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3章 お爺ちゃんと古代の導き
107.お爺ちゃんとクラン協定
「あ、お義父さん」
「何かな?」
ログイン前に秋人君から呼び止められた。
どうもこの後AWO内で集まりがあるので、その場所へ参加してほしいとのことだった。
それもどうやら空関係のことで。
秋人君が関わってることで空に関連しているとすれば真シークレットクエストだろうね。
私は深く考えずに、彼からの提案を受諾した。
「と、これは?」
ログイン後、目的の場所につくなり、その混雑具合に目を白黒とさせる。
“ただの集まり”。そう聞いていた場所には多くのプレイヤーが参列していた。てっきり今後の会議かなんかと思っていたが、これは……
いくつかの視線がこちらに向けられる中、全く動じない姿もあった。
知ってる顔より知らない顔の方が多い。
取り敢えず周囲に会釈して知り合いの席の横の席へと腰掛ける。
「やぁ、金狼氏。これは一体なんの集まりで?」
「爺さん関連だよ」
「なるほど」
会話はそこで途切れた。
これ以上は特に話すこともないと言いたげである。
呼んでおいて酷いんだ。
どうも二人して私に何か隠し事をしてる様だね。
そうこうしてるうちに一番前の席に座っていたオクト君が壇上に上がって声を上げた。まるで舞台挨拶の様な仰々しさだ。
「本日は忙しい中お集まりいただきありがとうございます。既に通達した通り、これより空のクエストについて『参加したいクランの選別会』を行なっていきたいと思います。既に枠は3つ埋まっておりますので残り3枠を決めたいと思います。では発見者のアキカゼ・ハヤテさん、前へ」
オクト君から手招きされて壇上へとあげられる。
そこでマイクを手渡され、お願いされた。
「一言お願いします」
はい? 聞いてないよ?
けれどそうだね、趣旨は理解できた。
これはきっと彼なりの気遣いなのだろう。
私は時間があればあれこれと考えてしまう方だ。
だからシンプルな気持ちでいいと、そういう事なのだろう。
ならばとばかりにマイクを受け取り、挑発する様に集まってくれたプレイヤーへと宣言する。
「こんにちはアキカゼ・ハヤテです。私から言えるのは一言だけ『上に何が隠されているのか知りたくないか?』それだけです」
それだけを伝えて席へと戻る。
情報は一切出さず、知識欲を強く刺激する言葉をぶつけた。
オクト君もそれで十分だと言わんばかりに頷いてくれた。
後のことは全てオクト君が取り持ってくれるだろう。
なにせ私に黙ってこんなイベントを仕掛けたのだから。
まるでファストリアの時の様な取り締まりっぷり。
金狼氏も全て任せているのか、その様子を黙して見守っている様だ。
今回集まってくれたクランは空に興味を抱く中堅どころが多くあった。上位陣のほとんどは平地の攻略に忙しく、こちらに構ってられないのだとオクト君は言っていたっけ。
クラン側からの参入挨拶の全てに耳を通し、その中で“面白そう”なものを3つピックアップしてほしいと後になって聞かされた。
……ぶっつけ本番が過ぎる。
でも知らないでいた方が楽しみが多く、すべてのクランの声に耳を傾けられるので全てが悪いというものでもないか。
私という人間の扱い方をよく分かってるじゃないか。
そうだね、それでいい。私にはこれがちょうど良い。
何でもかんでも知りたいとは思わない。
余計なものは要らないんだ。
必要なもの。その理念を糧にしてほしいと言われている様な気がした。
だからこそ私の理念に合致したクランが彼宛のメールへと書き記される。
空に関わりがあって、そこに多くの情熱を捧げてるクラン。
私が、私達が欲しいのはそういったみんなとはズレてるクランだ。全力で“今”を楽しんでる。そんなクランと仲良くなりたい。
会場に静寂が訪れる。皆が神に祈る様な視線で発表を待った。
選定されたクランは喜び勇み、名前を呼ばれなかったクランはすごすごと帰っていく。
なんとも無残な姿に心を痛めるが、それは当然。
だって彼らはビジネスを空に構えようとしていたのだもの。
他ならぬ私の手を使って。以前秘密裏に行った店舗販売の真似事をしようとしていたのが透けて見えた。あんまりにも残念なコンセプトに、それ以上は聞く気になれなかった。だからこその敗退に、力が抜けてしまったのだろうね。
そこに知識欲や、探究心は一切なく、他人のふんどしで商売をしようという打算があった。
だから今回の選定から外した。
そういうのはオクト君と金狼氏でお腹いっぱいなんだよ。
彼らの欲も大概だけど、純粋に空を楽しもうとしてる点では別だもの。
オクト君の場合は古代への知識の追求。そして入手した素材から錬金の更なる可能性を広げようと躍起になっている。
金狼氏の場合は古代よりも過程に出会うエネミーとの出会いに心を弾ませてるようだ。流石戦闘クラン。ダンジョンで入手したスキルならそれが出来ると踏んだのだろうね。
そして私が選んだ三つのクラン。
まずは『AWO飛行部』
噂通りなら、今一番空の情報を持ってるクラン。
でも仲良くしたい理由はそこじゃなく、純粋にこの世界で飛行機を飛ばそうという技術力に着目している。
ファンタジーの世界に無理やりにでも介入していこうという姿勢も外せないだろう。その探究心の深さは着目して然るべきだろう。
次に『鳥類旅行記』
ここのクランの特徴をひとことで言い表すなら『地図の作成』を独自的に行っている点だろう。
この地図制作には大きな利点がある。
ゲーム内のマップに世界地図というのは存在しない。
フィールドマップはあるのだが、一目でどこからどこへ行くとどの場所に繋がる、などはすべて手探りで探す必要があったのだ。
その見返りとして、彼らにとっての『休息の地』、止まり木の発見。やはり空は飛べてもずっとは無理らしく、先遣隊である我々からの情報提供を求めているようだ。それくらいなら私でもできると要求を飲み込んだ次第である。なければないといってやればいいのだし。
最後に『乱気流』
このクランの趣旨は、同じ戦闘クランである漆黒の帝と全く別の場所にあった。向こうが力、討伐を目的としているなら、こちらは対空と連携である。こうも違うのは珍しい。
要はチェインアタック特化勢とも言うべきか。今の私たちに足りない要素を揃えているのだ。
今回のイベントそのものには彼らを加えるつもりはない。
けれど手に入れた情報は与えるつもりだった。だって別に真シークレットクエストに関係なく、プレイヤーには空の旅を満喫する権利があるのだから。
そこで何をしようが彼らの勝手。けれど困っていたら全面的に助けるべく提携を結んだ形だ。
ケンタ君が指摘した通り、この真シークレットクエスト。一度固定メンバーを組んだら変えられない仕組み。こちらの都合に他の人達を巻き込めないと言うのもあった。
これで土台は揃ったかな?
さぁ、いよいよ空の旅へ赴くとしようか。
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