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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
396.お爺ちゃんのドリームランド探訪8
「こんにちは、皆さん。お昼ご飯も食べたのでまた再開していきますよ。現在はまた違う扉から入って違うところに出た感じです。これを機に何処と何処が繋がってるか検証していきたいと思います」
「|◉〻◉)それ以前に前回の場所が何処かもよく分かってませんけどねー」
【わこつー】
【早い復活で】
【飯食いに行っただけか】
【耐久配信でもなんでもないからな】
【その割に濃密な時間だったが】
コメントを見るに前回からの引き継ぎが多そうだ。
もりもりハンバーグ君も見てくれてるかな?
「前回の場所はとろサーモン君の居た場所だよ。彼が何処に送られたか判明すれば、その付近だと言っておけばいいよ」
【この人荒野と海原越えたこと忘れてねぇか?】
【忘れてそう】
【出会ったの港町だもんなぁ】
【聖獣との出会いは荒野】
【海でグラーキ回避して】
【港町で聖獣押しつけて】
【とろサーモンの追撃もかわして】
「だっけ? あんまり記憶にないや」
【あれだけのことがあったのに?】
【本人にとって本当にどうでもいいことだったんやろな】
【草】
【そりゃ気軽にクトゥルフ様やナイアルラトホテプが寄ってくる存在やぞ】
【聖獣クラスが有象無象なのか】
【これがクリア者の余裕!】
正直なところ、その程度は誰でも出来ることだと思うんだよ。
シェリルや探偵さんは扱う書物の関係上それができないだけだ。魔導書陣営では( ͡° ͜ʖ ͡°)氏とアンブロシウス氏に至っては神格とのコンタクト不足だと思っている。
それぞれプレイヤーとしての質が高いおかげで我を前に出しすぎるのだろうね。
もっと身を委ねて信頼すれば向こうも答えてくれるよ。
それさえクリアしてしまえば自ずと道は開けるものだと思うんだ。シェリルだって出来たんだ。彼らに出来ないわけがない。
【ところでこれ、何処に向かってるんですか?】
「それを今調べてるんだけど?」
【行き当たりばったりか!】
「|◉〻◉)第一村人も出てこないので」
「私の配信はほぼ検証なところがあるからね。何処の扉がどの場所と繋がってるか判明出来れば御の字くらいに思っておきなさい。実際に自分が飛ばされたときに便利だよ? どの扉から入れば何処につながるか記憶できてれば」
【ちなみに進捗情報は?】
「それを聞いちゃう?」
「|◉〻◉)/[0%]だよ!」
【地図持ってねーもんな】
「何処かの有志が私の配信を見比べて地図作りをしてくれてることを祈るしかないね」
【そもそも前回何処から入ったのかすら知らない件】
【そこからなんだよな】
【そうか? ヒントは出てたぞ】
【そんなんあったっけ?】
【あったじゃん、イ=スの民】
【あっ、マナの大木?】
【多分そこ】
視聴者の中にもなかなかの観察眼をお持ちの方がいるようだね。ヘビーリスナーかな?
「正解です。前回はマナの大木。では今回は何処からだと思います?」
【それを教えて欲しいんじゃんか】
【いや、この聞き方は当てて見せろって事では?】
【ヒントください!】
「そうですね、以前砂嵐まみれになった配信を覚えてませんか? まだ私が配信を始めて間もない頃のお話です」
【あ、ライダーベルトを入手した配信?】
【あー、なんか見たことある】
【あれ何処だっけ?】
ふふふ、悩んでる悩んでる。
大いに悩むといいよ。そうやってその場で悩みながらも答えを導き出す爽快感を覚えていってください。
ただ見てるだけ、教えてるだけだと何も身につかないからね。
山登りは低酸素運動の本領発揮。
と言うよりも、今の私に呼吸は必要ないので歩みは軽やかだ。
そもそも重力無視で体に重さを感じないからね。
【それにしても真っ黒な山ですね】
【狂気山脈かな?】
「だったらいいんですけどね。確かあれってアトランティスの一部でクトゥルフさん関係の遺跡がありませんでしたっけ?」
【めっちゃポジティブに受け止めますね】
【普通知ってて足を運ばないんだよなぁ】
【言うて、この人ダン・ウィッチ村に積極的に関わったし】
【そうだった】
【クトゥルフ様にも認められてるから安心でしょ】
【でも反乱を起こしたショゴスが居ませんでしたっけ?】
「ショゴスならこの指輪で召喚できるよ。そうだ、事前に呼んでおいて彼を通訳として今から仕込んでおこう」
【この人ブレないな】
【状況を楽しんでいるとしか思えんぞ】
「|◉〻◉)良いですね。僕が仕込みますよ」
「任せます。じゃあ呼ぶね」
指輪を掲げ、そこからスライム状の生物が湧き出る。
その個体は生まれ落ちるなりスズキさんに抱き抱えられて冒涜的な子守唄を聞かされていた。
いや、クトゥルフさんを讃える歌は今聞く分には冒涜的でもなんでもないけどさ。この配信が魔導書陣営向けで本当に良かった。コメント欄でも特に正気度が減るなどのコメントも見受けられない。そもそもナイアルラトホテプが表に出た時点でこれ以上ないくらいに正気を失ってるだろうからね。そう言う意味ではそれに耐えた者たちだけが生き残ったと思っている。
【魚の人、手慣れてるね】
【リリーちゃんモードの方が良くない?】
【いや、逆に人の形だと不信感を持たれるからこれで良いんだよ】
【お前ショゴスの何を知ってるわけ?】
【誰だって全く違う存在がいたら気が気じゃないだろう?】
「はいはい。それはさておき登山の続きをするよ。ここが狂気山脈だと言うのならそろそろ遺跡に到着するはずだ」
【そういえばそうだな。って風がだいぶ強まってきましたけど】
「こんなときには重力操作が役に立つね」
【ホント便利だな、天空の称号】
【空も飛べるからな】
【割と簡単に取れるけど、絶対アキカゼさんのクランを介さないでいくと面倒なやつだぞこれ】
【まだとってない奴がいることに驚きを隠せない】
【みんながみんな空の上に行けると思うなよ?】
【嫉妬まみれで草。確かに飛空挺の入船料は高いが、見返りは大きいぞ?】
【突風をものともしてないのは流石っすね】
「さて、徒歩で行けるのはこれくらいか。ここからは垂直の断崖を登っていくよ。スズキさんは例のコタツでショゴス君を介抱してあげて」
「|◉〻◉)はーい」
現れいでたる奇妙なコタツ。
そこでショゴスは触腕を器用に動かしてみかんの皮を剥いて丁寧に捕食していた。
その光景に賑わうコメント欄。
しかしその横に置かれていたお茶には後付けの茶柱が添えられることはなかった。
【ショゴスには茶柱無しか】
「|◉〻◉)僕の茶柱は安くないんで」
【格上か格下かきっちり分けてるわけね】
「じゃあ毎回入ってる私は?」
「|◉〻◉)ふふふ。どうでしょうね?」
思わせぶりな口ぶり。しかし何処か嬉しそうに茶器を扱う。
コメント欄に受け答えしつつ、突風吹き荒ぶ断崖を上り詰めること数時間。
ようやく開けた空間に出てこれた。
やっぱりここは狂気山脈のようだ。
では北極大陸の何処かなのだろうか?
それにしては体感温度が下がったような気配はない。
いつのまにか氷結耐性が出来ていた?
まさかね?
そう言えば深海もすごく寒いはずなのに普通に歩けたものね。
今更か。
開けた山道を歩いて行く。
すると遺跡と思しき入口がぽっかりと開いて私を見下ろしている。まるで巨大な生物の口を想起させるが、虎穴にいらずんば孤児を得ずと言う言葉を思い出して一歩踏み出した。
遺跡はシン、と静まり返っていた。
遺跡群はファストリアの壁内にあるものと似通ってるが、それよりも気持ち新しさを感じる。
時代背景が一切見えないな。
お目当てのショゴス達が一切出てこないことも気になった。
もしや既に誰かに攻略された後だろうか?
それを確かめるために再度領域を展開してみると、別段聖典の拠点化はされてないようだ。
明らかにこんな怪しい山を攻略してないなんて見る目がないね。
それとも、聖典陣営では見えない仕掛けがあるのだろうか?
深部に赴く。
遺跡の回廊はまだ生きていて、手を翳せば刻まれたアトランティス文字に光が走って壁と思われた場所が割れて扉を象った。
見慣れたような風景でありながら、既視感は感じない。
まるで主人の帰りを待つように、最奥には玉座が置かれていた。
道中に壁画らしいものは見当たらなかった。
カメラをかざしてもヒントらしいものひとつ浮かばない。
特に疲れてはいないけど、せっかく椅子があるんだから座ってみるのも良いだろうと腰掛ける。
すると脳内にアナウンスが走った。
<隠されし遺跡を発掘しました>
<拠点化しますか?>
YES/NO
拠点化されていないのならばしてしまって良いだろう。
私は特に悩むことなくYESを選択する。
するとすんなり拠点化された事を確認した。
これで拠点化した場所はダン・ウィッチ村とアーカム、ここの三つ目だ。
今思えばそれがトリガーだったのだと思う。
<条件を達成しました>
<拠点にダンジョンを形成することができます>
<形成したダンジョンに守護獣を設置することができます>
なるほど、こう来たか。
つまりここは魔導書陣営の為の霊樹なのだ。
道理で聖典側が見つけられないわけである。
しかしダンジョン、ダンジョンねぇ。
そして守護獣。ダンジョン的に考えれば守護者か。
当たり前だけどこれを作る上でのメリットが分からないことには手をつけようがない。
でもこの情報は拡散しておいて良いだろう。
「取り敢えず朗報。拠点は特定のプレイヤーが三つ持つとダンジョンが解放されるようだよ。そして守護獣はラスボスとして設置できるみたいだ」
【ふぁーー!?】
【え、どう言うことです?】
【まーた何かしでかしたんですか?】
「しでかしたも何も、この場所自体が魔導書陣営にとっての霊樹らしい。きっと何か我々にとって都合のいいアイテムが生産できるんだと思う。言い方を変えれば生産施設だ。戦闘が得意じゃない人や、探索が苦手な人にも役割を与えてもらったと考える方が良いんじゃない? あいにくと私はこういう物づくりは苦手でね。誰か候補が居たら場所ごと融通するよ?」
【相変わらずの無欲】
【しっかしダンジョンか】
【これはイベント趣旨が見えてきましたな】
【ああ、これはどう見てもタワーディフェンスだろ】
【つまりどういう事だってばよ?】
【聖典と魔導書の陣取り合戦なんだよ、突き詰めると】
【それは結構前から言われてるやん?】
【ただ小規模な小競り合いですまないタイプの消耗戦なんだ。だから突出したプレイヤーが一人二人いても陣営にとっては焼け石に水なんだよ】
【あー、じゃあ本格的なのは人数揃ってから?】
【そうなるな。まずは全てのシークレットを開示してシステムを暴いてからだ。今回の発掘ですら数百あるうちの一つぐらいに見ていていいな】
【途方もないな】
【そりゃここからが本番なのに、チュートリアルより容易なわけねーだろ】
【それもそっか】
「取り敢えずここはキープって感じでまずは拠点の開放が最優先かな? 三つでダンジョンの開放とあるように、数を維持すれば何かしら開けていく予感がするしね」
【それを聖典の邪魔を避けながらこなしていくわけか】
【骨が折れるな】
【あいつらも足引っ張らずに自分たちの拠点増やせばいいのにな】
「それなんだけど、探偵さん曰く幻影との絆を結ぶ為の手段が魔導書陣営の邪魔をすることが一番効率がいいらしくてね。ほら、正義って基本悪が動いてからじゃないと行動できないでしょ?」
「|◉〻◉)取り敢えずショゴ太郎を守護獣に添えましたけど良いですよね?」
【ショゴ太郎……】
【ネーミングセンス……】
【まだダンジョン運営するかどうかも決めてないのに守護獣だけ置いちゃったか】
「まぁ、任せます。どうせなら小説にあったようにショゴス達の楽園でも作ってやってください。ダンジョンの運営もやりたいならスズキさんやる?」
「|◉〻◉)ふふふ。聖典の奴らに目にモノ見せてやりますよ」
【後付けの茶柱が唸りを上げる!】
【茶柱が唸るのか?】
【意味がわからんぞ!】
【きっと移動はコタツで、みかんを食した数に応じて進むんだ】
【草】
「|◉〻◉)それいいですねぇ、ショゴ太郎に伝えておきます」
【採用された!】
【それでいいのか】
【かつてこんなぬるいダンジョンがあっただろうか?】
【ぬるいか? 正しく意味不明だぞ?】
【実際に空飛ぶコタツを目にしたら正気度減るだろ】
【みかんパワーが足りない時は揚力が安定しませんとか出るのか?】
「もうそれでいいんじゃないですか?」
【完全になげやりだよ、この人】
【絶対興味なくしてるな】
【謎らしい謎がなかったから消化不良なんだろ】
【ここに来るまで十分に試練あったように見えたんだが気のせいだったか】
【この人にとっては楽勝だったってだけだぞ?】
【それ】
【午前中のプレイをうろ覚えの時点でな】
「はいはい。終わった事を掘り返さない。それじゃあスズキさんはここに置いて私達は下山しましょうか」
「|◉〻◉)ノシ いってらっしゃーい」
残されたスズキさんとショゴ太郎をダンジョンに残し、私は新しい謎を探しに行った。
「|◉〻◉)それ以前に前回の場所が何処かもよく分かってませんけどねー」
【わこつー】
【早い復活で】
【飯食いに行っただけか】
【耐久配信でもなんでもないからな】
【その割に濃密な時間だったが】
コメントを見るに前回からの引き継ぎが多そうだ。
もりもりハンバーグ君も見てくれてるかな?
「前回の場所はとろサーモン君の居た場所だよ。彼が何処に送られたか判明すれば、その付近だと言っておけばいいよ」
【この人荒野と海原越えたこと忘れてねぇか?】
【忘れてそう】
【出会ったの港町だもんなぁ】
【聖獣との出会いは荒野】
【海でグラーキ回避して】
【港町で聖獣押しつけて】
【とろサーモンの追撃もかわして】
「だっけ? あんまり記憶にないや」
【あれだけのことがあったのに?】
【本人にとって本当にどうでもいいことだったんやろな】
【草】
【そりゃ気軽にクトゥルフ様やナイアルラトホテプが寄ってくる存在やぞ】
【聖獣クラスが有象無象なのか】
【これがクリア者の余裕!】
正直なところ、その程度は誰でも出来ることだと思うんだよ。
シェリルや探偵さんは扱う書物の関係上それができないだけだ。魔導書陣営では( ͡° ͜ʖ ͡°)氏とアンブロシウス氏に至っては神格とのコンタクト不足だと思っている。
それぞれプレイヤーとしての質が高いおかげで我を前に出しすぎるのだろうね。
もっと身を委ねて信頼すれば向こうも答えてくれるよ。
それさえクリアしてしまえば自ずと道は開けるものだと思うんだ。シェリルだって出来たんだ。彼らに出来ないわけがない。
【ところでこれ、何処に向かってるんですか?】
「それを今調べてるんだけど?」
【行き当たりばったりか!】
「|◉〻◉)第一村人も出てこないので」
「私の配信はほぼ検証なところがあるからね。何処の扉がどの場所と繋がってるか判明出来れば御の字くらいに思っておきなさい。実際に自分が飛ばされたときに便利だよ? どの扉から入れば何処につながるか記憶できてれば」
【ちなみに進捗情報は?】
「それを聞いちゃう?」
「|◉〻◉)/[0%]だよ!」
【地図持ってねーもんな】
「何処かの有志が私の配信を見比べて地図作りをしてくれてることを祈るしかないね」
【そもそも前回何処から入ったのかすら知らない件】
【そこからなんだよな】
【そうか? ヒントは出てたぞ】
【そんなんあったっけ?】
【あったじゃん、イ=スの民】
【あっ、マナの大木?】
【多分そこ】
視聴者の中にもなかなかの観察眼をお持ちの方がいるようだね。ヘビーリスナーかな?
「正解です。前回はマナの大木。では今回は何処からだと思います?」
【それを教えて欲しいんじゃんか】
【いや、この聞き方は当てて見せろって事では?】
【ヒントください!】
「そうですね、以前砂嵐まみれになった配信を覚えてませんか? まだ私が配信を始めて間もない頃のお話です」
【あ、ライダーベルトを入手した配信?】
【あー、なんか見たことある】
【あれ何処だっけ?】
ふふふ、悩んでる悩んでる。
大いに悩むといいよ。そうやってその場で悩みながらも答えを導き出す爽快感を覚えていってください。
ただ見てるだけ、教えてるだけだと何も身につかないからね。
山登りは低酸素運動の本領発揮。
と言うよりも、今の私に呼吸は必要ないので歩みは軽やかだ。
そもそも重力無視で体に重さを感じないからね。
【それにしても真っ黒な山ですね】
【狂気山脈かな?】
「だったらいいんですけどね。確かあれってアトランティスの一部でクトゥルフさん関係の遺跡がありませんでしたっけ?」
【めっちゃポジティブに受け止めますね】
【普通知ってて足を運ばないんだよなぁ】
【言うて、この人ダン・ウィッチ村に積極的に関わったし】
【そうだった】
【クトゥルフ様にも認められてるから安心でしょ】
【でも反乱を起こしたショゴスが居ませんでしたっけ?】
「ショゴスならこの指輪で召喚できるよ。そうだ、事前に呼んでおいて彼を通訳として今から仕込んでおこう」
【この人ブレないな】
【状況を楽しんでいるとしか思えんぞ】
「|◉〻◉)良いですね。僕が仕込みますよ」
「任せます。じゃあ呼ぶね」
指輪を掲げ、そこからスライム状の生物が湧き出る。
その個体は生まれ落ちるなりスズキさんに抱き抱えられて冒涜的な子守唄を聞かされていた。
いや、クトゥルフさんを讃える歌は今聞く分には冒涜的でもなんでもないけどさ。この配信が魔導書陣営向けで本当に良かった。コメント欄でも特に正気度が減るなどのコメントも見受けられない。そもそもナイアルラトホテプが表に出た時点でこれ以上ないくらいに正気を失ってるだろうからね。そう言う意味ではそれに耐えた者たちだけが生き残ったと思っている。
【魚の人、手慣れてるね】
【リリーちゃんモードの方が良くない?】
【いや、逆に人の形だと不信感を持たれるからこれで良いんだよ】
【お前ショゴスの何を知ってるわけ?】
【誰だって全く違う存在がいたら気が気じゃないだろう?】
「はいはい。それはさておき登山の続きをするよ。ここが狂気山脈だと言うのならそろそろ遺跡に到着するはずだ」
【そういえばそうだな。って風がだいぶ強まってきましたけど】
「こんなときには重力操作が役に立つね」
【ホント便利だな、天空の称号】
【空も飛べるからな】
【割と簡単に取れるけど、絶対アキカゼさんのクランを介さないでいくと面倒なやつだぞこれ】
【まだとってない奴がいることに驚きを隠せない】
【みんながみんな空の上に行けると思うなよ?】
【嫉妬まみれで草。確かに飛空挺の入船料は高いが、見返りは大きいぞ?】
【突風をものともしてないのは流石っすね】
「さて、徒歩で行けるのはこれくらいか。ここからは垂直の断崖を登っていくよ。スズキさんは例のコタツでショゴス君を介抱してあげて」
「|◉〻◉)はーい」
現れいでたる奇妙なコタツ。
そこでショゴスは触腕を器用に動かしてみかんの皮を剥いて丁寧に捕食していた。
その光景に賑わうコメント欄。
しかしその横に置かれていたお茶には後付けの茶柱が添えられることはなかった。
【ショゴスには茶柱無しか】
「|◉〻◉)僕の茶柱は安くないんで」
【格上か格下かきっちり分けてるわけね】
「じゃあ毎回入ってる私は?」
「|◉〻◉)ふふふ。どうでしょうね?」
思わせぶりな口ぶり。しかし何処か嬉しそうに茶器を扱う。
コメント欄に受け答えしつつ、突風吹き荒ぶ断崖を上り詰めること数時間。
ようやく開けた空間に出てこれた。
やっぱりここは狂気山脈のようだ。
では北極大陸の何処かなのだろうか?
それにしては体感温度が下がったような気配はない。
いつのまにか氷結耐性が出来ていた?
まさかね?
そう言えば深海もすごく寒いはずなのに普通に歩けたものね。
今更か。
開けた山道を歩いて行く。
すると遺跡と思しき入口がぽっかりと開いて私を見下ろしている。まるで巨大な生物の口を想起させるが、虎穴にいらずんば孤児を得ずと言う言葉を思い出して一歩踏み出した。
遺跡はシン、と静まり返っていた。
遺跡群はファストリアの壁内にあるものと似通ってるが、それよりも気持ち新しさを感じる。
時代背景が一切見えないな。
お目当てのショゴス達が一切出てこないことも気になった。
もしや既に誰かに攻略された後だろうか?
それを確かめるために再度領域を展開してみると、別段聖典の拠点化はされてないようだ。
明らかにこんな怪しい山を攻略してないなんて見る目がないね。
それとも、聖典陣営では見えない仕掛けがあるのだろうか?
深部に赴く。
遺跡の回廊はまだ生きていて、手を翳せば刻まれたアトランティス文字に光が走って壁と思われた場所が割れて扉を象った。
見慣れたような風景でありながら、既視感は感じない。
まるで主人の帰りを待つように、最奥には玉座が置かれていた。
道中に壁画らしいものは見当たらなかった。
カメラをかざしてもヒントらしいものひとつ浮かばない。
特に疲れてはいないけど、せっかく椅子があるんだから座ってみるのも良いだろうと腰掛ける。
すると脳内にアナウンスが走った。
<隠されし遺跡を発掘しました>
<拠点化しますか?>
YES/NO
拠点化されていないのならばしてしまって良いだろう。
私は特に悩むことなくYESを選択する。
するとすんなり拠点化された事を確認した。
これで拠点化した場所はダン・ウィッチ村とアーカム、ここの三つ目だ。
今思えばそれがトリガーだったのだと思う。
<条件を達成しました>
<拠点にダンジョンを形成することができます>
<形成したダンジョンに守護獣を設置することができます>
なるほど、こう来たか。
つまりここは魔導書陣営の為の霊樹なのだ。
道理で聖典側が見つけられないわけである。
しかしダンジョン、ダンジョンねぇ。
そして守護獣。ダンジョン的に考えれば守護者か。
当たり前だけどこれを作る上でのメリットが分からないことには手をつけようがない。
でもこの情報は拡散しておいて良いだろう。
「取り敢えず朗報。拠点は特定のプレイヤーが三つ持つとダンジョンが解放されるようだよ。そして守護獣はラスボスとして設置できるみたいだ」
【ふぁーー!?】
【え、どう言うことです?】
【まーた何かしでかしたんですか?】
「しでかしたも何も、この場所自体が魔導書陣営にとっての霊樹らしい。きっと何か我々にとって都合のいいアイテムが生産できるんだと思う。言い方を変えれば生産施設だ。戦闘が得意じゃない人や、探索が苦手な人にも役割を与えてもらったと考える方が良いんじゃない? あいにくと私はこういう物づくりは苦手でね。誰か候補が居たら場所ごと融通するよ?」
【相変わらずの無欲】
【しっかしダンジョンか】
【これはイベント趣旨が見えてきましたな】
【ああ、これはどう見てもタワーディフェンスだろ】
【つまりどういう事だってばよ?】
【聖典と魔導書の陣取り合戦なんだよ、突き詰めると】
【それは結構前から言われてるやん?】
【ただ小規模な小競り合いですまないタイプの消耗戦なんだ。だから突出したプレイヤーが一人二人いても陣営にとっては焼け石に水なんだよ】
【あー、じゃあ本格的なのは人数揃ってから?】
【そうなるな。まずは全てのシークレットを開示してシステムを暴いてからだ。今回の発掘ですら数百あるうちの一つぐらいに見ていていいな】
【途方もないな】
【そりゃここからが本番なのに、チュートリアルより容易なわけねーだろ】
【それもそっか】
「取り敢えずここはキープって感じでまずは拠点の開放が最優先かな? 三つでダンジョンの開放とあるように、数を維持すれば何かしら開けていく予感がするしね」
【それを聖典の邪魔を避けながらこなしていくわけか】
【骨が折れるな】
【あいつらも足引っ張らずに自分たちの拠点増やせばいいのにな】
「それなんだけど、探偵さん曰く幻影との絆を結ぶ為の手段が魔導書陣営の邪魔をすることが一番効率がいいらしくてね。ほら、正義って基本悪が動いてからじゃないと行動できないでしょ?」
「|◉〻◉)取り敢えずショゴ太郎を守護獣に添えましたけど良いですよね?」
【ショゴ太郎……】
【ネーミングセンス……】
【まだダンジョン運営するかどうかも決めてないのに守護獣だけ置いちゃったか】
「まぁ、任せます。どうせなら小説にあったようにショゴス達の楽園でも作ってやってください。ダンジョンの運営もやりたいならスズキさんやる?」
「|◉〻◉)ふふふ。聖典の奴らに目にモノ見せてやりますよ」
【後付けの茶柱が唸りを上げる!】
【茶柱が唸るのか?】
【意味がわからんぞ!】
【きっと移動はコタツで、みかんを食した数に応じて進むんだ】
【草】
「|◉〻◉)それいいですねぇ、ショゴ太郎に伝えておきます」
【採用された!】
【それでいいのか】
【かつてこんなぬるいダンジョンがあっただろうか?】
【ぬるいか? 正しく意味不明だぞ?】
【実際に空飛ぶコタツを目にしたら正気度減るだろ】
【みかんパワーが足りない時は揚力が安定しませんとか出るのか?】
「もうそれでいいんじゃないですか?」
【完全になげやりだよ、この人】
【絶対興味なくしてるな】
【謎らしい謎がなかったから消化不良なんだろ】
【ここに来るまで十分に試練あったように見えたんだが気のせいだったか】
【この人にとっては楽勝だったってだけだぞ?】
【それ】
【午前中のプレイをうろ覚えの時点でな】
「はいはい。終わった事を掘り返さない。それじゃあスズキさんはここに置いて私達は下山しましょうか」
「|◉〻◉)ノシ いってらっしゃーい」
残されたスズキさんとショゴ太郎をダンジョンに残し、私は新しい謎を探しに行った。
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