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3章 お爺ちゃんと古代の導き
202.お爺ちゃん達と地上開拓者達の反応
私はどうも勘違いしていたらしい。
先程配信していた動画のコメントを拾い上げながら、自分たちの戦闘を見返してみる。
その中に私の欲しい答えがなかった事だ。
私は今まで戦闘は苦手だからと言い訳を並べてきた。
パッシヴ極であることの負い目。
それが戦闘を頭の中から追い払ってしまったのだ。
自分は戦えないと思い込んでしまった。
実際当初は足手纏いだったし。
しかしだ。
動画を配信した結果、実は私は若者に負けないくらいに動けるし、それなりに強いことがコメントから言われていた。
まるで実感のない事なので戸惑ってシェリルにコールをかけた。そこで私は彼女から思いがけない言葉を頂いてしまう。
「父さん、自分が思ってるほど弱くないわよ? リーガル君から話を聞いた時は眉唾だったけど、戦ってるところを見て確信したわ。あれだけ戦えてたら普通にレギュラー入りよ、ウチなら」
「それは光栄だね。でも身内だからって流石に褒めすぎじゃない?」
「はぁ……父さんは納得しないだろうから改めて言っておくわね。現状、空という環境において父さん達ほど適応しているプレイヤーは居ないわ」
「そんな事ないでしょ。私達はエンジョイ勢だよ?」
「だとしてもよ。私のクランの一軍が五の試練と六の試練にいまだに手間取ってるし、七の試練に至っては、クリアに至る事すらできない。古代語は解読されてるのにも関わらずよ」
「あそこはテクニックが居るからねぇ」
五の試練の話だ。
「テクニックだけでどうにかなるものじゃないわ。ただでさえ攻略法が判明しててもクリアできてないの!」
「ふぅむ、それは困った。もりもりハンバーグ氏は一発で飲み込んでくれたよ?」
「あの人も大概おかしいのよ。普通能力を物にするまで検証を積むでしょう? ウチはその効率化が他より早い事で有名なの。流石に一発成功してずっと成功し続けられるプレイヤーなんて皆無よ?」
えー、大体でいけないものかなぁ?
「雲の位置とかで分からない? ウチは探偵さんが判断してくれたからなぁ」
「それを出来る人が限られてるって話よ。ただでさえ曇って風で形を変えるでしょ? 落下中にその場所に意識を向け続けられる人なんてどれだけ居るのよ?」
む、それは確かにそうだ。
探偵さんてそう思えばつくづく優秀なんだよなぁ。
本人の性格はともかくとして。
「とにかく、父さんのパーティーは父さん自身もすごいけどパーティーメンバーにも恵まれてるのよ」
「そうかなぁ?」
「そうよ。最初こそチャンスだと思ってたプレイヤーも、難易度を聞けば怖気付くわ。私達のクランもそうよ。父さんのような素人が攻略出来たんだから簡単だろうと高を括ってた。でも現実は違うわ。挑戦すれば挑戦するほど地上ルートの難易度の緩さが浮き彫りになる。ああ、私達はぬるい環境で調子に乗ってただけなんだって思い知らされた。それは地下ルートにも言える事よ」
「あそこはエグいギミックだもんね。私が天空ルートに行ってなかったら多分たちまちやられてしまっていただろう」
「私達は手ひどく全滅したわ。見えない敵なんて初めてだったもの」
「それは災難だ。それで?」
「ええ。今後父さん達は発見を繰り返しながら私たちにもチャンスをくれると思うけど、過度に期待しすぎないで欲しいの」
「ううむ、それは難しいね」
またレイドイベントが来たら私達はついつい頼ってしまうだろう。
「チャンスをもらえるプレイヤーはすごく嬉しがるわ。ただ、自分が弱いからという考えでなんでもこちらに振らないでということよ。特に今回の九の試練、うちの一軍であれとまともにやりあえるメンツはいないわ」
「それは残念だ。でも憶測込みの情報でも嬉しいんだよ。そういうのもダメかな?」
「それぐらいなら出せるけど、できる保証は無いわよ?」
「いいよいいよ。成功したらラッキー程度に考えてるし。やったもん勝ちなところあるでしょ、戦闘って」
「はぁ、なんだか父さん達がどうして試練クリアしてきたか分かった気がしたわ」
「ええ、そんな大それたことした覚えないけど……」
「父さん達は負けて当たり前。自分たちは弱いから、勝ててラッキーぐらいのスタンスよね?」
「そうだね。これからもそのスタンスでいくと思う」
「だからよ。たった一度のひらめきに全てを賭けられるの。私達はそれが出来ない。無駄なロスを恐れて安全マージンを取ってしまうわ」
それがコストを抑えて勝ち上がってきたシェリルのクランだと言う。
失敗を最小限に抑え、最大効率の戦果を挙げるべく鍛え上げられた兵士達。
だから私達のようなダメで元々の思考が働かない。
無駄だと思ってしまうらしい。
「それは難儀だ。私だったらそんな息苦しい環境でゲームはしたくないな。もっと自由におおらかな気持ちで遊びたい」
「そうね、それが理想だわ。でもね、一方で私のように無駄を許せない人も多いの。だからその人達が過ごしやすいクランを作っているわ」
「それは実に君らしい提案だ。同類は放っておけないか」
「父さんのクランも同類だらけじゃない」
「確かにそうだ。これは一本取られたな」
シェリルがこんな風に私に冗談を言うのは実は初めてじゃないだろうか?
「でも今回の動画配信で周囲が父さんへどのように接していいかが大きく変わるきっかけになったんじゃないかしら? やってみてどうだったの?」
シェリルは少しだけ柔らかい表情を向けてくる。
「うーん、ブログとは勝手が違うからね。編集したやつでいいなら使いどころはありそうだ」
「いいんじゃない、それで。結局は使い方次第よ。ウチは考察込みでクラン専用の撮影班が居たりするわ。実際に配信という環境で育った世代にはデータを進めるより配信を見て覚えてもらう方が頭に入りやすい子もいるの。うちの子達は早々に諦めてしまったけどね」
「母さんから聞いたよ。子供達は君にそっくりだそうじゃないか」
「似てるかしら?」
「生みの親がそう言うんだ。あまり見てこなかった私ではなく、近くで一番見守ってきた母さんの言葉だ」
「そう、じゃあきっと似てるのね。自覚はあまりないけど」
「ちなみにパープルの見解だと、私にも似てるらしい」
「それは心外だわ」
シェリルはバッサリと切って捨てた。
酷いじゃない。
もっと私にも優しい言葉をかけて欲しいな。
「それで父さん、提案があるんだけど」
「なんだろう? 君から話を持ってこられると物おじしてしまうな」
「大した話じゃないわ。今のうちに傘下に入る申請をしておきたいと思って」
「その話は断ると言ったよね?」
「じゃなくて。私達のクラン連合一同が父さんのクランの傘下に入るわ」
「え、なんで!?」
びっくりした。どこでそんな話になったの?
「急に言われても困るな。正気? 未だにランクCのクランだよ? メンバーだって15人しかいない弱小だ」
「スキルの多さだけじゃ偉ぶれないってみんな思い知ったはずよ。そしてあの試練をクリア出来た父さん達に敬意を評しているの。どうかしら? 私がここまで譲歩する事なんて今まで生きてきて初の試みよ?」
「私の一任じゃ決めかねるから返事は後日でいいかな?」
「十分よ。それと父さん」
「何かな?」
「父さんの配信動画、お気に入りに登録が150万人を越えたそうよ」
全世界で300万人が遊んでいるという触れ込みのゲームで150万人!? 何が何だかわからない。
「えっ!」
「これからもっと父さんのファンが増えちゃうかも。傘下に入りたいってクランは案外多いんじゃないかしら?」
「勘弁してよ」
どうやら私は配信によって攻略の情報を摘む前に、地上プレイヤーの心を掴んでしまったらしい。
娘が何を考えているか知らないが、これから始まる時代を予見して動き出したことだけは確かだった。
そして、シェリルのクランが傘下に入る事で、揃った情報を持って私達は八の試練の彼の部屋まで来ていた。
そこで私達はレムリアの民の以外な弱点を知ることになる。
無敵だと思われた彼らの弱点は案外身近にあったのだ。
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