけると思います。僕としてもあの景色はハヤテさんにみていただきたいですし」
「ほぅ、スズキさんの推す景色ですか。それは是非とも獲得して拝みたいモノですね」
「次のブログのメイン間違いなしですね。僕としましてもあれを一人占めする気はなかったんです。でも自分で拡散する勇気もなくて」
「うん。その気持ちだけでも嬉しいです。スズキさんの気持ちも私のブログに反映させて見せますよ」
「ではそのためにも覚えられるように頑張りましょうか」
「ええ、よろしくお願いします!」
水中呼吸を覚えてからの私の動きは目覚ましいものがあった。
それでも古代泳法を獲得するのに数時間。
お昼を過ぎるほどかかってしまうあたり、奥の深いモノだったのだと思い知る。
スズキさんとはお昼にクエストを受ける約束をして別れた。
【パッシブ:7】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[4/10]
◎水泳補正
┣潜水[3/4]
┗◎古代泳法 new!
◎低酸素内活動
┗◎水中呼吸 new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]
[スズキ:今お暇でしょうか?]
そんな短い本文に対し、ええとこれまた短い本文で返した。
やることがあるといっても優先順位はそれほど高くない。
フレンドが私に用があると言えばそちらを優先するくらいには心に余裕を持っているつもりだ。
彼の待つ用水路まで徒歩で歩き、フレンドコールを鳴らすとスズキさんが水面から顔を上げた。相変わらずの魚類フェイスだけどなんとなく愛嬌のある顔立ちをしている。
慣れてしまえばそれほど刺激的でもないよね。
「すいません、急に呼び出してしまって」
「いえいえ。こちらも暇してましたので」
「ホッ」
あまりアポイントメントをとったことのないような反応で、彼は良ければまたあの場所に向かいませんかと誘って来た。
やけに周囲を気にしているようだし落ち着かないのだろう。
私は彼と共に例の遺跡近くまで泳いで行った。
「申し訳ありません。やっぱりまだたくさんの人の前だとあがっちゃうので」
「私の前では平気なんですか?」
「不思議と」
「それは良かった」
友達冥利に尽きる。それに対してジキンさんと来たら人の姿を見て笑うんですよ? 笑われるような行動をしていた私も私ですけどね。
まさかあんなところで遭遇するなんて思ってもみませんでした。
登ろうとしたときはいなかったんですよ。登り始めたときに出て来たんです。全くあの人も間が悪い。
「それで、要件とは?」
「はい。ブログを拝見しまして」
「おお、どうでした?」
「正直に申し上げて」
「うん」
「感動しました」
「おおっ、どこら辺を気に入ってくれたんだろう。気になるなぁ」
見たこともない娘のクランメンバーに絶賛されてると言われるより、たった一人のフレンドに喜ばれる方が何倍も嬉しく思う。
本当、このために書き出したといっても過言じゃないよ。
だって、ねぇ?
私の文や写真じゃなく、スキルのかけらを得て感謝されてもよくわからないじゃない。
だったら本文と写真を好きといってくれた方が何倍もありがたい。まさしくファンと言える存在だと私は思う。
「どこ、と言われても困りますけど。ハヤテさんの人となりがよくわかる文体でこのゲームに参加したきっかけとか、そういうのがよくわかったというか。後はそうですね。不思議とこの人と一緒なら僕も楽しめそうだなって思いました」
「そうですか。それは良かった」
「あと僕の後ろ姿って普段自分では見れないので始めてみました。あんな風になってたんですねー。ちょっとおかしかったです」
「ふふ、そうですか」
「はい。魚人に限らず人間だって自分の後ろ側って見れないじゃないですか。だから貴重なものが見れたなって」
「それは私のファンになってくれたと思って良いですかね?」
「はい。お気に入りに登録しました。また投稿してくれるんですよね?」
「もちろんですよ。ああ、そういえばスズキさんはこの世界のスキルについて詳しいですか?」
「常識的には知ってますけど、具体的にはよくわかってません」
「では色々と私の検証に付き合ってくれませんか?」
「はい。僕なんかで良ければ」
彼からの許可を取り、古代遺跡を巡っていく。
途中途中で彼のお気に入りスポットを教えてもらい、そこを撮影していく。
「こんなところまで撮影しなくても」
「何言ってるんですか。せっかく教えてもらった場所ですよ。こうして写真に収めておけばいつでも見返せますし、今見てよく分からなくても、あとで良さに気づくことだってあるんです」
「なるほど。それで検証って具体的にはどんなことをするんです?」
「ええっとですね。私に泳ぎを教えてもらえませんか」
「はい? 僕のですか」
「はい」
私の質問に対しスズキさんは意味がわからないという顔をした。
そもそもの話、彼は泳ぐときに自分の動きを意識したことがないのだと言う。そこで私は彼の泳ぎを真似していたことを正直に話し、そこで生えて来たスキルについてを教える。
それとこの世界の理屈を添えて検証の仕方を教えた。
「なるほど。それがきっかけだったわけですか。ならば頑張ってみます。でも僕自分の泳ぎを意識した事もないですし、ましてやそれを誰かに教えたこともないのでうまくできるか分かりませんけど」
「こちらで勝手に真似しますので、真っ直ぐ泳いでみてください。方向転換するときに一度声をかけてもらえれば大丈夫ですよ」
「そういうことでしたらわかりました」
だいたい時間にして十数分。泳ぎ回った結果ついにスキルのロックが外れた。
[スキル:水中呼吸を獲得しました]
そっちか! と思わなくもないけど、これで息継ぎに回す必要が無くなったかな?
どちらにせよ必要なスキルであることは喜ばしいので喜んでおく。
「どうしました? 急に動かなくなったのでびっくりしました」
「ああ、さっきスキルを獲得しまして」
「おお! おめでとうございます」
「生憎と狙っていたスキルではなかったのですが、水中呼吸をモノにしました。これであとスズキさんの泳法まで手に入れば文句はないですね」
「ではそれを覚えるまでお付き合いしますよ。それがあれば次のクエストは最後までいけると思います。僕としてもあの景色はハヤテさんにみていただきたいですし」
「ほぅ、スズキさんの推す景色ですか。それは是非とも獲得して拝みたいモノですね」
「次のブログのメイン間違いなしですね。僕としましてもあれを一人占めする気はなかったんです。でも自分で拡散する勇気もなくて」
「うん。その気持ちだけでも嬉しいです。スズキさんの気持ちも私のブログに反映させて見せますよ」
「ではそのためにも覚えられるように頑張りましょうか」
「ええ、よろしくお願いします!」
水中呼吸を覚えてからの私の動きは目覚ましいものがあった。
それでも古代泳法を獲得するのに数時間。
お昼を過ぎるほどかかってしまうあたり、奥の深いモノだったのだと思い知る。
スズキさんとはお昼にクエストを受ける約束をして別れた。
【パッシブ:7】
◎持久力UP
┗持久力UP・中[2/4]
◎木登り補正
┃┗壁上り補正[1/4]
┗ ???[4/10]
◎水泳補正
┣潜水[3/4]
┗◎古代泳法 new!
◎低酸素内活動
┗◎水中呼吸 new!
◎命中率UP
┗必中[3/5]
あなたにおすすめの小説
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた
歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
無実の罪で謹慎中ですが、静かな暮らしが快適なので戻る気はありません
けろ
恋愛
王太子妃候補だった伯爵令嬢エレシア・ヴァレンティスは、ある日突然、身に覚えのない疑いをかけられ、婚約破棄と無期限謹慎を言い渡される。
外出禁止。職務停止。干渉禁止。
誰がどう見ても理不尽な処分――のはずだった。
けれどエレシアは、その命令を前にして気づいてしまう。
誰にも呼ばれない。誰にも期待されない。誰にも干渉されない。
それは、前世で決して手に入らなかった“静かな時間”そのものだと。
こうして始まった、誰にも邪魔されない穏やかな謹慎生活。
一方その頃、彼女を切り捨てた王城では、思わぬ方向へ事態が転がり始めて――?
これは、無実の罪で閉じ込められた令嬢が、皮肉にも理想の生活を手に入れてしまう物語。
叫ばず、争わず、ただ静かに距離を取ることで完成する、異色の婚約破棄ざまぁです。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。