【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

双葉 鳴

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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦

407.お爺ちゃんのドリームランド探訪19

 所用を済ませ、ログイン。
 結局お昼時はもりもりハンバーグ君の用事で時間を使ってしまったので、本格的なドリームランドの探索は夜の部になってしまった。


「何度も悪いね、バグ=シャース攻略には私一人じゃ厳しくて」

「いいえ、お構いなく。僕も素材集めを手伝っていただきましたので。それに今日は心強い味方もいますし」

「ふっふっふ、そうやってヨイショしておけば僕が釣れると思っているのかい?」

【あ、賞金首だ】
【賞金額上がってるらしいじゃないですか】
【聖典の面汚しが一体何しに?】

「なんか辛辣な意見多くない?」

「そうかな? いつも通りだよ。よく私もいじられてるし」

「|◉〻◉)ノシ アンラちゃん久しぶりー」

「リリーちゃんおひさー」

「相変わらず幻影同士仲良いね。やっぱり誓約みたいなのがなくなったから?」

「どうだろうね。もともとアンラは悪ぶりたいだけの人類悪だ。根源から悪に染まってるお宅の子と仲がいいのはそういう意味合いじゃないかな? 現にスプンタの方は僕にべったりだし」


 探偵さんの言動は穏やかだ。
 誓約。それは神格アフラ=マズダーがプレイヤーである探偵さんに与えた試練。
 正義的行動を取ることでポイント化された数値が見え、それの基準値を一定以上続けなければ話も聞いてくれない。
 悪を見て見ぬ振りするのが一番ポイントの減点に繋がり、見つけた以上攻撃を仕掛けてきたのはそういうことだと説明してくる。

 それでも賞金額は取り消さない。
 私の一存で取り消していいものじゃないから。
 現に彼の迷惑に巻き込まれたプレイヤーが私一人で収まらない。
 被害者は魔道書陣営にとどまらず、味方の聖天陣営にまで及んでいた。


「そして今回はもう一人、呼んでいるんだ」

「お、俺が最後か? 今回はよろしく頼む」

【どざえもんさん来たー】
【今回のクリア者は全員聖典だったのは笑ったな】
【やっぱり例の海底の祠に向かうんですか?】

「うん、気になる場所は放って置けないからね。そういうわけでブログで記載していた件は頼むよ?」

「了解した。俺の精霊術が役立つんならいくらでも役立ててくれ」

「ありがとうね。でも無理はしなくていいから。戦闘はこっちで引き受けるし」

「いや、今回の話に乗った理由は素材の入手先がここで確定したからだ」

「ほぅ?」

「そう疑ってかかるのはやめてほしいね。単純な話だよ、君たちの討伐した神格の魂片。それは多分ダンジョン用のアイテムだ」

「そうだね」

「で、こっちが求めてるのは祠を構成している鉱石の方」

「そうだ。夢魔の鉄鉱石、あれらの用途は俺たち聖典側の強化に使われる事が判明した」

「ああ、合点がいった。なるほどね、それぞれ求める素材の種類は違うが、用途は似ていると」

「そちらは神格を仲間にできる、こちらは神格をより早く浄化するための武器強化に使う。手を組むのはWIN-WINだからなのさ」


 探偵さんがしたり顔で言った。
 うん、それくらいの裏は許そう。
 ただし素材をくれと言ってもあげないが。
 向こうで使い道があろうと、こちらでの使い道がないと考えるのは早計だ。


「じゃあ早速例の場所から移動するよ。全員水泳の準備はOKかい?」


 目的地が海の中だと知ってるので各々が頷き、そして直下行で崖からダイブ。
 一度沈んだら浮き上がらないどざえもん、探偵さんは普通に水泳持ち。もりもりハンバーグ君にも問題は見当たらない。
 ただ、幻影たちが困惑していた。


「マスター、ここは空気が」

「なら特別にメットを作ってあげよう。これでどうだい?」


 探偵さんが氷製作でアンラ、スプンタの両名に専用メットを作って空気を確保する。


「涅槃は俺と共に来い。空気袋を貸してやる」

「ありがとう、マスター」

【こうやって見ると、聖典側の幻影は泳げる子居ないのな】
【みんなでハーフマーメイドになろうぜぇ?】
【誘惑すんなや。でも気持ちはわかるよ】
【今じゃ泳げて当たり前だが、前まで向こう側だったんだよな】
【なんか新鮮な光景】


 すっかり人外に見慣れたコメント欄が、初々しい聖典側の幻影達を微笑ましい態度で迎えていた。
 対応も各々違うが、それぞれ紡いだ絆の高さが窺える。


『ギョギョ、偉大なる御方アキカゼ・ハヤテ。本日もあちら側に向かうギョ?』

「うん、通してくれる?」

『しかし、同行者に不穏な気配を放つ者が混ざっておりますギョ。我々はそれを看過できませぬギョ』


 聖典側のプレイヤーをそう判断しているのだろうか?
 だとしたら聖典は聖典の専用通路がある?

「大丈夫だよ、この人達は私に何もできない。いや、させないさ」

『出過ぎた口を叩いてしまいましたギョ。偉大なる御方アキカゼ・ハヤテ。御身のままに致しますギョ』


 少し威圧を強め過ぎたかな?
 サハギン達は少し萎縮して扉の前を開けた。


「強く出たじゃない、少年?」

「一応彼らは私の眷属だからね。情けないところは見せられないんだよ。君たちも世界を獲ればわかるさ」

「それは僕に対しての皮肉かな?」

「事実だよ」


 ちなみにお昼の部で彼は過去改竄を試みたが、実現できなかった一人だ。しかし彼の神格に物申したいかのように御目当ての相手が出てきてくれたので終わりよければすべてよしということになった。

 門を通じてドリームランドへ。
 そこは水圧の変わらぬ景色を私たちに写し続けている。
 が、急に環境が変わったことによる深刻なダメージが幻影側に出ていた。

 要は溺れていたのだ。
 幻影って溺れるんだね、知らなかった。


「おい、探偵さん。あんた今日乗り物は?」

「聖魔大戦で無理をやらかし過ぎて本体の機関車以外は全部修理中だよ」

「く、肝心な時に役に立たない」

「|◉〻◉)ノ はーい、僕にいい考えがあります」

【絶対にろくなもんじゃないぞ】
【視聴者が全員信じてないのが既に草】
【やらかしの履歴が物語ってるから】

「念のため聞くがどんなのだ?」

「|ー〻ー)この青いドリンクを飲めば治ります」

「「却下だ」」

「|>〻<)名案だと思ったのにー」

【即答されてて可哀想なリリーちゃん】
【絶対人外になるのわかってて飲ませるマスターは居ないでしょ】

「いや、あながち間違ってないかもですよ?」

「ちょっと少年? 君、僕たちが慌てふためくの見て楽しみたいだけでしょ?」

「そんな、そんな。私の掌握領域で君たちの幻影と青いドリンクを一時的に合体させるだけだよ。直接飲むのと違って領域展開を解けば元通りだ。どうだい、お手軽に今の状況をひっくり返せると思うけど」

「それに縋るしかないか。探偵さん、背に腹は変えられんぜ? ここは自分たちの幻影との絆を試す時だ」

「本気かい? 君らしくもない」

「それでもしなきゃ手に入れられない素材だってことだ」

「ならば今回は少年の手を借りるとしよう」

「ああ、と言うことで頼む。うちの涅槃を楽にさせてやってくれ」

「頼まれずともお安い御用さ。掌握領域──〝涅槃+アンラ・マンユ+スプンタマンユ+青いドリンク〟」


 境界線の向こう側から伸ばしたクトゥルフさんの腕が、聖典側の幻影を包み込み、そのまま掌で押しつぶす。

 手の中で光り輝き、現れたのは三体の幻影がくっついたキメラ……ではなく、きちんと三者三様のハーフマーメイド化した幻影達だった。
 よかった、聖典陣営だからと急に手のひら返したりしなくて。
 そこだけが心配だったがどうにか乗り越えたようだ。


「マスター、すごい息が楽になった」

「良かったな、涅槃。泳ぐのも楽しそうだ。ドワーフの俺からしたら羨ましい限りだ」


 どざえもんさん達は微笑ましく環境を受け入れている。
 が、その一方で不機嫌な表情を隠しもしないスプンタ君とそれを揶揄うアンラ君。その板挟みに苦戦する探偵さんの姿があった。


「ちょっとマスター、悪に屈するとは何事ですか? アフラ=マズダー様の代行者が聞いて呆れます」

「いや、でもそれはスプンタを助ける為の緊急措置で」

「ならば捨て置いてくれて結構! 私、悪に手を貸してもらうくらいなら自刃する事を望みますわ」

「とか言って、自刃する勇気もないくせにー」

「黙りなさい、アンラ!」

「取り敢えず落ち着いて、君達」

【あの探偵さんがこうもした手に出る光景は逆に新鮮だな】
【あの人は振り回してくる方だと思ってた】
【こうやって見ると可哀想に思えてくる】
【今の状況部騙されるな、今がこうでも奴がやった過去は消えないぞ】
【それwww】
【ツンデレごちそうさまです】
【ツンしかないんだよなぁ】

「ま、あたしは今の環境に感謝しかしてないんで。ありがとね、リリーちゃん」

「|ー〻ー)b まぁ僕達の仲ですからね。水中で困ったら頼ってきてくれていいですよ」

「わーい。よかったね、マスター」

「ナイスだぞ、アンラ。その調子でどんどん媚を売っていくんだ」

「|◉〻◉)あ、次回からはしっかりお金取りますから。未払いは賞金額に上乗せしときますね!」

【草】
【しっかりしてるな】
【友情とは一体……】
【所詮一時的な利害の一致だしそんなもん】


 探偵さんが都合の良いことを言い出したので話を切り、目的地へと進む。確かこっちにあったような……
 あった、あれだ。

 陽光操作で目的地に光を照射した時である。

 祠の内側から眩い光が走り、木っ端微塵に吹き飛んだのは。
 中からはグラーキが現れ、ちょうど祠の中から出てきた人物とこれから対戦するようだった。


「あら、父さん。こっちに来たのね」


 そこに居たのはシェリル。
 ブログを読んできたにしては特定が早すぎる。
 これはクランメンバーに魔道書陣営のライダーでも現れたか?
 そうでもないとこの特定の速さは理解が追いつかない。


「お手伝いは?」

「出来ればして欲しいところ。向こうもあなた達を敵としてカウントしたみたいよ?」

「なら仕方ないか。どうせ倒すし。ドロップ素材は頂いても?」

「ええ。ここでの目的は達したわ。神格の方はついでだから」

「了解した。探偵さんはどうする?」

「巨悪を前に立ち止まる立場にはいないものでね。是非参加させてもらうよ。マスターとしての面目躍如と行こうか」

「ならば俺も参加しよう。水の精霊とも相性の良いフィールドだ。先程の恩もある。あの状態の涅槃なら押し流されることもあるまい」

「ならば僕はいつも通り、後方支援で」

【メインアタッカーの間違いでは?】
【実際このメンツ、過剰戦力やで】
【まずは聖典側のお手並み拝見ってところやな】
【探偵の人はメカなしで平気なの?】
【配信見る限りじゃ、単独でも強いよあの人。シェリルの影に隠れてるだけで十分やばい】

 こうして私達は予定にない戦闘に巻き込まれた。
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