君との怪異に僕は溺れる

箕田 悠

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第四章「嫉妬」

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 神近くんはちゃんと部室にいて、僕の姿を見るなり「今日は帰った方がいいんじゃないんですか?」と僅かに気遣う声音で告げてきた。

「神近くん……運んでくれてありがとう」

 保健室までここからだと、結構な距離がある。何しろ本館に戻らなきゃいけないのだ。廊下には冷房が入っていないし、最悪神近くんが熱中症になる可能性もあった。

「……別に良いです」

 神近くんはどこかきまり悪げに、僕から視線を逸らす。

「そんな事より、その女をどうするかです。お姉さんの彼氏、どんだけ女泣かせなんだか……」

「……もう彼氏じゃないよ」

 僕はそう言いつつ、神近くんの向かい側の席に腰を下ろす。

「そんなことはもうどうでも良いんです。別れたからって、向こうがこっちをターゲットにしている以上は、諦めるか納得するまで付きまとってきますよ」

 パチリと小さな音を立てて、パズルのピースが嵌っていく。徐々に絵が輪郭を表す様子は、パズルに興味がなかった僕でも見ていて気持ちがいい。膨大な数の小さなカケラが、大きな集合体となった時の達成感は僕を魅了するには十分だった。

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