【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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2章 お爺ちゃんとクラン

079.お爺ちゃんと次へのステップ


 現実に帰ると、ちょうどログインしていた美咲から何件かメッセージが入っているのに気がついた。

 そこで彼女達は私が戻る前に復習をしようとダンジョンを探索、そこで謎の回答に辿り着いたのだという。
 自信満面の笑みで、コール越しの彼女は早くきてねと言ってから通話を切っていた。
 それが溜まりに溜まって7件。
 すぐに連絡を返し、AWOにログインする。


『今着いたよ。状況はどうなっている?』

『あ、お爺ちゃん。ちょうど良かった。今来れる?』


 既にダンジョンに潜っているマリンは、来れるなら合流しちゃおうと元気よく答えた。
 ちょうど私を待っていたロウガ君と合流し、私たちは一路馬車でダンジョン前まで移動。
 入り口でロウガ君と別れて孫達と合流した。


「お爺ちゃん、こっちこっち!」

「こんにちわ、アキカゼさん」

「こんにちわ、ユーノ君。なんだか私がいないうちに進展したんだって?」

「ええ。アキカゼさんを見習ってみんなであれやこれやと検証していくうちに、あの問いかけはこれだろうと思ったんです」

「ふむ。今からそれを私に見せてくれるのかな?」

「うん! でも最後だけはお爺ちゃんにも協力して欲しいんだー」


 マリン、ユーノ君、サクラ君の順に返答して行き、最後にまたマリンが語る。
 協力、ね。


「うん、いいよ。私の力が必要ならどんどん頼りなさい」

「やった!」


 孫達の表情は明るい。
 午前中に私達が行ったことと同じことをしながらダンジョン内を上がったり降ったりする。
 真っ直ぐに降りないのは謎解き要素を一つづつ解明していく必要があるからだとか。
 成長したね。一度吸収することを覚えたら私なんてあっという間に追い抜かされてしまうだろう。
 だからこそ、私もここでこの子達に負けない要素を見せつけてあげたい。

 場所は変わって[ダンジョン・枯れた金鉱山B4]。
 B1→B4→B3→B2と登ってきて、再びB4へと辿り着く。孫達は真剣な面持ち。
 ここからは謎解きとは違う表情だ。


「お爺ちゃん、今からボス戦に入るけど、ここでお爺ちゃんにお願いがあるの」

「聞こう」

「うん。私達はB1の謎についてずっと探ってた」

「妖精の声を聞け、だね」

「それ! でも妖精らしいものなんて見つからない。そこでお爺ちゃんのブログを思い出したの」


 ふむ、と顎に手を置く。
 この子達なりに考えたんだな。サクラ君はともかくとして、マリンとユーノ君は私のフレンドだ。近くにいない私の知識をブログから抽出したか。


「お爺ちゃん言ってたよね、妖精はプレイヤーの目に見えないって。だから探すだけ無駄だって理解した」

「なるほど。それで私へのお願いとは?」

「私達が戦闘中、その戦闘シーンをカメラで撮影して欲しいの。お爺ちゃんの目なら、きっとそこからヒントを拾えるって思ってる。そして肝心の声の出所なら当たりがついたよ」

「へぇ。もうそこまで見抜いたんだ?」

「何度か戦っていくうちに気がついたんですけど、必ず最後の咆哮が同じ音だったんです。それで僕たちはそこにもヒントがあるのではと思い至りました」


 言葉を続けたのはサクラ君。
 彼の戦闘補助能力は何度も見てきたけど、もうボス戦にも慣れきったのか、今や恐れは微塵もないようだ。
 土壇場の対応力も付いたような自信に、私達は頷き戦闘フィールドへと赴いた。

 ボスはあの時と同じ[地精の怒り/スワンプマン型]である。
 最初こそはそれがお仕置きモンスターではないかと推測した私だったが、彼らはこれも謎解きの一つだと認識したようだ。
 戦えない私と違い、戦える彼らだからこそ導けたと言っていいのだろう。

 ふむ、いいね。ここから先は謎を一つ解くのにも戦闘を絡めてくるか。これぞ協力プレイという気がしてきた。
 思えば序盤からそうだった気もするが、謎解き要素だけに限っていえばまだ単独で掘り下げられた。
 でもここからは適材適所だ。私はスクリーンショットのフィルター越しに部屋の一角に張り付いて撮影を開始した。

 時間にして十分もかからないくらいでボスはマリンによって撃墜される。そこで咆哮が放たれた。
 その言葉には古代文字が並び置かれ、私の特殊スキルがその言葉を翻訳する。

グォオオオオオB1の分かれ道、オオオオオオオオ!右奥に隠し通路あり

 確かにそう読み取り、それを切り取った。
 戦闘終了後に私はパーティメンバー全員とハイタッチ。
 やはり思った通りの仕掛け人全員が大喜びする。
 しかし私にとっての嬉しい誤算はその他にもあった。


[スキルのかけら+10を獲得しました]

 ポーン!
[スキル:重力無視を獲得しました]


 ここできたか!
 妖精の国への足掛かり!
 すかさず詳細をタップし、その内容を読み解く。

『重力無視:肉体が受ける重力によるデメリットを完全無視/落下ダメージ無効、落下速度軽減。自然風による速度加速付与』

 これはすごい。思った通りの、いや思った以上のものだった。
 これからは木に登るのに腕力だけでなんとかなるんじゃないかとさえ思えてくる。


「お爺ちゃん、どうしたの?」

「うん? ああ、スキルを獲得してね」

「え、え、どんなの?」

「こんなのだよ」


 いくら目の前にいるのが身内だとしても内容はバラしたくない。とは言え、教えなきゃ膨れてしまうのも目に見える。
 だからこそマリンだけにならと画像添付でメール送信した。
 その反応は、


「えっっっ! 微妙!」

 
 だった。
 うん、まあ用途は人によってはそうだろうね。むしろ自身の能力を考えたら受け取り方は様々だ。


「え、アキカゼさんどんなスキル取ったんですか?」

「今マリンから聞いたろう? とっても微妙なものだよ」

「その割にはすごく嬉しそうでした」

「私にとっては喉から手が出るほどに嬉しいよ。でも他の意見は違うようだ。スキルビルドの違いかもしれないね」

「なるほど」


 問うてくるユーノ君やサクラ君にも孫と同じ反応を返してやる。世間一般に使えるスキルと私の求めるスキルは大きな差があるように思えた。

 こんなに素晴らしいスキルを戦闘組には理解してもらえないか。いや、わかっていたことではある。
 自然風とかどのタイミングで発するかわからないものを待つよりも、自分の体の加速を使ったほうが簡単に速度上昇を促せるからね。マリンにとってはその程度のスキルだということだった。


「さて、私のスキルはともかくとして、いくだろう?」

「はい!「うん「勿論です」」」


 子供達の元気いっぱいの声が続き、私達はその場所を探して回った。
 場所は[ダンジョン・枯れた金鉱山B1]
 
 捜査は難航していた。目的の場所と思われるところは普通に行き止まりになっていたからだ。
 しかしわざわざ古代語を使ってまでのギミックがただのフレーバーであるはずがないと捜査を続けた。


「ここ、なんか怪しいなぁ」


 何かを感じ取ったマリンがその壁に手をかけ、体重を預けようとしたところで壁にマリンが飲み込まれた。


「「マリンちゃん!?」」


 ユーノ君が、サクラ君が声をハモらせて孫の身を案じる。
 しかし壁の向こう側からは元気な声が聞こえ、私達もそちら側へと移動した。
 その場所は一見して普通の壁としか見えないが、精巧なホログラフ処理が施された隠し通路だったのだ。
 その奥に小さな部屋がある。そこには台座が置かれ、どこかで見たことのある古代語が書かれていた。

 台座には古代文字で[石の──を聞け」と書かれている。
 これはつまりB3の仕掛けと連動しているのだろうと紐解く。
 台の上には窪みの他に何かの絵が描かれている。
 それはファストリアの壁画で見た抽象画に似ていた。


「これってエネミーじゃない?」


 マリンがその絵を見て質問する。


「うん、多分そうだろうね。するとその窪みは?」

「うーん、あ! エネミーのドロップ品を順に置けばいいんだ」

「そうかもしれないね。取り敢えず置いてみようか。もし間違っていたら何度でもやり直そう。もう失敗を恐れてはいないよね?」

「うん、もう大丈夫。失敗は失敗で次の成功につなげる、だよね?」

「そうだ。マリンも成長したね。お爺ちゃんはそれを見られて嬉しく思うよ」

「えへへ。そんな事ないよ。私は私。でも、ちょっとはお爺ちゃんに認めてもらえたかな?」

「ちょっとどころか、ねぇ。ユーノ君達は今のマリンを見てどう思う?」


 ユーノ君、サクラ君は順にうなずいている。
 彼女達も同じくらいの成長を遂げたのだろう。
 それを見てマリンも覚悟が決まったようだ。
 思った通りにドロップ品の鉱石を台座に当て込むと、カチリ。
 次第にゴゴゴゴゴゴッと下の方からダンジョン全体を揺らすような音が響く。


「なんの音?」

「わからない。音のした方に行ってみよう」

「うん!」


 答えたのはマリンだけ。他の二人は無言で駆け出す私達に追従してくる。


「お爺ちゃん、手!」


 孫に言われるがままに手を握ると、私の体は孫のつけた勢いに引っ張られるようにして加速した。


「うん、これならすぐに着きそう。さっきは微妙だなんて言ってごめんなさい。私にとってはあんまりだったけど、お爺ちゃんにとってはありがたいスキルだったんだよね?」

「いいよ。私とマリンではスキル構成が大きく違うんだ。だから用途が違うことなんて初めからわかりきってる」

「そっか」



 B1~B2は異常なし。
 ただB3は少し様子がおかしかった。


「これは……」


 何かが転がり落ちた形跡があった。


「奥に行ってみよう」


 私の予測が正しいなら、そこには。


「前にこんな大穴あったっけ?」

「ないね」

「じゃあ?」

「あの仕掛けで作動した何かがこれを作ったと言うことだろう」


 子供達はよくわからないと言う顔をした。
 よくよく思えば知識が足りないと言う懸念はあった。
 しかしそれが彼らの世代の弱点であることはよく理解していた。そこでは私はとある質問をしてみる。


「まず最初に不思議に思ったことはなかったかな? B2はどうしてあんなにも中央を囲うようなマップであるとか。中央に何かが隠されているんじゃないかと私の世代の人だったら考えつくだろう」

「へぇ、そうなんだ」

「そしてB3のあのゆっくりと下に降りていくスロープ。あれはB2から落ちてきたボール状の何かがこの通路を通ったものと推測してみる。私の世代なら容易にそう思うだろう」

「どうしてですか?」


 サクラ君の問いかけになんとも言えず言葉に詰まる。


「多分だけど知識として知っていたからだ。ボールとは重力によって転がっていくだろう?」

「はい」

「そして下れば下る程加速するものだ」

「そうですね」

「そして勢いを殺さずに行き止まりにぶつかった場合は?」

「あ! だからこそB3はあのような作りだった?」

「そうだね。私はそう思ったよ。サクラ君はどう思う?」

「よくわかりません。でも、それを知れてワクワクする自分がいます」

「上出来だ。私でも未知の領域に踏み込むときはいつもワクワクするよ。さぁ、行こうか」

「はい!」


 流石にこんな場合までレディファーストを取るわけにはいかない。適材適所だと言うかも知れないが、男としては女にいいところを見せるべくサクラ君と共に前を歩く。その後に続くマリンとユーノ君はサクラ君をどう思っているだろうか?
 少しでも距離が縮まればいいと思うが、そればかりは本人に聞いてみなければわからないからね。


「ここは……」


 辿り着いたのは何かの遺跡の一部。
 そして意味深な巨大な壁画だった。


「お爺ちゃん、解読できる?」

「今撮影中だ。少し待って欲しい」

「分かった」


 スクリーンショットのフィルター越しでも特に文字は浮かび上がらず。だから単純にその絵、そのものに意味があるんじゃないかと思った。


「お爺ちゃん、何かわかった?」

「この絵自体に仕掛けはないみたいだ」

「するとここがゴールですか?」

「多分だが、そうだろうね」

「あっ、何か称号が生えてる!」


 声を出したのはマリンだった。
 立て続けに子供達は己のメニューを覗き込み、遅れて私も見てみた。そこには……


【パッシヴ:22】[▶︎スキル派生 / スキル詳細]

 ◎持久力UP
 ┃┣◎持久力UP・中
 ┃┣◎持久力UP・大
 ┃┣◎持久力維持
 ┗╋ST維持[71/150]
  ┃┗EN維持[71/150]
  ┗◎ST消費軽減
 ◎木登り補正
 ┃┣◎クライミング
 ┃┣◎壁上り補正
 ┗┻◎垂直移動
    ┣◎重力無視 new!
    ┗スカイウォーク[70/200]
 ◎水泳補正
 ┃┣◎潜水
 ┃┣◎古代泳法
 ┃┣◎水圧耐性
 ┃┣◎海底歩法
 ┗┻◎水中内活動
   ┣海の目[70/600]
   ┗海の手[70/600]
 ◎低酸素内活動
 ┃┣石の呼吸[80/150]
 ┃┣火の呼吸[70/150]
 ┃┣空の呼吸[70/150]
 ┃┣雲の呼吸[70/150]
 ┃┣炎の呼吸[70/150]
 ┃┣◎木の呼吸
 ┃┣◎水の呼吸
 ┗┻無の呼吸[200/700]
 ◎命中率UP
 ┃┣◎クリティカル
 ┃┗◎必中
 ┗妖精眼[70/1000]

【称号:5】
『妖精の加護/特殊スキル:妖精看破』
『木登りマスター/特殊スキル:垂直移動時速度上昇』
『古代の代弁者/特殊スキル:古代言語理解』
『セカンドルナの代理許可人/特殊スキル:私有地内散策』
『空中戦闘の心得/特殊スキル:空歩』new!


▶︎詳細
『空歩:3秒間足元に力場を発生(スタミナ10%消費)』



「これは……」

「きっとこれから重要になるスキルだよ!」

「アキカゼさん、この情報はどう扱いますか?」

「そうだねぇ、私は君達の付き添いで協力しただけだから公開するかどうかは君たちで考えなさい。それにダンジョンの秘密の多くは君たちが相談しあって解決してきたものだ。私にどうこうする権利はないよ」


 今回私は前に出るつもりはない。
 あくまで付き添い。初めからそうするつもりだった。
 マリン曰くこのスキルは役に立つのだという。
 でもその有用性を考える限り、今はまだ使い道がない。


「お母さんと良く相談してから決めるといいよ。何事も最初は不安が付き纏うものだ。よく考えてから発表するといい」

「分かった!」


 マリンはそう答え、ユーノ君とサクラ君と輪を作って相談する。
 それから歩きながらダンジョンを出て、外で待っててくれたロウガ君と合流し、街まで馬車で帰る。

 セカンドルナの街は今も変わらず賑やかで、視界の端に映る巨木を見据える。
 マナの大木……その上にある妖精の国。


「もう直ぐだ。もうすぐ、会いにいく」

「お爺ちゃん、何か言った?」

「いや、何も?」


 孫は「変なの」と呟き、すぐにユーノ君達の輪の中に混ざった。
 語り合いたいことがたくさんあるのだろう。若者達は今の興奮を分かち合いたい気持ちでいっぱいのようだ。
 私達は喫茶店で少し休憩して、それから別行動をとる。
 駆けていく子供達の背を見送りながら、私もあの時の続きをしようと足に力を入れてある場所に向けて歩き始める。


「さて、私も行動を起こそうか」


 胸に湧き上がるのはダンジョンで謎を解決している以上の興奮。そう、ロマンだ。
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