去りし記憶と翡翠の涙

箕田 はる

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第三章

12

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「もうっ……い、いからっ」

 丁寧な愛撫が続き、さすがの天野も荒い呼吸で訴えかけると、やっと恭治が顔を上げた。

「あんまり遅くなると、おばさん達……心配するから」

 恭治の頬を撫で、諭すように訴えかける。熱を持った頬に、恭治が興奮していることが伝わってきた。

「そうだな……」

 ポツリと恭治が呟き、天野のズボンに手をかける。一瞬躊躇するも、天野は脱がしやすいように腰を僅かに上げた。
 速い胸の鼓動と熱を持った下腹部が、如何に自分も興奮しているかを気付かされてしまう。一方で、同じ男の象徴を見て恭治は萎えはしないだろうかという不安もあった。でもこの薄暗い中では、よくは見えないだろう。
 恭治にズボンを脱がされると、全身が一気に冷たい空気に晒される。僅かに立ち上がっている天野の昂ぶりに、恭治の手が触れていく。

「んっ、ぅ……」

 慣れない他人の手の感触に、天野は息を詰める。恭治の力強い雰囲気からは似合わないほど、慎重な手つきで扱かれていく。

「大丈夫か? どうも勝手がわからないものだから、力加減が難しい」
「……だいじょうぶ」 
「俺も……いいか?」

 恭治の問いかけに天野が頷く。恭治の手が離れると衣擦れの音が微かに聞こえ、再び覆いかぶさってくる。口づけを交わし合い、互いの舌が絡み合っていく。質量と熱を持ったモノが重なり合い、その昂ぶりに天野の体が強張った。
 一緒に銭湯に行った際に何度も目にしてきたが、欲情の象徴を表した状態にはさすがに戸惑ってしまう。

「お前の手も借りるぞ」

 そう言って恭治は天野の手を掴むと、重なり合った昂ぶりに手を添わせる。その上から恭治が自らの手を添えて、ゆっくりと動かしていく。

「ふっ……あっ……」

 自分でしているようで、他人が誘導しているという不思議な感覚だった。先端から溢れだした蜜が流れ、動きを円滑なものへと変えていく。

「はぁっ……蓮介……」

 恭治の辛そうな声に、天野は逸らしていた視線を向ける。恭治は眉根を寄せて、心底苦痛に歪んだ表情で天野を見下ろしていた。微かに目元が潤んでいるようにも見え、普段見せない艶っぽい姿に恭治の胸の内を垣間見てしまった気がしてならない。
 妹の夫となるやもしれない親友と、このような不埒な真似をして良かったのだろうかと、遅かれながら気付かされてしまう。それでも今後の恭治の気苦労を考えれば、何も切り出せない。
 恩にもならないかもしれないこの行為を恭治が望むのであれば、自分は甘んじて受け入れるつもりだった。
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