恋する熱帯魚

箕田 はる

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第十三章

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 大通りを歩く男たちが次第に増え始め、ゆったりとした足取りで物珍しいそうに、もしくは品定めするように視線を彷徨わせている。
 嬉々とした表情な人。少し緊張気味な人。何人かで連れ添い冷やかしまがいな人。
 様々な人々が毎日、この界隈を練り歩いていく。
 ふと、最初に松原が来た時のことを思い出す。
 彼は険しい表情で足早に、この場所を去っていった。
 もう二度とここには来ない。その確証がまさか、あんな形で外れるとは思ってもみなかった。
 後ろ髪引かれる思いで、春夜は窓から視線を逸らそうとした瞬間――不意に、足早に近づいてくる男の姿が目の端に映り込む。
 険しい表情でこちらに向かって近づいてくる長身の男。
 眉を顰め唇をきつく真一文字に結び、他の男たちを追い抜くように一直線にこちらに向かってきている。
 彼は変わらずこの場所が苦手なのだ。それなのにーー
 心がぐらりと揺れた。

「ハルヤ。ちょっといいかい」

 襖が開かれキミヨが姿を現す。いつにも増して、キミヨは険を滲ませた表情をしていた。
 開店前に松原が現れたことを鑑みれば、ケジメをつけさせるためにキミヨが呼び出したのだと察せられる。
 春夜は奥歯を噛み締め、ゆっくりと窓枠から腰を上げた。

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