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第2話
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コンビニの夜勤のバイトが終わり、廃棄の弁当を片手に家に向かっている時の事だった。
僕は三階建てのアパートの三階に住んでおり、三階まで行くには一つしかない階段を上がるしかなかった。
アパートに着くと、両手で顔を隠した女の子が俯いたまま一階の階段に座っていた。
「こんな時間に何してるの?このアパートの子?」
僕は子供があまり得意ではないので、彼女を無視してそのまま部屋に向かおうかとも思った。
だが、三階まで行くには階段に座り込んでいる彼女に退いてもらうほか術はなかったので、仕方なく彼女に声をかけることにした。
すると彼女は両手で顔を隠しながらゆっくりとこちらを向き、その両手をバッと広げて僕に顔を見せた。
彼女の顔には目や鼻や口が無かった。
「凄っ。特殊メイク?よくできてるね。ちょっと触ってみてもいい?」
初めこそ多少は驚いたが、幽霊や妖怪という類の存在を全く信じていなかった僕は彼女の顔も何か特別な細工だとしか思わなかった。
むしろその出来の良さに感心すらしていた。
彼女の顔に手を近づけると、彼女は僕の手を思いっきり振り払った。
「なんじゃ貴様、この顔を見て驚かんのか?」
「驚いてるよ、めっちゃ驚いてる。よくできてるよねー。マスクか何か被ってるの?」
そう言って僕はまた彼女の顔を触ろうとした。
「待て待て待て!貴様は馬鹿なのか?どう見ても本物じゃろうが!」
彼女は僕の手を何度も振り払おうとしたが、その出来の良さに感心した僕はどうしても彼女の顔の秘密を知りたくなっていた。
「馬鹿者が!気安く触るでない!!止めんか、頬をつねるのはよせ!」
彼女の顔に触ってみて、改めてその出来の良さに感心した。
「マジでよくできてるね。見た目だけじゃなくて触り心地も本物の肌みたい」
そう言っているうちに、徐々に違和感に気付いてきた。
彼女の顔のそれがあまりにもリアルすぎるのだ。
「・・・え?・・・もしかして、マジのやつですか?」
「だから何度もそう言っておるじゃろう」
「・・・マジのお化け?」
「そうじゃ。マジのお化けじゃ」
「のっぺらぼうってやつですか?」
「何度も言わすな」
本来ならここで恐怖心が増すのだろうが、僕の場合は恐怖心よりも好奇心の方が大きかった。
「何をニヤニヤしておる、気持ち悪い奴じゃな」
「いやー、初めて本物のお化けを見たんで。お化けってこんな感じなんだなって、なんか新鮮で。ところで、こんな所で何してるんですか?」
「べつに、ただ貴様がこちらに歩いてくるのが見えたから脅かしてやろうと思っただけじゃ」
「お化けって暇なんですか?」
「うるさい!他の人間なら慌てふためいて逃げ去るのに、どうして貴様はこうも平然としておるのじゃ。貴様は頭がおかしいのか?」
「幽霊とかそういうの信じないタイプなんで。でもまさか本当にいるとは思いませんでしたよ。それじゃあ、僕の部屋ここの三階なんで、そこどいてもらっていいですか?」
そう言って彼女の横を通り過ぎる僕を、彼女は呆気にとられた表情で見ていた。
とは言っても彼女に顔は無いので、これはあくまで僕の予想なのだが。
部屋の前に着いた僕は鍵を開けて中へ入ろうとしたが、ふと彼女のことが気になり階段の隙間から下を覗いた。
すると彼女は先程と同様に一階の階段に座りながら、夜空を見上げていた。
「あの!!」
僕が声をかけると、彼女は三階にいる僕の方を向いた。
「暇なら一緒にテレビゲームでもします?」
すると彼女は黙ったままゆっくりと頷いた。
これが僕と彼女が初めて出会った日の事であり、その日以来彼女は毎晩のように僕の家に遊びに来ては一緒にゲームをしたり、日の出まで勝手に僕の家のビールを飲み明かしたりしている。
僕は三階建てのアパートの三階に住んでおり、三階まで行くには一つしかない階段を上がるしかなかった。
アパートに着くと、両手で顔を隠した女の子が俯いたまま一階の階段に座っていた。
「こんな時間に何してるの?このアパートの子?」
僕は子供があまり得意ではないので、彼女を無視してそのまま部屋に向かおうかとも思った。
だが、三階まで行くには階段に座り込んでいる彼女に退いてもらうほか術はなかったので、仕方なく彼女に声をかけることにした。
すると彼女は両手で顔を隠しながらゆっくりとこちらを向き、その両手をバッと広げて僕に顔を見せた。
彼女の顔には目や鼻や口が無かった。
「凄っ。特殊メイク?よくできてるね。ちょっと触ってみてもいい?」
初めこそ多少は驚いたが、幽霊や妖怪という類の存在を全く信じていなかった僕は彼女の顔も何か特別な細工だとしか思わなかった。
むしろその出来の良さに感心すらしていた。
彼女の顔に手を近づけると、彼女は僕の手を思いっきり振り払った。
「なんじゃ貴様、この顔を見て驚かんのか?」
「驚いてるよ、めっちゃ驚いてる。よくできてるよねー。マスクか何か被ってるの?」
そう言って僕はまた彼女の顔を触ろうとした。
「待て待て待て!貴様は馬鹿なのか?どう見ても本物じゃろうが!」
彼女は僕の手を何度も振り払おうとしたが、その出来の良さに感心した僕はどうしても彼女の顔の秘密を知りたくなっていた。
「馬鹿者が!気安く触るでない!!止めんか、頬をつねるのはよせ!」
彼女の顔に触ってみて、改めてその出来の良さに感心した。
「マジでよくできてるね。見た目だけじゃなくて触り心地も本物の肌みたい」
そう言っているうちに、徐々に違和感に気付いてきた。
彼女の顔のそれがあまりにもリアルすぎるのだ。
「・・・え?・・・もしかして、マジのやつですか?」
「だから何度もそう言っておるじゃろう」
「・・・マジのお化け?」
「そうじゃ。マジのお化けじゃ」
「のっぺらぼうってやつですか?」
「何度も言わすな」
本来ならここで恐怖心が増すのだろうが、僕の場合は恐怖心よりも好奇心の方が大きかった。
「何をニヤニヤしておる、気持ち悪い奴じゃな」
「いやー、初めて本物のお化けを見たんで。お化けってこんな感じなんだなって、なんか新鮮で。ところで、こんな所で何してるんですか?」
「べつに、ただ貴様がこちらに歩いてくるのが見えたから脅かしてやろうと思っただけじゃ」
「お化けって暇なんですか?」
「うるさい!他の人間なら慌てふためいて逃げ去るのに、どうして貴様はこうも平然としておるのじゃ。貴様は頭がおかしいのか?」
「幽霊とかそういうの信じないタイプなんで。でもまさか本当にいるとは思いませんでしたよ。それじゃあ、僕の部屋ここの三階なんで、そこどいてもらっていいですか?」
そう言って彼女の横を通り過ぎる僕を、彼女は呆気にとられた表情で見ていた。
とは言っても彼女に顔は無いので、これはあくまで僕の予想なのだが。
部屋の前に着いた僕は鍵を開けて中へ入ろうとしたが、ふと彼女のことが気になり階段の隙間から下を覗いた。
すると彼女は先程と同様に一階の階段に座りながら、夜空を見上げていた。
「あの!!」
僕が声をかけると、彼女は三階にいる僕の方を向いた。
「暇なら一緒にテレビゲームでもします?」
すると彼女は黙ったままゆっくりと頷いた。
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