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第1章 はじめよう、Magic Loadersのいる暮らし
〇第13話 右右左、右左左……
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「……右右左、右左左、右左左、右右左、右左右、右」
マージがそう呟きながら、サーイとともに森の中を歩いていた。
メディが『魔物の村』に住み始めてから十数日。様子が気になる2人は、鳥人デウザに教えてもら……じゃなくて、絶対について来るなと言われたのでついて行って作成した分岐のしかたを頼りに、『魔物の村』を目指していた。サジェレスタの村人たちには「まだ『奴』は捕まりません。私たちが絶対に仕留めます」などと言い残して。
「あ、サーイさん! マージさん! お久しぶりぃ~」
相変わらず記憶はないままだが、すっかり元気になったメディが出迎えた。
「メディ! 大丈夫だった?」
「うふふ、ぜえんぜんだいじょおぶ! この村の人たち、みいんなやさしいの!」
「お、来たな人間」
「あ、デウザ!」
「こいつ、かなりのお転婆で手を焼いたぞ。でもな、こいつが来てからなんか村の雰囲気がいいんだ。さしずめ村のマスコットというところかな」
「サーイさん、ほんっとにありがとお……そうだ、あたしの家によってかない?」
「え、家もあるの?」
メディは、自分の家――といっても洞穴だが――にサーイを案内した。
「ここにはね、珍しい飲み物もあるらしんよ……カティールとか言ってね」
と言って、メディは洞穴の割れ目からなにやら液体を注いで、サーイに差し出した。地球で言うところのコーヒーのような、程よい苦味のある味だった。
「あら、おいしい、これ!」
「うふふ、そおでしょお~」
サーイにこの世界で2つめの好物ができた。1つ目はマージの作るスープ、2つ目がこのカティール。なぜか液体が多い。
―――――†―――――
「そおなんだ、サーイさん。ちきゅう?ってところからきたんね」
「うん」
と答えて、カティールを一口入れた。
「この世界だとときたまーにあるんだって、他の世界から人がくるっての」
「本当なの?」
「でも、あまりよくわかってないみたいだし、そんなしょっちゅーじゃないってゆうからねー。数十年前にあったとかなかったか」
「じゃあ、やっぱり帰る方法なんてわからないのね」
「あれ? 帰りたいんだ」
「当たり前よ。こんなところにいきなり連れてこられて。私、お父さんもお母さんも友達も、みんな会えなくなちゃったのよ」
「そっかぁ、困ったなあ」
「ねえ、さっき言ってたけど、数十年前にこの世界に来た人がいたってのは本当?」
「えー、しらないよ。なんかきいたはなしのうろ覚えだしさ」
「調べる方法はないの?」
「そおねぇ、図書館でも行って見る?」
「図書館? 歩いてどれくらいかかるの?」
「すぐ」
―――――†―――――
洞窟を出て、村の広場まで再び戻ると、また別の洞窟に案内された。
古びた扉を開けると、中は真暗で、黴の臭いが鼻を突いた。
「これが図書館?」
「んー、まああんたたち人間にいわせりゃただのソオコかもしれんよ。でもここでしか手に入らない本もあるらしいんよ……あ! これとか」
「何?」
こんなタイトルの本だった。
≪宇宙船ごと異世界転移してしまいました。最強スキル"科学"は魔法世界の人間に受け入れられない……受け入れたのは魔物たち!?≫
「イセイカイテンイ! これだよ! すごーい、ピンポイントじゃない!」
メディは飛び上がってきゃっきゃしているが、そのたびに頭の蛇が揺れるので、サーイはまだ恐ろしいようだ。
「あ、ごめんごめん、でもこれあたりだよ」
と言って、その長い題目の本を開いてみた。
ある男たちが異世界からやってくるが、向こうの世界ではあたりまえの学問を現地人に広めようとして奮闘するという……ノンフィクションである。
その中に出てくる「ツェノイ」なる機械について興味深い記述があった。
~~~~~
ツェノイは、転移してきた人物を転移元に帰還させる装置である。ただし、装置が作動するのは、転移に適した状態、具体的に言えば、ポプロゼグ、オピア、シャザフ、これらの3つの天体が一直線に並んだ晩だけである。
一人分を収容する幕屋のような構造で、材料の大部分はどこにでもある木材や布でできている。
室内は円形で、隅に8本の杖が等間隔に配置され、すべての杖が天井の1点に向いている。それぞれの杖には、スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワドを呪胎しておく。
~~~~~
「これだよ! これ! これ作ったら地球に帰れるよ! みんなでつくってあげっから!」
「そうね……でも……」
「?どしたの」
―――――†―――――
「めがみ、さま?」
「やっぱり、忘れちゃってるのね……あの人、その前にも私の前に来て……世界を救ってほしい、なんて言ってたの」
メディはまた表情を一瞬変えたが、ふっきれたように、
「いいよー、そんなひとのことなんかほっといてさ、ささ、作っちゃおおよ、ツェノイ!」
と言って、サーイの手をひいて図書館の外へ出て行った。
「スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワド……そんなに必要なのか?」
デウザが当惑したように言ったが、メディは、
「まあ、でもさ、みんなで集めたらなんとかなるっしょ!」
と言って村の魔物たちに協力を熱弁していた。
「よしわかった、この子のためだ。俺らも集めてくるぞ!」
「ぐぉー!」
魔物たちが鬨の声を上げた。
「私も、スライタスなら呪胎できる。サーイが早く故郷に帰れるなら、これほど嬉しいことはないからな」
とマージも協力を申し出た。
「よかったね、サーイさん! ほらみんな親切でしょ! ね、魔物のこと見直したでしょ?」
「うん、ありがとう!」
その時、サーイは気づいた。自分がこのエクゼルアという世界に来てから、初めて笑顔になっていたことを。サジェレスタにいた時には、なぜか一度もなかったのだ。
マージがそう呟きながら、サーイとともに森の中を歩いていた。
メディが『魔物の村』に住み始めてから十数日。様子が気になる2人は、鳥人デウザに教えてもら……じゃなくて、絶対について来るなと言われたのでついて行って作成した分岐のしかたを頼りに、『魔物の村』を目指していた。サジェレスタの村人たちには「まだ『奴』は捕まりません。私たちが絶対に仕留めます」などと言い残して。
「あ、サーイさん! マージさん! お久しぶりぃ~」
相変わらず記憶はないままだが、すっかり元気になったメディが出迎えた。
「メディ! 大丈夫だった?」
「うふふ、ぜえんぜんだいじょおぶ! この村の人たち、みいんなやさしいの!」
「お、来たな人間」
「あ、デウザ!」
「こいつ、かなりのお転婆で手を焼いたぞ。でもな、こいつが来てからなんか村の雰囲気がいいんだ。さしずめ村のマスコットというところかな」
「サーイさん、ほんっとにありがとお……そうだ、あたしの家によってかない?」
「え、家もあるの?」
メディは、自分の家――といっても洞穴だが――にサーイを案内した。
「ここにはね、珍しい飲み物もあるらしんよ……カティールとか言ってね」
と言って、メディは洞穴の割れ目からなにやら液体を注いで、サーイに差し出した。地球で言うところのコーヒーのような、程よい苦味のある味だった。
「あら、おいしい、これ!」
「うふふ、そおでしょお~」
サーイにこの世界で2つめの好物ができた。1つ目はマージの作るスープ、2つ目がこのカティール。なぜか液体が多い。
―――――†―――――
「そおなんだ、サーイさん。ちきゅう?ってところからきたんね」
「うん」
と答えて、カティールを一口入れた。
「この世界だとときたまーにあるんだって、他の世界から人がくるっての」
「本当なの?」
「でも、あまりよくわかってないみたいだし、そんなしょっちゅーじゃないってゆうからねー。数十年前にあったとかなかったか」
「じゃあ、やっぱり帰る方法なんてわからないのね」
「あれ? 帰りたいんだ」
「当たり前よ。こんなところにいきなり連れてこられて。私、お父さんもお母さんも友達も、みんな会えなくなちゃったのよ」
「そっかぁ、困ったなあ」
「ねえ、さっき言ってたけど、数十年前にこの世界に来た人がいたってのは本当?」
「えー、しらないよ。なんかきいたはなしのうろ覚えだしさ」
「調べる方法はないの?」
「そおねぇ、図書館でも行って見る?」
「図書館? 歩いてどれくらいかかるの?」
「すぐ」
―――――†―――――
洞窟を出て、村の広場まで再び戻ると、また別の洞窟に案内された。
古びた扉を開けると、中は真暗で、黴の臭いが鼻を突いた。
「これが図書館?」
「んー、まああんたたち人間にいわせりゃただのソオコかもしれんよ。でもここでしか手に入らない本もあるらしいんよ……あ! これとか」
「何?」
こんなタイトルの本だった。
≪宇宙船ごと異世界転移してしまいました。最強スキル"科学"は魔法世界の人間に受け入れられない……受け入れたのは魔物たち!?≫
「イセイカイテンイ! これだよ! すごーい、ピンポイントじゃない!」
メディは飛び上がってきゃっきゃしているが、そのたびに頭の蛇が揺れるので、サーイはまだ恐ろしいようだ。
「あ、ごめんごめん、でもこれあたりだよ」
と言って、その長い題目の本を開いてみた。
ある男たちが異世界からやってくるが、向こうの世界ではあたりまえの学問を現地人に広めようとして奮闘するという……ノンフィクションである。
その中に出てくる「ツェノイ」なる機械について興味深い記述があった。
~~~~~
ツェノイは、転移してきた人物を転移元に帰還させる装置である。ただし、装置が作動するのは、転移に適した状態、具体的に言えば、ポプロゼグ、オピア、シャザフ、これらの3つの天体が一直線に並んだ晩だけである。
一人分を収容する幕屋のような構造で、材料の大部分はどこにでもある木材や布でできている。
室内は円形で、隅に8本の杖が等間隔に配置され、すべての杖が天井の1点に向いている。それぞれの杖には、スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワドを呪胎しておく。
~~~~~
「これだよ! これ! これ作ったら地球に帰れるよ! みんなでつくってあげっから!」
「そうね……でも……」
「?どしたの」
―――――†―――――
「めがみ、さま?」
「やっぱり、忘れちゃってるのね……あの人、その前にも私の前に来て……世界を救ってほしい、なんて言ってたの」
メディはまた表情を一瞬変えたが、ふっきれたように、
「いいよー、そんなひとのことなんかほっといてさ、ささ、作っちゃおおよ、ツェノイ!」
と言って、サーイの手をひいて図書館の外へ出て行った。
「スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワド……そんなに必要なのか?」
デウザが当惑したように言ったが、メディは、
「まあ、でもさ、みんなで集めたらなんとかなるっしょ!」
と言って村の魔物たちに協力を熱弁していた。
「よしわかった、この子のためだ。俺らも集めてくるぞ!」
「ぐぉー!」
魔物たちが鬨の声を上げた。
「私も、スライタスなら呪胎できる。サーイが早く故郷に帰れるなら、これほど嬉しいことはないからな」
とマージも協力を申し出た。
「よかったね、サーイさん! ほらみんな親切でしょ! ね、魔物のこと見直したでしょ?」
「うん、ありがとう!」
その時、サーイは気づいた。自分がこのエクゼルアという世界に来てから、初めて笑顔になっていたことを。サジェレスタにいた時には、なぜか一度もなかったのだ。
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