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3章 お爺ちゃんと古代の導き
138.お爺ちゃんとクラン協定4
山本氏が飛空挺の着任許可を得てから早一週間。
最近よく金狼氏と顔を合わせている。どうやら順調に一、二の試練をクリアしており、これから三に挑むと意気込んでいた。
「そう言えば金狼氏、APで困ることは無いかい?」
「それだよなぁ。特殊スキルは便利だが、やっぱそっちの消費はでかい。爺さんは何か知ってそうだな?」
「そうだね。ウチのクランの女性陣が開発してるお菓子があるんだけどどうだい?」
私は袋に梱包されたダークマターを手渡した。
それを見て金狼氏は頷いていた。
「やっぱりお袋が関わってたか」
「なんだい、知ってたのに知らないフリをしてたの? 意地が悪いなぁ」
「意地が悪いのは親父譲りでね。それで、それを幾らで販売してくれるんだ?」
「アベレージ500相当だよ」
「安いな!」
「今はね」
「なんか言い方が引っかかるな。材料の問題か?」
「それと需要だね。需要と生産のバランスは今の状態で成り立っている。でもどっちかが崩れたら?」
「高騰するな。だから今はと言ったのか」
その通り。私は頷き、金狼氏はダークマターを懐に仕舞い込む。
「こいつはありがたく受け取っておくよ。それで、進捗は?」
「三で足止めを食らっているよ」
「爺さんらしくもない」
「ただ欲しい情報は得た」
「ちゃっかりしてるぜ」
「ヒントは居るかい?」
「それを自分で見つけてこその浪漫だろう?」
「その言葉は聞けただけで満足してるよ。ただ、三からは多人数プレイ推奨だ」
「肝に命じておくよ。ま、それをどう捉えるかは俺次第だがな」
そう言って金狼氏は三の試練へと降りていった。
元気だなぁ。行動力の高さはジキンさんそっくりだ。
そして思い切りの良さはランダさん似。
ハイブリットかな?
それに比べてオクト君ときたら……
チラリと視線を横に向けると、オババ様に交ざって鍋を突く彼の姿が映った。うん、まあいいんだけど。
「お義父さん、どうされました?」
「いや、金狼君が頑張ってるのに君はのんびりしてるなと思ってさ」
「それは戦うフィールドが違うからですよ。向こうは戦闘、こっちは生産。ちなみに僕も成果をいくつか持ってきてるんですよ」
そう言って巻物を幾つかと、小瓶を取り出した。
「まず最初に飛行安定の巻物」
「ほう?」
オクト君はポイッとそれを投げてすぐに効果が現れる。
「風操作を僕に使ってみてください」
「分かった……ん、おぉ!」
彼の指示通りに風操作を送ると、オクト君の体は風に乗って空を舞う。途中で風を送るのをやめると、ふわっ彼の体は元の位置に降り立った。
「重力無視か!」
「ご名答。効果は5分と短いですが、お義父さんの様に雲の上が安定しない人には切り札になるかと」
「そしてこっちが木工変化の巻物です」
「なんとなく察したが、使ってみてくれ」
「もちろん」
同じ容量で巻物を上空に放り投げると、目の前に木のボートが現れた。理論はわからない。あとオールはない。それは別途買えと彼の目が物語っている。
「ちなみに効果は?」
「簡単な仕組みですので30分てところです」
「持ち運びという意味では場所を取らなくて便利だな。他は?」
「あとはポーションの類ですね。これは巻物とセットで使うことを予定してます」
「セットで? 抱き合わせ販売かな?」
「人聞きの悪いことを言わないでください。本当は一本化したかったんですけど、どうしても混ざらずに仕方なくという形です。極論を言えばアイテムでスキルを代用をするわけですからね、無い物ねだりをするにはそれ相応のお金が必要だって事です」
「内訳を聞こう」
「まず重力無視の効果を物に与えるポーションです。お義父さんはスキルによる恩恵を自分の所有物にも与えてますけど、普通は無理ですからね? そこで開発したのがこのポーションと木工変化の巻物です。消費アイテムですが順番待ちする必要はないんです」
「それは魅力的な商品だ。折角木に登ってもくじら君までたどり着けない人があまりにも多すぎたからな」
「お義父さんがそれを言いますか? 飛空挺まで内緒で作っておいて。今お義父さんはトップ層からも目をつけられてるって自覚してます?」
「トップか何かなんて私は知らないよ。その人達と違うことをしたらダメだなんて屁理屈を聞いてやる耳は持たない主義なんだ」
「まぁ今更言って聞いてくれるとは思っていませんでしたけどね。そしてもう一つはウイングポーション。物理的に羽を生やして空を飛べるポーションです。こっちは飛行安定と組み合わせて赤の禁忌に自力で乗るためのポーションになってます。効果は同様に5分と短いですが」
「最後にお値段は?」
「内緒です。お義父さんに教えるとどこで言い触らされるかわかりませんから」
「おや、宣伝をそう捉えられると痛いな」
「身内だから教えましたが、一応これ企業秘密ですからね? 内容が内容だけにどんなに高くても飛びつくのが見えてますから。今は実験段階で、アイテムの生産ラインなんか整っちゃいないんです」
「作り手の苦労はそこだよね。消費者は金を出す権利とかでとにかく声が大きくなるものだ」
「そこは慣れているので大丈夫です。逆に今はお義父さんにヘイト向いてるお陰で楽させてもらってます」
「そう言うところ、誰に似たんだろうねぇ」
「さて、誰でしょうか」
肩を竦めてオクト君は鍋を突きに再び話の中に戻っていった。
「アキカゼさん、少し良いかの?」
「師父氏」
彼から声をかけてきたのは意外と初めてかもしれない。
今まではどちらかと言うと自分を優先させる御仁だった。
だが彼の瞳には穏やかな光が宿っていた。
どこか焦っていた今までとは違う。
「何かを掴んだ様な、そんな瞳をしていますね」
「ふっふっふ。分かる方には分かってしまうものかのぅ。そうじゃ、ワシらはさらなる高みへと至れた。きっかけは些細なものじゃったが、あの時アキカゼさんに声をかけてもらわなかったら、この境地に至れなかった。改めて礼を言わせてもらう、ありがとう!」
「それは良かったです。ですがそれで終わりだというわけではないんですよね?」
「無論。ようやくスタート地点に立てたところじゃ。今まではワシの不甲斐なさに門下生に要らぬ苦労をかけさせてしまった。じゃからこれからがその罪滅ぼし。そうなると信じておる」
「私は武闘のことには疎いですけど、師父氏ならきっとやり遂げてくれると信じてますよ。そして空を舞台にその力を篤と見せつけてあげましょう。地上との違いを見せつけてやりましょう!」
「うむ、うむ。アキカゼさんは気持ちのいい方だ。そしてワシらの流派にも理解がある」
「私は一つのことに前向きに頑張ってる人が好きなんですよ。だから手を差し伸べた。お互い辛いこともこれからたくさんあるでしょう。けれど、そういう時こそ手を差し伸べあえる仲間がいると、こんなにも力が湧き上がる。自分も負けていられないとやる気が溢れてくる。私はね、そんな支え合える仲間を作りたいんだ」
「きっとアキカゼさんの周りだからそんな人達で溢れるのでしょうな」
「当然、そのうちの一人に師父氏も入っているんですよ?」
「ふっふっふ。そうだといいがのう。さて、そろそろ門下生を迎えに行く時間じゃ」
「お気をつけて」
師父氏はなんともない様に鯨君の背中から飛び降り、風操作で舞う様に空を渡った。私以上に手慣れてる飛行に、何を案ずることがあるのだろうか。
「みんなが天空ルートを楽しく攻略していってくれる。だから私達も前に進むべきか」
足止めしてる理由は、ランダさんのお料理教室が暴走してジキンさんが素材集めに奔走してるからなんだけどね。
いい加減、前に進みたいなあ。
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