【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

351.お爺ちゃんと聖魔大戦開催告知

 街と街をつなぐ線路を引いて、有志を募って列車を走らせた企画を行って早二週間が経過する。

 ウチのクランは1-2-3までを繋ぎ、3ー4までをフィールのクランが受け持ち、4ー5ー6を精錬の騎士、6ー7ー8を漆黒の帝、8ー9ー10ー11ー12を精巧超人にやってもらう事になった。

 しかし駅の経営とは別に列車の貸し出しを更にアトランティス陣営から募る。
 乗り物勢をこれを機に開拓しつつ、お小遣い稼ぎをさせようというものだ。
 乗り物のノウハウは探偵さんが持ってるので、本人に聞いてもいいしね。それこそきちんと走れば側はなんでも良い。
 客は見た目にそれほど拘らないからね。

 おかげさまで企画は成功。今のところ敷いた路線には多種多様な列車が走っている。
 列車ごとに特色を出したり色々してるのが面白い。
 試験的に施したハーフマリナー専用の駅とかは他種族には不評だったけどね。

 何せ海のど真ん中に人を降ろすから。
 陸地とかは何もない。吹きさらしの無人駅しかないその場所。
 その分景色の良さは保証するよ。
 私以外の撮影勢が居るかは分からないが、そんな人達には丁度いい位置取りだろう。
 撮影旅行なんかしても良いんじゃないかな?

 沖から移動すると結構距離があったりする場所なので、ここに駅を作ると聞いて喜んだ層は大体ハーフマリナーだったと言うだけだ。
 今ではほとんどの大陸が海に没しているので、主に1ー2ー3のルートは何でこんな場所に? と言う地点に駅を設けた。
 なぜかと聞かれたらそれが面白そうと言う理由でだ。

 答えをあらかじめ用意せず、プレイヤーの探究心を試すと言う目的もある。
 個人的にあったら嬉しいだろうなと言う場所や、ハーフマリナーに嬉しい試練の近場などにも置いた。

 これを通じて何人か深海に行けたプレイヤーも出てきている。
 単純に景色を楽しむでも良いし、いくつかはデートスポットなんかにもなりつつある。
 時間になったら列車も来るし、帰還するのに申し分はない。
 無人と言っても人を置いてないだけでそれなりに施設を充実させたりしてるからね。
 ちょっとした公園や、ドリンクバー等だ。
 その場所でゲリラライブを行うアイドルなんかも居るので、今や人気スポットになりつつある。
 やはり移動に賃金を設けないと言うのが一般受けが良かったのだろう。
 基本的にVRはワープ機能が当たり前だからね。
 こうやって時間を掛けて移動する事に馴染みのない人たちが多かったのもあり、人気は上々だ。



「しかしルリーエ」

「何ですか?」

「どうしてまた地上でのアイドル活動はやめちゃったの?」

「あぁ、その件ですか。実は……」


 ふむり、とルリーエはスズキさんボディで頷いた後、私に向き直って語る。実は密かに育てていた新人アイドルのヤディス君をデヴューさせる為に師匠である彼女が地上で活動するのを控えたと話す。


「彼女の旦那さんはムー大陸に住んでますからね」

「だからって地上でやるメリットは?」

「だってこの世界の地上の一部ってムー大陸ですよ?」

「えっ」

「えっ?」


 数瞬黙り込む。待って待って待って。
 今彼女はなんて言った? ムー大陸が実在した事よりも、このゲーム内マップのどれかに実在するって言わなかった?


「じゃあアトランティス大陸やレムリア大陸もあるの?」

「うーん、それは流石に僕の口からは言えませんが……」


 流石にこれ以上はネタバレになるらしい。彼女の口は軽そうなので、案外聞けば教えてくれるかもしれない。


「けど、アトランティス大陸の一部は僕の一部ですよ!」

「あるんだ。って言うかやっぱりクトゥルフさんも関わってたか」

「そもそも僕たちがやってくる前に滅びた連中ですからね」

「あーうん、君たち外の世界からやってきたんだものね」

「何言ってるんですかー。外から来たのはハヤテさんも一緒でしょ? プレイヤーはこの世界の歴史に一切関わらない連中じゃないですか」

「随分とメタい発言をどうも」


 やはり彼女はどこかNPCらしくない。
 NPCなのに自分をNPCと理解してるような語り口で私に接してくる。だがそれ以上に私たちと同等……どころかそれ以上の見識を持つのが旧支配者、外なる神の眷属と言ったところか。
 ここがゲームの中だと言うのを忘れさせてくれるような物言いに少し抵抗を持つが、だからどこか変な既視感もある。

 そもそも世界の移り変わりが早すぎるのだ。
 リアルの六倍速で進む世界。
 それはゲーマーならば痛手と考える速度の速さ。
 しかし旧支配者の彼女達からしてみればもっと、それこそ数百、数千倍で加速していく世界なのかもしれない。
 そう考えれば直接世界に影響を与える立場にプレイヤーがあると言われてもおかしくはないのか。

 かつて存在したムー大陸。
 各地に住まうムーの子孫がその歴史を担っている。
 子孫が存在する事が何よりの証拠。
 今や散り散りとなって世界各地に居るけど、一体どこがムー大陸なのか判明してない。


「それで、ヤディス君はアイドルとしてやっていけそう?」


 話題を切り替える。
 考えれば考えるほどに思考の迷宮にはまり込んでしまいそうなので一旦切り上げだ。


「僕が鍛えましたからね。外の世界に興味のない旦那さんだそうで、歌と踊りで意識を向ける作戦に出ました。興味を持つと教えてあげたらあの子すごく喜んでましたよ」


 すごく悪い顔をしてるよ、この子。


「ねぇ、ヤディス君の旦那さんてガタトノーアだよね? 外に出して大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。今のところプレイヤーの手が届いてない場所に住んでますから」

「でも空を飛んだら行けるよね?」

「行けませんね。一応結界が張ってあります」

「じゃあ大丈夫か」

「ですです。あ、でも……」

「でも?」

「ハヤテさんなら結界通り抜けできるかもです」

「もしかしてその結界って?」

「聖魔大戦の本戦が開催されるゲートが置いてありますね」

「うわっ。直接神格が住んでるところに置かないでよ。危ないなぁ」

「でも住んでるのは地下ですよ?」

「ヤディス君の歌と踊りで表に出てくる可能性もあるんでしょ?」

「|◉〻<)てへぺろ!」

「やっちまったぜって顔しても誤魔化されないよ?」

「まぁでも。神話生物が各地で管理してますし、眷属やベルト持ちのプレイヤーならワンチャン会話ができますので」

「それって向こうに会話の意思があればだよね?」

「|◉〻<)」

「やっぱりか」


 ルリーエはもうてへぺろ! とすら言わなくなった。
 そもそもワンチャンスあるかどうかの会話で生き残れるかの瀬戸際に立たされる場所に出向くべきではない。
 ヤディス君には悪いけど、一般プレイヤーからしたら表に出てきてほしくはない場所でもある。
 と言うか……


「ねぇルリーエ」

「なんです?」

「過去に戻れる列車があるじゃない?」

「ド・マリーニの掛け時計付き機関車ですね、はい」

「その列車ってさ、基本的にベルト持ちしか行かないよね?」

「まぁそうですけど……ってまさか!」

「何を察したか知らないけど、最寄駅の拡張にゲートの近場を通しても良いんじゃないかと思って」

「それ、神話生物も利用出来ちゃいません?」

「たまにはそうやってコミニケーションを取るのも良くないかな? ほら、あの人達って本戦始まるまで暇じゃない? 天空の七の試練にも繋いでさ。レムリアの民も引っ張ってきたりで友好を繋いでもらって」

「うーん、やっちゃって良いのかなぁ? 流石に越権行為な気がしないでもないような?」

「無理かな?」

「聖魔大戦の本戦告知が来ない事には無理っぽいですねー」

「じゃあくれば良いんだ?」

「くればですけどね」


 とそんな話をしている時だ。


<ワールドアナウンス:ただいまを持って聖魔大戦の本戦出場選手10名が抜擢されました>

<各選手には特別なメニューが配布され、そのメニュー項目の増減を行う事によっ本戦を有利に切り抜けることができます>

<本戦開催地は再度告知致します。準備期間を設けますので出場選手はその期間内に準備を済ませ、本戦開催地に足を向けてください>


「来たね、本戦開催告知」

「来ちゃいましたね」

「でもこのワールドアナウンス、一般人には聞こえてないよね?」

「どうしてそう思うんです?」

「だって空中に意識を寄せてたの私くらいでしたよ?」


 私とルリーエは席に座って列車に揺られている。
 乗客は疎らだが、ワールドアナウンスがしたにしてはあまり慌ててなかった。
 だとすれば関係者各位にのみ知らされた形だ。
 私はともかくルリーエにまで聞こえたと言うことはそう言う事だろう。


「そうですね。一応こっちの話は聞こえないように遮断してましたが」

「いつも配慮ありがとうね」

「むしろ何でこんな開放的な場所で危険な会話してるんでしょう僕たち」

「私にとっては日常会話のつもりだった」

「──等と容疑者は語っており、犯行をまるで認めておりません。現場からは以上です」

「現場ってどこ?」

「こ↑こ↓」

「さて、茶番はこれくらいにして」

「あぁんいけずぅ」


 話をバッサリ切り捨てて。
 ルリーエの無駄会話を振り払う。
 そうやってすぐ私を悪者扱いするんだから。
 それよりも新しく本戦出場選手に与えられたメニューというのが気になった。

 ベルト持ちの能力値とどう違うんだろう?
 何か拡張要素でもあったのかな?
 何はともあれ開いてみようか。


 ====聖魔大戦専用コマンド====
 正気度: 70/100
 侵食度:150/100<上限突破>
 神格 :クトゥルフ
 断片 :5/10枚
 幻影 :ルリーエ
 信仰 :20000
 権能 :神格召喚『クトゥルフ』
    :領域展開『ルルイエ』
    :掌握領域:範囲取り込み吸収技
 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
 眷属召喚『九尾』

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
 LP:100%
 正気度:100%
 貫通:0
 侵食:0
 幻影:0
 束縛:0
 <割り振りポイント:100>
 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・



 増減させろと言うのは新たに追加されたこれか。
 たった100のポイントで4つの項目。
 普通に割れば各25。
 しかしこれらの増減が勝負を分けると来た。

 まず貫通が何を貫通するのか分からない。そこまでは教えてくれないらしい。

 流石に同じ魔導書陣営だからと内訳を話してくれたりはしないもんなぁ。

 割り振りが難しいと言えば難しい。
 多分数値が大きい方が技を繰り出した時の勝敗を決するのだろう。これは上手いこと考えたなと思った。

 実際に支配者の私とそれに劣る聖典側では能力差が圧倒的だ。
 しかしこの数値の軽減で拘束攻撃を振り払うなどが出来る仕掛けなのだろう。
 どの部分を大きくするか少なくするかで勝敗が決まる。

 私の場合は裏をかかないとしてやられると言うわけだ。
 支配者にはそれなりに能力にボーナスが与えられるが、実際にはこの四つの項目で争うわけだな?

 途中で追加ポイントが得られるかどうかも分からない。
 これは非常に困った事になったぞ。
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