少女のままで

chandeme

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二章 片思い

林檎

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中学校の時の制服を着てる私。
教室にいる。

いつも長谷川君が話しかけにくる。




「成井って休み時間いつも本読んでるよな。他の女子は外でバレーボールとかやって遊んでたりしてんのに。」

「直也だって外で遊べばいいのに。今日はしないの?サッカー。」

「今日朝練があったから疲れてんの。いつもなんの本読んでんの?」


「なにって...いつもお母さんが本買ってきてくれるの。だから読んでるだけ。」

「へえー。成井んちのお母さん優しいなぁ。」

「別に優しいわけじゃないよ。私が読みたいって言って買ってきてくれるわけじゃないから。」


「じゃあいつも読みたくもない本読んでんの?変なの。」

「変じゃないよ。いいの。休み時間って..やることないじゃない。」

「変だよ。あのさぁ..成井..」

「え..」









目が覚めた。
中学校のときの夢を見ていた。


当時片思いしていた男の子の夢を私は今でもたまに見る。
ひと月に一度くらいの頻度で。

中学校のとき私は長谷川君とはあまり喋らなかったし遠くで見てるだけだった。結局告白もなにもしないまま卒業とともにはなればなれに。
だけど夢の中ではそれとは関係なく私たちはよく喋っていた。


心理的に私がなにを思ってそうゆう夢をいまだに見るのかはよくわからない。
もしかしたら想いをちゃんと伝えなかったことをいまだに後悔しているのかもしれない。


夢の中で長谷川君はなにを私に伝えようとしているんだろう。
この夢は一体私になにを伝えようとしているんだろう。

考えてもわからない。









今日は日曜。

すっかり体調は良くなっていた。


昨日は新宿から疲れて帰ってきてシャワーを浴びてすぐ寝てしまった。



リビングに降りると誰もいない。
お母さんとお父さんはふたりでどこかにでかけたらしい。


台所においてある林檎をおもむろにとりだし包丁でカットした。皮なんてむけないからそのままで。

テレビ画面の隅にうつった時刻をぼんやり眺めながらリンゴをほおばった。



松田さん...

連絡先を交換していなかった。
というか下の名前すら聞き忘れてしまった。


彼女がいることを知らなければラインくらいは流れで交換していたのだと思うけど...

私は略奪愛ができるほど自分に自信なんてないし

どちらかというと自分という女を否定的に考えてしまうほうだ。


コンプレックスというか...


性格ひとつにしても
自分のダメなとこをみつけては自分を否定してしまう
自分を責めてしまう癖がある。


決めたことに対して時間がたつとブレてしまうところが嫌いだったりとか...


そもそもが自分という人間が好きじゃないからアラ探しを自分でしてるようなものかもしれない。


少し体重が増えただけでもそれがすごく気になってしまう。実際は自分が気にするほど周りは気にしていなかったりするけど。




かじったリンゴのように人はみんなかけている。私もそう。

完璧な人間なんていないのに私は私に完璧さを求めている。

見た目も内面も。

完璧さを求めるよりありのまま

かけていてもいいから私はそのままの私を好きになりたい。受け入れたい。

たとえカラダのどこかに傷跡があっても。
かわいくないところがあっても。


松田さんはそんな私を受け入れてくれるだろうか。



松田さんと次会えるのはいつ?


ていうかそもそも
次会う機会なんて...あるの?







松田さんはいわゆる
イケメンで優しくて目はキラキラしていて

ときどき物凄く鋭い目つきになることがあったけどその怖い目つきで私を見てはこなかった。

そして目を伏せるときはどこか寂しそうに感じた。





小春ちゃんって誰よ...






アタマの中がごちゃごちゃになった。

お腹が痛い...
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