【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

文字の大きさ
295 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信

258.お爺ちゃんと秘境探検隊③

 リズベッド氏の記憶を頼りに私達は獲得した遺物を再入手すべく、曰くありげなとある部族の遺跡を巡る。
 どうもこの部族、ヒュプノを神と称える邪教の様で、破滅志願者の集まりである様だった。

 ヒュプノを破壊の権化であると知りながら、復活させようと目論むあたり碌なものではない。

 しかしそう設定された新たな敵の使役種族だった場合は?
 そんな風に考えてしまうのはやはり私が古代の歴史に踏み込んでしまっているからだろうか?

 それと独自にメモを取っていた所で判明した情報が一つある。
 この遺物。道を人の形と考えると、頭と両手の位置に当たる様に配置されていた。

 中央にあったオブジェを心臓部とするならば……他にも似た様な場所があるかもしれないと探索を進める。


「隊長、こっちの方に通じる道がありそうっす」

「でかした。早速調べよう」


 手探りで見つけたのだろう、カレイド氏がその小さな体格を生かして茂みの奥から顔を出す。リズベット氏の言葉に頷き、すぐに探索を開始していた。


「彼女はいつもあんな感じなの?」

「ああ、ホークアイでは見つけられない隠し通路などは彼女が見つけてくれるんだ。我が部にはなくてはならない人材だよ。アキカゼさんと比べたら取るに足らない子に見えるかもしれないけど」


 私の質問に皮肉で答えるあたり、私の信用はすっかり地に落ちたようだ。
 挽回のチャンスはあるのかわからないけど、誤解は解いておきたいな。


「そうなんですか。それは是非私が有名になる前に出会いたかった」

「それは謙遜かはたまた嫌味か」

「本心ですよ。私は自分の楽しいことを追求してきた人間だ。しかし同時にやりたい事には責任がつきまとう。もし天空ルートを見つける前だったら、なんの責任を負わずにお付き合いできたと思うよ。けど今は無理だ。目立ちたくなくても注目を浴びてしまう。臨もうと望まなかろうと、私が赴けば新たな発見が出てくるのだと信じ込まれてしまっている。その焦りもあって先程は失礼をしてしまったね」

「いえ。期待されていれば結果を出そうと焦る気持ちはわかるからな」

「ええ。しかし期待されてると言うのは同時に失望と表裏一体でね、自由はない。だから純粋にあなた達を羨ましく思う。自分達だけとは言え同じ趣味を分かち合えるメンツがいる。そんな貴方達にもっと早くに出会っていたかったと思うのは不思議だろうか?」

「ふむ。どうやら我々は貴方を誤解していた様だ」

「どの様に思われてたのか気になりますね」

「常に注目を浴びてなければ生きていけない様な人かと」

「そんなわけないじゃない。私は常に自分の信じた道を突き進んでいるだけだよ? 確かに注目を浴びる機会は多い。なんだったらフレンドさんが私を防波堤がわりにしてくることもしょっちゅうだ」

「それはお気の毒に」


 ふふふ、と笑って短く会話を切り上げる。
 視界の隅にはカレイド氏が何かを持ってやってきた。


「これ、見つけたっす! 何かのフレーバーっすかね?」


 手に持っていたのは黄金の槌の柄の部分。
 残念ながら重要な部分は削られていた。
 そして古代文字反応。
 

「レムリアの器に反応がある。チャンネルを切り替えてみた所、ムー言語の様だ。スクリーンショットを撮るので情報共有をしようか。一度戻ってくるか、フレンド申請をしてくれればメールで送りつけるよ」

「そんな共有方法があるのだな。俺たちは知りもしなかった」

「ありゃ、割と知られてないんだこれ。そう言えばオクト君は身内だからと甘えていたけど、彼って意外とすごい人だったんだよなぁと最近になって思うよ」

「そうでしょう、生産で1、2を争うクランのマスターさんですよ?」

「でも一緒に住んでる娘婿なんだけど」

「近くに居すぎてその存在が掻き消されてしまうやつでしょうな」

「さて。フレンド申請を受け取りましたので全て許可を出して、随時送りますね。このテクニックはスクリーンショットさえ使えれば遠くに居ても使えるのでわざわざ戻ってこなくても大丈夫なメリットがあります」

「なるほど。しかしレムリアの器というのは便利だな。手に入れるには相当難易度の高いミッションを乗り越えなければいけないと聞くが」

「そうですね。気難しいレムリア人のその時に欲しい答えを選択しないと問答無用でキルされるお祈りゲーです。選択肢云々の前に、敵対行動を示すビームを遮断する電磁バリア発生装置を持ってるだけで内部データの友好度がマイナスからスタートするのなんてしょっちゅうです」

「それは挑戦したくないな。そんな見えてる地雷を踏みに行けるのはアキカゼさんくらいだよ」

「でもその奥に何が隠されてるか気になりません?」

「それは……そうだが」

「私はね、常々それが知りたくて無謀と呼ばれるチャレンジを繰り返す男なんだ。お陰でフレンドさんや妻からは呆れられてるよ」


 肩を竦めて愚痴をこぼすと、リズベッド氏は苦笑しながら話を切った。
 本題に戻る。


「浮かび上がった文字は[対になるものを探せ]と描かれている。お心当たりは?」

「生憎と」

「ですよね。ではホークアイ氏やカレイド氏は? こういうのはむしろ憶測で意見を言い合う方が盛り上がりますよ。私の行動理念はダメで元々。失敗しても、次頑張ればいい」

「ああ、オレ達もそれだ。失敗を繰り返し前進する。後退してる回数の方が多いが、それでもわからないと目を瞑ることだけはしたくない」

「その情熱を忘れないでください。では私から妄想を語りますね」

「妄想ですか?」

「うん、妄想。そう言っておけば考察が外れても被害は少なくて済むじゃない」

「それ良いっすね。今度使わせてもらいます」

「ははは。どんどんつかってくれたまえ。それで私の妄想はね、この金属の棒……私のクランのサブマスターが振るう棍棒やバットとは根本からして違うから、きっと先端に槍かハンマー、斧の様なものがついてる柄だと思うんだ」

「柄か。確かにそれっぽく見える」

「あたしは楽器のパイプオルガンを思い浮かべましたけどねー。流石に違うっすよね?」

「楽器?」

「忘れてください。思いつきの妄想っす」

「いや、私からは出てこないアイディアだ。確かに楽器の振動なら物理無効のヒュプノに対抗できるかもしれない」

「では楽器関連で事に当たるか?」

「お手柄だな、カレイド」

「本当にあたしの妄想で進めるんすかー?」


 恥ずかしそうに顔を赤くしながらカレイド氏が照れている。


「何事もチャレンジだ。それに失敗前提だって言ったでしょ? だから失敗はしても良いんだ。私だって失敗の積み重ねでここに居るんだよ? 視聴者のみんなは私を成功者だと言うけどね、そんな事はない。今も昔もチャレンジャーのつもりで歩んでいるよ」

「正直アキカゼさんの事をそこら辺の動画配信者と同じ括りで見ていた事を恥ずかしく思う」


 白状する様にホークアイ氏は言った。


「オレもだ。確かにアキカゼさんには実力がある。オレたちなんか手に負えないほどの能力だ。だが考え方が根本から違うんだな。オレたちはどこかでそれを羨んでいた。しかしアキカゼさんは俺たち以上に持たざる者だった。そして今は誰よりもその力を巧みに操っている。努力の結果の強さを付け焼き刃と見誤ったのがオレたちとの違いだ」

「ああ、別にそこは気にしてませんよ。私は昔から何も持ってないのが当たり前だったので、思いついた事は全部やる様にしてるんです。今回はそれがうまく回っただけですよ。お陰で他のテイマーさんのお役立ち情報が出てきました。私には既に過去の情報ですけど、それをどう活かすかは他のプレイヤーさんのお手並み拝見ですね。是非自分の糧にしていただきたいと思います」

「その上で情報に興味がなさすぎる」

「自分にとって必要か不要かを切り分けてるので、要らないのをいつまでも覚えていても仕方ないでしょう?」

「では何故アキカゼさんは配信をやられているのですか?」


 リズベッド氏からの質問は多くの視聴者が求めているだろう。
 情報に興味がないのに、お金儲けをするわけでもないのに何故、と。


「理由は単純ですよ。要は私の行動の目撃者になっていただきたいんです。アーカイブ化される行動記録。それは何度も見返される事を意味します。私は誰かのお手本になれる様な人物ではないけれど、それでも誰か一人でも真似してくれたら、無駄じゃなかったと思うでしょう? だからきっと、私は自分の生き様をこのゲームに残したいんでしょう。老い先短いと自覚しての行動です。案外私達の様な第一世代は多いと思いますよ?」


 それを聞いたリズベッド氏やホークアイ氏、カレイド氏は言葉を噤み、私を見上げていた。
 コメント欄は相変わらず騒がしいが、私が配信をUPしている理由が上げられてしんみりとしたコメントが多く挙げられていた。

 中には攻撃的なコメントも見受けられたが、それを塗りつぶす様な私のファンと名乗る応援コメントが見られた。
 さて、ファンの為にも恥ずかしいところは見せない様にしないとね。
感想 1,316

あなたにおすすめの小説

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無実の罪で謹慎中ですが、静かな暮らしが快適なので戻る気はありません

けろ
恋愛
王太子妃候補だった伯爵令嬢エレシア・ヴァレンティスは、ある日突然、身に覚えのない疑いをかけられ、婚約破棄と無期限謹慎を言い渡される。 外出禁止。職務停止。干渉禁止。 誰がどう見ても理不尽な処分――のはずだった。 けれどエレシアは、その命令を前にして気づいてしまう。 誰にも呼ばれない。誰にも期待されない。誰にも干渉されない。 それは、前世で決して手に入らなかった“静かな時間”そのものだと。 こうして始まった、誰にも邪魔されない穏やかな謹慎生活。 一方その頃、彼女を切り捨てた王城では、思わぬ方向へ事態が転がり始めて――? これは、無実の罪で閉じ込められた令嬢が、皮肉にも理想の生活を手に入れてしまう物語。 叫ばず、争わず、ただ静かに距離を取ることで完成する、異色の婚約破棄ざまぁです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。