朝、君におやすみ

真白兎

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それでも私は、

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あの日の夜のライブは、一晩中話し込んだせいで喉がやられてうまく歌えなかったけど、
 
ライブハウスのお客さんの中に、彼がいたらと思って歌った。

そんな青春時代があったことを、生涯忘れはしない。


それから彼とは会っていない。
私も結婚して、県外で暮らして子供ができた。

彼も数年後、あの時の彼女と結婚したらしい。

聞いたときは、正直ちょっと寂しさがあったけど
お互い、しっかり前を向いて歩きだしたことに安堵した。

別に過去をひきずって、感傷的に生きているわけではなく、
私の生きてきた一部として、そこにいるわけで。

時間の経過とともに、美化されたとしても、そんな過去があることに感謝している。


最後にあった日から、20年の月日が流れた。

この20年は、あっという間で、子育てや家事に追われる毎日を過ごしている。

私は、相変わらずギターを弾いて、
卓球クラブを作って楽しく過ごしいる。
最近、息を抜いて自分らしく生きれるようになった。

子供は中学生になって、恋バナを嬉しそうに話してくる。


彼も、友達に教えてもらった情報によると、バイクはまだ好きみたいだし、
面白い話、同じ時期に卓球クラブを奥さんと作っていた。

これは偶然なのかわからないけど、
いつかまた試合をする日が来たら、次は絶対手を抜かないって決めている。



父のお墓に手を合わせながら、いろんな話をした。

「お父さんのお葬式に、元カノ呼んでほしいは、お母さんが可哀想すぎて、やっぱり理解できない!
私もいろんなこと思い出して懐かしい気持ちになれたけどね」

そう話した。


人生で、誰かを好きになるなんていくつあるのかわからないけど、
ただ言えるのは、一生懸命好きだった。

生きているすべての時間を費やして、そばにいたかった。


それはいい恋をしていたということなんだろうと

父から最後に教わった気がした。

私は、元彼のお葬式には行ったりしないけどね。

みんな、それぞれのストーリーがあって、
繋いだり、繋ぎとめたものを離さなきゃいけなかったり。

私は、いまは繋いだものを大事に生きていく。


今は、思い出にオヤスミを言おう。

たまに起こしては、またオヤスミをいって。


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