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シオン

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08 二人のアリス

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アリスは森を抜け、岩石の洞穴を抜けると切り立った崖に囲まれた石造りの塔が立つ場所に出た。そして、白ウサギと影は少し開いた塔の扉の中に消えた。



塔の周囲には棘の持つ植物の蔦が蠢いており、アリスが通ってきた洞穴を塞ぐとアリスに向かって蔦が迫ってきた。



アリスはすぐさま塔の中へ駆け込むと扉を閉めた。すると蔦は塔の扉に張り付き、動きを止めた。



「まったく、もうここからは外に出れそうにないわね」



塔の中は明るく、硝子の床の下には赤と白の薔薇が敷き詰められており、壁には白と黒の二重螺旋を描くように階段が延びていた。



アリスは黒の階段に歩みを進めるとアリスが踏んだ一段目から白へと変わり、二段目以降へと流れるように色が変わっていくがアリスは気にも止めずに上へと歩みを進めた。



「やっと会えるのね…」



塔の頂上の一室で白い服に身を包んだアリスと同じくらいの年頃の純白のドレスに身を包んだ白い長髪の少女が言った。



アリスは最上階まで辿り着くと目の前には一つの扉があった。扉はアリスが手を掛ける間もなくゆっくりと軋むような音を立てて開いた。



アリスは開いた扉の中に入ると中には部屋の左右に跪くように座る白ウサギと狂いウサギがいた。



「ようこそ、アリス」



跪く二人のウサギの奥にあるレースで囲まれたベッドの中から聞こえた。



「誰なの?あんた」



アリスは大鎌を取り出し構えた。



「無理はしない方がいい、血が足りないのでしょ?」



「見ず知らずのあなたに心配されることではないわ!」



アリスはレースに囲まれたベッドに向けて踏み出すとすぐさま大鎌を振るった。



大鎌はレースを半分ほど切り裂いた後に、金属音と共に動きを止めた。



「その剣は……」



白銀の剣が大鎌を受け止めていた。



「そう、貴女の鎌と同じもの」



大鎌は白銀の剣に弾き返えされ、剣の刃はベッドの天井ごとレースを切り裂いた。



アリスはその反動で後ろへと弾き飛ばされたがすぐさま床に大鎌を突き刺し飛ばされた身体を止め、ベッドの方を見た。すると散り行く切り裂かれたベッドの破片の中からアリスと同じ顔立ちの少女が姿を現した。



「私と同じ顔?」



「貴女が私と同じなのよ」



「それはどういうこと?」



「覚えてないのね…」



やっぱりという表情をした。



「チェシャ猫、そこにいるんでしょ?」



「久し振りだにゃ、白のアリス」



猫の耳のような癖がついた髪をし、身体に黒々とした毛並みを持った少年が天井に手を突き逆さにしゃがんでいた。



「そちらについたのですか?」



「僕はどちらでもないにゃ……」



「そうですか…」



白ウサギと狂いウサギはそれぞれ、白い影と黒い影に変わり混じり合うと影は灰色と化して次第に姿を執事服姿のウサギの耳が垂れたような灰色の髪をした女性へと変わった。



「…サンドル」



執事服姿の女性は飛び上がり、そのままチェシャ猫を蹴り飛ばした。



「避けましたか、やはり猫というものは身軽ですね」



サンドルは床に降り立った。



「相変わらず嫌な奴にゃ」



チェシャ猫はそう言うと警戒した視線でサンドルを見ながら後ろ手で扉を開け、部屋から出て行った。そして、サンドルはすぐに後を追った。



「これで邪魔な獣は消えたわ、残るは貴女だけ」



白のアリスは剣を振るうと黒のアリスは大鎌の刃の根本で受け止めた。



「まだ私の剣撃を受け止めるだけの力は残ってるみたいね……でも」



白のアリスの刃が動きを進め、大鎌の刃を切り落とし、剣の切っ先を黒のアリスの喉元に向けた。



「大分、力が落ちているようね、こちらも策を労した甲斐があったわ」



「策?」



「貴女がこの世界に来てからの一連の出来事全てよ」



「……そう」



「気付いていたという表情ね」



「いえ、此処に来て貴女の顔をみて思い出した事がいくつかあったから」



「そう、最期に思い出せて良かったわね」



「そうね……………でも、最期っていうにはまだ早いと思うわ」



白のアリスは喉元に向けていた剣をそのまま突き刺し、黒い血で剣が染まる。



「終わってみれば呆気ないものね、この暇つぶしも…」



白のアリスは剣を引き抜くと黒い血飛沫が空を染めた。

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