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しおりを挟む――この度は私の著書をお手に取って頂き、ありがとうございます。
息子さんが引きこもりとはさぞかし、ご心労のことでしょう。しかしながら、私は専門家ではありません。ご拝読いただきました著書「部屋籠もり」はフィクションであり、私の想像の産物にしか過ぎません。
主人公の宗太郎は中学でいじめにあい、部屋に引きこもってから十年。嘆く親を尻目に、中卒のまま定職にも就けずに日がな一日、ネットをやって過ごしていました。
その最中で、宗太郎はネットでマキちゃんに恋をし、マキちゃんが彼氏から暴力を受けていると知って、助けるために部屋を出ます。でもそれは、母親が打った一芝居だったのは、もちろん最後までお読みでしたらおわかりですよね。
私が伝えたかったのは、何かをきっかけに人は変われるのだということだけです。決して、引きこもりの息子にこうすれば、部屋から出せますという指南書を書いたわけではありません。しかしながら、あなた様が少しでも息子さんと向き合いたいと感じているのでしたら、あなた様自身が宗太郎の母親のように、何か行動を起こすことも一つの手だと思います。添付資料には然るべき専門機関を記載しておきます。微力ながらもお力添えになれればと思っております。
最後に著名を記すと、語部 祐吾は苦々しくレターパッドから顔を上げた。
目の前のデスクトップの右端に視線を走らせ、十三時四十五分であることを知る。カーテンから差し込む光は灰色のせいか、時間の感覚がどうにも狂っていた。
ほんのりと湿った初夏の匂いが鼻につき、雨が降っているかのようにも思える。
語部は深い溜め息を零し、コピーを取っておいた資料に目を落とす。ずらりと並んだ引きこもり支援団体の施設名。最近では支援団体を名乗った詐欺や宗教も多いことを思い出す。
再び溜息を吐き出すと、語部は鋭い眼差しをデスクトップに移した。ネットで支援団体の名前を検索していく。調べれば調べるほど、虐待、監禁、ブラック労働など物騒な言葉が並んだ。この中からまともな場所を見つけ出すのは骨が折れそうだった。
正しくない情報を安易に与えるわけにはいかず、語部はコピーした用紙を丸め足元のゴミ箱に投げ入れる。苛立ちを隠せず足を揺すり、再びデスクトップを睨んだ。
区や市町村で運営している相談窓口のほうが安全だろうと、再び検索をかけていく。地域の役所によっては、設けられているようだった。ファンレターの住所を元に調べてみると、その都市にも役所が設けている相談窓口があることが分かった。
印刷ボタンを押し、排出トレイに吐き出された用紙を乱暴に手に取る。
書いた手紙を二度ほど目を通し、コピーした紙にも目を通す。折りたたむと青陽出版と書かれた長方形の封筒に差し入れ、糊で封筒の口を塞ぐ。
一段落ついたと思ったところでインターホンが鳴り、語部は一つ舌打ちをすると立ち上がった。
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