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3章 お爺ちゃんと古代の導き
110.お爺ちゃんと空中散歩②
「ほらほら、もたもたしない」
「くそー、好き勝手言ってくれる!」
先程パーティを組んだばかりの三人組の半獣人プレイヤー猿種の猿門キー氏が声を荒げる。
やはり木に登らずに、空中で足場を作って煽っていると、対抗意識を燃やしやすいのだろうね。
『アキカゼさん、雲の上を歩ける時点で思ってたけど、相当特殊なスキル骨子ですよね?』
左肩でジュウシマツのバン・ゴハン氏が囀るのに対し、私はどうだろうかと頭を捻る。
なんせ自分で特別変なことをした覚えがないからだ。
木があれば登り、水の中で泳ぎ、山を見ればやっぱり登る。
興味の引いた方に全力を尽くす。
ほら、何もおかしいことはしてない。
それでも嘆かわしいことに、家族からは全否定されるんだよね。お爺ちゃんはおかしいって。
私からすれば家族の方が十分理解できないことをしてるというのに。困ったものだよ。
「いやぁ、どうだろうね? 私と同じ探検家の人からしたら大したことないよ。ただ、派生スキルは人とは変わっていると認識はしてるよ。でもこれらは努力の結果だからね、特別だとは思わない。君たちだって独自のスキルを持っているだろう? それと一緒さ」
もちろん探検家とは、どざえもんさんのことだ。
あの人は自分では謙遜してるけど、独自に地下ルートを発見し、続シークレットクエストからイベントトリガーを発見した御仁。
その上で僅かな手助けで妖精の国への独自到達。
私の強力なライバルとして立ちはだかっていてくれる。
今ではクランメンバーになってくれたけど、情報提供を無理強いするつもりはない。
私の場合はブログを通して勝手に発表するけど、それをどう扱うかはロウガ君に任せてるしミチザネ氏も床を転げ回って喜んでくれてる。
良いことだ。良いメンバーを持てた。
我ながら謎の人脈だとは思ってる。偶然もここまで重なると怖くなってくるね。
『アキカゼさんに張り合えるプレイヤーがいることに驚きですが、そう言えば目的地を聞いてませんね。これからどこ行くんです?』
燕のムッコロ氏が訪ねてくる。
そう言えば目的地に関してはあまり明確に決めてなかったね。
時間の限り空の上を散歩したいと言ったら怒るかな?
「うん、まあ空ルートの探索だ。まずはそうだね、禁忌の地に赴いてみようと思う。どうかな?」
バン・ゴハン氏とムッコロ氏はその場で飛び上がり、何やらチチチと語り合っている。
話終わったのか、再度私の両肩を足場にしてパーティチャットで話しかけてくる。
『禁忌の地、そこってまだ飛行部の人しか行ったことしかないっていう、あの?』
「全く同じ場所とは限らないけどね。鯨君は二匹いる。両方の情報が出揃ってないのはそういうことだと思うよ。青と赤。この内で出ているのは赤だったね?」
『確かに……でも良くない噂もたくさん聞きますし』
ムッコロ氏が気にしているのはヘイトシステムのことだろうか?
確かにあれは良くないね。でも密入国されたら誰だって怒ると思うんだ。だから仕方のないことだと思うんだよね。
一足早く頂上で二羽と雑談してると、遅れて三人組がやってくる。
「ようやく成し遂げたぜぇ!」
「アキカゼさんに煽られたおかげだね」
「………」
「お前はなんか喋れよオーグ!」
「あはははは」
三種三様の言葉掛けで、達成感を味わっている。
懐かしいね。つい最近のことなのに、何年も前のことの様に記憶が霞んでいる。
それくらい多くのイベントを乗り越えてきたのだと思い出す。
なんせ私が頂点到達を達成したのはファストリアのイベント前。空のルートなんてかけらも意識してなかった頃だ。懐かしいなぁ、あの頃は妻とこうして手を取り合える距離を保てるとは思いもしなかったけ。
懐かしさに耽りながらも、ここから先の注意事項を警告する。
「ああ、君達。ここから先の道のりは私の恩恵無くして進むことはできないから注意する様に」
「一面雲ばっかりってやつだろう? でも雲の呼吸があればスタミナの回復は可能。アキカゼさんからの情報だぜ? 俺のスキルも一部がそれらに変化した。対策はバッチリだ!」
「バカ猿、その雲の上に乗るのが現状僕達じゃ無理って話だろ?」
「あ、そうか!」
意気揚々に語る猿門キー氏に鳥羽アド氏がツッコミを入れる。
犬堂オーグ氏は黙して語らず。
名前でこそ猿・鳥・犬と賑やかなメンツだが、種族は全員一緒と言う存在自体が漫才みたいなトリオだ。
猿門氏は両耳を両手で覆い隠して、これ以上説教ごとは聞きたくないと自己アピールが激しい。犬堂オーグ氏は口を両手で抑えている。
おや、この姿はどこかで見た事があるぞ?
鳥羽氏は目を隠す事なく、苦渋の表情で眉間を抑えると、片手で目を覆い隠した。思っていたのと少し違ったけど、これは有名な観光スポットのアレだね?
なんともいろんな要素を取り入れすぎてツッコミの追いつかない人達だ。まぁ、私が言えたことではないが。
私は移送から派生した輸送スキルをメンバーに展開する。
移送の場合、対象が一人までだったのに対し、輸送はパーティメンバーに自身と同じ『重力無視』『落下速度軽減』を付与する。
ただしスキル使用中はスタミナ消費二倍と言うデメリットも当然あるのだ。
回復量より少しでっぱるため、こまめな休憩を入れる必要があるので気をつけたい。
『アキカゼさん、これは……!』
雲の上を歩けた事実にバン・ゴハン氏が驚きの声を上げた。
ついさっきまで触ることもできなかった物体に、乗っかれるというのはいつの世もロマンだからね。みんなが喜んでくれて何よりだ。
「面白いだろう? ああ、当然だけど私から離れすぎると落ちるから気をつけなさい」
キャッキャと騒いでいた三人組と、二羽の動きが同時にピタリと止まった。
まぁそうだろうね。落ちると聞けば誰だって青ざめるだろう。
素直に近寄ってきた五人は、歩きづらいぐらいにくっついて恐る恐る歩を進める。
これじゃあ探索もままならないね。
何かいい案はないものかな?
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