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36 廃教会
しおりを挟むノワールは気が付くと廃墟の教会の中にある傾いた十字架の前で俯せに倒れていた。
「まったく…」
ノワールは立ち上がろうと地面に手を突いた。すると地面にある水溜まりに毛先が微かに金色に染まったノワールが写った。
「その程度の力でアリスを名乗るの?」
口調と風貌が全く変わったジョーヌがノワールに言った。
ジョーヌは胸元が開いた鮮やかな緑のドレスに身を包み、背後には新緑色をした光の葉が幾つもその場で舞っていた。
「そう…理解したわ」
「何を?これからの結末でも見えたりしたの?でも、結末は決まっている…」
ジョーヌの背後に舞う光の葉が動きを止めた。
「…終末という結末に」
光の葉は光の筋を作り、扇状に広がった。
「クロック・スロウ」
ノワールはそう呟くと空間の動きが遅くなり、その時の中をジョーヌに向かって歩んでいく。
光の筋がノワールが立っていた場所まで到達する頃には事は決していた。
「こんな結末…誰も」
ノワールの視線の先には地面に倒れるジョーヌおり、その身体から色が消え、形状が崩れ去る。
「やはり君だけは改変の影響は受けぬか」
左目に十字架のレリーフが入った眼帯を着けた黒毛の短髪の少年が瓦礫の山に座りながらノワールに言った。
「アリスの死の条件まで弄ったのね」
「仕方あるまい、これ以上世界の影響を受けない者を生まない為だ」
「いくら作り物の世界でも此処にいる者の死は現実」
「何を悲観している?ジョーヌ(彼女)の死は君が与えた者だ…」
ノウル・エッジは溜め息交じりに残念そうに続けて歎いた。
「…全くらしくない事だ、あちらにいる時の君の方がまだ可愛げがあった」
「あちらの記憶なんて知らないわ、けど人は変化するものよ」
ノワールはアリスの力を使い、時の瞳を刃の付け根にある大鎌を取り出した。
「人とはそのような面妖な力は持ち得ぬ者というのに人と語るか、何とも滑稽だな」
ノウル・エッジは含み笑いをした。
「だが、その力でこれからどうするつもりだ」
「貴方を消して世界を在るべき姿に」
「…それはもう叶わぬ夢よ。私の血で綴りし世界は今や私と同義、故に此処で私を消せば全てが潰える、そして、これ以上揺らぎは起きぬ世界の結末は一つだ」
ノワールの足場が下から何かに引っ張られるように湾曲し、ノワールは身動き一つ出来ずに沈んでいく。
「精々この世界の行く末を吹き溜まりの底で見届けるがいい…」
そのノウル・エッジの言葉を最後にノワールの世界は暗闇に閉じられた。
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