Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー

双葉 鳴

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【ハヤテの章③】ゲーム内生活10日目【AWO】

43_四人組、再び

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「お姉ちゃん、早く早く」

「はいはい、今行くから」

「リノちゃんもうきてる」

「早くない?」

「きっとブログ閲覧しに早くきたのかも」

「えー、夜に確認すれば良くない?」

「夜に来れない事情があったかもだし」

「あ、そうか」


 リノちゃんのお家は相当な教育ママらしい。
 日和さんがそうだと聞いて、意外だなと思う。
 だってあの人、畑にいる時は本当にのほほんとしてるから。

 あっちが素で、リアルでは少し無理をしているのではないか?
 と思わなくもなかった。


「リノっち、おはよ!」

「おはよ、トキちゃん。ハヤちゃんも」

「ブログ読んでくれた?」

「おかげでENはあるのにお腹空いてきちゃった」

「わかる」


 ブログの内容には触れず、最後の画像の数々に惚れ込んでしまったらしい。
 お姉ちゃんの『面白い』に共感できるかは個人差があるからね。
 あとお姉ちゃん、共感して私をじっと見ないで。


「お昼はみんな集まってからだね」

「りょ」


 言うが早いか、最後の一人が登場する。


「お待たせ、諸君。みんな早いね?」

「ミルちゃんおはよ」

「ミルっちも今日は寝坊せずに来れたね」

「誰が寝坊助かー」

「誰って、ねぇ?」

「それ、聞いちゃう?」

「あはは」

「ぐぬぬ」


 中学生組は朝から元気いっぱいだ。


「それでは今日の目的はー?」

「なんで誰も知らないの?」

「お姉ちゃんがブログに書いてないからだよ」

「え、あたしのせい?」

「ねー、ハヤちゃんは書いてくれたのに」


 リノちゃんの怪訝な瞳がお姉ちゃんに突き刺さる。
 私もそれに便乗した。


「ハヤテが教えてくれなかったからだよ!」

「え、私のせいなの?」

「いーや、これはトキっちの責任だね。何でもかんでも教えてもらったら意味がないよ。もっと自発的じゃないと」


 言ってやった、と言う顔でミルちゃん。


「なんだよー、じゃあミルっちは一人でできるのかよー」

「それはもちろん」


 ミルちゃんは随分と得意げに胸を張る。
 そういえばこの子は探偵さんの家系。
 お母さんもお父さんも記者だから、意外とそう言うのが得意だったりするのかな?


「じゃあ、画像の提供は今回は私からもしないね」

「嘘でしょう!?」

「なっはっは。墓穴を掘ったねミルっち。ハヤテはあたしの妹だから協力するのは姉の特権なのだー」

「一回目は心配だから手助けしたけど、二回目はしないよ?」

「え、嘘だよね?」

「あはは」


 ミルちゃんと一緒にしどろもどろになるお姉ちゃん。
 面白いなー。リノちゃんと一緒に苦笑いしておいた。


「とはいえ、誰の責任か追求してばかりもいられないので、これから目的地を決めよっか」

「これは一理ある。責任の所在が誰にあるか決めたところで時間ばかり食っちゃうし」

「お腹すいた」

「はらへり虫さんもいることだし、最初の目的地はリノっちのおばさんのお店だ!」


 シズラさんね。
 ログインはしてるけど、お店は閉めてるんだよね。
 案の定、座標は私以外誰も覚えてないので、みんな私の後についてくることになった。


「およ、ハヤッち。レストランこっちじゃなくない?」


 かろうじて頭の中に入ってましたよアピールをしてくるミルちゃん。


「今フレンドチャット送ったら、今お店にはいないから屋台の方に来てって」

「おー、手回しがいい」

「ハヤちゃん、おばちゃんと仲良いもんね」

「みんなと出会うよりも先にフレンドになったからね」

「ずるーい」

「普通に遊んでただけなんだけどなー?」


 そんな中身のないやり取りをこなし、ファストリアの屋台街に着いた。
 座標はもらっておいたので、そこまでまっすぐ歩いていく。


「シズラさーん」

「おはよう、ハヤテちゃん。リノやトキちゃん、ミルモちゃんもいらっしゃい」

「「「おはようございまーす」」」


 三人はこう言う時だけ礼儀正しいお辞儀をする。
 仲間内にはこう言う態度を一切取らないくせに、表向きはお嬢様なのだ。
 そういえばお嬢様学校なんだっけ?

 あまりそこらへん理解してなかったりする。


「はい、おはよう。みんなしておばさんのお店を手伝いに来てくれた、なんてことはないんでしょうけど」

「トキちゃんのブログを見たらお腹空いちゃって」

「あー、あれね。美味しかったわよ」

「おばちゃんだけ食べててずるいー」

「もう、ワガママさんね。ハヤテちゃん、こうなったらリノは意地でも席を動かないわよー?」

「もちろん、ご馳走する気できてますよ。そこでテーブル席のあるこちらで食べれないかなと」

「うん、そう言うことなら大丈夫。でもお店に貢献してもらうことが条件です」


 と、言うことでドリンクを注文。
 本来なら食品の持ち込みはNG行為だけど、身内だからと許してくれた。
 それにアクアリアでの食材の買取をしている都合上、私がここに立ち寄らなくなる方がシズラさんには堪えるらしい。


 シズラ :あのあと知り合いの深海種族二人連れてパッキング状態であの場所に行ったんだけど

 ハヤテ :どうでした?

 シズラ :入り口そのものが消えてたわ

 ハヤテ :あー


 条件としてはイベントを起こすトリガーとなる私がパーティにいないと、あの街に入るためのトリガーが引けない。
 そしてそのトリガーとなる列車君レッドシャークが私個人の幻影となってしまったから、イベントそのものが消えてしまった可能性が示唆されていた。


「ハヤテ、ぼんやりしてどうしたの?」

「ちょっとシズラさんとパーティチャットしてたんだ」

「へー、なんのお話ししてたの?」

「混む前には帰ってねってそんな感じの話」

「世知辛い!」

「お店は慈善事業じゃないからねー。売り上げを出さないと」


 ドリンク一杯で何時間もいられたら困るのだ。
 席は有限。
 屋台の場所も制限がある。
 だからこそ、料理人は自分の城とも言えるお店を持ちたがる。
 私はまだ出すつもりはない。
 なんなら料理を仕事にするつもりがないまである。

 趣味は趣味のまま、遊んでいきたいものだ。


「ふぅ、満足。やっぱりハヤちゃん結婚しよ」

「あはは、リノちゃんは毎回それだねー」


 もはや『ご馳走様、美味しかったよ』以外のなにものでもない。
 身内ノリとして私の中では消化できつつあるが、周囲からの視線は変わらず痛い。
 もう少しなんというか、言い方を変えて欲しいものだね。


「それでこれからどこ行こっか?」

「リノっちを連れてアクアリア?」

「興味はある、けど動けないのは少し不満」


 動くのが大好きなリノちゃんは、どうせ遊ぶなら体を動かしたいと言った。


「なら、また『命のかけら』集めに協力してくれる?」


 骨粉、もとい肥料は畑作りの骨格。
 ひよりさんから預かってる間は、管理は私が行うからね。
 料理をするのにおいて、野菜は切っても切れない間柄。

 あとはお肉の仕入れにも『命のかけら』は必要不可欠。
 今一番高騰しているアイテムと言っても過言ではないだろう。
 その時々の需要を見極めるのもまたVRMMOの醍醐味とも言えるだろう。


「それしかないか」

「金策はゲームの華」

「目的を見失わないでね? 買いたいものがあるから稼ぐんだからね?」

「何を買うんだっけ?」

「楽器でしょ! お姉ちゃんはここでも吟遊詩人をしたいって言ってたじゃん!」

「ハッ!」

「思い、出した……」

「この二人、いつもこんなだよ」

「先が思いやられるね」


 リノちゃんが昔を思い出すように言った。
 Wonder Blink Onlineワンブリでも、行き当たりばったりで行動をするので着いていく方は疲れてしまうのだそうだ。
 それでも稼げて遊べているのは、素のスペックが高いからこそ。

 なんだかんだで行動力はあるんだよね。
 それしかないとも言えるけど。
 

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