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3章 お爺ちゃんと古代の導き
114.お爺ちゃんと赤の禁忌①
日々の日課に青の禁忌経由の空導石タッチが加わって数日。
未だに後続がソロに上がってくる気配を見せない。
一番最有力の猿種三人組だったが、あれ以来顔を見ないし、単純にログインタイミングの問題かなと思って思考を切り替える。
それよりも目覚ましい進歩を見せたのがバン・ゴハン氏とムッコロ氏。元々飛べると言う優位はあったものの、羽ばたきにはSTの過剰消費が付き纏うデメリットがあり、上手く風に乗れなければ墜落の憂き目に会う。
それでも派生スキルを伸ばしに伸ばし、私や猿種三人組の他に鳥類の身で天辺まで至ったのだから私はその努力を素直に称賛した。
後に得た能力が重力無視だったあたり、計算づくで取ったなと言う気になる。
「やり遂げましたね。私に続いて5、6人目かな?」
『はい、なんとか。ですが仲間たちに雲が止まり木になると伝えられる日も近いですよ?』
そう答えるムッコロ氏は、ピピーと嬉しそうに鳴く。
『俺の派生先には残念ながら生えなくてな、済まないが当分はアキカゼさんに世話になってしまう』
バン・ゴハン氏は少し切なそうにチチチと鳴いた。
気にしてないとも。
こうしてわたしには空を渡る際の新たな友ができた。
突然の出来事に動じず、自ら解決のために動ける心強い仲間だ。
『今日はどこに行くんです?』
「んー、そうだなぁ。もう一匹の鯨君の背中に招待されようかと思ってる。もちろん日課を果たしてからね?」
そう言うと二羽は喜んで鳴いた。
野生種は同族かプレイヤー間としかやり取りができないデメリットが付き纏う。普段そんなこと気にしたことないから、どうでも良いと思っていたけど、ここに来てNPCと接触しないと先に進めないと言われて困っていたとか。
その上で自力到達しないと受けられない空導石への道。
私が案内人となり、二羽は新たな力を得た。
『これがAP!? やばい! 羽ばたき一回でこんなに浮くとは思わなかった』
「ムッコロ氏は特に重力無視を覚えたでしょう? その影響も結構出てます」
『そうだった!』
『いや、それなしでも普通に凄いよこれ! 俺たち鳥類に嬉しい効果しかない!』
そう言い切るバン・ゴハン氏の興奮具合ときたら、見ていて実に微笑ましい。
「さて、天使さん。私達はこれで行くよ?」
「ああ、巫女として何か持て成せれば良かったが、生憎と慎ましい生活をしているものでな」
「お構いなく。この証を受け取れただけで私達は嬉しい」
二羽も翼をはためかせてコクコク頷く。
「で、あれば良いのだが。そうだな、せめて案内係をつけさせよう。それで私からの礼とさせてくれ」
律儀な人だ。そういえば門番の彼もそんな人だったな。
私達はマナの大木の天辺まで送り届けられると、聖獣様を傍に待機させて、もう一羽の聖獣様を呼ぶベルを鳴らしてもらった。
巫女自らの呼び出しに、赤の聖獣も嫌な顔出来るはずもない。
赤の禁忌と呼ばれる鯨と接触するのは三度目だ。
一度目は見えない彼を山の頂上からスクリーンショットでデータを抜いた時。
二度目は遠目からその存在を確認した時。
三度目が今で、あの時と違って私達にヘイトを向けてこない事でようやく落ち着けた。
そこで赤の聖獣様の背中より船が浮き出て、私たちの前に降りてきた。
そこには翼はあれど、飾りのように小さく自身の体重を浮かせることも難しそうな天空人が二人乗り込んでいた。
一人は槍のような武器を持ち、もう一人が何か石版のようなものを持っている。
どこか不審げな目をぶつけられるも、その目が天使さんに向かった瞬間に慌ただしく雲の上で土下座しだす。
まるでお役人に目をつけられた悪徳商人の如く、華麗な掌の返しようだ。身近にもつい最近こんな対応されたからね、どこも似たようなものかと思うと、苦笑いが浮かぶ。
「これはこれはすみません、巫女様のお付きの方とは知らず無礼な真似を」
「良い、面を上げよ」
「はは」
どこか時代劇を思わせるやり取り。
「この地上人は確かに私の付き添いだが、勘違いをしてもらっては困るぞ。この方はな、我ら天空人の恩人だ。妖精様との仲を取り持ってくださり、その上で我ら天空人が空の上で生きられるように空導石に力を与えてくれている」
二人の天空人の目が私に向く。
まあ、すぐに信じられる話ではないよね。
「まだ疑っておられるようだ。はあ、私が居ない間に天空人は誇りを忘れてしまったようだな。仕方がない、アキカゼ殿、印を」
だから強硬策に出るようだ。
天使様自らが認めた証を取り出して見せると、二人の天空人は再び恭しく土下座をした。このフレーバーアイテムは効果覿面のようだね。
一悶着あったが、私達は安全に赤の禁忌に入ることができた。
因みに、自力で登った。
船の力を使わなければ乗り降りできない天空人からすれば、それはとんでもないことのようで、天使さんと同じようなもてなしをしてもらった。
他の二羽も自分の翼で上がったのに、そっちにはなんの労いもないのは、やはり鳥だからだろうか?
普通に考えて、ここまでの高度を取れる鳥類はいないと思うんだけどね?
私はそう思う反面で、彼らにとって鳥類と言うだけで特別視される様だ。
『なんかすげー待遇されてるけどいいのか?』
「向こうがやりたくてやってくれてるんです。ありがたく受け取っておきましょう」
『まあ、貴重な体験として受け取っとこうか。何事も経験だよゴハン君』
『そっすね』
このやり取りだけでも分かる通り、二人は先輩と後輩のようだ。ムッコロ氏が先輩で、バン・ゴハン氏が後輩。
私が勤続してる時も欲しかったな。
なんて思いながら私はその街を歩く。
地に足を着いているので、二羽は私の肩に乗ったり、たまに羽ばたいたりしてそれぞれ自由にしている。
さて、ここではどんな出会いが待ってるだろうか?
こんなにもワクワクとした気持ちはジキンさんやスズキさんと遺跡探検をしていた時以来かもしれない。
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