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3章 お爺ちゃんと古代の導き
169.お爺ちゃん達と[七の試練]①
一つの謎解きが終われば意識は自ずと空へと向かう。
リーガル氏に言われたが、どうも私の攻略速度は早いらしい。
とは言え、攻略というほど私は攻略をしてない。
クラントップ層である彼らはまず自分たちの中で優位性を示し、そこから後続プレイヤーに向けて再現できるレベルで完全攻略する。
それに比べたら私の攻略は常に行き当たりばったりだ。
偶然の連続で運良く当たりを掴んだにすぎない。
「なに考え込んでるんです?」
ジキンさんが待ち合わせ場所にやってくるなり開口一番訝しげな表情でたずねてくる。まるでその仕草が似合わないと言われた様で釈然としない。
「ひどいな。出会い頭になに?」
「どうせまた下らないことでも考えてたんでしょう」
「下らない事だなんて。ただ私と周囲の攻略に対する考え方というのがズレてると思ってね。最近携わった件で考えさせられたんだ」
「最近携わった……どれです?」
「リーガル氏の案件だよ。ほら、影の巨人が居たじゃない?」
「ああ、あの大陸。もしかしてもう攻略したんですか?」
「うん、すごく優秀だよね、彼ら」
「そりゃ優秀でしょうよ。ランキングで上から数えた方が早いんですよ?」
「そうなんですけどね。やっぱりクランメンバー全員で情報を共有できるデータベースを見せられたときはすごいなって思いました」
「あれは確かクラン機能でしたよね? マスターのランクが問われるので無理強いはしませんが欲しいならがんばらないとですよ?」
「そこなんだよね」
「何の話?」
そこでちょうど合流した探偵さんが話に加わってきた。
「ああ、探偵さん。丁度いいところに」
片手を上げながら挨拶をしあい、情報通の彼に詳しく話題を振る事にした。
ジキンさんと同じ様に最近攻略したお話と、トップ層のクランの報連相の充実具合を順に話した。
しかし探偵さんは私の話を聞くなりしかめ面で私を睨んでくる。
「って言うか君、僕たちに黙って勝手に攻略したの? 誘ってよ。水臭いじゃない」
「いやいや、下見で言っただけなんですよ。偶然見つけちゃってね。でも私一人じゃ攻略は無理だったよ?」
「とか言ってますけど、どう思いますか? ジキンさん」
「疑わしいですね。ですがこの人に限っては今までのやらかしを全て偶然で片付けている。今回もまた……と言うやつです」
「成る程なぁ。つまりこの先もやると?」
「まず間違いないでしょう」
うんうんと頷き合う二人を横目にスズキさんが元気に挨拶をしてくる。何かあったんですかと私に聞いてくるので、いつもの嫉妬だよと言うと納得していた。
それで納得できちゃうんだ。
「さてみんな。次はいよいよ七の試練だよ。気合は充分かな?」
手を叩いて全員の注意を引き、私は話を変えた。
ただこのメンツに気合や根性論を解いても何も返ってこない。
ニヤニヤした顔を向けてくるばかりだ。
それぞれの思惑を達成するためなら何でもする彼らは私にとって非常に頼りになるメンバーである。
トップ層のクラン程ではないとしても、手の届く範囲で助け合えれる。そんな頼れるメンバーだ。
「どのみち行き当たりばったり。手探での探索だ。何回でもやり直せる僕たちがそんな気負っても仕方ないでしょ?」
探偵さんが肩の力を抜きなよと私の背を叩く。
「秋風君の言う通りです。僕たちには僕たちなりのやり方で十分だ。それに今までの攻略で肩肘張って上手く行ったことありました? ここはもっと柔軟な思考を持っていきましょうよ」
「いつも通りですね。なら僕も気が楽です。なんだかんだあの空気が好きなので。ガチ過ぎず、それなりに知恵を出し合って乗り越えていく感じが好きですねー」
ジキンさんとスズキさんが探偵さんに続き、私は溜息をついた。
「結局聞くだけ無駄でしたね。じゃあいつも通りに気楽に行きましょうか。メインは素材で攻略は二の次かな?」
「ですね。ウチの奥さんの調理の為にもそれは確実に」
「結局六の試練は採取どころじゃなかったですもんね」
「まるでテーマパークでしたよね。あれはあれで楽しかったですけど、二度と行きたくないですね。もし見つかっても素材は後続に任せましょう」
「賛成です。僕もこのメンツ以外で行きたくないですね」
駄弁りながら飛空挺に乗り込み一度赤の禁忌に戻り、そのまま七の試練へ。妻と合流して賑わう赤の禁忌を見回した。
「なんかずいぶん賑わってるね。イベント?」
「精錬の騎士でイベントを仕掛けたらしいわ。今は素材ブームでしょ? ここで一気に素材入手場所を広めて一気に手に入れるつもりよ」
成る程。彼も動き出したな。
人の興味が向く物事への嗅覚が相変わらず高い。
「それはこっちにも分前あるの?」
「家族割引で売ってくれるそうよ」
「成る程、しっかりしてるね。それで服の売り上げはどう?」
妻は店番をしながら商品をいくつか手にとって説明してくれた。商品棚にはいつのまにか新商品も増えていた。
「好調よ。今までは色違いでごまかしてたけど、最近小物も増やしたのよ。こっちは趣味だけど、天空人からも直接購入頂いてるわ」
「へぇ。あの人達お金持ってるんだ」
「お金がなくてもこのゲームは価値が合えば物々交換でトレード出来るのよ。知らなかった?」
「そう言えばそうだった。なまじゲーム内通貨を持ってるもんだから忘れてたよ。パープルに聞いてたのになぁ、うっかりうっかり」
後頭部を掻き毟り、妻との会話を打ち切る。
そこで七の試練へ着いたらしい。
オババ様がこちらへ挨拶しにきてくれた。
相変わらずランダさんの周りで出来上がった調理アイテムを頬張ってるあたり、威厳は何処かに行ってしまっている。
プレイヤーからも偉い人だなんて思われてないかもね。
そして私達の都合で赤の禁忌を借りている時、他の試練に素材採取に行きたい面々は貸し出ししてるウチの飛空挺でそれぞれの試練に向かう。ちなみに各駅停車なので時間を合わせないと生きて帰れても自分な時間待ちぼうけを喰らう仕掛けだ。
我慢できないならぜひ自分用に作ってくれとしか言えないが、それでも運用者は後を経たない。
そして七の試練は今までと打って変わってクイズ形式。
右か左か選んで、部屋を間違えたらエネミーがうじゃうじゃ出てくる仕掛けだった。
[七の試練:虚実]
四の試練と似た様な問いかけ。ただ一つでも間違えると延々と戦い続けて消耗させられる。
ちなみに正解しても戦闘があったりと、当たったのか外れたのかもわからない。
不安になりながら足を進め続ける私達の前に、また出題の板が現れた。
[ここは虚にして実。正解とハズレは紙一重。ハズレの中の正解を。あたりの中のハズレを見つけて突き進め]
「これ、何回目だっけ?」
「メモを見る限る8回目だね」
探偵さんがボケ防止で始めたメモを見て唸る。うっすら額から汗を流し、表情は口惜しげだ。
「もしかしてスタート地点に戻されてます?」
「まず間違いなく」
「しかし素材は意外とありますよね、ここ」
焦る私達を横目にウハウハ気分なのはジキンさんだ。
スクリーンショットを撮って、今までの素材と違うと確信しながらウキウキスマイルでアイテムバックに詰め込んでいる。
「お土産も大事ですけど謎解きにも参加してくださいよ。完全に迷ってますよ、私達」
「戦闘には参加してるじゃないですか」
嫌だなぁ、と犬の人は呆れ返る。
「って言うか、犬のじぃじが素材を取って門を潜ると確実にここにきますよね」
何かに気がついたスズキさんが、ジキンさんをじっと見た。
「な、なんですか? 僕が悪いと言うんですか?」
「ジキンさんと言うか素材がですね。一度それをバッグから出して通ってみましょうよ」
「嫌だ。これは僕が見つけたんです!」
逆に言えばジキンさん程度に簡単に見つけられた素材だ。
私に限らずウチのメンバーは薬物や鉱物への知識が浅い。
見つけてすぐに素材とは判別できない。
現にウチの妻やランダさんが居なかったら素材どころでは無いのだ。一度現物を見て、ようやく認識できる。それを初見で見つけた辺りで怪しいとは思っていた。
「手放しませんよ、これは奥さんのお土産に持って帰るんです!」
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