Magic Loaders

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第1章 はじめよう、Magic Loadersのいる暮らし

●第14話 How Many MagicLoaders(5-6)?

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 母さんへ
 ちょっと旅に出ています。新しい仲間が増えました。
 カギンより

「……これだけ?」
 カルザーナは呆れて言った。ルカンドマルアにいる母親の話をしたら、家出しておいて何も頼りを伝えないのはあまりに親不孝だ、といわれて、ザガリスタにある郵便局まで連れられて来てしまった。仕方なく上記のような手紙を書いて投函しておいたのだ。ちなみに、ルカンドマルアまで配達しにいくのは伝書鳩なんだが、なんか全身虹色だし、くちばしはひん曲がっているし、鳩には見えない。

「いいわ、とにかくお母さんにあなたの消息がわかれば。行きましょう」
 と言って、またカルザーナの裏庭まで戻った。

 すると、今度は裏庭の中にある池の前まで連れて行かれた。そこで、カルザーナから一本の杖を渡された。他の杖に比べて大きく、ずしりと重い。
「これを使ってみなさい」
「いやあの、俺は魔法使えないって申し上げ……」
「いいから!」
 ……あーあ、あんな短文を送ったら母親はもっと怒るだろうか、とか思いながら杖に力をこめると、どうだろう、池が自分らを写さなくなった。

 代わりに映っていたのは……夫婦? 妻のお腹は大きくなっていて、夫はそのお腹をかいがいしくさすっている、あ、もしかしてこれって……
「お母さんね、若いときの」
 人の顔を判別するは苦手なほうなので、そういわれれば、そんな気がする程度だったが、ああ、夫のほう、なんか自分の顔に似ている、つまり……
「よかった、あなたは攻撃魔法はだめそうだけど、キュレビュはちゃんと使える人だった」
「これが、俺の父親……」
 その時、画面の手前になにか黒い影、いや、緑色の影? あ、父親が前に出て、母親を庇うように……
「わーーーーっ!」
 俺は杖を落としてしまった。池はすぐに俺とカルザーナを写す平常モードに戻った。
「大丈夫!?」
「こっ、これ以上は、Rなんちゃら指定とか設定してないから、見れないっっ!」
「なんのこと? ……いいわ。あなたはこの先を見ることはできないし、見る必要もない。ただ、あなたには確かにお父さんがいたことは確かめてほしかった。もちろん頭ではわかっていただろうけど、この目で確かめてほしかったから」
「ありがとうございます……」

―――――†―――――

「おい、なんだよカギン、カル様となんかいい感じになりやがって!」
 イサキスがたまらず文句をつけてきた。
「いやー、おまえのドラゴン、役に立つじゃんか。おかげさまでもう設置完了だぜ」
 アシジーモもやってきた。
「カギンが使える魔法、見つけたわよ、キュレビュ。……で、あんたたちは何を見つけてあげたの?」
「俺は、ソルブラス、いや、なんか正解率50%とかいう一番使えないシロモノになってるけど」
「僕は、さっきのツェデ! ツェデツェデのツェデを見つけてあげた! すごいでしょ!」
「……何やってんのよ! イサキスはともかくアシジーモまでその体たらくで! その人にあった魔法を見つけて、引き出す、それがマジック・ローダーの使命だってのに、ろくなもん見つけてないじゃない!」
「ともかくって何ですか! ツェデはろくなもんです!」
「おやおや、人を働かせておいて、終わったらいきなりお説教とは、なかなかの待遇ですな」

 マジック・ローダー同士でなんかモメてるから、俺はせっかく使えるようになったキュレビュをもうちょっと活用してみることにした。ああ、そうだ、ここに来る前に通ったゾルゾーサの村、あれの華やかりし頃でも見てみるか。

 キュレビュは、その時思ったことに関連する場面を映し出してくれるらしいので、あの六芒星の広場の様子をイマジネーションしながら、発動。

 おおおー、見えてきた。ゾルゾーサ。ちゃんと建物が維持管理されている、適宜剪定されていて草生していない、ちゃんとした村。
 そして、あの広場は、立派だ、あ、なんか人がいる……
 六芒星の、各頂点に人が1人ずつ……
 いる。6人だ。
 なんか会議でもしているように見える。
 それぞれ、誰なんだろう、ちょっと拡大とかできっかな……    あ!

 そのとき、カルザーナが杖を取り上げた。
「……あなた、何見てんの?」
「おい、調子乗ってへんなもん見るなよ!」とイサキスもかみついてくる。
「カギン、魔法はやたらと使うもんじゃないぞ」とアシジーモまでたしなめてくる。

「ええと、何か悪いことしました?」
「……この杖は私のなの、返してもらうわ。お父さん、見せてあげたから、もういいでしょ?」
 いやいや、なんだろう、この態度の変化、なんだろう。そういえば、ゾルゾーサの現地で六芒星を見た時も、二人がやけに睨んできた。

 あの場所に、何か彼らにとって不都合なものでもあるのか……
 そのとき、アシジーモがイサキスの村に向けて出発したときの言葉を思い出した(エコー希望)

 ≪俺と、お前んところにいる自称国王、他にも3人、この世界には5人のマジック・ローダーが……≫

 5人……、俺がさっき見てた人々、彼らもマジック・ローダーに違いない。6人。

「っとぉ、わかった! マジック・ローダーは本当は6人なんだけど、なんかで1人いなくなっちゃった、ってのが……知られたくない……ぐっ!」

「しーっ、何を言い出す!」アシジーモが俺を羽交い締めにして、口を抑えてきた。
 俺もここで粘ることにした。
「うぐぐ……アシジーモ、そういうのよくないぞ、ちゃんと話してくれよぉ」
 アシジーモは、カルザーナとイサキスのほうを一瞥して、それから話した。
「そうだ、確かに……、6人いた。マジック・ローダーは。だが、1人は追放されたんだ」
「おおお、なんでだ?」
 アシジーモは再び二人を見て確認、続けた。

「……滅びの魔法だ。そのマジック・ローダーは、それを作ろうと言い出した。だが、そんなものを作れば、我々は……人類は……この世は、文字通り滅びるだろう。そこで、彼の持っていた書物を焚書にさせて、奈落の底へ追放した」
 滅びの魔法……アレか、天空の浮島が一発でふっとぶ破壊力のわりに、すぐに唱えられる危険極まりないやつのことか?
 アシジーモは羽交い締めを解いて言った。

「……これで満足か?」

 俺は、その滅びの魔法とやらがどんなものかも知りたくなったが、さすがにこれ以上粘る術はなかったので、あきらめた……あれ? 俺今滅びの魔法使わなかったか? 大丈夫か?

「これ以上変な詮索はよしなさい。約束してくれれば、あなたが使える魔法、もう少し探してあげるから」
「はい」
 しかしそれでも、カルザーナは杖を二度と貸してくれなかった。
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