【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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3章 お爺ちゃんと古代の導き

155.お爺ちゃん達と[五の試練]④

「あ、ハヤテさーん。見てくださーい」


 スズキさんがワクワクしながら私に訴えかける。


「凄いね。何をしたらこんなになったの」

「それはね、水操作で氷を作って高度を微調整してる時に水を浴びせかけてしまったんだ。最初はちょっとしたミスとして処理したが、スズキ君が真似をしてそこら辺に水を引っ掛けて遊ぶようになって、偶然見つけたんだ」

「テヘヘ」


 スズキさんがいつになく申し訳なさそうに頭を掻いている。
 魚人の頭って何処だろう?
 まぁ結果オーライと言うことにしておきましょう。


「ナイスですスズキさん」

「ハヤテさんならそう言ってくれると思いました」

「普通ならペナルティも良いところですよ? まぁ、今更ですけど」

「なんだか和やかなパーティーですね。肩の力が抜けるというか……」

「それがうちのクランの良いところでね。もりもりハンバーグさんも一緒に頭を悩ませて貰って良いですか?」

「乗り合わせた船です。構いませんよ」

「良かった。それでこれは地球儀っぽいけど、ジキンさんはどう思う?」

「うーん。その赤い印は現在地っぽいんですよね」

「成る程。探偵さんは?」

「そうだねぇ、僕だったらこれ以外にも似たようなものがセットで隠されているんじゃないかと踏んでいるよ」

「ほぅ。つまり」

「僕の出番って事ですね?」


 キメ顔でスズキさんが水操作で流水を作って背泳ぎでどこかに行ってしまう。あの人はどうしてあんなに自由奔放なんでしょうか。まぁ、別に構いませんけど。


「ちなみにこちらはランダさんに手土産を三つ程発見しました」

「おぉ! 素晴らしいですもりもりハンバーグさん!」

「ちょっと、どうして私を無視するんですか?」


 もりもりハンバーグさんに擦り寄るなりガシッと手を取り感謝の意を告げるジキンさん。
 上下にブンブン振られながら本人も何処か困惑している。


「どうせマスターは金魚の糞みたいについて回ってただけでしょう?」

「ひどいなぁ、そんなこと言うんだったらこの素材は全部オクト君のところに回すからね?」

「ズルイですよ、それをされたら僕の立場が地の底だ!」

「だったらもう少しクランマスターを労うことです」


 新素材をチラつかせながら私はジキンさんの前から立ち去った。あの人は一応あの場に残ってくれるらしい。
 探偵さんも他の場所に行ったし、こちらも何か新しい発見を見つけに回る。


「いつもあんな感じなんですか?」

「うん? まあね。みんな好き勝手に動くからまとめる私は大変だよ」


 肩を竦めて見せると、どこか遠い目で空を見上げるもりもりハンバーグ氏。


「羨ましいな。うちのクランはマスターのワンマンでして。私どもメンバーはその尻拭いに何度奔走したことか」

「それを言われたらクランマスターは弱いですね。私も結構やらかしますので」


 パシャパシャとそこら辺に水操作で変化が見られないかの様子を見ている。


「それでも仲良さげじゃないですか。私どもは上から押さえつけられてばかりで、どうにもこうにも」

「ふーん。もりもりハンバーグさんはさ、そのクランでどうなりたいの?」

「どう、とは?」

「なんていうか自分の立ち位置っていうの? それをなんとかしようとして悩んでたりするのかあと思ってさ」


 ちょうど真反対に位置するある一部の柱。
 そこに水をかけたら一瞬で溶けてレンズを作った。
 これは一体……レンズと言えば虫眼鏡。太陽光で熱を集めることで何かを炙り出す事を思い浮かべる。
 しかし太陽は雲の真上だ。このまま上げてしまって良いのか悩み、すぐにパーティー全員にスクリーンショットを撮ってメール送信した。反応はまちまちだ。
 そんな時にもりもりハンバーグ氏が独白する。


「私は多分、もっとマスターにも素材の本当の価値を知って欲しいのかもしれません」

「ふむ。それは誰かに決められた価値ではなく、もっと広い意味でかな?」

「はい。リアルで考古学者なんてやってるせいかもしれません。職業病ですかね」

「成る程それは職業病だ。そんな考古学者のもりもりハンバーグさんから見て、このレンズはどんな仕掛けが隠されてると思う?」

「仕掛けですか?」

「うん」


 もりもりハンバーグ氏腕を組みじっと見上げる。キョロキョロと周囲を見廻し、やがて考えがまとまったように一つうなずいた。


「私だったらそうですね、確かこの上に大きな太陽がありましたね。眩しかった記憶があります。そしてそのままだとフィールド全体が溶けてしまうとアキカゼさんは言いいました」

「言いましたね」

「ならばスイッチはその太陽です。仕掛けを全て起動させた状態で上に登ることで何かが現れるのかもしれないと、私の考古学者の勘ですがね」

「私も概ね同じ考えだよ。この無駄に硬い足元には何かが隠されている。そんな風にずっと思っていた。何せ今までの試練の足場はずっと雲だったのに、ここに来て急にこんなしっかりとした作りだ。怪しいにも程がある」

「やはりそうだったんですか。仲間内でも移動にアイテムを浪費し過ぎると愚痴を零していました」

「なら次はもりもりハンバーグさんがその仲間にこの場所を教えてあげてください。そして称号の共有をしてあげてください」

「良いのですか?」

「良いも何もその称号は既に貴方のものだ。どのように扱うかは貴方が考えて使えば良い。それで最終的に貴方のクランが大きくなったら、クランマスターだってガミガミ言わなくなるかもしれないでしょ? メンバーだってもっと伸び伸びやれるかもしれない」

「アキカゼさん……今日出会ったばかりの私の事情にそこまで考えて……この力は私の方で大切に使わせていただきます。そしてゆくゆくは多くの未知なる素材の提供をお約束しましょう」

「そこまでしなくても良いよ。でも、うん。そうしてもらえたらうちのクラメンさんは喜ぶかもしれない。私はよく無欲な男だとよく周りから言われる。けどそんな事はない。ただみんなの言う常識に興味がないだけなんだ。私の楽しみ方は少々特殊でね、あまり周囲に理解してもらえないんだ」


 もりもりハンバーグ氏はその気持ちわかりますと同意してくれた。人と違うプレイイングはやはり周囲から理解されないからね。でも理解者が集まれば色んな突破力が生まれる。


『少年、こっちでも見つけたよ。今画像をそっちに送る』


 探偵さんの一方的なコールの後、メールから画像が受信された。その映像記録を取り出し、もりもりハンバーグ氏に見せた。


「これは……レンズですか。しかも大きさの違う」

「どうやら私達の考えはビンゴのようだ。この真下には何かがある。太陽光を上手いこと中心に集められるように他の仕掛けも起動させてしまおう」

「はい!」


 私達は情報を回し合い、すべての仕掛けを起動させた。
 中心にあった地球儀を囲うように設置されたレンズに、それ以外を屈強な壁に囲まれて準備はいよいよ完了。
 もりもりハンバーグ氏にもダークマターを分けて全員の浮力をゼロに。雲を抜けてすぐに太陽光が照りつけると、凝縮された光が地球儀を貫き、その場所に地下へ続く通路を作っていた。
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