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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
331.お爺ちゃんとクトゥルフさん②
若干の違いを見せる彼だったが、数億年も時を渡れば思考が変わるのは仕方ない。それをあっという間に過ごした私だからこそそう思うのだ。
彼らから見た人間もそうなのだろうね。
同じ考えを持つ自分と、思考や思想を変えていく人間に話が違うじゃないかと思うことだってある筈だ。
そんな事を考えていると少しだけ不機嫌な声が聞こえて来る。
[ふむ、其方はそう思うか]
「おや、いけませんでしたか?」
『いや、そうなのかもしれぬなと余も思っておった。寿命の長さゆえに、短命な人間種とは話が合わないと常々思っていたのだ。だがそう思えば納得すると思ってな。それが時の流れによる心変わりにあるのかと、そう思っただけよ』
「なるほど。まぁ私の思うクトゥルフさんと、今のクトゥルフさんの相違点は口調ぐらいですのであまり深く捉えなくてもいいですよ。以前のクトゥルフさんより今のクトゥルフさんの方が自信がみなぎっている。本来のクトゥルフさんと言ったところでしょうか?」
[そうであるか。なら良いのだが]
さまざまな景色を後方へ送りながら私は海中から空へと泳ぐ空間を変える。
「おお、空も海中の地続きみたいだ。腕を振るうだけでグングン進むぞ!」
『古代泳法のなせる技よな。アレに教わったのであろう? それは余らの時代では教える物の無い廃れた泳法である。が、伝承者が生き延びた今代では願えば教わることもできるであろう』
「それは朗報です」
[だからと言って空まで泳げるのは後にも先にも其方のみであろうがな]
「スズキさん、貴方の奥様も泳げると思いますが?」
[アレは余の前では泳がん]
「おや? 珍しいですね」
[余が執務に集中してるのに気を遣ってのことだろう。らしく無いと言えばらしくなかったな]
「貴方はずっと眠ってましたからね。起きて仕事をこなす姿にきっと見惚れていたのでしょう。おちゃらける気分ではなかったのだと思いますよ?」
[そうだと良いのだがな]
雑談は軽やかに。
古代泳法での空の旅。
なんとAPを全く消費してないのはクトゥルフさんが統治する世界だからこそか?
空でさえも海のように掴んで押し出すことができた。
まるで海中に居るみたいに。
[今の時代は海の気配が一段と強い。より活性化したと余は思っておる]
「その時代を知りませんので不思議でした。けどクトゥルフさんが起きていた時はこれが普通だったのですね?」
[いや、普通ではあり得ぬな。其方が居るからだ]
「私?」
[余の失った半身こそが其方よ。其方に学び、其方と共に歩んだからこそ余は大きく躍進できた。長い長い時間を過ごして、失った半身の大きさに何度打ちひしがれた事か]
「大袈裟ですね。私のような人間は何処にでもいますよ」
[そう思っておるのは案外其方だけであろうよ。アレも其方程の御仁をついぞ見かけなかったとこの数億年で溢しておるしな]
「それは嬉しい言葉です。夫婦生活が順調すぎて、私のことを忘れてたらどうしようって思ってましたよ?」
[忘れたくても忘れられぬよ]
それ、もちろんいい意味で言ってますよね?
うちの周り、特にジキンさんや探偵さんとか悪い意味で捉えるからなぁ。本当に見る目がない。
「さて、こうも世界が変わってしまっては何処がどうなっているのか判別つきませんね」
[ならばいつも通り一から巡って行ってはどうだね?]
「そうですね、その方が私らしい。お付き合い願えますか?」
[勿論だ。その為に余は行動を共にしたのだからな]
なんだかんだ本体のサイズじゃ人間世界は見て回れないもんね。スズキさんくらい小回りが効くなら可能だけど。
いっそ依代を作ればいいのに。
そう頭の中で思っていたら却下された。
どうもスズキさん程悪意を寛大に受け取れない性質らしい。
うん、まあ魚人のみんながみんなああじゃないって知ってるけどさ。スズキさんはオンリーワンだからこそありがたみがあるんだ。
そう思ってファストリアに降り立つと、何故かアイドルグループのコンサートが開かれていて、その中心にスズキさんが居た。
あれ、彼女はルルイエでお留守番してるんじゃなかったっけ?
[アレは当時よりも分け身を量産して居るからな。其方と過ごした時にも似たような事をしていなかったか?]
「そう言えばたしかに同時に複数操ってましたね」
[それが数億年の時を経てパワーアップしたとアレは言っておるな]
「パワーアップしちゃったんですか」
[アレとしては性格設定までこだわってるらしい。見つけても他人のフリをするのが良いだろう。が、すでに有名人として其方の名はルルイエに伝わって居るがな]
「聞いてませんよ?」
[だから今伝えた]
この人、私と似たような対応してきましたよ?
こんなとこまで似なくたっていいのに。
その後スズキさんとは全く別の人として出会ってサインをもらった。
なんだか変な気分だ。
ちなみにスズキさんの分け身は全部で14体居るんだとか。
多すぎない?
12体は街の管理兼アイドルのスズキ。
1体がルルイエの幻影。残りがプレイヤーとしてのスズキさんと言うことだった。
これを同時に操れるとかパワーアップだけで済ませて良いのだろうか?
ちなみにプレイヤーの魚人はマーマン、マーメイドが多くてサハギンタイプは皆無だった。
そもそも選択種族に居ないらしい。
クトゥルフさん曰く、マーマンからの特殊進化先がサハギンなのだとプレイヤーには説明してるのだとか。
上位NPCがそんなシステムに割って入っても大丈夫なのと聞いたら、この世界では割と上位NPCならある程度は弄れると笑顔で返してくれた。
ただし書き換える権利は世界を掌握してる時に限るのだとか。
そういう意味では他の陣営もずっと指を加えて今の現状を見てるわけにもいかないんだろうね。
クトゥルフさんがこうして復活した今、今までその権利を得ていた神格がなりを潜めてるという事だもんね。
変な事件に巻き込まれなきゃ良いけど。
杞憂と思いながらも既に不安の種は撒かれた後だった事を後になって私は知ることになった。
彼らから見た人間もそうなのだろうね。
同じ考えを持つ自分と、思考や思想を変えていく人間に話が違うじゃないかと思うことだってある筈だ。
そんな事を考えていると少しだけ不機嫌な声が聞こえて来る。
[ふむ、其方はそう思うか]
「おや、いけませんでしたか?」
『いや、そうなのかもしれぬなと余も思っておった。寿命の長さゆえに、短命な人間種とは話が合わないと常々思っていたのだ。だがそう思えば納得すると思ってな。それが時の流れによる心変わりにあるのかと、そう思っただけよ』
「なるほど。まぁ私の思うクトゥルフさんと、今のクトゥルフさんの相違点は口調ぐらいですのであまり深く捉えなくてもいいですよ。以前のクトゥルフさんより今のクトゥルフさんの方が自信がみなぎっている。本来のクトゥルフさんと言ったところでしょうか?」
[そうであるか。なら良いのだが]
さまざまな景色を後方へ送りながら私は海中から空へと泳ぐ空間を変える。
「おお、空も海中の地続きみたいだ。腕を振るうだけでグングン進むぞ!」
『古代泳法のなせる技よな。アレに教わったのであろう? それは余らの時代では教える物の無い廃れた泳法である。が、伝承者が生き延びた今代では願えば教わることもできるであろう』
「それは朗報です」
[だからと言って空まで泳げるのは後にも先にも其方のみであろうがな]
「スズキさん、貴方の奥様も泳げると思いますが?」
[アレは余の前では泳がん]
「おや? 珍しいですね」
[余が執務に集中してるのに気を遣ってのことだろう。らしく無いと言えばらしくなかったな]
「貴方はずっと眠ってましたからね。起きて仕事をこなす姿にきっと見惚れていたのでしょう。おちゃらける気分ではなかったのだと思いますよ?」
[そうだと良いのだがな]
雑談は軽やかに。
古代泳法での空の旅。
なんとAPを全く消費してないのはクトゥルフさんが統治する世界だからこそか?
空でさえも海のように掴んで押し出すことができた。
まるで海中に居るみたいに。
[今の時代は海の気配が一段と強い。より活性化したと余は思っておる]
「その時代を知りませんので不思議でした。けどクトゥルフさんが起きていた時はこれが普通だったのですね?」
[いや、普通ではあり得ぬな。其方が居るからだ]
「私?」
[余の失った半身こそが其方よ。其方に学び、其方と共に歩んだからこそ余は大きく躍進できた。長い長い時間を過ごして、失った半身の大きさに何度打ちひしがれた事か]
「大袈裟ですね。私のような人間は何処にでもいますよ」
[そう思っておるのは案外其方だけであろうよ。アレも其方程の御仁をついぞ見かけなかったとこの数億年で溢しておるしな]
「それは嬉しい言葉です。夫婦生活が順調すぎて、私のことを忘れてたらどうしようって思ってましたよ?」
[忘れたくても忘れられぬよ]
それ、もちろんいい意味で言ってますよね?
うちの周り、特にジキンさんや探偵さんとか悪い意味で捉えるからなぁ。本当に見る目がない。
「さて、こうも世界が変わってしまっては何処がどうなっているのか判別つきませんね」
[ならばいつも通り一から巡って行ってはどうだね?]
「そうですね、その方が私らしい。お付き合い願えますか?」
[勿論だ。その為に余は行動を共にしたのだからな]
なんだかんだ本体のサイズじゃ人間世界は見て回れないもんね。スズキさんくらい小回りが効くなら可能だけど。
いっそ依代を作ればいいのに。
そう頭の中で思っていたら却下された。
どうもスズキさん程悪意を寛大に受け取れない性質らしい。
うん、まあ魚人のみんながみんなああじゃないって知ってるけどさ。スズキさんはオンリーワンだからこそありがたみがあるんだ。
そう思ってファストリアに降り立つと、何故かアイドルグループのコンサートが開かれていて、その中心にスズキさんが居た。
あれ、彼女はルルイエでお留守番してるんじゃなかったっけ?
[アレは当時よりも分け身を量産して居るからな。其方と過ごした時にも似たような事をしていなかったか?]
「そう言えばたしかに同時に複数操ってましたね」
[それが数億年の時を経てパワーアップしたとアレは言っておるな]
「パワーアップしちゃったんですか」
[アレとしては性格設定までこだわってるらしい。見つけても他人のフリをするのが良いだろう。が、すでに有名人として其方の名はルルイエに伝わって居るがな]
「聞いてませんよ?」
[だから今伝えた]
この人、私と似たような対応してきましたよ?
こんなとこまで似なくたっていいのに。
その後スズキさんとは全く別の人として出会ってサインをもらった。
なんだか変な気分だ。
ちなみにスズキさんの分け身は全部で14体居るんだとか。
多すぎない?
12体は街の管理兼アイドルのスズキ。
1体がルルイエの幻影。残りがプレイヤーとしてのスズキさんと言うことだった。
これを同時に操れるとかパワーアップだけで済ませて良いのだろうか?
ちなみにプレイヤーの魚人はマーマン、マーメイドが多くてサハギンタイプは皆無だった。
そもそも選択種族に居ないらしい。
クトゥルフさん曰く、マーマンからの特殊進化先がサハギンなのだとプレイヤーには説明してるのだとか。
上位NPCがそんなシステムに割って入っても大丈夫なのと聞いたら、この世界では割と上位NPCならある程度は弄れると笑顔で返してくれた。
ただし書き換える権利は世界を掌握してる時に限るのだとか。
そういう意味では他の陣営もずっと指を加えて今の現状を見てるわけにもいかないんだろうね。
クトゥルフさんがこうして復活した今、今までその権利を得ていた神格がなりを潜めてるという事だもんね。
変な事件に巻き込まれなきゃ良いけど。
杞憂と思いながらも既に不安の種は撒かれた後だった事を後になって私は知ることになった。
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