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2章 お爺ちゃんとクラン
049.お爺ちゃんのスキルは結構特殊?
しおりを挟むマリンからの情報を一身に受け、それらを纏めるために私達は最寄の喫茶店で気分を休めていた。
各々がドリンクを注文し、受け取った側から喉を潤す。
私は孫ほど疲れていないが、これがパッシヴ極振りの強みなのかもしれないね。
先導を買って出た孫の方が疲れてしまったのでこうして食事をしているというわけだ。
「うーん、フルーティー」
「マリンはそれ好きだねー」
このゲーム中、彼女はそのマンゴージュースしか口にしてない気がする。
「うん。味もいいけどメインは付与だね。食事バフってやつ」
ほう?
彼女のドリンクを事前に許可を取ってスクリーンショットをパシャリ。すると出てきた詳細には、こういった文面が書かれていた。
[スタミナドリンク・マンゴー風味:飲んでから消費するまでスタミナ消費間隔拡大]
「へぇ、一時的にST消費維持と同等の効果を持つのか。知らなかったな」
そう言った私の言葉にマリンは眉を顰める。
「え、お爺ちゃん今なんて?」
「ST消費維持?」
「うん、それ」
「私の派生スキルの一部だね。しかしこれ、どうやって見せればいいだろうか?」
「他の人に見せたくないなら情報開示のチェックを外してからスクリーンショットでフレンドにメール添付で一応送れるっぽいよ。私もユーノから聞いただけなんだけど」
へぇ、これも新しい機能かな?
今までは情報開示がONだけだったが、すぐ横にあるチェックを外した途端にマリンから私の派生スキルの文字が見えなくなったそうだ。
こういう配慮は嬉しいね。
では早速写真を撮って彼女にメールで送ろう。
一回こうしておけばユーノ君にも後で渡せるし、その場にいなくても渡せるのでありがたいね。
「受け取ったよー」
「どうだい、なかなかに文字だけじゃ読み取れない面白いスキルばかりだろう?」
「うん、見たことのないものばかり……って、呼吸系の効果が破格すぎるんだけど……」
マリンでもそう思うか。そうだよね、だって彼女はただでさえ消費の激しいスタミナの回復を望んでる。
そのために喫茶でこのドリンクを飲み続けてるんだ。
彼女にしてみたら喉から手が出るほど欲しいんじゃないかな?
でも同時に今のビルドを捨てられるかと言ったら無理だと思う。
それこそ二度と手に入らない可能性もあるかもだし。
「私と同じ事をすれば取れるよ?」
そういうと孫の目は急に座り出した。半眼、もといジト目というやつだ。呆れられているのかな? でも私はそこまで対した事をした覚えはないんだけどなぁ。
「お爺ちゃんは自分の行動を他の人が真似できると思ってるの?」
「全く同じじゃなくても、似通ったことぐらいならできるとは思ってるね。ただ、私はこのスキルビルド以外を全然知らないからなぁ。どれほど苦労するのか想像もつかないよ」
「だよね、だと思った。正直これはお爺ちゃんだから生えてきたモノだと思うの。ちょっと待ってね、考察班で纏めたブログがあるからそこからお爺ちゃんの持ってるスキルの他人視点での派生を写して送るから」
「なるほどね、情報共有はブログをスクリーンショットする事でも共有可能なのか。勉強になるなぁ。そうやってフレンドじゃなくても私のブログを見ることができたんだね?」
「前はURLを繋げれば見れたんだけどね? メンテ後はそれができなくなっちゃったみたいなの。でもこれはこれで便利だから結構使われてるテクニックだってユーノが言ってた」
へぇ、たった一回のログインでそこまで検証できちゃう彼女は優秀だね。それを聞いてすぐ実行して自分のものにしてしまえるマリンも凄いよ。私はすぐにスタイルを変えられないから羨ましいな。
これが若さか。
「送ったよー」
「ん、受け取った。どれどれ、むっこれは……」
孫から受け取った情報群に、私は目を丸めることになる。
◎持久力UP
┗持久力UP小
┗持久力UP中
┗持久力軽減
◎木登り補正
┗足場確保
┗命綱
┗クライミング
◎水泳補正
┗水中戦闘
┗素潜り
┗潜水
◎低酸素内活動
┗???
※未検証、価値の有用性がわからないため後回し
◎命中率UP
┗命中力UP中
┗命中力UP大
┗クリティカル
「えーと……」
言葉が続かない。まさか本当にこれは自分だから獲得できたスキル群なのだとこの検証班の情報によって知らされたからである。
「この水中戦闘というのは?」
「多分だけどお爺ちゃんが戦闘スキルを全く持ってなかったから生えなかったと思うの。普通の人はそこから武器によって補正が入るらしいよ」
「本当かい? まさか持ってるスキル構成でも派生先が決まるなんて……ちなみに検証班へ情報を提供する場合はどうしたら良いとか解るかい?」
「へ? お爺ちゃんはそれを守るためにボディガードを雇ったんじゃないの? おかあさんはそう言ってたよ?」
「いいや、あれはジキンさんが勝手にやった事で私はなにも関与してないよ。でもここまで他人と違うとなると、教えるのも難しいなと思ってね。だったら自分の身を守るためにも情報提供は吝かではない。実際に教えるとしても、他人のスキル構成まで知らないので私にはどうにもできないんだよ」
「そっかー。実は私のクラスメイトにもそこに所属してる子が居てね、しつこく追求されてそれをどう振り切ろうか迷ってたんだよね」
「そうだったのか。見えないところでマリンに迷惑をかけてたんだね。それは済まなかった」
「いいのいいの。私が好きでやってた事だもん。じゃあちょうど今ログインしてるみたいだし呼んじゃっていいかな?」
「うん。ついでにその子とフレンドになった方が早いかな?」
「えー、私はあまりお爺ちゃんのフレンド増えて欲しくないんだけど?」
「おいおい、信用がないね。私だって選ぶ権利はあるよ? でもね、ずっと追いかけ回されるのはお互いに疲れるだろう? だったら同じゲームで遊ぶ同士、歩み寄って協力をしていこうじゃないかと思ってる。もちろん、情報を渡すんだから同じくらいの価値を持つ情報は聞くけどね。それぐらいの譲歩はしてくれるんだよね?」
「多分、でもあの子は少し強引なところがあるし」
「大丈夫、パープルで慣れてるよ」
「それもそっか。おかあさんお爺ちゃんの前では本当に凄いもんね」
おいおい、娘にまで言われてしまっているよ?
母親の威厳を落としてしまったのは私の責任だけど、これは回復できるんだろうか?
「おっまたせー、マリン! さっきのメールは本当? あたしダッシュでファイベリオンからかっ飛んで来ちゃったんだけど?」
「うん、本当だよ。紹介するね、この人が私のお爺ちゃん」
「お初にお目にかかります、アキカゼ・ハヤテです。いつも孫が迷惑をかけていると思うけど、これからもよろしくしてくれると嬉しいね」
「ほわーっ、これはこれはご丁寧にどうも。あたし、時雨シグレって言います。一応検証班のメンバーですけど、メインはジャーナリスト希望で───」
一息にペラペラと繰り出されるマシンガントークに気圧されながら、まずは席に座るようにと促した。
「遠くの街からわざわざ御足労かけたね。まずは席に座って喉でも潤したらどうかね?」
「ゴチになりまーす。いやー、いい人だねマリンのお爺ちゃん」
「自分の飲み物くらい自分でお金出してよ?」
私と向かう形で座ったマリンの横にシグレ君が腰掛ける。
元気が服を着て歩いてるような存在に対して孫は必死に牽制しているが、私はそこまでケチじゃないんだけどなぁ。
「ドリンク代くらい私が出すよ。今回は私の申し出で来てもらったんだから」
「お爺ちゃんがそう言うなら……」
不満そうに口を尖らす孫に、どうにも参ったねと思う。
すぐその横ではシグレ君は孫と同じドリンクを注文していた。
性格こそ違うものの、スキルの方向性は結構に通っているのかもしれないね。
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