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~Rouse to Graveyard~
しおりを挟むノワール、アドナ、オクタンの三人は大きな半球形の天井とその中心に煌めくステンドグラスの柱が立ち、そこから放射線状に広がるように墓が均等に並べられた場所に出た。
三人は立ち止まり、その光景を眺めた。
「これ、全部お墓?」
「何とも悍ましい」
「まさか、城の地下にこんなものがあるとはな…」
「…玉座とは常に屍の上に立っているもの、なぜなら優秀な王は戦いの中で生まれるからさ」
ステンドグラスの柱の前に金色のお河童姿に王冠を手で弄ぶ男が立っていた。
「…ようこそ、黴の吹き溜まる地下の墓所へ」
「王、自らが出てくるとはな」
「アドナか、君達が私達に背いていることは知っていたよ」
「女王にしろ、王にしろそんなに見せれないほどの顔なの?」
ステンドグラスの柱の前に立つ男の上半分の黄金の仮面を示し、ノワールは言った。
「美しい美貌故に隠しているかもと思わないのか?」
「全く笑えない冗談だわ」
「そう、自ら言ったら笑えないな…そろそろ始めるとしよう」
黄金の仮面の男は指と指を擦り合わせ、指を鳴らすとステンドグラス柱を中心に墓が広がるように砕けていった。そして、地面から屍が這い出てきた。
ノワールは大鎌を振るい、這い出てきたばかりの屍達の首を刎ねた。
クリューは屍が入り乱れる最中に着いた。
「遅かったね」
ルノーは壁に寄り掛かり、ノワール達の様を見ながら言った。
「あんたはそこで高みの見物?………あいつは!?」
クリューは何を見つけ、屍達の中へ飛び込んだ。
「気落ちしてた感があったのに気変わりが早いね」
クリューは腰に巻いている剣を引き抜くと直線上にいる屍達を一層し、切り開いた道を走り抜けた。
「相も変わらず見事な薄剣捌きだ」
「やっと本来の姿で会えたわね、エペ・モナルクス」
「さて、決まり文句の一つでも言っておくか、なぜ、我等を裏切った?」
「裏切るも何も初めから仲間になったつもりはないわ」
「分かっていたが捻りもない言葉だな」
黄金の仮面の男、エペは思うとそこへ屍達を倒し終えたノワール達が現れた。
「貴方で最後よ」
「それはどうだろうな」
倒された屍達が地面に沈み込み、ステンドグラスの柱の周囲にある地面から骸が噴き上がり、柱を覆い隠し辺りに暗闇を作った。そして、暗闇の中から黄金の仮面だけが浮かび上がった。
「穴の開いた空の器にいくら水を注ごうと満たすことは出来ないように屍を切り裂いても死ぬことはない」
骸は柱から滑り落ち、頭に黄金の仮面が付いた大蛇と化した。
大蛇は裂けるように口を開き、腐ったような悪臭漂う息を吐いた。
「うっ…」
ノワール達は口元を手で隠した。
「全くひどい息を!」
クリューは不快な思いと共に剣を振り上げた。そして、クリューの剣はしなやかな曲線を描き、大蛇の頭を縦に切り裂いた。
だが、大蛇はすぐに二つの首へと変わり、黄金の仮面はその付け根に移動した。
「本当にきりがないような感じね、だったら…」
ノワールが大鎌を構えると大蛇は一方の首をノワールに向けて食らい付いてきた。
ノワールはそれを躱すと大蛇の頭は地面で潰れるように伸び広がり、ノワールはその首を大鎌で断った。
斬れ落ちた首は昇華するように消え失せたが、大蛇は首はすぐさま再生した。
「無駄なことを、既に滅びし肉体は滅びることはない」
唸るような声で大蛇は言った。
「単に魂がないから滅びないだけだよ」
「我と同じ魂を持たぬ人形が余計なことほざくな」
大蛇はルノーの言葉に蔑むように言い放ち、一方の頭でルノー達を薙ぎ払った。
薙ぎ払われたルノー達は地面を滑るように飛ばされ、地面に倒れ込んだ。
そして、ルノーとノワール以外はそのまま立ち上がることは無かった。
「やはりアーティファクトとアリスの魂までは奪えないか…」
ルノーとノワールは立ち上がった。
「まったくやってくれるわね」
オクタン、クリュー、アドナの身体から白い靄が抜け出し、ステンドグラスの柱へと吸い寄せられるように引っ張られて行き、柱の中へと透り抜けた。
「次に何をするんだい、そろそろ君の遊びには飽きたよ」
ルノーは怒りの感情を表に出さずに冷たくも安らかな声色で言うとルノーは続けてノワールの前に跪くと言った。
「主、主の持つブラスタルを僕にくれませんか?」
「いきなり何を、そんなことしたら私が」
「心配ありません、私は主の半身に近しき存在、主の心配するようなことにはなりません。それにこの状況を一瞬で終わらせることが可能です」
ルノーのいままでにない真摯な態度にノワールはブラスタルをもぎ取った。
その瞬間、ノワールは胸に杭を刺したような痛みが走ったが耐えながらルノーに渡すとすぐに痛みは消えてなくなった。
「我は汝と同じ色を持つものなり、今、此処に契約を解放する」
ブラスタルは黒い焔に包まれ、ルノーはブラスタルを自らの胸へと押し当てた。
ブラスタルはルノーの胸へと沈み込み、ルノーと一体になるとノワールの身体が黒い焔に包み込まれた。
「何?…これは………」
ノワールは自らの身体を見回した。
「聞くまでもないはずだよ」
ルノーの言葉にノワールは自分の中に何かが流れ込むのを感じると互いを包み込んでいた焔が身体の内へと消えた。
「……そうね、って私の意識を蘇らせるのにどれだけ時間、掛かってるのよ」
ノワールはルノーをステンドグラスの柱へと蹴り飛ばした。
ルノーの身体は柱ではなく突然、現れた大蛇の胴体に遮られてそのままぶつかった。
「やっぱりそういうこと…」
「何を先程から仲間同士でしている」
「…ちょっとした確認作業よ」
ノワールはそう言いながらルノーに向かって走り出していた。
「何をする気だ」
大蛇は危機感を察知し、蜷局を巻くように柱へと巻き付き、ノワールの真正面に頭を構えた。
「わざわざ斬り易い位置へ動いてくれるなんてね」
ノワールは走りながら右手を外へと振り払う、すると焔の筋が伸び、その焔に沿って今までの大鎌より一回りも二回りも大きい刃を持つ大鎌が現れた。
大蛇に近付いたところでノワール飛び上がり、大鎌を横に円描くように振り回し、勢いをつけてステンドグラスの柱ごと大蛇を斬り貫いた。
大蛇の首、胴体、尻尾は切り口を滑り落ちるように崩れた。そして、その衝撃でステンドグラスの柱は一気に粉塵と化して宙に舞い、それと共に柱の中から白い靄が空間全体へと拡散した。
「上出来だな…」
大蛇の身体は白い靄に触れる部分から脆く崩れていく。
「…これで目的は達せられた………」
黄金の仮面が大蛇の身体と共に消え去り、白い靄も徐々に消えていく。
「…全く何が起きたんじゃ」
オクタン、アドナ、クリューの三人は目を覚まし立ち上がった。
「…これはどういう事だ」
「いつの間に私達、移動したの?」
白い靄が完全に消え去ると苔や雑草が生える屋根すらない石造りの教会に風景が変わっていた。
「今回は僕も完全にやられたよ、まさか、エペ自らが君の覚醒への御膳立てをするとはね」
ルノーは祭壇らしき場所に腰掛けながらノワールに言った。
「そうみたいね、本当にむかつく話だわ、次に会ったら今度こそスクリプトラインから消してやるわ」
ノワールは悪感情を吐露した。
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