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07 狂いウサギと白ウサギ
しおりを挟む朦朧とした意識中、アリスは今にも倒れそうな足取りで森の中を歩んで行く。
「苦しそうだにゃ」
木の枝に座るようにチェシャ猫が現れた。
「………」
アリスは返答せず、森の奥深くへと歩いて行く。
「にゃんだ、つまらないにゃ」
張り合いがないチェシャ猫は姿を消した。
しばらくしてアリスの目の前に異常な程笑う茶色いウサギの耳の少年が飛び跳ねながら現れた。
「くっひひひ…」
ウサギはアリスの周りを笑いながら飛び跳ね続けた。
「…いい加減にしろ!」
アリスは残された力を込めてウサギに殴り掛かったが軽く躱され、アリスは反動で地に伏した。するとウサギは笑いながら去って行った。
「……だいじょうぶかい?」
「………だれ…」
地に伏したままのアリスは薄れゆく意識の中、近付いてくる足が見えた所で意識を失った。
アリスは目を覚ますと樹をくり抜いて造られた部屋のベッドの上にいた。
「ここは?」
「あらあら、目が覚めたのね、良かったわ」
小柄の老婆がちょうど部屋に入ってきた。
「私…」
「狂いウサギの狂気にあてられたようね」
アリスは徐に毛布を捲ると服を着ていなかった。
「ない!」
「服ならそこにありますよ」
老婆は壁の突起を示すと衣紋掛けに掛けられたアリスの衣服があった。
「ひどく汚れていたのでね」
アリスは毛布を蹴っぱぐるとアリスの腹部には傷痕があった。そして、ベッドから飛び出ると掛けられた衣服を着た。
「少しは元気になったようだね」
「おばあちゃん」
五、六歳の少女がパンとスープの乗ったおぼんを持って入ってきた。
「アリア、ありがとうね、そこのお嬢さんに渡しておくれ」
少女はアリスに笑顔で差し出した。
「どうぞ」
「…あ、ありがとう」
アリスは純真無垢な少女の笑顔に戸惑いながらもスープの入ったカップとパンを受け取りお礼を言った。
少女は胸の前でおぼんを抱え出て行った。そして、老婆もその後に続き出ていこうとしたがアリスが止めた。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「なにかね?」
「さっき言ってた狂いウサギって何?」
「狂いウサギは四六時中この森の中を笑いながら飛び跳ね回り、その笑い声を聞いたものを狂気に導く獣さ」
「そう、ありがとう」
アリスは老婆の説明を聞くとお礼を言い、パンを頬張り、スープで流し込むと部屋から出て行った。
「普段ならあの程度の狂気には…やっぱり力を使いすぎたようね」
アリスはそう思いながら家から出ると森の中に消えた。
「全く落ち着きのない、あんなのがアリスとはね」
アリアは森の中に消えたアリスを見送りながら言った。
森の中、狂いウサギと白ウサギが対峙していた。
「くっひひひ…」
「そこを通してくれ、遅れてしまう」
「くっひひひ…」
飛び跳ねる狂いウサギの背後から同じ姿の狂いウサギが現れた。そして、同じように次々と狂いウサギが現れ、白ウサギを囲んだ。
白ウサギは共鳴する狂いウサギの笑い声に意識が遠退く。
「見つけたわ」
アリスは狂いウサギを見つけるとその輪の中に飛び込み、大鎌を振るった。そして、狂いウサギは笑い声を残し、霧散霧消した。
「……助けていただきありがとうございます」
白ウサギは丁寧にお礼を言うと懐中時計が音を立てて響いた。
「いけない、急がないと」
白ウサギは慌てて駆けて行った。
するとその白ウサギの影に得体の知れない霧が浮かび上がっていた。
「あれは今さっき、消えた」
アリスは白ウサギの後を追った。
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