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5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
414.お爺ちゃんとシェリルの霊樹検証②
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導かれるままに釣竿を引き、しかし領域を展開してるままでは入れない場所まできた。
シェリルと頷き合い、領域を解除すると空間が開かれていった。
今パーティリーダーをシェリルに変更して、私は彼女の保護下に入る。
念の為スズキさんにも着ぐるみを脱いでもらう。
リン君に中身を見せるのは初めてだ。
「えっえっ……ちょっと思考が追いつきません」
「|◉〻◉)ふふふ、僕の魅力にメロメロですね?」
「あ、中身までは変わってないんだ。よかったぁ」
安堵の息を吐くリン君に、スズキさんが少しムッとする。
「漫才やってないで行くよ」
「|ー〻ー)あぁん、ハヤテさんがいじめるぅ」
ぐいっとリードを引っ張ると人間体のスズキさんが引きずられる。その光景をリン君が恐ろしい目で見ている。
余計怯えさせてしまったようだね。
「ひぇー」
「リン、いちいち怖がらないで行くわよ。シヴァ、力を貸して」
[全く神使いの荒い]
「あ、お久しぶりですシヴァさん」
[む、貴殿はあの時の……クトゥルフは息災か?]
一度コテンパンにやられた時の思い出が蘇るのか、返してきた言葉にしては悪感情が前に出ている。
どちらかと言えば嫌味のような対応に近い。
「世間話はそこまで。ここから先は神格憑依が必要だわ」
[はいはい、全くせっかちだな君は。リンはこの者のようになるでないぞ?]
「はい~」
すっかり休日のお父さんモードに入ったシヴァさん。
どんな風に接すればあのシヴァさんがこうなるんですかね?
「神格憑依……〝シヴァ〟」
バッ、バッと身振り手振りで変身のポーズを取るシェリル。
それはまるでヨガのポーズのようであり、優美なダンスに似ていた。
ライダースーツ無しで憑依を掌握するほどの親密度を築いた証だろう。
その神々しさをキーに霊樹の門がようやく警戒を解くように私たちの前に姿を表した。
眼前には神々しい大木。
その周辺には果樹園だろうか? さまざまな果実が実を着けて居る。
<ワールドアナウンス:プレイヤーが初めて霊樹へと至りました>
<霊樹の木片を5つ獲得しました>
<拠点内に霊樹を設置することができます>
<下記の果実を一つ持ち帰ることが可能です>
・神格の果実:聖典陣営の神格の絆値+
・強化の果実:聖典陣営の施設強化値+
・進化の果実:聖典陣営のステータス限界突破+
・退化の果実:魔導書陣営のステータス限界減少+
・錬成の果実:とある素材を鉱石に変換させる(100%)
「あっさり貰えてしまったわね?」
「パーティにいた私まで貰ってしまって良かったのかな?」
「良いんじゃない? ハンバーグ君も欲しがっていたしお土産に持って帰って行ったら?」
「そうだね。それよりもお土産の果実何にする?」
「どれも希少なのよね。ちゃっかりお邪魔アイテムもあるし」
シェリルが悪い顔で退化の果実に手を置いた。
それってステータスの上限値を減少させるやつでしょ?
辞めてよね。
「ここは一つ協力体制といこう」
「良いわよ。でもタダって訳ではないのよね?」
「もちろんさ。その手に置いてる果実を選ばない代わりに、私の選択権を君に委ねるというものだ」
「あら、そんなにステータス限界を下げられるのは嫌だった?」
「上げる術がないのに下げられたら士気がガタ落ちだよ」
「ふふ、冗談よ。良いわ、それで。むしろ大助かりっていうか、私だけ得しちゃって悪いわ。何かお返ししないと釣り合わないんじゃない?」
「なら持ち帰った情報で進展があれば情報をこっちに回して。それでチャラにしよう」
「欲がないのね。普通ならもっといろいろ要求してくるものよ? 現状ここでしか入手できないもの。でもそうね、それこそが父さんて感じ」
「褒めてるのか貶めてるのかどっちなのさ」
「これでも褒めてるつもりだけど。じゃあ……」
シェリルが選んだのは錬成の果実と強化の果実だった。
現状足りないものを最優先で仕入れた結果に終わる。
強化の方はとりもち君に任せてるとかで仕事を奪いたくないと言っていた。
彼女なりに考えて居るのだろう。
「早速市場に出すんだ?」
「そうね、便利よこれ。マップの正確な位置がわからないから飛んで帰ることもできない。けどここにログインしてるならログインしてるプレイヤーと連絡が取れるもの。ちょっとしたメモ機能もあるし、世間話とかもできるのよ」
「良いなぁ、早くうちにも実装しないかなぁ」
「みんなそう思ってるんじゃない? 父さんに期待してると思うわ」
「そうかな? いい加減独り立ちして欲しいものだけど」
「クリアするまで一杯一杯だし、拠点の解放はクリア者が頑張るしか無いわよ。私もイベント中は拠点の解放より維持を優先したもの。誰かさんがアレを解き放ったおかげでより強化が優先されるものね?」
アレというのはグラーキのことだろうか?
「アレは事故だよ。普通に討伐したら勝手にアナウンスが鳴ってしまったんだ。封印を解くつもりはなかった」
「犯人はみんなそういうものよ。それで、拠点を解放しに行くのよね? 手伝ってあげましょうか?」
「良いの?」
「さっきのお礼。やっぱり情報開示だけじゃお返しが足りないと思ったのよ」
「そうなの、シヴァさん」
[余に聞くか。そうよな、此奴は度し難いまでのお人好しだ。余の願望を受け止めるほどのな。このように申す出ることは滅多に無いことだ。受け取っておくが良いぞ?」
「確かにそうだね。じゃあお手伝いしてもらおうかな?」
「そうこなくっちゃ。でも略奪だけは辞めてよね?」
「それを見極めるために同行してくれるんじゃ無いの?」
「そうね、どの拠点に近いかの調査も兼ねてるわ。近いなら近いなりに警戒できるもの」
「抜け目のない。そういうところ、お母さんに似たのかな?」
「どうかしら? 言ったらきっと母さん怒るわよ?」
「では話題に上げないでくれると助かる。特に君は彼女と同居してるだろう? うっかり口をこぼされたら私の老後の生活に関わる」
「はいはい。肝に銘じておくわ」
[すっかり尻に敷かれておるな?]
「シヴァさんだってそうでしょ? パールバティさんに随分とお尻を叩かれてきたんじゃない?」
[この話はここで止めよう]
「そうですね。お互いに苦しい思いしかしない]
互いに苦笑し合う。
神々といっても夫婦関係は人間とそう変わらないのだろう。
なんだ、シヴァさんも話せばわかる神じゃないか。
あんなに敵対視していたのが嘘のようだ。
リン君の良い父親のようなシヴァさんと教育ママの如き振る舞いのシェリルに苦笑しつつ、私はいくつかの拠点を得た。
<条件を達成しました>
<魔導書陣営に市場が開拓されました>
<以降陣営内のプレイヤー同士での取引が可能になります>
<初発見ボーナスとして割り振りポイントを50獲得しました>
「あ、市場手に入ったね」
「えっ、まだ4つ目よ? 確か父さんて3つしか手に入れてなかったのよね?」
「私はね。きっと他の誰かがもう一つ解放してくれたんだよ。( ͡° ͜ʖ ͡°)氏かアンブロシウス氏、それとも新しい後陣の誰かがね」
「そのようね。早速霊樹の木片を出すの?」
「そうだね。そこは色々考えてみんなの反応を見ながらかな?」
「案外慎重派なのね、父さんの事だからもっと大胆に行動すると思ったのに」
「何さ、それは。私をなんだと思ってるの?」
「何って、それを私に言わせる気?」
「いや、この話はここでやめておこう。身に覚えのない事件が出てきそうで怖い」
「懸命な判断だわ。私もこれ以上父さんに幻滅したくないもの」
シェリルは小さく微笑み、踵を返した。
「じゃあ、次会う時は敵同士でないことを祈るわ」
「それはそっち次第じゃないの? こっちは普段通りフレンドリーに接するよ」
「みんながみんな父さんほど自由にしてないということよ。今回の探索で状況は大きく変わるわ。バグ=シャースの武器への道も近づいた。私達だって強くなるわ。父さんもこの流れに置いてかれないようにね?」
「何を今更。私なんて置いてかれっぱなしだよ。もう前を歩く歳じゃない。時代を担うのは君たち若者に任せるよ。老人はせっせとサポート役に回るとしようか。はっはっは」
「……これは自覚なしね」
「|◉〻◉)まぁハヤテさんですし?」
「その、あまり家族同士でギスギスは良くないですよ?」
[違うぞ、リン。これは和気藹々というんだ]
「みえないですよぉ~」
リン君とシヴァさんが苦笑いしながら私達親娘を暖かく見守る。昔っからこんな感じなので今更険悪になりようがないのだけど、初見のリン君とにとってはギスギスに見えるのかもしれないね。
シェリルと頷き合い、領域を解除すると空間が開かれていった。
今パーティリーダーをシェリルに変更して、私は彼女の保護下に入る。
念の為スズキさんにも着ぐるみを脱いでもらう。
リン君に中身を見せるのは初めてだ。
「えっえっ……ちょっと思考が追いつきません」
「|◉〻◉)ふふふ、僕の魅力にメロメロですね?」
「あ、中身までは変わってないんだ。よかったぁ」
安堵の息を吐くリン君に、スズキさんが少しムッとする。
「漫才やってないで行くよ」
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ぐいっとリードを引っ張ると人間体のスズキさんが引きずられる。その光景をリン君が恐ろしい目で見ている。
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「ひぇー」
「リン、いちいち怖がらないで行くわよ。シヴァ、力を貸して」
[全く神使いの荒い]
「あ、お久しぶりですシヴァさん」
[む、貴殿はあの時の……クトゥルフは息災か?]
一度コテンパンにやられた時の思い出が蘇るのか、返してきた言葉にしては悪感情が前に出ている。
どちらかと言えば嫌味のような対応に近い。
「世間話はそこまで。ここから先は神格憑依が必要だわ」
[はいはい、全くせっかちだな君は。リンはこの者のようになるでないぞ?]
「はい~」
すっかり休日のお父さんモードに入ったシヴァさん。
どんな風に接すればあのシヴァさんがこうなるんですかね?
「神格憑依……〝シヴァ〟」
バッ、バッと身振り手振りで変身のポーズを取るシェリル。
それはまるでヨガのポーズのようであり、優美なダンスに似ていた。
ライダースーツ無しで憑依を掌握するほどの親密度を築いた証だろう。
その神々しさをキーに霊樹の門がようやく警戒を解くように私たちの前に姿を表した。
眼前には神々しい大木。
その周辺には果樹園だろうか? さまざまな果実が実を着けて居る。
<ワールドアナウンス:プレイヤーが初めて霊樹へと至りました>
<霊樹の木片を5つ獲得しました>
<拠点内に霊樹を設置することができます>
<下記の果実を一つ持ち帰ることが可能です>
・神格の果実:聖典陣営の神格の絆値+
・強化の果実:聖典陣営の施設強化値+
・進化の果実:聖典陣営のステータス限界突破+
・退化の果実:魔導書陣営のステータス限界減少+
・錬成の果実:とある素材を鉱石に変換させる(100%)
「あっさり貰えてしまったわね?」
「パーティにいた私まで貰ってしまって良かったのかな?」
「良いんじゃない? ハンバーグ君も欲しがっていたしお土産に持って帰って行ったら?」
「そうだね。それよりもお土産の果実何にする?」
「どれも希少なのよね。ちゃっかりお邪魔アイテムもあるし」
シェリルが悪い顔で退化の果実に手を置いた。
それってステータスの上限値を減少させるやつでしょ?
辞めてよね。
「ここは一つ協力体制といこう」
「良いわよ。でもタダって訳ではないのよね?」
「もちろんさ。その手に置いてる果実を選ばない代わりに、私の選択権を君に委ねるというものだ」
「あら、そんなにステータス限界を下げられるのは嫌だった?」
「上げる術がないのに下げられたら士気がガタ落ちだよ」
「ふふ、冗談よ。良いわ、それで。むしろ大助かりっていうか、私だけ得しちゃって悪いわ。何かお返ししないと釣り合わないんじゃない?」
「なら持ち帰った情報で進展があれば情報をこっちに回して。それでチャラにしよう」
「欲がないのね。普通ならもっといろいろ要求してくるものよ? 現状ここでしか入手できないもの。でもそうね、それこそが父さんて感じ」
「褒めてるのか貶めてるのかどっちなのさ」
「これでも褒めてるつもりだけど。じゃあ……」
シェリルが選んだのは錬成の果実と強化の果実だった。
現状足りないものを最優先で仕入れた結果に終わる。
強化の方はとりもち君に任せてるとかで仕事を奪いたくないと言っていた。
彼女なりに考えて居るのだろう。
「早速市場に出すんだ?」
「そうね、便利よこれ。マップの正確な位置がわからないから飛んで帰ることもできない。けどここにログインしてるならログインしてるプレイヤーと連絡が取れるもの。ちょっとしたメモ機能もあるし、世間話とかもできるのよ」
「良いなぁ、早くうちにも実装しないかなぁ」
「みんなそう思ってるんじゃない? 父さんに期待してると思うわ」
「そうかな? いい加減独り立ちして欲しいものだけど」
「クリアするまで一杯一杯だし、拠点の解放はクリア者が頑張るしか無いわよ。私もイベント中は拠点の解放より維持を優先したもの。誰かさんがアレを解き放ったおかげでより強化が優先されるものね?」
アレというのはグラーキのことだろうか?
「アレは事故だよ。普通に討伐したら勝手にアナウンスが鳴ってしまったんだ。封印を解くつもりはなかった」
「犯人はみんなそういうものよ。それで、拠点を解放しに行くのよね? 手伝ってあげましょうか?」
「良いの?」
「さっきのお礼。やっぱり情報開示だけじゃお返しが足りないと思ったのよ」
「そうなの、シヴァさん」
[余に聞くか。そうよな、此奴は度し難いまでのお人好しだ。余の願望を受け止めるほどのな。このように申す出ることは滅多に無いことだ。受け取っておくが良いぞ?」
「確かにそうだね。じゃあお手伝いしてもらおうかな?」
「そうこなくっちゃ。でも略奪だけは辞めてよね?」
「それを見極めるために同行してくれるんじゃ無いの?」
「そうね、どの拠点に近いかの調査も兼ねてるわ。近いなら近いなりに警戒できるもの」
「抜け目のない。そういうところ、お母さんに似たのかな?」
「どうかしら? 言ったらきっと母さん怒るわよ?」
「では話題に上げないでくれると助かる。特に君は彼女と同居してるだろう? うっかり口をこぼされたら私の老後の生活に関わる」
「はいはい。肝に銘じておくわ」
[すっかり尻に敷かれておるな?]
「シヴァさんだってそうでしょ? パールバティさんに随分とお尻を叩かれてきたんじゃない?」
[この話はここで止めよう]
「そうですね。お互いに苦しい思いしかしない]
互いに苦笑し合う。
神々といっても夫婦関係は人間とそう変わらないのだろう。
なんだ、シヴァさんも話せばわかる神じゃないか。
あんなに敵対視していたのが嘘のようだ。
リン君の良い父親のようなシヴァさんと教育ママの如き振る舞いのシェリルに苦笑しつつ、私はいくつかの拠点を得た。
<条件を達成しました>
<魔導書陣営に市場が開拓されました>
<以降陣営内のプレイヤー同士での取引が可能になります>
<初発見ボーナスとして割り振りポイントを50獲得しました>
「あ、市場手に入ったね」
「えっ、まだ4つ目よ? 確か父さんて3つしか手に入れてなかったのよね?」
「私はね。きっと他の誰かがもう一つ解放してくれたんだよ。( ͡° ͜ʖ ͡°)氏かアンブロシウス氏、それとも新しい後陣の誰かがね」
「そのようね。早速霊樹の木片を出すの?」
「そうだね。そこは色々考えてみんなの反応を見ながらかな?」
「案外慎重派なのね、父さんの事だからもっと大胆に行動すると思ったのに」
「何さ、それは。私をなんだと思ってるの?」
「何って、それを私に言わせる気?」
「いや、この話はここでやめておこう。身に覚えのない事件が出てきそうで怖い」
「懸命な判断だわ。私もこれ以上父さんに幻滅したくないもの」
シェリルは小さく微笑み、踵を返した。
「じゃあ、次会う時は敵同士でないことを祈るわ」
「それはそっち次第じゃないの? こっちは普段通りフレンドリーに接するよ」
「みんながみんな父さんほど自由にしてないということよ。今回の探索で状況は大きく変わるわ。バグ=シャースの武器への道も近づいた。私達だって強くなるわ。父さんもこの流れに置いてかれないようにね?」
「何を今更。私なんて置いてかれっぱなしだよ。もう前を歩く歳じゃない。時代を担うのは君たち若者に任せるよ。老人はせっせとサポート役に回るとしようか。はっはっは」
「……これは自覚なしね」
「|◉〻◉)まぁハヤテさんですし?」
「その、あまり家族同士でギスギスは良くないですよ?」
[違うぞ、リン。これは和気藹々というんだ]
「みえないですよぉ~」
リン君とシヴァさんが苦笑いしながら私達親娘を暖かく見守る。昔っからこんな感じなので今更険悪になりようがないのだけど、初見のリン君とにとってはギスギスに見えるのかもしれないね。
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