作家は二度、炎上する

箕田 はる

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 プロット作りには、あらすじを考えるよりも、更に詰めて深く描かなければならず、企画書を書くようなものだった。キャラクターの大まかな設定や、起承転結の流れなど、考えなければならないことが山のようにある。
 元々、頭の中にあるならば、書き出すことも難しくなかっただろうが、今回は急遽考えていたうえに、主人公も設定も変えることになっている。加えて校閲から戻ってきた原稿の推敲作業もある。こちらも期限が同じ一週間後ということで、同時進行せざるを得なくなっていた。
 寝不足のせいか、どうも頭がハッキリしない。いつもならコーヒーでどうにかなっていたが、今はエナジードリンクがメインになっていた。
 時計の秒針が耳障りに思え、語部は掛け時計から乱暴に電池を抜いた。食事もデリバリーで済ませ、お風呂も二日に一回だけ。座りっぱなしの腰は軋み、目は充血してヒリヒリ痛む。それでも、指の動きは止めることはせず、とにかく画面を睨み付け、頭を悩ませた。
 目を閉じれば寝てしまいそうだった。どうしても辛いときには窓を開けて、冷たい空気を部屋に入れて無理やり眠気を追い払う。
 一週間などあっという間だった。約束の日には、完成したプロットをテーブルに置いて、ソファでうたた寝していた。チャイムの音で意識を取り戻した語部は、ふらつく足取りで安時を出迎える。
「先生、大丈夫ですか?」
 あまりに顔色が悪かったのか、心配そうな顔で語部を覗き込む。
「ああ……問題ない」
 口ではそう言いながらも、コーヒーを入れる元気がなく、リビングに入るやいなや、ソファに座り込んだ。
「悪いが勝手に見てくれ。俺は少し寝るから」
 限界に近かったせいか、腕を組んで目を閉じるとあっという間に眠りに落ちていた。安時が揺すり起こすまで完全に意識が飛んでしまっていて、夢すら見ていない。
「お疲れ様でした。これはお預かりしますね」
 あっ、それから――と声を上げ、肩掛けバッグから手紙の束を取り出す。
「これ、先生宛のファンレターです。大事な時期だったので、なかなか渡せなくて」
 手渡されたファンレターはざっと見ても、十通以上はありそうだった。電子メールで賄える時代にあえて、手書きで送ってくるのは手間も時間もかかる。だからこそ、自分の為にわざわざ筆を取ってくれた人には感謝の念が大きい。疲れはあったが、返事を書かねばという使命感も生まれる。
 ゆっくり休んでくださいと付け足し、安時が部屋を出て行く。いつもならば玄関まで見送るのだが、今日はその気力さえ沸かなかった。
 そこから丸一日。語部はベッドで倒れたまま、泥のように眠った。
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