4 / 4
第四話 会議の事前準備
しおりを挟む中央アルラード管理本部所全アルラード管理長官室
アルフィンは長官室の窓際に立ち、外の灰色の街を見渡していた。
「テルン」
声に呼ばれ、テルンは緊張しながら一歩前に出た。
「はい、長官。」
アルフィンはゆっくりと振り返り、青年の目をじっと見据える。
「会議を開く。」
テルンは一瞬、耳を疑ったように目を見開く。
「会議……ですか?」
「数名の重要顧問全員を集め、アルラード独立について話す。」
テルンは小さく頷き、メモ帳に素早く書き込む。
「かしこまりました、長官。会議の日時と場所を調整し、出席者に連絡します。」
アルフィンは窓の外を再び見据えた。
「覚えておけ、テルン。今回の会議は単なる議論ではない。
反逆の狼煙を静かに上げる、最初の舞台だ。」
テルンは深く一礼した。
「……はい、長官。」
アルフィンは軽く頷いた。
そしてアルフィンは椅子から静かに立ち上がった。
ブラインド越しの光が消え、室内の空気が一層冷たく沈む。
「テルン、外出する。会議の準備は任せた。」
「はっ、どちらへ行かれるのですか?」
「……少し、古い友人に会いにだ。」
アルフィンは長官の徽章を外套の内側に隠し、コートの襟を立てると、静かに部屋を後にした。
――アルラード中央区の外れ――
かつての工業地帯にある古びた酒場「クローヴァ」。
アルラードとオルランタ連邦との戦争の影響で今は瓦礫とバラックとこの酒場しか無かった
看板の文字が薄れ灯りは半分が消え、夜霧に包まれて揺れていた。
アルフィンが扉を押すと、鈍い鈴の音が響いた。
中は薄暗く、壁際のランプだけがぼんやりと光を投げていて、アルコールと古い木の匂いが入り混じっていた。カウンターには誰もおらず、奥のテーブルに一人の男が腰を下ろしている。
ぼろぼろのコート、古臭い茶色の帽子を着こなし白髪の混じった髪を無造作に束ね、
手には氷だけが残った瓶を握っていた。
アルフィンはその男が座っているテーブルの席の隣に腰掛けた。
「マスター、ウォッカを二本。――こいつと私に一本ずつだ。」
マスターは無言で頷き、棚の奥から瓶を取り出す。
音を立てて栓を抜き、グラスを二つ並べた。
琥珀色の液体が静かに注がれ、
ランプの明かりの中でわずかに輝く。
アルフィンは無言でそのウォッカを一気に飲んだ。
「…ここの酒はうまい。何回でも飲みたい味だ。
そしてグレイお前の情報も何回聞いても有益な情報しかない」
アルフィンの言葉に、隣の男はゆっくりとグラスを傾けた。
その仕草には、ただの酔いどれには似つかわしくない品と重みがあった。
――ハウスター・グレイ
かつてアルラード公国情報機関の局長を務めた男。
戦争の最終年、敵国オルランタ連邦への諜報線を指揮し、
幾度となく暗号解読を成功させた伝説の情報屋だった。
だが、アルラード・オルランタ戦争の敗北により、
その情報機関は「存在しなかったもの」として消された。
局員たちは処刑、またはオルランタへの“人道的”な労働派遣――。
生き延びたのは、皮肉にも局長ただ一人だった。
以来、彼は肩書きを捨て、街を流れ歩く酔いどれとなった。
古びた勲章だけが、かつての“国家の人間”であった証。
かつて部下たちが命を懸けて運んだ機密も、
いまでは彼の記憶の片隅に沈み、酒で上書きされていく。
それでも、元アルラードの情報機関局長であったこともあり
酒場という酒場を渡り歩き、かつての情報線を拾い集めており現在でも“アルラードの人間”であった。
「随分褒めてくれるじゃねーか。ならオルランタ連邦軍の動向を観察した時の報酬の量をもっと増やしてほしかったんだがな。」
「すまんすまん軍統帥の時の給料は少なかったんだ。」
アルフィンは苦笑し答えた。
「で次はどんな依頼なんだ?」
グレイがアルフィンに問いかける
「依頼はまだいつ始まるかはわからないがアルラードの独立やその後の行動などを決める会議に参加するメンバーの情報を集めてくれ。メンバーの一覧はこれだ。」
アルフィンは一枚の手書きで書いた参加者メンバーの名前を書いた紙を渡した。
「了解だアルフィン。一週間後までには情報を揃えておく」
グレイはアルフィンが注文したウィスキーを飲みながら答えた。
「一週間ではない遅くて2日だ。それ以上は待てん」
アルフィンはきっぱりと断った。
「おいおい人使いが悪ぃぞ。2日で数人の情報しかもアルラードの高官だ。こりゃ報酬はこのウィスキー2年分でも足りねぇぐらいだぞ。」
グレイは飲み干したグラスを指さしながら答えた。
「まぁそう言うと思った。だから今回はいつもとは違う方法での報酬を与えようと思う。」
「何だ?蒸溜所でもくれんのか?」
グレイのつまらないジョークを無視してアルフィンは答える。
「グレイも知っていると思うがアルラード公国は独立しようとしている。そしてもしアルラード公国が復活したあかつきにはお前を情報機関の局長に復帰させたいと思う。どうだこの報酬は?」
「……」
グレイは黙り込み数分ほどの沈黙が続いた。
やがて彼は、短く息を吐いた。
「……あんた、本気でそんなことを言ってるのか?」
アルフィンはまっすぐに彼を見た。
「本気だ。アルラードを、ただの敗戦国では終わらせない。
独立を、名誉を、誇りを取り戻す。」
グレイはくぐもった笑いを漏らした。
「誇り、ねぇ……。」
「……俺がこうして飲んだくれてるのはな、酒が好きだからと、飲まなきゃ、やってられねぇからだ。アルラードが崩れて十四年……国は焼け、仲間は死に、俺はこうして生き残っちまった。くだらねぇジョークで笑って、安酒で夜をやり過ごしてきたが……それでもな、アルラード人としての誇りだけは一度も失っちゃいねぇんだ。どれだけ国が奪われようが、誰に踏みにじられようが、俺たちがアルラードの名を覚えてる限り、あの国はまだ死んじゃいねぇ。――そして俺はアルラードが復活しない限りは死にきれねぇ」
アルフィンは黙って聞いていた。
グレイの言葉に偽りはなかった。それは、敗北の底でしか知り得ない本物の記憶だった。
「だからよ長官さん俺はその報酬受け入れてやる。アルラードの局長をな」
グレイは席から立ち上がった
グレイは古びた帽子を被り直し、
「じゃあ、“情報局長”に戻る初仕事だな。」
そう言って、夜霧の中に消えていった。
「じゃあ私も長官室に戻ろうとするか」
アルフィンも席から立ち上がった
「ちょっとまってください」
今までずっと黙って作業をしていたマスターが声を掛ける
「お代がまだです」
「そういえばそうだった何ウィンだ?」
「ウィスキーが2本で4000ウィンでその前にもウィスキーを5杯頼んでおりましたので合計14000ウィンですね。」
「…これは出世払いとでもしておくか」
アルフィンはお金を払い店を出ていった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
薬師だからってポイ捨てされました!2 ~俺って実は付与も出来るんだよね~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト=グリモワール=シルベスタは偉大な師匠(神様)とその脇侍の教えを胸に自領を治める為の経済学を学ぶ為に隣国に留学。逸れを終えて国(自領)に戻ろうとした所、異世界の『勇者召喚』に巻き込まれ、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
『異世界勇者巻き込まれ召喚』から数年、帰る事違わず、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居るようだが、倒されているのかいないのか、解らずとも世界はあいも変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様とその脇侍に薬師の業と、魔術とその他諸々とを仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話のパート2、ここに開幕!
【ご注意】
・このお話はロベルトの一人称で進行していきますので、セリフよりト書きと言う名のロベルトの呟きと、突っ込みだけで進行します。文字がびっしりなので、スカスカな文字列を期待している方は、回れ右を推奨します。
なるべく読みやすいようには致しますが。
・この物語には短編の1が存在します。出来れば其方を読んで頂き、作風が大丈夫でしたら此方へ来ていただければ幸いです。
勿論、此方だけでも読むに当たっての不都合は御座いません。
・所々挿し絵画像が入ります。
大丈夫でしたらそのままお進みください。
ガチャから始まる錬金ライフ
盾乃あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ペットになった
ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。
言葉も常識も通用しない世界。
それでも、特に不便は感じない。
あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。
「クロ」
笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。
※視点コロコロ
※更新ノロノロ
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる