Magic Loaders

hoge1e3

文字の大きさ
14 / 53
第1章 はじめよう、Magic Loadersのいる暮らし

〇第13話 右右左、右左左……

しおりを挟む
「……右右左、右左左、右左左、右右左、右左右、右」
 マージがそう呟きながら、サーイとともに森の中を歩いていた。
 メディが『魔物の村』に住み始めてから十数日。様子が気になる2人は、鳥人デウザに教えてもら……じゃなくて、絶対について来るなと言われたのついて行って作成した分岐のしかたを頼りに、『魔物の村』を目指していた。サジェレスタの村人たちには「まだ『奴』は捕まりません。私たちが絶対に仕留めます」などと言い残して。

「あ、サーイさん! マージさん! お久しぶりぃ~」
 相変わらず記憶はないままだが、すっかり元気になったメディが出迎えた。
「メディ! 大丈夫だった?」
「うふふ、ぜえんぜんだいじょおぶ! この村のたち、みいんなやさしいの!」

「お、来たな人間」
「あ、デウザ!」
「こいつ、かなりのお転婆で手を焼いたぞ。でもな、こいつが来てからなんか村の雰囲気がいいんだ。さしずめ村のマスコットというところかな」
「サーイさん、ほんっとにありがとお……そうだ、あたしの家によってかない?」
「え、家もあるの?」
 メディは、自分の家――といっても洞穴だが――にサーイを案内した。

「ここにはね、珍しい飲み物もあるらしんよ……カティールとか言ってね」
 と言って、メディは洞穴の割れ目からなにやら液体を注いで、サーイに差し出した。地球で言うところのコーヒーのような、程よい苦味のある味だった。
「あら、おいしい、これ!」
「うふふ、そおでしょお~」
 サーイにこの世界で2つめの好物ができた。1つ目はマージの作るスープ、2つ目がこのカティール。なぜか液体が多い。 

―――――†―――――

「そおなんだ、サーイさん。ちきゅう?ってところからきたんね」
「うん」
 と答えて、カティールを一口入れた。

「この世界だとときたまーにあるんだって、他の世界から人がくるっての」
「本当なの?」
「でも、あまりよくわかってないみたいだし、そんなしょっちゅーじゃないってゆうからねー。数十年前にあったとかなかったか」
「じゃあ、やっぱり帰る方法なんてわからないのね」
「あれ? 帰りたいんだ」
「当たり前よ。こんなところにいきなり連れてこられて。私、お父さんもお母さんも友達も、みんな会えなくなちゃったのよ」
「そっかぁ、困ったなあ」
「ねえ、さっき言ってたけど、数十年前にこの世界に来た人がいたってのは本当?」
「えー、しらないよ。なんかきいたはなしのうろ覚えだしさ」
「調べる方法はないの?」
「そおねぇ、図書館でも行って見る?」
「図書館? 歩いてどれくらいかかるの?」
「すぐ」

―――――†―――――

 洞窟を出て、村の広場まで再び戻ると、また別の洞窟に案内された。

 古びた扉を開けると、中は真暗で、黴の臭いが鼻を突いた。
「これが図書館?」
「んー、まああんたたち人間にいわせりゃただのソオコかもしれんよ。でもここでしか手に入らない本もあるらしいんよ……あ! これとか」
「何?」

 こんなタイトルの本だった。
 ≪宇宙船ごと異世界転移してしまいました。最強スキル"科学"は魔法世界の人間に受け入れられない……受け入れたのは魔物たち!?≫
「イセイカイテンイ! これだよ! すごーい、ピンポイントじゃない!」
 メディは飛び上がってきゃっきゃしているが、そのたびに頭の蛇が揺れるので、サーイはまだ恐ろしいようだ。
「あ、ごめんごめん、でもこれあたりだよ」
 と言って、その長い題目の本を開いてみた。

 ある男たちが異世界からやってくるが、向こうの世界ではあたりまえの学問を現地人に広めようとして奮闘するという……ノンフィクションである。
 その中に出てくる「ツェノイ」なる機械について興味深い記述があった。

~~~~~
 ツェノイは、転移してきた人物を転移元に帰還リターンさせる装置である。ただし、装置が作動するのは、転移に適した状態、具体的に言えば、ポプロゼグ、オピア、シャザフ、これらの3つの天体が一直線に並んだ晩だけである。
 一人分を収容する幕屋のような構造で、材料の大部分はどこにでもある木材や布でできている。
 室内は円形で、隅に8本の杖が等間隔に配置され、すべての杖が天井の1点に向いている。それぞれの杖には、スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワドを呪胎しておく。
~~~~~

「これだよ! これ! これ作ったら地球に帰れるよ! みんなでつくってあげっから!」
「そうね……でも……」
「?どしたの」

―――――†―――――

「めがみ、さま?」
「やっぱり、忘れちゃってるのね……あの人、その前にも私の前に来て……世界を救ってほしい、なんて言ってたの」
 メディはまた表情を一瞬変えたが、ふっきれたように、
「いいよー、そんなひとのことなんかほっといてさ、ささ、作っちゃおおよ、ツェノイ!」
 と言って、サーイの手をひいて図書館の外へ出て行った。

「スタリュタ、エルガイブ、ウェギア、スライタス、ビムッゼオ、アルダミ、テネパラド、パラドワド……そんなに必要なのか?」
 デウザが当惑したように言ったが、メディは、
「まあ、でもさ、みんなで集めたらなんとかなるっしょ!」
 と言って村の魔物たちに協力を熱弁していた。
「よしわかった、この子のためだ。俺らも集めてくるぞ!」
「ぐぉー!」
 魔物たちがときの声を上げた。
「私も、スライタスなら呪胎できる。サーイが早く故郷に帰れるなら、これほど嬉しいことはないからな」
 とマージも協力を申し出た。


「よかったね、サーイさん! ほらみんな親切でしょ! ね、魔物のこと見直したでしょ?」
「うん、ありがとう!」

 その時、サーイは気づいた。自分がこのエクゼルアという世界に来てから、初めて笑顔になっていたことを。サジェレスタにいた時には、なぜか一度もなかったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...