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第1章 はじめよう、Magic Loadersのいる暮らし
〇第11話 固く心に決めて、
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「メディ、あなたのことを、人間たちが狙っているのよ。どこか安全な場所に逃げなきゃ」
「そおなの?」
「しかし、どこに逃がせばいいのか……」
とマージが困惑していると、上空でまた羽音がした。
「またあのドラゴンが……いや、違うな」
立派な嘴と、羽をもっているが、体格は人間……いわゆる鳥人のような魔物が、こちらに降りてきた。
「おい、見かけない奴だな。我々の縄張りに入ってくんじゃねえ」
サーイは咄嗟に杖を構えたが、
「お、やんのか? これだから人間は。俺たちが善属性か悪属性かも確認しねぇで」
「あなた、善の魔物?」サーイが問い詰めた。
「そうだ」
「信用ならないわ。『私はいいやつだ』って言っている人がいい人だなんて絶対嘘じゃないの」
「なんだとこの小娘!」
そういって鳥人は襲い掛かってきたが、
「うわっ!」
「無闇に近寄らないで」
「お、お前、フィリスタなんか使いおって。人間だてらにやりやがるな」
マージが予め渡して置いたフィリスタ――対物理魔法――によって、鳥人は跳ね飛ばされたのだった。
「もしお前が善属性なら、頼みがあるんだ」とマージが鳥人に話しかけた。
「何だ、人間の分際で」
「この魔物の少女を、お前の棲み処で預かってもらうことは……」
その時、マージとサーイの立ち位置の関係上、鳥人からは丁度メディの姿が見えなかったのだが、マージが移動してメディの姿をはっきりと見せると、
「!!! な、なんだ、こいつ!」
鳥人は驚愕したようだ。魔物同士であっても、相当インパクトのあるビジュアルのようだ。
「だだだだ駄目だ! こんな奴、村に連れていけるか! 俺はもう帰る! いいか、絶対について来るなよ!」
といって、鳥人は駆け出して、森の中に向かっていった。
「……ダメか」
「……メディ、ごめんね。気を落とさないで」
「……あれれ? ちょっと待ってよ」とメディが言った。
「どうしたの?」
「……だってさ、あのトリ、さっき、飛んでたよね?」
「そうだけど?」
「……どおして、帰るときも飛ばないんだろお?」
「あ」
「……ちょっとついて行ってみよおよ」
「メディ、ダメよ。絶対について来るな、って言ってたじゃない」
「そうだ、絶対について行ってはいかん」
3人は絶対について行かないと固く心に決め、鳥人と同じ方向に駆け出していた。
森の中は鬱蒼としていたが、道ができていた。
その道を、さっきの鳥人がゆっくりと歩いていた。
3人は陰に隠れながら、鳥人の動きを注視していた……曲がり角にくると、一瞬歩みを止めて、こちらを振り返っていた。やはり、ついてくるのを警戒しているのだろうか。
途中、いくつか道が分岐しているところがあった。マージは、そのたびに鳥人がどちらに曲がったを書き留めていた。
8回くらい分岐を過ぎたあたりから、鳥人は気配を感じたのか、小走りで歩きだすようになった。しかし、曲がり角での振り向きは続いたので、注意してつけていった。ついには、曲がり角でもなんでもないところで振り向くというフェイントまでかけてきたが、3人は気づかれずに、その鳥人が住むという村まで着いたのだった。
―――――†―――――
「絶対について来るな、といったはずなのに」
鳥人は苦笑いしていた。
「あなた、最初から連れてくるつもりだったでしょ?」
着いた先は、様々な種族の魔物が住む村だった。
村の中心部にある石碑に案内された。こんなことが書いてある。
1. 村の不利益になることをしないこと
2. 人間を傷つけないこと
3. 人間の言葉を理解できること。可能ならば話すこともできること
「この付近にはゾジェイも多いから、この憲章に書かれた約束を守れない者は入村を断っている」鳥人が言った。
「ゾジェイ……?」
「魔物の中でも、特に獰悪な連中だ。人間どもから物を盗ったり、人質にしたり、あげくの果てには殺戮もいとわない」
サジェレスタを度々襲っている連中がゾジェイなのだろうか。
鳥人が続けた。
「……その、メディとかいう者」
「はーい♪」
「この約束を守るか?」
「はーい♪♪」
何だか審査がガバいな、とサーイは心の中で思ったが、
「よし、それじゃあ最後の確認だ」
そういうと、鳥人は1本の杖を取り出し、メディのほうへ向けた。
杖の先が、青く光った。
「……それは、ソルブラスか?」マージが聞いた。
「何だ、人間のくせによう知ってんな」
「上にいたとき、仲間が呪胎できたからな」
「……上? ……仲間?」
「よし、メディ。お前をこの村の住人として認めよう……申し遅れたが、俺の名はデウザ。この村の入境審査係だ。以後、よろしくな……人間のお二人もだ」
サーイは、マージの呟いた言葉が気になったが、とにかくメディの居場所ができて一安心した。
「そおなの?」
「しかし、どこに逃がせばいいのか……」
とマージが困惑していると、上空でまた羽音がした。
「またあのドラゴンが……いや、違うな」
立派な嘴と、羽をもっているが、体格は人間……いわゆる鳥人のような魔物が、こちらに降りてきた。
「おい、見かけない奴だな。我々の縄張りに入ってくんじゃねえ」
サーイは咄嗟に杖を構えたが、
「お、やんのか? これだから人間は。俺たちが善属性か悪属性かも確認しねぇで」
「あなた、善の魔物?」サーイが問い詰めた。
「そうだ」
「信用ならないわ。『私はいいやつだ』って言っている人がいい人だなんて絶対嘘じゃないの」
「なんだとこの小娘!」
そういって鳥人は襲い掛かってきたが、
「うわっ!」
「無闇に近寄らないで」
「お、お前、フィリスタなんか使いおって。人間だてらにやりやがるな」
マージが予め渡して置いたフィリスタ――対物理魔法――によって、鳥人は跳ね飛ばされたのだった。
「もしお前が善属性なら、頼みがあるんだ」とマージが鳥人に話しかけた。
「何だ、人間の分際で」
「この魔物の少女を、お前の棲み処で預かってもらうことは……」
その時、マージとサーイの立ち位置の関係上、鳥人からは丁度メディの姿が見えなかったのだが、マージが移動してメディの姿をはっきりと見せると、
「!!! な、なんだ、こいつ!」
鳥人は驚愕したようだ。魔物同士であっても、相当インパクトのあるビジュアルのようだ。
「だだだだ駄目だ! こんな奴、村に連れていけるか! 俺はもう帰る! いいか、絶対について来るなよ!」
といって、鳥人は駆け出して、森の中に向かっていった。
「……ダメか」
「……メディ、ごめんね。気を落とさないで」
「……あれれ? ちょっと待ってよ」とメディが言った。
「どうしたの?」
「……だってさ、あのトリ、さっき、飛んでたよね?」
「そうだけど?」
「……どおして、帰るときも飛ばないんだろお?」
「あ」
「……ちょっとついて行ってみよおよ」
「メディ、ダメよ。絶対について来るな、って言ってたじゃない」
「そうだ、絶対について行ってはいかん」
3人は絶対について行かないと固く心に決め、鳥人と同じ方向に駆け出していた。
森の中は鬱蒼としていたが、道ができていた。
その道を、さっきの鳥人がゆっくりと歩いていた。
3人は陰に隠れながら、鳥人の動きを注視していた……曲がり角にくると、一瞬歩みを止めて、こちらを振り返っていた。やはり、ついてくるのを警戒しているのだろうか。
途中、いくつか道が分岐しているところがあった。マージは、そのたびに鳥人がどちらに曲がったを書き留めていた。
8回くらい分岐を過ぎたあたりから、鳥人は気配を感じたのか、小走りで歩きだすようになった。しかし、曲がり角での振り向きは続いたので、注意してつけていった。ついには、曲がり角でもなんでもないところで振り向くというフェイントまでかけてきたが、3人は気づかれずに、その鳥人が住むという村まで着いたのだった。
―――――†―――――
「絶対について来るな、といったはずなのに」
鳥人は苦笑いしていた。
「あなた、最初から連れてくるつもりだったでしょ?」
着いた先は、様々な種族の魔物が住む村だった。
村の中心部にある石碑に案内された。こんなことが書いてある。
1. 村の不利益になることをしないこと
2. 人間を傷つけないこと
3. 人間の言葉を理解できること。可能ならば話すこともできること
「この付近にはゾジェイも多いから、この憲章に書かれた約束を守れない者は入村を断っている」鳥人が言った。
「ゾジェイ……?」
「魔物の中でも、特に獰悪な連中だ。人間どもから物を盗ったり、人質にしたり、あげくの果てには殺戮もいとわない」
サジェレスタを度々襲っている連中がゾジェイなのだろうか。
鳥人が続けた。
「……その、メディとかいう者」
「はーい♪」
「この約束を守るか?」
「はーい♪♪」
何だか審査がガバいな、とサーイは心の中で思ったが、
「よし、それじゃあ最後の確認だ」
そういうと、鳥人は1本の杖を取り出し、メディのほうへ向けた。
杖の先が、青く光った。
「……それは、ソルブラスか?」マージが聞いた。
「何だ、人間のくせによう知ってんな」
「上にいたとき、仲間が呪胎できたからな」
「……上? ……仲間?」
「よし、メディ。お前をこの村の住人として認めよう……申し遅れたが、俺の名はデウザ。この村の入境審査係だ。以後、よろしくな……人間のお二人もだ」
サーイは、マージの呟いた言葉が気になったが、とにかくメディの居場所ができて一安心した。
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