471 / 497
5章 お爺ちゃんと聖魔大戦
419.お爺ちゃんのドリームランド探訪29
しおりを挟む
では早速探索といきましょうか。
ナビゲートフェアリーをオンにして、祠内の写真をパシャリ。
くま君は特になにもすることはなく、端っこで体育座りをしていた。
【くま、なにもできないからって体育座りは草】
【体育座りってなんぞ?】
【ああ、VR世代は知らないか。リアル寄りの集団生活してりゃ学ぶ最低限のマナーだよ】
【めちゃくちゃ哀愁漂う背中やめろ】
【普通はこの局面で動ける人材の方が稀なんだよ。ハンバーグさんがおかしいんだって】
「くーまー」
「嘆かわしいぞ。あたしのマスターともあろう者がこの体たらくとは」
「|◉〻◉)まぁ、積み重ねてきた実績の違いと言いますか? www」
【リリーちゃん、煽るじゃん】
【この子ほんと体張った芸するよな、この子】
【マウントの取り合いで未だ負けなしだぞ?】
【いや、結構負けてるから】
【それリリーちゃんの中ではノーカンだから】
【自分ルール押し付けあってて草なんだよな】
「さて、いつまでも座ってないで検証会と行こうか」
「くまじゃお役に立てないくまー」
「私だって手探りだよ。結局はなにも知らないところから試行錯誤して答えを導くんだからね。だから自分は無理だなんて諦めてほしくないな」
「そうよ、マスター。その男の言う通りじゃ。気の弱いところを払拭せねばこの先の成長はないと思うが良いぞ」
「くまー、わかったくま。くまもお手伝いさせて貰うくま!」
「その意気だ。さて状況証拠を並べよう。スズキさん、テーブルを」
「|◉〻◉)はーい」
【ここまでネクロノミコン出番なし】
【さっき励ましてただろ】
【応援だけなら俺らもできる】
「なにが言いたいんじゃ、此奴ら?」
「一緒に悩むだけ悩んでほしいと言うことじゃないかな? 強制はしないよ。ただ自分の思ったことを述べるだけでそこにヒントが隠されているかも知れない。誰しも初めからプロじゃない。私だって勝手に尊敬されてるけど、今でも気持ちは挑戦者のつもりだよ? 君がどれほどすごい魔導書でも関係ないさ。たまには不得意分野にも挑んでみないかい?」
「仕方ないわね。あんたの誘いに乗ってやるわ」
不本意甚だしいとばかりにアール君はツンと鼻を上に向けた。
【お、丸め込まれたぞ】
【お得意のトーク術やな】
【この人ほんとどんな相手でも屈せず立ち向かうよな】
【そりゃアザトース様を前にしても同じこと言う人やぞ】
【それは強い】
【強者だからこんなに危険な地雷の埋まった場所で雑談トークできるんだぞ?】
【そうだった】
なんだかまた不本意なコメントが並んでいるよね。
私たちは削り取った鉱石をあれこれ調べて、結局グラーキの祠と一緒の夢魔の鉱石である事を決定した。
だいたい判明した事を再度調べるのは、初心者のくま君やアール君にもその過程を踏ませたかったからだ。
「ちょっと、判明してるんだったらそれに付き合わせられた私達の労力は無駄だったじゃない!?」
「くまー、アキカゼさんはそんな意地悪しないくま。これを体験させることに意味があったと考える方がいいくまよ」
「体験? まぁ確かに初めての体験ね。普通に遭遇したら投げ出していたわ」
「きっと今からやることもくまたちのことを思ってやってくれてることくま。あまり穿ったものの考え方しない方が良いくまよ?」
「そうね、今は流されてあげる」
「|◉〻◉)とか言ってますよ、ハヤテさん?」
「茶化さないの。私達だって彼らの専門分野には手が届かないんだからこういうのは」
「|ー〻ー)はーい」
スズキさんを嗜めて、私達のやり方をくま君にも示していく。
アール君はやはり水神クタァトの石像をツルハシでカンカンし始めたあたりで気でも触れたんじゃないかという態度を取る。
もりもりハンバーグ君だったらノリノリで付き合ってくれるのに、常人から見ればやはり移譲なことだったのだろう。
「なに、これなによ?」
「なにって? 水神クタアトを呼び寄せる儀式だよ?」
「そんなの石像を壊せば怒って出てくるわよ! 舐めてるの?」
「至極真面目さ。けれどね、本当は違う手順を踏む必要があるんだ」
「ならそっちの手順使いなさいよね!」
「生憎とそれはできない。と言うより手段を実行するには向こうのフィールドで地下に行き、水の契りを高めなければならない。その上で適任者は聖典側に属している。こちらの言いたいことがわかるかな?」
「敵の手を借りるわけにはいかないと言う意味かしら?」
どこまでも強気な発言だね、この子は。
「陣営の違いにそこまでの差はないよ。私が言うと皮肉に聞こえてしまうかも知れないが」
「そんなことないくまー」
「そうね」
【俺もネクロノミコンちゃんに同意】
【アキカゼさんが言うと皮肉が過ぎるわ】
【くまの同意はどっちにも取れるから諦めの方だぞ】
【コンブ生えるわ】
さて、うるさい外野は放って置いて。
私のツルハシは最後のカケラに手をかけた。
私の手の中にあるかけらが光り、グラーキと同じような演出。
砕け散る祠と共に、水神クタアトが現れる。
<水神クタアトが現れた>
制限時間:48:00
なんの表記だ?
カウントは時間と共に削られていく。
「ちょっと、なにも居ないじゃない!」
「くまー、戦う相手がいないとどうすればいいか困ってしまうくまー」
「そういえば銅像は竜の形をしていましたよね。でも本体は別にその形ではないと?」
「|◉〻◉)ですねー」
もしかしてここで時間をつぶしているのはまずいのではないか? そんな予感がそこかしこでする。
「少し場所を移そう。このフィールドは色々とまずい気がする」
<水神クタアトの侵食攻撃!>
!?
何か行動をしようとするたびにこの判定か。
ステータス上での変化はない。
違和感は募るばかりだ。
「スズキさん、氷作成だ。このフィールド一帯を凍らせて!」
「|◉〻◉)やってみます」
スズキさんに促しつつ掌握領域を握り込むも……
<水神クタアトに抵抗されました>
いつの間に?
領域展開を外されている。
いや、抵抗と言うことは侵食されているのだ。
もしかしてこのフィールドそのものがクタアトか!?
「|>〻<)ハヤテさん、だめです! 凍ってくれません!」
「これは決まりだな。相手は海そのものだ。そして私たちを乗っ取るつもりで侵食攻撃を仕掛けてくるぞ!」
「タイムリミットはそれだったくま!?」
「やはり碌なものではないな、邪神というのは」
「君だってその片割れでしょうに。くま君、会場に出るよ。私はスズキさんを抱えて、君は自力で行けるかい?」
「得意分野くま!」
私は上空に向けてヘビーを召喚し、その口の中でショートワープを試みる。
案の定と言うか、ABPがみるみる減少していく。
これはLPの方が消失しているか?
やがてヘビーの肉体を食い破るようにクタアトが体内に侵入し、私目掛けて突っ込んでくる。
「|◉〻◉)させませぇん!」
スズキさんが体を張って前に出て止めるも、水神クタアトの勢いは止まらず、完全に無駄死にの形。
まぁ本体は私の中にいるそうなのでおかわりのごとく見せ場を作って行ってくれたけど。
【リリーちゃんwww体張りすぎwww】
【ほんとこの主従は見てて飽きないな】
【くまのところはまだギクシャクしてるもんな】
「抜けた! スズキさん、ありがとう!」
「|◉〻◉)どういたしましてぇええええ!」
50匹目のスズキさんを見送り、ヘビーが丁度LP切れで消失する。水の中から追走してくる触手の鞭を空中で交わし、無駄だとわかりつつも領域展開。
「通った! ならば!」
水中内での領域展開は無理矢理剥がされてしまったが、空中ならばこちらに理がある。
「クトゥルフの鷲掴み!」
[GYORUPIEEEEE!!!?]
知性も何もない咆哮が触手の群れの中枢から溢れ出す。
「くーまー!」
そこへ事前に離脱ならぬ巨大化してことなきを得たくま君の固めた拳が貫いた!
【腑抜けた声から繰り出される殺人パンチ!】
【あー、だめだ! 攻撃通じてない】
【そりゃ相手は水だぞ? 物理が効くわけない】
「だめだくま君! 神格を相手にするときはステータスを乗せなきゃ通らない」
「先に言って欲しかったくまー!!」
足場を取られたくま君が盛大にずっこけた。
【今のはアキカゼさんが悪い】
【よくこいつクリアできたよな】
【それはほんと不思議に思う】
「ええい、情けない奴め。しっかりせんかマスター」
「ちょっと転んだだけくま。もう大丈夫くま」
【起き上がれない奴が何か言ってますよ?】
【まんまガリバーで草】
【巨人気分を味わえてるやん】
【縛り付けるならもっと美少女をさぁ】
【男女差別やめろ】
【くまが縛られても誰も嬉しくない件】
触手の鞭を侵食を込めたビームソードで切り払っていく。
「助かったくま!」
「こういうのは助け合いだよ。それと教えずに悪かったね」
「予習を怠ったくまも悪かったくま。もう油断しないくまよ。アール、フォームチェンジくま!」
「その言葉を待っておった。行くぞマスター!」
「くまー!!」
宙に浮くくま君。
そして空中で稲光を発しながら、その巨体が獣人から逸脱した触腕に食い破られた。内に神格を宿したか。
しかしコントロールできずに暴走状態?
手助けをしようかと逡巡してるところで、うねる触手を無理やりねじ伏せるようにさらに内側から生えた手で掌握した。
まるでマトリョーシカのように内側から互いにコントロール制御権を奪い合う応酬。
そしてようやくくまくんが勝ったのだけど、その姿はありていに言って疲労困憊。
ここからまともに戦えるのか少し疑問だ。
だが、そういう熱さは私は嫌いじゃないよ。
彼なりに導き出した答えだ。
別のやり方があると教えてあげるのは彼を否定することになる。私ならば、その背をよくやったと叩いてやりたいね。
「準備OKくま!」
【キエアアアアシャベッタァアアアア!!】
【別物になりすぎですって】
【ホラーかな?】
【変身のベクトルが一人だけ違う件】
【アキカゼさんが人間フォーム崩してないだけで他はみんなこんなものだよ】
【ハンバーグさんだってホラーだぞ?】
【見慣れ過ぎるのもあれだよな】
【が、制限時間付きでLPゲージが見えない相手に勝てるか?】
【どう考えても制限時間逃げ切り制だろコレ】
【気軽に挑んでいい相手じゃなかった!】
【グラーキみたいに妖精誘引持ち待つのが得策じゃないかコレ】
【どう考えてもそうでしょ】
見えない答えのないまま、海のフィールド全てが水神クタアトに掌握された。
物理攻撃は通らず、侵食を込めてのクトゥルフの鷲掴みは動きこそ止まるものの、ダメージが通ったようには思えない。
どうやれば倒せるのか?
そもそも私たちはまだその位置に辿り着けてないのかもしれない。
ナビゲートフェアリーをオンにして、祠内の写真をパシャリ。
くま君は特になにもすることはなく、端っこで体育座りをしていた。
【くま、なにもできないからって体育座りは草】
【体育座りってなんぞ?】
【ああ、VR世代は知らないか。リアル寄りの集団生活してりゃ学ぶ最低限のマナーだよ】
【めちゃくちゃ哀愁漂う背中やめろ】
【普通はこの局面で動ける人材の方が稀なんだよ。ハンバーグさんがおかしいんだって】
「くーまー」
「嘆かわしいぞ。あたしのマスターともあろう者がこの体たらくとは」
「|◉〻◉)まぁ、積み重ねてきた実績の違いと言いますか? www」
【リリーちゃん、煽るじゃん】
【この子ほんと体張った芸するよな、この子】
【マウントの取り合いで未だ負けなしだぞ?】
【いや、結構負けてるから】
【それリリーちゃんの中ではノーカンだから】
【自分ルール押し付けあってて草なんだよな】
「さて、いつまでも座ってないで検証会と行こうか」
「くまじゃお役に立てないくまー」
「私だって手探りだよ。結局はなにも知らないところから試行錯誤して答えを導くんだからね。だから自分は無理だなんて諦めてほしくないな」
「そうよ、マスター。その男の言う通りじゃ。気の弱いところを払拭せねばこの先の成長はないと思うが良いぞ」
「くまー、わかったくま。くまもお手伝いさせて貰うくま!」
「その意気だ。さて状況証拠を並べよう。スズキさん、テーブルを」
「|◉〻◉)はーい」
【ここまでネクロノミコン出番なし】
【さっき励ましてただろ】
【応援だけなら俺らもできる】
「なにが言いたいんじゃ、此奴ら?」
「一緒に悩むだけ悩んでほしいと言うことじゃないかな? 強制はしないよ。ただ自分の思ったことを述べるだけでそこにヒントが隠されているかも知れない。誰しも初めからプロじゃない。私だって勝手に尊敬されてるけど、今でも気持ちは挑戦者のつもりだよ? 君がどれほどすごい魔導書でも関係ないさ。たまには不得意分野にも挑んでみないかい?」
「仕方ないわね。あんたの誘いに乗ってやるわ」
不本意甚だしいとばかりにアール君はツンと鼻を上に向けた。
【お、丸め込まれたぞ】
【お得意のトーク術やな】
【この人ほんとどんな相手でも屈せず立ち向かうよな】
【そりゃアザトース様を前にしても同じこと言う人やぞ】
【それは強い】
【強者だからこんなに危険な地雷の埋まった場所で雑談トークできるんだぞ?】
【そうだった】
なんだかまた不本意なコメントが並んでいるよね。
私たちは削り取った鉱石をあれこれ調べて、結局グラーキの祠と一緒の夢魔の鉱石である事を決定した。
だいたい判明した事を再度調べるのは、初心者のくま君やアール君にもその過程を踏ませたかったからだ。
「ちょっと、判明してるんだったらそれに付き合わせられた私達の労力は無駄だったじゃない!?」
「くまー、アキカゼさんはそんな意地悪しないくま。これを体験させることに意味があったと考える方がいいくまよ」
「体験? まぁ確かに初めての体験ね。普通に遭遇したら投げ出していたわ」
「きっと今からやることもくまたちのことを思ってやってくれてることくま。あまり穿ったものの考え方しない方が良いくまよ?」
「そうね、今は流されてあげる」
「|◉〻◉)とか言ってますよ、ハヤテさん?」
「茶化さないの。私達だって彼らの専門分野には手が届かないんだからこういうのは」
「|ー〻ー)はーい」
スズキさんを嗜めて、私達のやり方をくま君にも示していく。
アール君はやはり水神クタァトの石像をツルハシでカンカンし始めたあたりで気でも触れたんじゃないかという態度を取る。
もりもりハンバーグ君だったらノリノリで付き合ってくれるのに、常人から見ればやはり移譲なことだったのだろう。
「なに、これなによ?」
「なにって? 水神クタアトを呼び寄せる儀式だよ?」
「そんなの石像を壊せば怒って出てくるわよ! 舐めてるの?」
「至極真面目さ。けれどね、本当は違う手順を踏む必要があるんだ」
「ならそっちの手順使いなさいよね!」
「生憎とそれはできない。と言うより手段を実行するには向こうのフィールドで地下に行き、水の契りを高めなければならない。その上で適任者は聖典側に属している。こちらの言いたいことがわかるかな?」
「敵の手を借りるわけにはいかないと言う意味かしら?」
どこまでも強気な発言だね、この子は。
「陣営の違いにそこまでの差はないよ。私が言うと皮肉に聞こえてしまうかも知れないが」
「そんなことないくまー」
「そうね」
【俺もネクロノミコンちゃんに同意】
【アキカゼさんが言うと皮肉が過ぎるわ】
【くまの同意はどっちにも取れるから諦めの方だぞ】
【コンブ生えるわ】
さて、うるさい外野は放って置いて。
私のツルハシは最後のカケラに手をかけた。
私の手の中にあるかけらが光り、グラーキと同じような演出。
砕け散る祠と共に、水神クタアトが現れる。
<水神クタアトが現れた>
制限時間:48:00
なんの表記だ?
カウントは時間と共に削られていく。
「ちょっと、なにも居ないじゃない!」
「くまー、戦う相手がいないとどうすればいいか困ってしまうくまー」
「そういえば銅像は竜の形をしていましたよね。でも本体は別にその形ではないと?」
「|◉〻◉)ですねー」
もしかしてここで時間をつぶしているのはまずいのではないか? そんな予感がそこかしこでする。
「少し場所を移そう。このフィールドは色々とまずい気がする」
<水神クタアトの侵食攻撃!>
!?
何か行動をしようとするたびにこの判定か。
ステータス上での変化はない。
違和感は募るばかりだ。
「スズキさん、氷作成だ。このフィールド一帯を凍らせて!」
「|◉〻◉)やってみます」
スズキさんに促しつつ掌握領域を握り込むも……
<水神クタアトに抵抗されました>
いつの間に?
領域展開を外されている。
いや、抵抗と言うことは侵食されているのだ。
もしかしてこのフィールドそのものがクタアトか!?
「|>〻<)ハヤテさん、だめです! 凍ってくれません!」
「これは決まりだな。相手は海そのものだ。そして私たちを乗っ取るつもりで侵食攻撃を仕掛けてくるぞ!」
「タイムリミットはそれだったくま!?」
「やはり碌なものではないな、邪神というのは」
「君だってその片割れでしょうに。くま君、会場に出るよ。私はスズキさんを抱えて、君は自力で行けるかい?」
「得意分野くま!」
私は上空に向けてヘビーを召喚し、その口の中でショートワープを試みる。
案の定と言うか、ABPがみるみる減少していく。
これはLPの方が消失しているか?
やがてヘビーの肉体を食い破るようにクタアトが体内に侵入し、私目掛けて突っ込んでくる。
「|◉〻◉)させませぇん!」
スズキさんが体を張って前に出て止めるも、水神クタアトの勢いは止まらず、完全に無駄死にの形。
まぁ本体は私の中にいるそうなのでおかわりのごとく見せ場を作って行ってくれたけど。
【リリーちゃんwww体張りすぎwww】
【ほんとこの主従は見てて飽きないな】
【くまのところはまだギクシャクしてるもんな】
「抜けた! スズキさん、ありがとう!」
「|◉〻◉)どういたしましてぇええええ!」
50匹目のスズキさんを見送り、ヘビーが丁度LP切れで消失する。水の中から追走してくる触手の鞭を空中で交わし、無駄だとわかりつつも領域展開。
「通った! ならば!」
水中内での領域展開は無理矢理剥がされてしまったが、空中ならばこちらに理がある。
「クトゥルフの鷲掴み!」
[GYORUPIEEEEE!!!?]
知性も何もない咆哮が触手の群れの中枢から溢れ出す。
「くーまー!」
そこへ事前に離脱ならぬ巨大化してことなきを得たくま君の固めた拳が貫いた!
【腑抜けた声から繰り出される殺人パンチ!】
【あー、だめだ! 攻撃通じてない】
【そりゃ相手は水だぞ? 物理が効くわけない】
「だめだくま君! 神格を相手にするときはステータスを乗せなきゃ通らない」
「先に言って欲しかったくまー!!」
足場を取られたくま君が盛大にずっこけた。
【今のはアキカゼさんが悪い】
【よくこいつクリアできたよな】
【それはほんと不思議に思う】
「ええい、情けない奴め。しっかりせんかマスター」
「ちょっと転んだだけくま。もう大丈夫くま」
【起き上がれない奴が何か言ってますよ?】
【まんまガリバーで草】
【巨人気分を味わえてるやん】
【縛り付けるならもっと美少女をさぁ】
【男女差別やめろ】
【くまが縛られても誰も嬉しくない件】
触手の鞭を侵食を込めたビームソードで切り払っていく。
「助かったくま!」
「こういうのは助け合いだよ。それと教えずに悪かったね」
「予習を怠ったくまも悪かったくま。もう油断しないくまよ。アール、フォームチェンジくま!」
「その言葉を待っておった。行くぞマスター!」
「くまー!!」
宙に浮くくま君。
そして空中で稲光を発しながら、その巨体が獣人から逸脱した触腕に食い破られた。内に神格を宿したか。
しかしコントロールできずに暴走状態?
手助けをしようかと逡巡してるところで、うねる触手を無理やりねじ伏せるようにさらに内側から生えた手で掌握した。
まるでマトリョーシカのように内側から互いにコントロール制御権を奪い合う応酬。
そしてようやくくまくんが勝ったのだけど、その姿はありていに言って疲労困憊。
ここからまともに戦えるのか少し疑問だ。
だが、そういう熱さは私は嫌いじゃないよ。
彼なりに導き出した答えだ。
別のやり方があると教えてあげるのは彼を否定することになる。私ならば、その背をよくやったと叩いてやりたいね。
「準備OKくま!」
【キエアアアアシャベッタァアアアア!!】
【別物になりすぎですって】
【ホラーかな?】
【変身のベクトルが一人だけ違う件】
【アキカゼさんが人間フォーム崩してないだけで他はみんなこんなものだよ】
【ハンバーグさんだってホラーだぞ?】
【見慣れ過ぎるのもあれだよな】
【が、制限時間付きでLPゲージが見えない相手に勝てるか?】
【どう考えても制限時間逃げ切り制だろコレ】
【気軽に挑んでいい相手じゃなかった!】
【グラーキみたいに妖精誘引持ち待つのが得策じゃないかコレ】
【どう考えてもそうでしょ】
見えない答えのないまま、海のフィールド全てが水神クタアトに掌握された。
物理攻撃は通らず、侵食を込めてのクトゥルフの鷲掴みは動きこそ止まるものの、ダメージが通ったようには思えない。
どうやれば倒せるのか?
そもそも私たちはまだその位置に辿り着けてないのかもしれない。
1
あなたにおすすめの小説
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる