偶然の再会に、過ぎた年月だけが切なくて。

Yuuka

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偶然の再会に、過ぎた年月だけが切なくて。

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雑音混じり、たくさんの人が行き交う雑踏の中、
時間が、止まった。

目が合った。
目が離せなかった。

15年もの時を経て、
ほんの一瞬で、私の身体は彼に反応した。

素敵な再会でも、何でもない。
なんてことのない火曜日の夜に、
仕事帰りのターミナル駅で、見つけてしまったのだ。

声にもならなかった。
ただただ、彼の視線も私に固定され、
止まった時間が一瞬で過ぎ去った。

何が起きたのか、分からなかった。
足を止めることもできなくて、声を出すこともできなくて。

目が合った、そう目が合った...。
何も起きないし、何も起こしてはいけない。
懐かしんではいけない、振り向いてはいけない。

何度も何度も、言い聞かせるのに、
私の胸はキューんっと高鳴り、身体は熱くなっていく。
うまく息ができなくなりそうで、ゆっくり深呼吸、
家に帰るまで、自分を落ち着かせることに必死だった。

---------------------------------------------------

あの日の、彼の目が忘れられず、
ベッドに入れば、悶々と身体の火照ってくる日々。

もう、あの頃みたいに、若くなんかないのに。

また火曜日がやってきて、心臓のドキドキは止まらずに。
ほんの小さな賭け。負けると分かってて、賭けてる。
ちゃんと...、負けさせてください...。

この間、彼とすれ違った時間は19時半を過ぎていた。
ほんの少し早めに、同じ駅の同じ場所で、私は立っていた。

偶然なんて、2度も3度も訪れない。
もしも2度目があったのならば、全てが壊れてしまうかもしれない。
そんな脆い綱渡りの人生だったのかと、今更ながら思いふけりながら。
よく見える場所についている時計の針が、カウントダウンを刻む。
行き着く先は、地獄ですか? 幻想であれ。現実に引き戻せ。

心臓の音が高鳴る...。

19時27分、ふと時計を見上げた視界の中に、
濃い灰色のビジネスコートを来た、彼を見つけてしまった。

見つけてしまった、だけ。そう...。

あっ... もう目を閉じれない。息も出来ない。
どうしたら、呼吸が出来るのか、パニックになりそうで。

「ひさしぶり。ねぇ、ホテル行く?」

耳元で囁く彼の声が、あまりにも刺激的で。
まともに息すらできない私の顔が、真っ赤になってやしないか、
高鳴る心臓の音が、漏れてやしないか...。

意地悪そうな目つきで、私を見つめて。
私に委ねてる、ずるい。
頷くことしか出来ないじゃない。

ただの乗り継ぎの駅。
今はもう若くもないし、遊ぶような時間もないので、
この駅に、プライベートで降り立つなんて、久し振り。

小慣れたようにシティホテルへと入っていく彼に、
おずおずとついて行くことしかできない。
ラブホテルではなく、シティホテルなんてあたりが、
昔とは違うという現実を感じさせてくれる。

良くない...。身体が火照って、熱くなってる。
エレベーターに乗り込んでいるこの現実が、更に私を昂ぶらせてる。
お願いだから、振り向かないでください。私を見ないで。

1206号室。大人の世界。
ガチャッ...

部屋に入るなり、コートを脱いだ彼は、そっと私を抱き寄せてキスをした。
私の真っ赤な顔を、きっと見られてる。
彼の舌が唇を押し開けて、私の口の中を弄る。
私の舌を捕まえて、弄ぶ。
部屋には、チュッチュと、唇を吸い合う音だけがいやらしく響いて、
余計に私を昂ぶらせていく。もっと、お願いって。

「...満足した?」

唐突に、唇を離されて。
シュン...となる、私が恥ずかしい。

悪戯そうに笑うその目、どうしよう、何も考えられない。

「いきなりホテルなんて言ってごめん。
 でも、そんな顔してたから。今日は一層、潤んだ目で、おねだりしてた。」

『今日は...って?』

「先週、会ったよね。声かけようかと思ったら、あっという間に居なかったから。」

お喋りしながらも、私の唇を舐め回すように。
意地悪な指が私を弄ぶ。
思わず、舌で指を捕まえると、無遠慮に指が口に入ってくる。
唾液が止まらない...。
身体の奥が、疼いて、熱くなってくる。

「その顔、好きだよ。いいね。もっと...って?
 ほらほら、昔教えたでしょ?言わないと、分からないよ。」

--------------------------------------------

昔、教えたでしょ?って...
禁断のワードでしょ。

最初に出会ったのは、中学生。

1つ上の彼は、剣道部の先輩でありながら、同じピアノ教室に通ってた。
小学生のときから通っているピアノ教室なのに、
彼の存在に気付いたのは、剣道部に入部してからのこと。
それから、少しずつ親密になって、私は彼と同じ高校に進学をした。
ちゃんとお付き合いをして...、そんな関係になれていたのならば、
今という未来は違う形で存在していたかもしれない。

人生に、イフはない。分かってる...。

『好きです...』
「じゃぁ、脱いで。今すぐ、ここで。」

始まりが、間違っていたのかもしれない。
時々、学校の音楽室のピアノを借りて、連弾を楽しんでいた。
先生に鍵を借りて、21時過ぎまで音楽室に居たこともあった。

勇気を振り絞って、告白したつもりだったのに。
彼は、あっさりと私を裸にした。

「バカか?俺の言うこと、何でも聞いちゃうんだね。
 色々、してみたいんだよねー。」

そこから始まった...。
朝早くの学校に呼ばれて、誰も居ない音楽準備室。
脱いでって、真っ裸にされる私。
彼は、“緊縛”なんて本を開きながら、買ってきた縄で私を縛ってみる。

「OK、制服着て。」

毎日毎日、私の制服の下は色々な縛り方をされていた。
そして、ビショビショに濡れる私を、所構わず愛してくれた。
セックスしたことのない学校内なんて、無いかもしれない。
彼の親の帰りが遅い日は、彼の家で。
私も彼の虜になっていた。毎日毎日、セックスに囚われていたような気がする。

高校時代の思い出は、彼とピアノとセックス。

彼が音楽大学を受験する為に、四六時中ピアノばかり弾いていた頃、
私はその隣で、毎日悶えてた。
彼のピアノの音ですら、私の身体を熱くさせて、
彼はそんな私を時折見つめながら、必死にピアノを弾いていた。
ピアノのレッスンが終わると、彼は興奮していて、一層私を激しく抱いた。

「ほらほら、お願いしないと、触ってあげないよ?自分でするの?」
「もっと...?もっと、どうして欲しいの?」

ピアノを弾いている細くて綺麗な、器用な彼の指が、
乳首を摘んで、コリコリ痛いほどに抓ってくる。
私の奥は疼いて、もっともっと...って、おねだりする。


--------------------------------------------

昔の彼の声が、今目の前にいる彼の声に重なって、
自分の居場所を見失いそう...。
このまま、流されてしまいそうなことに、抗うことができない。

あの頃、“さようなら”なんて告げなかったら、どうなっていたのだろう。
後悔をしているわけじゃない。

好きだった、なんて今更、そんな言葉は欲しくない。
愛してる、なんて今更、そんな言葉は欲しくない。

だけど、今は... 偶然という名前の運命という悪魔に、好かれてしまった。

『...触って欲しい、今日だけ。今だけ、少しあの頃に戻りたい。』

言ってしまった。
もう、後戻りが出来なくなった、かもしれない...。

彼の唇が、首筋に下がって、チュパチュパ音を立てながら、
少しずつ下に...。

私の身体はどんどん熱くなって、彼のこと、期待し過ぎてる。

「もう、ビショビショだよね...、目が潤んでる。嬉しそうに。」

耳元で囁く彼の声が、身体に響いて、溢れ出てるのが分かる。
触って欲しくて、疼いて疼いて、仕方がない...。

「ん...? そんなに腰押し付けて、我慢できないの?
 ほらほら、ちゃんと全部脱いで、ベッドね。」

もう昂ぶっている私自身を、私は止められなくなってしまった...。
そんな私を見つめている彼が、とても愛おしそうな目をしていると、ふと感じた。

そうなの、分かってる。
あの頃の私たちは、幼さゆえに自分たちの感情を理解しきれていなかった。

好奇心と快楽に、溺れてた。
彼の私を見る眼差しは、ちゃんと私のことを好きだといつも言ってくれていた。

唇に息つく隙もないほどにキスの嵐。
彼の舌が、私の舌を絡めとり、苦しいほどに吸い付いてくる。

荒々しくも丁寧に、私の服を脱がせて、綺麗だよと囁く言葉が、
もう戻れない過去に、今、全力で囚われていることを身に染みる。

んっ...んん... あっ...

乳房を揉みしだきながら、ツンと立ち上がった乳首を指先でつねる。
どんどん強くなり、痛さに子宮の奥がジュン...と更に濡れそぼっていく。

お腹に腰に背中に、弄る彼の手が、ゾクゾクしてしまう。
跳ねそうになる身体を押さえつけられ、 んんっ... と声が漏れてしまう。

彼の指がそっとクリトリスに触れて、更に期待値を上げる私が恥ずかしい。

「もうグチョグチョだね... 何にも持ってないや。
 物足りないよね。縛られるのとか、おもちゃとか、大好きなのにね。
 ずっとずっと......縛っておきたかったけど... 間違ってるのかなって。
 あの頃、だから、もう離れた方が良いんだと思ったんだよね。」

「おかげ様で、それなりのピアニストとして、精進できたわけですけどね。
 まっ、昔話はやめよっか。もう我慢できないでしょ、指入れたげる。」

んっ... あっあっ んんっ... 気持ちいい...

急に、涙が溢れてきた。
だから、人生にイフはないんだって、言い聞かせているのに。

「上手上手、変わってないね。指入れて、ちゃんと悦んでキュッキュしてる。
 覚えてたんだね。」

ピチャピチャする音が部屋に響いて、その音が更に私を深く落としく。

「ほらほら、しっかり締め付けて。ちょっと首絞めたげる。」

馴れた手つき、左手が私の首を絞めにくる。
頚動脈を親指と人差し指がキツく締め始めると、膣の中にある彼の指がより鮮明に感じてしまう。
息苦しくて、気持ちいいことしか考えられない。

あっあっ... 息が、息が苦しい。

「いいね、いいね。締まってるよ。ここ、ここでしょ?
 ほらほら、こうやって押すといいよね。まだだよ、まだ我慢しな。」

んっんっ... ダメダメ、 もうイッちゃう、イッちゃう...

「もうダメかなー。最後、強く締めるよ、んー、いいね。いいよ、イキな・・・」

...イクイク ...もうダメ ...んっあっー

「変わってないね。可愛いね。そうやって、苦しそうに喘いで俺の声でイクの好きだよ。」

...はぁ 頭が真っ白。

ふと目を開けると、彼は窓際で煙草をふかしていた。
知ってる、最後に会った彼は、私の知らない煙草を吸っていた。

「本当は、咥えてもらって、
 ガンガン奥で突いて、大好きって、もっとって、顔見たいけど。
 んー、帰ろうか。」


--------------------------------------------

ほんの2時間程の火遊び。
それくらいで、ちょうど良かったのかもしれない。

これ以上、深入りしちゃいけない。お互いに。
抜け出せなくなる。それでも良いって、思ってしまう。

分かってる、最初から分かってる。
彼の左手の薬指には、銀色の指輪がしっかりはめてあった。
それは、私にも。

お互いのことは、聞かない。聞かないほうがいい。


ずるい。

きっと彼は。
私が、この駅で彼を待っていたら、同じようにまた誘ってくる。
次はもう、偶然じゃなくて、確信犯になってしまう。
それでもこの身体が、切ないくらいに彼を欲しいと望んでいる、気がする。

残酷...。この再会は、神様を呪いたくなる。
知らなければ良かったのに...。


(完)



んー、途中で展開を悩んでしまった。
ざっくり、最初の印象だけで突っ走った結果、です。
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